世界で爆発的な感染拡大が続く新型コロナウィルス感染問題は、4月3日現在、感染者109万5,917人、死者5万8,787人に上り、未曾有の大災害になっている。そうした中、ウィルス禍に伴う特殊事態について欧米メディアが報じている。
4月3日付米
『AP通信』:「ウィルス禍で世界が4兆ドルの経済損失、一方、米国では銃器販売が急増」
<経済損失>
アジア開発銀行(ADB)の直近の試算によると、世界中を恐怖に陥れている新型コロナウィルス感染問題によって、世界経済は4兆1千億ドル(約446兆9千億円)の損失を被ることになり、全世界の年間経済活動の5%にも匹敵するという。
同行の4月3日公表文によれば、成長著しいアジアの2020年経済成長率が、昨年実績値+5.2%に比較して+2.2%と半減如何に落ち込むとみる。
特に、牽引国である中国は、昨年の+6.1%に比べて、直近30年間で最低の+2.3%と、3分の1以下まで激減するだろうという。
一方、国際通貨基金(IMF)も、今回の新型コロナウィルス感染世界流行は、2008年の世界金融危機の際よりも、世界経済を“更に悪化”させつつあると指摘している。
欧州のユーロ圏19ヵ国でみても、製造業及びサービス業の落ち込みが史上最悪となるとみられ、国内総生産(GDP)を年率ベースで約10%押し下げることになるという。
IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事(66歳、2019年就任、ブルガリアの経済学者)は、“他に類を見ない深刻な危機”だと表現している。
<風評被害>
メキシコのビール製造会社グルーポ・モデーロは4月3日、同社の主要商品コロナビールの生産を4月5日に停止すると発表した。
猛威を振るう新型コロナウィルスと全く無関係であるが、ネットで同ビール名が多く検索されることもあって、売り上げが激減していると言われる。
同社自身はこれを否定し、ただ、メキシコ政府から、感染拡大防止のため、必要不可欠な産業以外の経済活動の自粛命令が出されたことから、これに従うものだとしている。
なお、同社は麦芽生産農家を守るため、もし政府が認めるなら、彼らにこれまでの75%程度での生産継続を認めるとしている。
ただ、メキシコのいくつかの州では、ウィルス禍が続いている間はアルコール販売を禁止する時限立法を制定している。
<米国の銃器販売急増>
米国では、危機に瀕すると独特な反応をみせるが、新型コロナウィルス感染問題においても同様な結果となっている。
それは銃器購入が活発となることで、連邦捜査局(FBI)のデータによると、今年3月の銃器販売が前年同月比+85%と急増しているという。
携帯武器市場分析・予測研究センター(SAAF)が、同局の即時犯罪歴照会システム(NICS、注後記)を分析した結果、明らかになったものである。
SAAF主任エコノミストのユーゲン・ブラウアー氏は、“多くの企業の在庫が払底しつつあるため、銃器・弾薬の価格は上昇していくとみられる”とコメントしている。
4月4日付英国『ザ・サン』紙:「ADB、新型コロナウィルス感染世界流行のため過小評価しても4兆ドルの経済損失となると警告」
68ヵ国が加盟している国際金融機関ADBは4月3日、現下の新型コロナウィルス感染問題は、“今世紀最悪の世界流行”だとして、世界的な経済損失は4兆1千億ドルにもなる恐れがあると警告した。
同行によれば、この損失額は、世界のサプライチェーンの崩壊やその他社会危機による影響をまだ“過小評価”したものだとも付言した。
更に同行は、もしウィルス禍が予想より早く収束を見ることになれば、経済損失は2兆ドル(約218兆円)くらいまでで止められるかも知れないともコメントしている。
なお、今現在新型コロナウィルス感染が及んでいないのは、世界で僅か18ヵ国に過ぎず、ほとんどが太平洋島嶼国である。
(注)NICS:米国で開発された、銃器や爆薬等を購買しようとする者が、過去の犯罪歴含めて、購入可能な資格があるか瞬時に判別するシステム。1993年制定の銃器等販売規制法に基づいて開発され、1998年よりFBIによって使用開始。なお、米憲法修正第2条によって、市民が武器を所持する権利(自分の命は自分で守るとの考え)が認められているため、米国では銃器所持禁止法は中々成立しづらい。
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3月31日付英国
『BBC』は「新型コロナ:英国がロックダウン緩和のためウィルス追跡アプリを検討」との見出しで以下のように報道している。
感染者と接触していたら警報を鳴らすアプリがロックダウン緩和後に、重要な役割を果たす可能性があると政府の顧問研究者がいう。場所追跡技術を使い一瞬で人手による追跡作業1週間分のデータを収集を可能とする。初期段階では登録は強制ではない。
保健長官がこの構想を確認。英国国民保健サービス(NHS)の技術部門NHSXは、コロナウィルスの追跡と制御に有効か検討するため早急に技術を結集している」としている。
オックスフォード大ビッグデータインスティテュート(BDI)とフィールド医学科の研究が「サイエンス」に掲載された。これによると、アプリは人の日常の行動範囲をGPSの位置情報として記録し、それ以外にもユーザーのQRコードスキャンやBluetooth信号からも情報が取得されるしくみ。
ユーザーの体調が悪化した場合は、アプリを通し在宅検査を求められる。もし陽性結果となったら、すぐに最近濃厚接触をした人々に通知が送られ、2週間隔離措置が推奨されるが、誰が感染者かは知らされない。更に、陽性者の職場や交通機関にも消毒を行うよう通知が行くという。
同様のソフトが中国でも使われているという。使用は任意だが、ソフトをインストールした人のみ公共交通機関を使用出来るという。
だが専門家は、命の危険が関わる非日常の事態のため強制力も必要だが、一般人がアプリ使用を強制されるのは適切でなく慎重にならねばならないとする。
よりパンデミックが深刻ならば、アプリをアップデートし、2次的接触、3次的接触者まで自宅待機警告を拡大する必要も出てくる可能性もある。一方でプライバシーの問題もあり、個人情報が取得されていないか注意が必要である。
同日付英国『ザ・サン』は「身近なコロナ感染者を知らせるNHSのアプリ」との見出しで以下のように報道している。
英国国民保健サービス(NHS)はコロナ感染者が近くに来たら、警告するアプリを開発している。本人の事前許可が必要となる接触追跡アプリは、Bluetooth信号を使って近距離の端末を検索する。英国ではロックダウンの解除の前にこれを導入する事が検討されているという。NHSはこのアプリの使用者が人口の50%以上となることを望んでいるという。アプリでは、Bluetooth信号を使って近距離の他の携帯を検索し、そのデバイスへの接触歴を記録。もしコロナ陽性の人がいれば、その接触状況をアップロードし、警告通知する。この方法により、データが当局に送られることはなく、その点でプライバシーに関する懸念は解消されるだろう。
このプロジェクトを主導するNHSのイノベーション部であるNHSXは、数週間のうちにプロジェクトを主導する倫理委員会設置を予定している。55歳以上の多くのスマートフォンを所有しない人のデータをどうするかとの問題もあるが、ワクチンや治療法が確立するまで、広範囲のロックダウンによる社会的、心理的、経済的影響を軽減し、感染拡大を遅らせるとの期待もかかる。
実際、アプリにより既に驚くべき結果、660万人の国民が既に感染しているのではないかとの予測がされている。というのも登録者65万人のうち、最初の1日で既に10%が感染の疑いありと試算されたのだ。
他国でもアプリが開発されている。シンガポールは、BluetoothのアプリTraceTogetherに80万回ダウンロードされており、コロナ感染を大きく押させていると思われる。韓国では、陽性反応者にアプリを渡し、観察のため1日に2回症状を送信してもらうというが、感染者の年齢、性別、行動範囲などの情報を100メートル以内の人にテキストメッセージで公開していたという。
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