ドイツの首都ベルリンのクリスマスマーケットに、ポーランドナンバーの大型トラックが突っ込み、クリスマスの準備に勤しむ市民12人が死亡、48人が負傷した。テロの犯行声明はないが、米国はドイツの事件がテロとの見方をしている。逮捕された容疑者はパキスタンかアフガニスタン出身の難民だとの情報もあり、難民だと断定されれば、ドイツ国内で難民政策への更なる反発が予測される。犯行に使われたトラックはポーランドの運送会社のもので、経営者の親戚が当日資材の運搬に使用しており、盗難された可能性があるという。時を同じくして、欧州の2か所でも容疑者未逮捕の事件があり、トルコでは、ロシア大使がアラビア語を叫んだ男に射殺され、スイス・チューリッヒでは、イスラムセンターで黒ずくめの格好をした何者かに3人が射殺されるなど、テロとの関連が捜査されている。これらの事件を受けて、米国のドナルド・トランプ次期大統領は、クリスマス市への襲撃はキリスト教の象徴への攻撃だ等とし、「世界は変わらなければならない」とテロリスト根絶を新たに誓っている。
12月19日付ドイツ
『ローカル』は「ベルリンのクリスマス市にトラックが突っ込み9人死亡、テロか」との見出しで次のように報道している。
月曜夜、ベルリンのクリスマスマーケットで賑わう人ごみに大型トラックが突き進む。これまで9名死亡が確認され、50人以上負傷。警察はテロ行為か断定していないが、運転手とみられる男を確保。搭乗者一人はその場で死亡が確認された。ベルリンは市民に外出を控えるよう警告。
ポーランドでは、トラックの所有者はポーランドの企業で、運転手はその事業者の従弟だったという。 トラックが盗難されていた可能性もあるという。
フランスのオランド大統領はメルケル首相に「団結と慈悲」のメッセージを送った。フランスニースでも(今年7月ISによる)86人が死亡する同様の事件があった。
12月19日付米国
『ワシントンポスト』は「ドイツ、トルコ、スイスの事件はテロへの警鐘とドナルドトランプ」との見出しで次のように報道している。
月曜に3か所で起きたテロ事件について、トランプ次期大統領は、世界への警鐘とし、イスラミックステート撲滅を誓った。トランプ氏は、ベルリンの事件についてはイスラムが関与していると非難、キリスト教徒の祝日行事を狙ったことはキリスト教徒への攻撃を象徴するとし、声明で、「クリスマスの準備をする無実な市民が犠牲となった。ISIS及びテロリストはジハードとして、継続的に当事国のキリスト教徒を殺害し宗教施設を襲っている。地球そして自由を謳歌する隣人のため、テロリストの世界的ネットワークを根絶しなければならない。」としている。
トルコでは、ロシア大使が「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んだ男に射殺され、ドイツではパキスタン人とされる男がクリスマス市で人混みに突っ込み少なくとも9人死亡、スイスのチューリッヒでは、イスラムセンターで黒ずくめの格好をした何者かに3人が射殺された。トルコの事件のみ、容疑者と動機が判明している。
同日付米国
『FOXニュース』は「ベルリンのクリスマス市の容疑者は難民との報道」との見出しで次のように報道している。
ドイツメディアは、クリスマス市のトラック事件容疑者が、今年2月、パキスンタンから難民としてドイツに入国していたと報道。この事件で12人が死亡、48人負傷している。犯行声明はないが、米国はこれを明らかなテロ行為としている。これが事実となれば、メルケル首相の難民受け入れ政策への反発は高まるとみられる。
現地メディア「ターゲスシュピーゲル」紙は、容疑者について、アフガン人かパキスタン人で、複数の軽犯罪歴があるが、テロ捜査当局のリストには載っていないと報道。
「ドイツ通信社(DPA)」は、容疑者は複数の偽名を使用しており特定が困難だと報道。数十トンの鉄鋼を運んでいたポーランドナンバーのトラックの入手ルートに疑問が残るが、警察は、建設現場付近から盗難されたとの見方をしている。トラックの所有者のポーランド人は、いとこが運転に使っていたトラックが盗まれた可能性があるとし、そのいとことは事件当日正午頃に話しており、ベルリンに到着し火曜朝に積荷を下す予定だと語っていたという。
「ディ・ヴェルト」紙は、トラックはヘッドライトを消した状態で市に突っ込んでおり、計画的な犯行だとの見方をしている。
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今年、前回の米国大統領選挙へロシアの介入があったと結論付けたとする米国中央情報局(CIA)の調査結果が報道され、共和党ドナルド・トランプ氏当選にもロシアの介入があったとも囁かれ米国では物議を醸している。ロシア強硬派の民主党クリントン氏より、親ロ派のトランプ氏が勝利するよう、ロシアがサイバー攻撃を仕掛けたという。また、米国の選挙システム及びは米国政府への信頼を失墜される目的でロシアが仕組んだものだとも指摘される一方、共和党のみに加担する形で、ロシア政府とのパイプ役がクリントン氏ら複数人の膨大なメールを内部告発サイト「ウィキリークス」へ提供、この暴露メールは民主党及びクリントン氏に大打撃を与えたが共和党には無害だった。これがロシアの主な狙いだったという。
この報道に対し、トランプ氏の政権移行チームは、「大敗した民主党の言い訳に過ぎない。」としている。また、次期政権については、ロシアのプーチン大統領と個人的つながりがあるといわれる、エクソンモービルのレックス・ティラーソンCEOを次期国務長官に指名するとの憶測に議員からも反発が出ている。ロシア介入疑惑に関しては共和党からも批判が出ており、超党派議員らによる再調査を求める声明も出されており、今後も調査は続くものと見られる。
12月10日付
『ロイター通信』は「トランプ大統領選勝利にロシアが介入、CIA」との見出しで次のように報道している。
匿名の米国高官によると、CIAの調査が、今年の大統領選挙へのロシアの介入があったと結論づけ、米国の選挙システムへの信頼が揺らいでいるという。選挙期間中、ロシア政府がトランプ氏が勝利するよう支援をしていたというもの。
金曜の「ワシントンポスト」紙はCIAはロシア政府とのパイプ役で、民主党候補だったクリントン氏ら複数人のハッキングされた膨大なメールをウィキリークスへ提供した人物を特定したと報道。今年の夏から秋にかけてロシアのハッカーはほぼ民主党だけに注目。暴露したメールは民主党及びクリントン氏に大打撃を与え、共和党には無害だった。これがロシアの主な狙いだったという。
民主党、そして共和党内にも、ロシアへの徹底調査をすべきだとの声が上がっている。
米国の選挙システムの信頼を揺るがすだけが狙いだったなら、なぜ一方の政党のみを攻撃対象としたのだろうか。ロシア政府筋は米国選挙への介入の疑いを全面的に否定している。ロシアはトランプ氏が十分勝利圏内にいると見て、同氏が経済制裁に関してはクリントン氏より親ロ派だと判断したと見られている。ロシアはドイツの次期選挙を前に、米国同様、欧州において極右政党、国家主義政党や官僚を推す動きを始めている。プーチン大統領は欧米での民主主義への信頼を失墜させる目的があるとみられる。
トランプ移行政権は声明で、「サダム・フセインが大量破壊兵器を持っていると言った人と同じ。選挙はとっくに大勝利で終わっており偉大な国造りを進行する時だ」と強調、今週の「タイム誌」のインタビューでトランプ氏は「ロシアが介入したとは信じていない。これは笑う所で議論の必要もない。私が何かするたびロシア介入と言われる。」と述べている。
12月12日付ロシア
『スプートニク』は「トランプ側、ロシアのハッキング疑惑をばかげている、正気でないとするも、議員から調査要望の声」との見出しで次のように報道している。
トランプ次期大統領と移行政権はロシアが米国選挙に介入したとするCIAの調査を11日放送の「FOXニュース」で「ばかげている」と否定した。「ワシントンポスト」紙は9日、ロシアの介入疑惑を報道、ロシアが政党の文書をハッキングしたというこの報告は匿名のCIA調査官の証言を基にしているという。
トランプ氏はこの調査は民主党が大敗した別の言い訳(一つには投票数では数万票上回る)だと述べている。同氏は、CIAの調査では、選挙に影響を与えた可能性は示されていないと主張。オバマ大統領はハッキングの選挙への影響を調査するよう求めたが、トランプ氏は民主党からこの報告が上がった事に注目、選挙に大敗したからこれを理由にしようとしているとした。
大統領選挙中の7月、トランプ氏は「ロシア、これを聞いていたらクリントンが国務省へ送った、消えた3万通のメールを見つけ出してくれ」と発言し騒ぎを起こした。
次期政権首席補佐官ラインス・プリーバス氏も今週の「ABC放送」で「正気とは思えない調査」だと述べている。一方、共和党元大統領候補のジョン・マケイン上院議員は、ロシアが選挙を操作し介入したと発言、「候補を操作するほどの影響を考慮したかは不明だが、調査は必要だ。」と述べており、11日付けの声明で、マケイン氏、共和党リンジー・グラハム上院議員、次期上院民主党リーダーのチャックシューマー、民主党ジャックリード上院議員らが、民主共和両党に「サイバー攻撃問題解決」を求め、更なる調査を迫ったという。機密情報、そして自由な社会を守るため、国民にサイバー攻撃のついて説明し今後の防止策のため立ち上がらねばならないとしている。
12月11日付英国
『ガーディアン』は「ロシアが米国選挙に介入、CIA調査はばかげている、とドナルド・トランプ」との見出しで次のように報道している。
CIAの調査では、ロシアが選挙への信頼を損なわせる目的でやったとされるが、トランプ氏に有利となるよう操作したものだとは断言できないと結論付けている。
今週オバマ大統領は2008年と2012年の選挙期間中の中国人ハッカーによるハッキング事件のロシアの関与への調査を指示した。
トランプ氏はCIAの調査を「誰も分からない、ハッキングとは興味深い。現行犯でなければ逮捕できない。ロシア人、中国人、または別の誰かか。」と日曜のTVでコメント。
超党派議員らは、声明で、これは党の問題に留まらないとし再調査を求めており、そのうちのマケイン氏は「候補に加担したかは別としてロシアが介入したのは明白だ。選挙をハッキングした事実は重い」と述べている。
同氏は選挙介入調査委員会設立を要望しており、また、次期政権国務長官候補にプーチン大統領と個人的に親しいというモービルCEOを指名するとの報道には、親ロ派の当人同士で契約が交わされているのではと、疑問を抱いているという。この噂は共和党内でも批判に上がっており、マルコルビオ上院議員は「ウラジミールの友人」であることは国務長官の資質に必要ない、とツイート。
一方、次期政権首席補佐官ラインス・プリーバス氏は、「このニュースに皆が食ってかかるとは驚きだ。指名は決定しておらず時期尚早だ。世界にビジネスネットワークがある人物が候補」としている。またプリーバス氏は、「トランプ氏は米国の諜報機関を信頼していないという訳ではない、匿名の情報による報道を否定しているのだ」とする。
民主党アダム・シッフ下院諜報委員 は「これはまさにロシアが求めることで、米政府に不和を生じさせ、ロシア強硬派のクリントン氏の逆である、親ロでNATOを軽視し、ロシアの制裁を解除する可能性のある人物を支援すること」だとする。
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