ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(WEF、注後記)が11月19日、各国の男女格差(ジェンダーギャップ)を指数化し、順位で示した最新の報告書を発表した。このランキングは、政治への参加、職場への進出、教育、健康度合いの4分野の合計14項目を使って、男女平等の度合いを指数化して決定される。そして今年の報告によると、米国は、対象145ヵ国中8ランクも下げて28位に留まったと米メディアが伝えている。
11月20日付
『USAトゥデイ』紙は、「米国、世界の男女格差ランキングで28位に後退」との見出しで、「WEFが最新の“世界ジェンダーギャップ・ランキング”を発表したが、それによると米国は8ランクも順位を下げて28位に留まっている。最高得点1.00に対して米国の得点は0.74で、直近の男女賃金格差(同一職種)が開いたことと、政府系の女性管理職の減少が影響している。トップは7年連続でアイスランド(得点0.88)、以下ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、アイルランドと続き、6位にルワンダ、7位にフィリピンが入った。」とし、「米国が秀でているのは、教育と健康度合いで、女性の最終学歴は男性より高く、また、平均寿命も女性71歳に対して男性68歳である。」と報じた。
同日付
『ワシントン・ポスト』紙は、「ルワンダ、男女平等で米国を遥かに上回る」との見出しで、「東アフリカのルワンダの女性は、職場への進出と政治への参加度において米国の女性を上回った。ルワンダにおける女性の就業率は88%で、米国は66%、また、政治家の割合も64%で、米国の19%を遥かに凌いでいる。ルワンダ(6位)は、他の先進国のスイス(8位)、ドイツ(11位)、デンマーク(14位)、フランス(15位)をも上回っている。ルワンダが飛びぬけているのは悲惨な歴史が背景にある。1994年4月から100日間続いたルワンダ虐殺で、フツ族過激派による少数派のツチ族の大人・子供約80万人が殺され、また、50万人もの女性が強姦された。同年7月に内乱が鎮圧された後、同国の女性が一致団結して女性の権利を確保する運動を展開し、その結果、(好戦的ではない)女性が政治家トップの少なくとも30%を占めることや、真の婚姻の平等などを勝ち取ったのである。」と伝えた。
一方、同日付
『NBCニュース』は、「世界の女性と男性の賃金格差是正まであと118年と算定」との見出しで、「WEFの報告によると、現在女性が得ている賃金は男性が2006年にもらっていたレベルであるという。従って、このペースでいくと、世界の女性が男性と同等の賃金が得られるまであと118年かかる計算になると試算している。」と報じた。
なお、日本の順位は145ヵ国中101位と、前年より3ランク上げているが、依然惨憺たるもので、当然のことながら、主要7ヵ国(G-7)中最下位である。世界と比較すると、教育(84位)、健康度合い(42位)では格差が縮小してきているが、政治への参加(104位)、職場への進出(106位)の分野では、依然として大きな格差が残ったままである。特に職場への進出の分野では、前年の102位から順位を下げている。これは、女性の労働参加率は上がったが、待遇を低く抑えられた非正規社員が多いことから、男女の賃金格差が更に広がったためである。
安倍首相提唱の「女性の活躍」政策は、依然目立った効果を上げていないことが証明されてしまっている。
(注)WEF:ビジネス、政治、アカデミー、その他社会におけるリーダー達が連携することにより、世界・地域・産業の行動計画を策定し、世界情勢の改善に取り組む、独立した国際機関で1971年に設立。ジュネーブ(スイス)に本部を置き、スイスの非営利団体の形態を有する。年次総会が毎年1月にダボス(スイス)で開催される。
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