米大統領共和党予備選、ウィスコンシン州でクルーズ氏が勝利(2016/04/06)
米大統領選の予備選が5日、ウィスコンシン州でおこなわれ、共和党のテッド・クルーズ候補がトランプ氏を破り勝利する見通しとなった。最新の世論調査においても、クルーズ候補がトランプ氏を急速に追い上げており、共和党候補は7月の党大会での決戦投票に持ち込まれる可能性が取り沙汰されている。また、ケーシック候補も予備選離脱を拒否し、党大会の場で勝機を見出そうとの構えである。
5日の
『ロイター通信』は、大統領予備選挙に関する最新の世論調査の結果、テッド・クルーズ候補が先頭を走るトランプ候補に肉薄していると報じている。
下馬評では、クルーズ候補はウィスコンシン州指名選挙で勝利する見通しであり、この勝利を梃にしてトランプ候補の勢いを止めるため共和党内を結束させようとしている。一方のトランプ陣営は、同州での劣勢を挽回するため、不法移民によるメキシコへの送金禁止を提案し、メキシコ政府に対し国境に障壁を作る費用を負担するよう圧力をかけるよう訴えてきた。...
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5日の
『ロイター通信』は、大統領予備選挙に関する最新の世論調査の結果、テッド・クルーズ候補が先頭を走るトランプ候補に肉薄していると報じている。
下馬評では、クルーズ候補はウィスコンシン州指名選挙で勝利する見通しであり、この勝利を梃にしてトランプ候補の勢いを止めるため共和党内を結束させようとしている。一方のトランプ陣営は、同州での劣勢を挽回するため、不法移民によるメキシコへの送金禁止を提案し、メキシコ政府に対し国境に障壁を作る費用を負担するよう圧力をかけるよう訴えてきた。
トランプ候補への支持は特に女性票が落ち込んでいる。同候補は3月30日の会見で、妊娠中絶が違法なら、中絶した者は処罰されるべきだと述べた。その後、この発言を翻し、中絶手術をおこなった医師に責任があると訂正した。
一方で、クルーズ候補が共和党内を一本化することは、非常に難しい。同氏が2013年オバマ政権の予算執行を阻止し、6日間も政府機能がマヒしたことから、党指導部とは険悪な関係である。ただ、党内主流派でのトランプ氏への嫌悪から、選挙戦を離脱した5人の前候補がクルーズ氏支持に回ることは間違いない。
5日の
『ニューズウィーク』誌は、クルーズ候補がウィスコンシン州選挙で勝利し、共和党を結集させようと期待していると報じている。
クルーズ候補は、トランプ氏が共和党の大統領候補に指名されることを阻止するために唯一残った候補であり、最良の選択であると訴えようとしている。クルーズ氏は、自分とトランプ氏だけが指名に必要な過半数1237票を獲得する力があると述べている。また、その票に達しない場合、7月の共和党大会で指名を争うことになるが、ケーシック候補は予備選で8州以上勝利していないため党大会での被選挙資格がないと主張している。
共和党指導部が、党大会でポール・ライアン下院議員や2012年の共和党大統領候補ミット・ロムニー氏を新たな候補として担ぎ出す可能性について、クルーズ氏はそんなことをすれば国民が激怒すると否定している。
クルーズ候補がウィスコンシン州で勝利しても、これから4月19日にニューヨーク州、26日には北東部5州などいずれもトランプ氏が優勢な選挙が待ち受けている。現在、クルーズ候補は463人の代議員を確保しているが、過半数まで774不足している。一方、ケーシック候補は同143人で党大会第1回目の投票で勝つことはできないが、予備選からの離脱を否定している。
4月5日の
『FOXニュース』は、共和党の大統領予備選が7月の党大会での決戦投票にもつれ込むことを予想し、ケーシック候補の動向に注目している。
ケーシック氏は仮にウィスコンシン州で勝利し、残りの全州で買ったとしても指名に必要な代議員数を確保することはできない。ケーシック氏の狙いはトランプ候補が過半数の1237票を確保することを阻止することであり、そうすることで僅かの代議員票をもって党大会に臨むことができる。
ケーシック氏は、「予備選で誰も過半数に達しなければ、党大会で誰がヒラリーに対抗して大統領になれるかを考えることになる。他の陣営はその時私が勝つかもしれないと思っているから、離脱するように圧力をかけているのだ」と語っている。
トランプ陣営もクルーズ陣営も党大会のルール委員会のメンバーの動向に気を配っている。このルール委員会で候補者の被投票資格の基準を含め、党大会全体の運営ルールを決める。通常の党大会であれば注目されることのない100人強の委員会が、決戦党大会になった場合大きな権限を持つことになる。
現在の規定では、候補者が党大会の指名投票へ参加するための資格として8州以上で勝利することを求めているが、ケーシック氏は唯一オハイオ州でしか勝利していない。ルール委員会ではこの規定も簡単に変更できるが、トランプ候補、クルーズ候補ともこの規定を維持するよう求めている。
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欧州難民危機で発言権を増すトルコ(2016/03/09)
欧州連合(EU)とトルコは難民や移民の流入を抑制するため、トルコからギリシャに渡った難民と移民をトルコに送還し、正式に難民と認定された者だけをEU側が受け入れることで大筋合意に達した。トルコはその条件として、支援金の倍増、トルコのEU加盟交渉を加速、トルコ国民のビザ無し域内渡航を求めている。しかし、難民のトルコへの送還に対しては人権団体や国連などからも非難や懸念の声が出ている。
8日付
『ボイス・オブ・アメリカ』は、EUとトルコの難民流入阻止に関する合意は非人道的であると報じた。
・EUとトルコは、ギリシャに渡る難民の流れを食い止めるための協定に近く合意する見込みであるが、人権団体アムネスティは非人道的であると非難している。
・この合意によると、原則としてトルコからギリシャに渡った不正規移民は全員トルコに送還される。送還されるシリア人1人につき、トルコはEUに対し正式に認定されたシリア人難民の受け入れを要請する。...
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8日付
『ボイス・オブ・アメリカ』は、EUとトルコの難民流入阻止に関する合意は非人道的であると報じた。
・EUとトルコは、ギリシャに渡る難民の流れを食い止めるための協定に近く合意する見込みであるが、人権団体アムネスティは非人道的であると非難している。
・この合意によると、原則としてトルコからギリシャに渡った不正規移民は全員トルコに送還される。送還されるシリア人1人につき、トルコはEUに対し正式に認定されたシリア人難民の受け入れを要請する。シリア国籍以外の亡命申請は個別に審査される。
・トルコ政府はEUに対し、移民送還の見返りとして危機対応支援金を倍増し66億ドルとするよう要請している。
・アムネスティ・インターナショナルや国境なき医師団は、トルコは難民や移民にとって決して安全な場所ではないとしてこの合意を非難している。また、国連も個人をある国から他の国へ無差別に送致する合意に対し懸念を表明した。
8日の
『FOXニュース』は「AP電」として、国連や人権団体が数千人の移民をトルコに送り返そうとするEUの計画に懸念を表明していると報じた。
・EUとトルコは、欧州の難民危機を他所に転嫁する取り決めの大筋に合意した。紛争や貧困から逃れてギリシャに来た人々は、亡命を申請しない限りトルコに送致される。
・EUは送還された人数と同数だけシリア人難民を受け入れるが、これによって悪徳密航業者を頼って危険な海を渡航することを防ごうとしている。
・トルコは見返りとして、数十億ドルの難民支援金、EU加盟促進、トルコ人のEU域内ビザ無し渡航などを得る。
・アムネスティ・インターナショナルは、この計画は法律違反であると警告し、EUがトルコを安全な国と指定するのは余りにも短絡的で非人道的であると非難している。また、国境なき医師団は、EUの指導者らは完全に現実離れした協定をしようとしていると批判する。潘基文国連事務総長はEUが亡命受入れをますます厳格化し、難民排斥の言動や攻撃などが増えていることを憂慮していると述べている。
8日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、EUがトルコに対し、人権問題や弾圧に目をつぶり難民の支援を要請しているとして批判している。
・トルコ政権は欧州の弱みに付け込もうとしていることは明らかで、アフメト・ダウトオール首相は、今週ブリュッセルでの交渉で欧州に入国した難民の一部引き取りを提案する傍ら、資金援助額を引き上げとEUへのビザ無し渡航を要求した。
・トルコの提案は、ドイツのメルケル首相やドナルド・トゥスクEU議長らによって難民危機の「突破口」であるとして歓迎され、3月17・18日の首脳会議で最終合意の見込みである。一方、トルコのメディア弾圧に対する批判は相当マイルドな表現となった。
・難民危機がトルコと欧州のパワーバランスを大きく変えている。かつてトルコのEU加盟は、同国に民主改革を進めさせるためのニンジンと考えられていた。今や、EUはトルコから難民の流入抑制の協力を得るために、西側の価値観を棚上げしてトルコを迎え入れようとしている。
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