米・英・ロシアメディア;南シナ海をめぐる新たな動き
今週何度か報じたとおり、中国は、南シナ海問題に余計な口出しをしてくる日本を苦々しく思ってか、はたまた、同海域での実効支配の既成事実化と同様の作戦を展開しようと企んでか、連日のように数百隻の漁船団を従えて、東シナ海の尖閣諸島周辺海域に出没している。一方、南シナ海では、着々と同海域制圧の手を打っていて、人工島に更に戦闘機等の格納庫を建設しているだけでなく、新たな衛星を打ち上げて同海域を宇宙からも監視しようとしている。なお、同海域で領有権問題を抱えるベトナムは、常設仲裁裁判所(PCA)が下した、中国主張を全面的に否定する裁定を追い風に、西沙(パラセル)諸島での轍を踏まないよう、南沙(スプラトリー)諸島のいくつかの島にロケット砲を配備し始めている。
8月11日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、中国主権内の海域監視のため新規衛星打ち上げ」
「●中国の国家国防科技工業局は8月11日、衛星“高分(カオフェン)3号”を8月10日に新たに打ち上げたと発表。
●同局は、宇宙から1メーター(3フィート)の物体まではっきり投影可能であるため、緊張が高まっている南シナ海における中国主権の諸島海域を監視するのに有益と発表。
●一方、中国と領有権問題を抱えるベトナムが、同海域において中国と主張がぶつかるいくつかの島にロケット砲を配備との報道。...
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8月11日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、中国主権内の海域監視のため新規衛星打ち上げ」
「●中国の国家国防科技工業局は8月11日、衛星“高分(カオフェン)3号”を8月10日に新たに打ち上げたと発表。
●同局は、宇宙から1メーター(3フィート)の物体まではっきり投影可能であるため、緊張が高まっている南シナ海における中国主権の諸島海域を監視するのに有益と発表。
●一方、中国と領有権問題を抱えるベトナムが、同海域において中国と主張がぶつかるいくつかの島にロケット砲を配備との報道。
●これは、中国が建設した人工島に航空機用の格納庫を建設している様子の衛星写真が、7月に公開されたことに対抗する措置。」
同日付米
『NYSEポスト』オンラインニュース:「ベトナム、南シナ海の諸島にロケット砲配備」
「●ベトナムが南シナ海の諸島にロケット砲を配備したとの報道について、ベトナム外務省は即座に否定。
●ベトナムのグエン・チー・ビン国防副大臣は今年初め、ベトナムが南沙諸島にロケット砲などを配備していることはないとしながらも、必要があればベトナム主権下の諸島に配備する権利を有するとコメント。
●ベトナムは1974年、中国軍によって西沙諸島の島から強制退去。また、1988年の南
沙諸島(南ジョンソン礁)における中国軍との衝突で、64人のベトナム軍兵士が犠牲。
●ベトナムは近年軍備増強に積極的で、ロシアから6隻の新型潜水艦を購入。
●軍事専門家によると、ベトナムは直近で、射程距離150キロメーターを有する、イスラエル製の最新型ミサイル発射機(EXTRA)を購入した模様。」
8月10日付英
『デイリィ・エクスプレス』紙:「ベトナム、南シナ海のいくつかの島に移動
式ロケット砲を配備して要塞化」
「●外交筋によれば、ベトナムがここ数ヵ月の間に、南シナ海の主権下とされる5つの島に新型ロケット砲を配備したとの情報。
●ベトナムの意図は、中国が一方的に埋め立て、滑走路などを建設した人工島にロケット弾を撃ち込む必要が出てきた場合を想定しての配備。
●ベトナムの行動によって、南シナ海において中国と衝突するリスクが昂揚。
●米国務省高官は、中国のみならず他の国々も、同海域において緊張を高めるような一方的行動は取らないよう強く主張。」
同日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)』テレビニュース:「ベトナムが南シナ海で領有権
を争っている島にロケット砲を配備」
「●ロケット砲が配備されたのは直近2、3ヵ月のこと。まだロケット弾等は搬入されていない模様だが、外交筋によると、数日内で搬入可能との推測。
●ベトナム外務省はかかる報道を否定しているが、かつて同省は、そういった可能性がない訳ではないと示唆。
●なお中国国防部は7月、PCA裁定に反発して、南シナ海における中国主権を確保するため、9月にロシア軍と初めて同海域で共同軍事演習を実施すると発表。」
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米・英国・ロシアメディア;英国のEU離脱問題近況
5月27日付
Globali「G7サミットにおける英国のEU離脱問題」で報じたとおり、主要7ヵ国・地域首脳会議(G7サミット)において、各国首脳の一致した考えから、G7サミットとして、英国の欧州連合(EU)残留を支持する共同声明を発信した。そして、当該国民投票まで4週間を切り、残留派・離脱派それぞれのキャンペーン活動が増々熱を帯びてきている。
5月29日付米
『ザ・デイリィ・コーラー(ワシントン特別区在政治紙)』オンラインニュースの報道記事「世論調査で、ほとんどのエコノミストがEU離脱は悪影響と評価」:
「・英国の
『ジ・オブザーバー(ザ・ガーディアン紙の日曜版)』紙に掲載された、イプソス・モーリ世論調査会社の直近の調査によると、600人余りのエコノミストの約90%が、英国のEU離脱で将来の経済成長に悪影響を与えると評価していることが判明。
・英国は、EU離脱の是非を問う国民投票を、1975年以来初めて実施(注1後記)。
・世論調査で辛うじて上回っているEU残留派は、EU離脱による景気後退を警告し、一方EU離脱派は、欧州からの移民の大量流入で国を危うくしていると反論。」
同日付英
『ポリティクス・ホーム』通信の報道記事「(EU離脱派)マイケル・ゴーヴとボリス・ジョンソン、(EU残留派)デイビッド・キャメロンへの攻撃激化」:
「・EU離脱派の双頭であるマイケル・ゴーヴ大法官(法務大臣)とボリス・ジョンソン元ロンドン市長は5月29日、連名の公開質問状をEU残留派のデイビッド・キャメロン首相宛に提出。
・同書簡で両氏は、このままEUに残留することで、EUからの大量移民で英国医療保健等が破綻する恐れがあるとの危機を強調。
・更に、英国はEU側に、EUからの移民受け入れは就業条件付きとすることを要求しているのに、EUはこれを無視しているとも主張。
・なお、2015年のEUからの移民は33万3千人と史上2番目。」
同日付英
『デイリィ・エクスプレス』紙の報道記事「キャメロンは上流階級のため、移民流入による危機把握は不可能」:
「・昨年5月の第2次キャメロン内閣で、労働・年金閣外大臣に就任した保守党のプリティ・パテル下院議員は、キャメロン首相とジョージ・オズボーン財務相は上流階級のため、大量移民流入で如何に英国民の雇用、医療保険、教育などが被害を被っているか理解できないと批判。
・パテル大臣は、キャメロン内閣(注2後記)において、EU離脱を主張する6大臣のうちのひとり。」
同日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「世論調査:英国のエ
コノミストの大多数がEU離脱によるGDPへの悪影響を懸念」:
「・直近の世論調査で、639人のエコノミストのうち562人(88%)が、EU離脱によって5年後には国内総生産(GDP)に深刻な影響を与える恐れがあると評価。
・更に、460人(72%)は、10年~20年以降も影響は続くとし、GDPに好影響と回答したのは僅か70人(11%)。」
各種世論調査では、EU残留派がリードしている模様だが、昨年5月の総選挙直前の世論調査で、断然有利とされた与党・保守党が僅差の勝利となったことがあるため、予断を許さない。
国民投票に参加するためには、6月7日までに有権者登録を行う必要があるが、残留支持派が多いとされる若い世代が、有権者登録をした上で然るべく投票をするかどうかに依るところが大きいと言われる。日本の総選挙において、浮動票と呼ばれる支持政党がない有権者の投票率に左右されるところと似ていると思われる。
(注1)1975年の国民投票:英国は1973年1月に、ヒース保守党内閣の下で欧州共同体(EC)に加盟したが、その条件として、加盟条件の再交渉を行ったうえで、それが成功した暁には総選挙もしくは諮問的国民投票で国民の審判をあおぐことを公約。これに基づき、当時のウィルソン政府が1975年6月に国民投票を実施。結果は、投票率64.5%、残留67.2%、脱退32.8%で、2対1以上の大差で英国民はEC残留を選択。
(注2)キャメロン内閣:現在は2015年5月発足の第2次内閣で、総勢30人の閣僚(うち、閣議に常時出席するのが23人で、あとは閣外大臣)。
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