オーストラリア、今後10年で海軍力倍増と発表【米・英国メディア】
既報どおり、9年振りに返り咲いた豪州労働党政権は、前保守党政権より親中政策を展開しようと試みている。しかし、こと安全保障分野では違う模様で、インド太平洋地域で軍事力を強大化する中国に対抗する一環で、豪州政府が今後十年で海軍力を倍増させる意向を表明している。なお、米軍事力評価機関グローバル・ファイアパワー(GFP)が先月末に発表した2024年軍事力ランキング(注後記)で、豪州は16位となっている。
2月20日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』、英国
『ザ・タイム』、2月21日付英国
『デイリィ・エクスプレス』は、豪州が海軍力を倍増するとの計画を発表したと報じている。
豪州では2022年、9年振りに労働党政権が復活した。
アンソニー・アルバニージー首相(60歳)は就任以降、前保守党政権が中国対峙の政策を取ってきたのに対して、豪州産業支援を優先して、中国による禁輸・貿易制限対応を是正してもらうべく、豪州首相として7年振りに訪中して直接折衝を試みている。...
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2月20日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』、英国
『ザ・タイム』、2月21日付英国
『デイリィ・エクスプレス』は、豪州が海軍力を倍増するとの計画を発表したと報じている。
豪州では2022年、9年振りに労働党政権が復活した。
アンソニー・アルバニージー首相(60歳)は就任以降、前保守党政権が中国対峙の政策を取ってきたのに対して、豪州産業支援を優先して、中国による禁輸・貿易制限対応を是正してもらうべく、豪州首相として7年振りに訪中して直接折衝を試みている。
ただ、こと安全保障分野では異なる模様で、前政権が米・英国と2021年に締結したAUKUS三ヵ国軍事同盟の継続を再確認している。
その一環で、豪州政府はこの程、インド太平洋地域で益々軍事力を強大化している中国に対抗すべく、今後十年で海軍力を倍増させると高らかに宣言している。
リチャード・マールズ副首相兼国防相(56歳、2022年就任)が2月20日に明らかにしたもので、海軍の艦隊を第二次大戦以来最大となる2倍に増やすと表明した。
具体的には、現有の11隻を26隻まで増やす計画で、ハンター級フリゲート(イージス艦)6隻、汎用フリゲート艦11隻、航空戦駆逐艦3隻、最新鋭の水上艦艇6隻を増やす予定である。
これらの艦艇の一部はトマホーク・ミサイル(射程距離1,300キロメートルの巡航ミサイル)で武装しており、敵地の奥深くにある標的を攻撃する能力があるため、抑止力となると考えられている。
総額は、352億5千万ドル(約5兆2,875億円)と見積もられている。
海軍長官のマーク・ハモンド中将(2022年就任)はシドニーで記者団に対して、“地政学的な不確実性が高まる中、国家安全保障上の重要な投資となる”とコメントしている。
なお、豪州は上記とは別に、AUKUS同盟に基づいて米国製原子力潜水艦を取得する計画も保有している。
軍事アナリストらは、中国による覇権主義の高まりがAUKUS設立の主な動機となっていると分析しているが、件の中国は、当該3カ国を“冷戦思考”だとした上で、“誤りと危険の道”へと突き進んでいると非難している。
(注)2024年軍事力ランキング:GFPが、兵員・陸軍・空軍・海軍能力等について60項目の指標で以て毎年ランキングを付けているもので、2024年版は対象145ヵ国で、①米、②ロシア、③中国、④インド、⑤韓国、⑥英国、⑦日本、⑧トルコ、⑨パキスタン、⑩イタリア、⑪フランス、⑫ブラジル、⑬インドネシア、⑭イラン、⑮エジプト、⑯豪州、⑰イスラエル、⑱ウクライナ、⑲ドイツ、⑳スペイン。
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米軍、撃墜した中国偵察気球の残骸回収が荒海のため難航【米・英国メディア】
米軍は2月4日、中国製偵察気球が米領空を侵犯したとして同気球が沖に出たところを撃墜した。しかし、荒海のために、海面に浮いていた風船部分やごく少数の電子部品を除き、海中に沈んだ機材の主要部分の回収が難航している。
2月10日付米
『ニューヨーク・ポスト』紙(1801年創刊)は、「国防総省、サウスカロライナ州沖に沈んだ中国偵察気球の残骸回収が荒海のため難航と発表」と題して、ごく一部の部品を除き、肝心の偵察気球主要部分の回収が難航していると引用報道している。
米空軍報道官のパット・ライダー准将(2022年就任)は2月10日の記者会見で、“荒海のため、撃墜した中国偵察気球の残骸回収に手間取っているが、回収チームは引き続き天候を見ながら回収作業に注力している”と公表した。...
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2月10日付米
『ニューヨーク・ポスト』紙(1801年創刊)は、「国防総省、サウスカロライナ州沖に沈んだ中国偵察気球の残骸回収が荒海のため難航と発表」と題して、ごく一部の部品を除き、肝心の偵察気球主要部分の回収が難航していると引用報道している。
米空軍報道官のパット・ライダー准将(2022年就任)は2月10日の記者会見で、“荒海のため、撃墜した中国偵察気球の残骸回収に手間取っているが、回収チームは引き続き天候を見ながら回収作業に注力している”と公表した。
米軍チームによる回収作業によって、一部の残骸が回収されているが、同報道官は何が回収されたのか等は明言を避けた。
関係者情報によると、気球の電子部品の主要部分は50フィート(約15メートル)の海底に沈んでいるとし、そこには中国が機密情報を得るために搭載した偵察用電子機器が含まれていると考えられるという。
同報道官は、“回収チームは主要な残骸が沈んでいる場所を特定している”とした上で、“既に回収された残骸は研究施設に搬入されていて、分析が進められている”と付言した。
国防総省は、中国の偵察気球の情報収集能力、今回の偵察で取得した情報の中身や、その他中国側偵察部隊の関連情報が得られることを期待して、当該気球の残骸回収に躍起になっている。
ただ、関係筋によると、回収及び解析作業に数年かかる可能性があるという。
なお、当該偵察気球は1月28日にアラスカ州領空に侵入したが、北米航空宇宙防衛司令部(1958年設立、米加共同運用)は軍事的脅威になると感知することに失敗していた。
同気球はその後、カナダ領空を通過した後に、米軍の重要拠点がある場所を含めて1週間程米領空上を通過していたが、2月4日についに撃墜された。
ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)は、米領土上であっても撃墜すべしと表明していたが、米軍高官から地上の市民生活を脅かす恐れがあるとして、大西洋沖に出ていくまで待つよう説得されていた。
同日付英国『デイリィ・エクスプレス』紙(1900年創刊)は、「米高官、偵察機器が含まれた中国気球残骸を捜索中とコメント」と詳報している。
米高官が2月10日、米『ABCニュース』のインタビューに答えて、サウスカロライナ州沖に沈んだ中国気球には偵察用電子機器が装着されていたと考えられるとコメントした。
同高官によると、当該装置が据えられていた台座は30フィート(約9メートル)長であるといい、目下、米海軍と沿岸警備隊組成の合同チームが回収作業に取り掛かっているという。
ただ、現地の悪天候の影響で、回収作業は少なくとも2月13日まで見合わせられることになっているという。
同回収チームは、米潜水艦キングフィッシュ(1942~1960年運用)等を模した偵察用水中ドローンやダイバーを起用して、当該偵察気球の残骸回収に当たっている。
これまで回収できたのは、一部の残骸であるが、回収後に米中東部バージニア州・クアンティコ在の米連邦捜査局(FBI、1908年設立)研究施設他に運び込まれて、解析作業が進められている。
なお、米政府は2月9日、当該中国気球には“複数のアンテナ”が付いていて、かつ、“明らかに偵察用と認められる”電子機器が装備されていたと公表している。
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