2月28日付
『ロイター通信』は、「米政府、児童労働の大幅増を受けて取締り強化宣言」と題して、昨年発覚した児童労働禁止法(注後記)違反について、その後の調査で、特に不法移民の子供らを労働させる違反が急増していることが分かったため、バイデン政権が徹底的取締りを行う旨表明したと報じている。
バイデン政権は2月27日、『ロイター通信』他のメディアの調査報道どおり、児童労働違反事例が急増していることを受けて、取締りを強化すると発表した。
米高官によると、労働省が調査したところ、危険職種の雇用含めて、児童労働禁止法違反が2018年比70%近くも増えていたという。
そして、2022年度では835社が同法違反を犯していたことが分かった。
同高官によると、労働省の担当局が、スナック菓子・シリアル等で知られるハースサイド・フード・ソリューションズ(HFS、2009年設立、本社ミシガン州)及び韓国自動車メーカー大手の現代自動車(1967年設立、本社ソウル)米子会社の捜査に入っているという。
更に、バイデン政権は、同法違反者に対する厳罰化とともに、監視体制強化のための予算配分を遂行しようとしているという。
米連邦法では、ほとんどの業種で16歳未満の児童を雇用することを禁じていて、工場等における危険職種において18歳未満を起用することが禁止されている。
取材に応じたある高官は、“19世紀でも20世紀でもなく、今現在発生している事態だ”と警鐘を鳴らした。
関係当局の声明文によると、現行法での罰金額の最高額は児童一人当たり1万5,138ドル(約205万9千円)であるが、“安過ぎて抑制効果がない”と言及している。
食品会社HFSの捜査については、『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』紙が、同社の著名なスナック菓子のチューウィ・グラノーラバーやチートス、またシリアルのラッキー・チャームズの製造工程に児童を起用していると報道したことを受けたことから始まっている。
HFSの違反事例は最新のもので、『ロイター通信』は昨年2月、アラバマ州における鶏肉加工工場における児童労働法違反事態の報道を皮切りに、同州在の現代自動車米子会社及び部品供給会社における児童労働違反事例を報じてきていた。
今年2月初めには、労働省による別事件の捜査の結果、ある大手食品会社が、8州で運営している食肉処理工場で100人以上の児童労働を強いていたことが摘発され、計150万ドル(約2億400万円)の罰金を科せられている。
『ロイター通信』がかつて報じたことであるが、不法移民として米入国の児童らが支援者や親戚等に引き取られた後、最終的に児童労働を強いられる環境に置かれるという多くの事例が認められている。
特に中央アメリカの不法移民が多い。
当局も、長期間のきめ細かい支援をする必要があることは認めているものの、実際問題は手が回らず、結局労働者派遣会社の下で、大人と偽って派遣労働者としてかかる児童が働かされてしまうという現実がある。
2月27日付『AP通信』は、「ホワイトハウス、移民の児童労働法違反取締りを強化と表明」として、詳報している。
バイデン政権は2月27日、特別任務チームを組成して、移民の児童労働法違反取締りを強化していくと宣言した。
直近5年間で、数百社の企業において4千人以上の児童労働事例が判明していて、急増の一途である。
この背景には、不法移民として入国してきた児童らが、保護施設を短期間で追い出され、結果として児童労働に駆り出される事態となっていることから、保健福祉省のハビエル・ベセラ長官(65歳、2021年就任)が窮地に追い込まれている。
何故なら、最初に『NYT』が報じたところによると、同長官が昨夏、不法移民の児童について、収容しきれない保護施設から可及的速やかに退去させるよう指示していたことが判明しているからである。
『NYT』報道によると、12歳の児童含めて100人以上が、米国内の大手・中小企業問わず、夜間労働や危険職種での業務に従事させられていたという。
ただ、ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官(45歳、2022年就任)は、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)がベセラ長官に“全幅の信頼”を置いているとして、同長官を擁護している旨表明している。
なお、同長官はメキシコ移民の子弟であり、長い間移民擁護の活動をしてきていた。
一方、バイデン政権としての大きな悩みは、政権奪取以来不法移民の数が急増していることである。
2021年10月~2022年9月期では、不法移民数が238万人と、前年比+37%も増えていて、トランプ政権下で最多となった2019年度の倍以上となっている。
そこで、保健福祉省及び労働省は2月27日、新たに特別任務チームを立ち上げて、不法移民の対応、特に児童の保護施設での擁護改善を図り、児童労働に駆り出されることがないよう、可能な限り長期かつ密接に見届けていくとしている。
なお、労働省は、児童労働による成果物を輸出させないとも強調している。
(注)児童労働禁止法:国際労働機関(ILO、1919年設立)主導で1973年に制定された国際条約に基づき作られた法律。義務教育年齢とされる児童(多くの主要国では15歳)以下の労働を禁止し、また18歳未満の危険職種での起用を禁じている。
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既報どおり、ドナルド・トランプ前大統領(76歳、2017~2021年在任)は、2021年1月6日発生の議会乱入事件を扇動した嫌疑や、退任後に不当に機密文書等を私邸に持ち込んだ容疑で取り調べられている。そして今度は、同前大統領が実業家時代の昔に、トランプから性暴力を受けたとされた被害女性によって、当該事件に関わる暴行罪及び名誉棄損罪で改めて提訴されている。
11月25日付
『ロイター通信』は、「性暴力事件の被害女性、加害者のトランプを暴行罪及び名誉棄損罪で提訴」と題して、27年前にトランプ前大統領から強姦されたとする被害女性が、ニューヨーク州で制定された時限立法に基づいて、同前大統領を提訴したと報じている。
27年前にトランプ前大統領から性暴力の被害に遭ったとする女性著述家が11月24日、同氏を嘘つき呼ばわりした同前大統領に対して、名誉棄損罪で連邦ニューヨーク・マンハッタン地裁に提訴した。
当時、フランスの女性ファッション雑誌『エル』(1945年創刊)のコラムニストだったE.・ジーン・キャロル氏(78歳)で、マンハッタン地区の高級デパート「バーグドルフ・グッドマン」(1899年創業)において性被害を受けたことに対する暴行罪でも訴えている。
同氏の提訴は、ニューヨーク州で制定された「成人サバイバー法」に基づくもので、同法によって、時効が成立している性暴力疑惑について、1年間に限って被害者による提訴が受け付けられることになっている。
同氏は2019年6月に初めて事件を公表したが、トランプ前大統領がこの話を否定しただけでなく、同氏は“自分の好み”でもないとまで蔑んだことから、同年11月に名誉棄損で同前大統領を訴えている。
トランプ前大統領は今年10月12日にも、自身が立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」(2022年設立)上で、同氏が“デマ”及び“嘘”を言い触らしていると全面否定している。
このことから、同氏が改めて同前大統領を名誉棄損罪で提訴したものである。
同氏の2019年の提訴は、トランプが大統領職にあったことから免責されると主張しているため、目下、マンハッタン地裁の判断待ちである。
もし、同地裁がトランプの訴えを認めれば、同氏の2019年提訴は棄却されることになる。
しかし、今回新たになされた提訴は、トランプが既に一般人になっていることから、免責されずに審理がなされることになる。
なお、2019年の最初の提訴は、同地裁ルイス・カプラン判事(77歳、1994年就任)が来年2月6日に審理する予定となっているが、原告・被告双方の代理人から期日延期の申し立てがなされているため、順延される可能性がある。
すなわち、原告代理人のロベルタ・カプラン弁護士(56歳)が、今回の提訴と併せて審理できるよう、4月10日の期日を申し立てた一方、被告代理人のアリーナ・ハッバ弁護士(38歳)は、トランプが新たな提訴に関わる代理人を任命していないので、5月8日を期日とするよう申し立てている。
ただ、同判事はハッバ代理人に対して、“依頼人(トランプ)には、今回の提訴に関わる代理人を任命するのに十分すぎる時間があるはずだ”とコメントしている。
いずれにしても、同判事は次回開廷期日について、来週早々に判断を下すとしている。
同日付『BBCニュース』は、「トランプ前大統領に27年前に強姦されたとして女性が提訴」として、その背景について詳報している。
キャロル氏が、改めてトランプ前大統領に対して、27年前に発生した性暴力事件に関わる暴行罪と名誉棄損罪で訴える拠り所となった「成人サバイバー法」は、11月24日に発効したばかりのニューヨーク州法である。
同法は、被害者の年齢が事件発生時に18歳を超えていて、既に時効が成立している事件を対象にしている。
同法が制定されるに至ったのは、2017年に世界的に広がった#MeToo運動(注後記)が契機となっている。
すなわち、これまで泣き寝入りしていた性暴力被害者を救済するため、1年間に限って、時効が成立している古い事件であっても訴えを受け付ける、としたものである。
なお、原告代理人のカプラン弁護士は11月25日、前日に起こした新たな訴訟は、トランプ前大統領の暴行容疑をめぐって責任を追及するのが目的だと表明した。
一方、被告代理人のハッバ弁護士は、被害を公表する個人を尊重するとしながらも、“本件提訴は、法律の目的を乱用するものだ”と非難するコメントを出している。
(注)#MeToo運動:今まで沈黙させられてきた性被害者が、セクハラや性暴行事件についてSNSを通じて被害を告白し、加害者を告発する運動。2006年に黒人女性を支援するNPO活動団体がMeTooを提唱して地道な活動を行っていたが、2017年10月に『ニューヨーク・タイムズ』紙記者が特集した、著名映画プロデューサーの数十年に及ぶセクハラ疑惑を告発する記事を契機として、米国から全世界に広がっている。
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