G-20や国際通貨基金(IMF)などの国際会議で、中国の経済成長減速については重要なトピックスとなっている。そして、この程中国税関から発表された、9月の貿易統計の数値より、中国の内需低迷が浮き彫りになっていると各国メディアが伝えた。
10月13日付
『NBCニュース』(米国、
『AP通信』記事引用)は、「中国の税関総署が10月13日に発表した9月の貿易統計によると、輸入が前年同期比20.4%減の1,452億ドル(約17兆4千億円)となり、8月の5.5%減はもとより、市場が見込んでいた15%減を大きく上回った。一方、輸出は前年同月比3.7%減の2,056億ドル(約24兆7千億円)で、8月の13.8%減の数値より改善している。これらの傾向より、中国政府が公表している、年7%の経済成長が果たして達成できるかという疑念が出てくる。...
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10月13日付
『NBCニュース』(米国、
『AP通信』記事引用)は、「中国の税関総署が10月13日に発表した9月の貿易統計によると、輸入が前年同期比20.4%減の1,452億ドル(約17兆4千億円)となり、8月の5.5%減はもとより、市場が見込んでいた15%減を大きく上回った。一方、輸出は前年同月比3.7%減の2,056億ドル(約24兆7千億円)で、8月の13.8%減の数値より改善している。これらの傾向より、中国政府が公表している、年7%の経済成長が果たして達成できるかという疑念が出てくる。」とし、「但し、9月の貿易収支は603億ドル(約7兆2千億円)の黒字で、その幅は1年前の倍となっている。欧州連合(EU)向け輸出超過が140億ドル(約1兆7千億円)で、米国向けに至っては実に265億ドル(約3兆2千億円)の貿易黒字となっている。なお、ある経済専門家は、9月には、中国最大の貿易港のひとつである天津市の倉庫での大爆発事故に加えて、戦勝70周年記念大軍事パレードの際の数日間の強制的工場閉鎖があったことを考えると、8月より状況は改善しているとしている。」と報じた。
同日付
『ラピッド・ニュース・ネットワーク』オンラインニュース(米国)は、「過去5年間の中国の経済成長は減速傾向にあるが、これは共産党政府が、内需振興を強化し、持続的な経済成長を図ろうとしたことにある。ただ、直近で同政府が採った人民元切り下げ方針より、第4四半期(10~12月)の輸出力は改善されるとみられる。」と伝えた。
また、同日付
『ザ・テレグラフ』紙(英国)は、「中国の9月の輸入が人民元ベースで18%も下がったため、機関投資家が中国の経済成長減速が更に厳しいとみて、アジアやその他新興国の株式投資等から資金を引上げ始めている。輸入の落ち込みはひとえに中国の内需低迷を現すものであるから、中国向け輸出が中心の豪州やアジア諸国に影響を与えている。税関当局の発表後、東京の株価(日経平均)は1.11%の下落、香港は0.47%、またシドニーも0.57%値を下げた。一方、上海市場は僅かに0.17%上昇している。」と報じた。
一方、同日付
『人民日報』(中国、
『新華社通信』記事引用)は、「今年1~9月期でみると、前年同期比で輸出が1.8%落ちて10兆2,400億元(約194兆5,600億円)で、輸入が15.1%減少し7兆6,300億元(約144兆9,700億円)となったため、総貿易高は7.9%下落の17兆8,700億元(約339兆5,300億円)となった。しかし、貿易黒字額は82.1%増え、2兆6,100億元(約49兆5,900億円)まで急上昇している。」とし、「中国の最大の貿易相手はEUで2兆5,900億元(約49兆2,100億円)、2番目は米国で2兆5,400億元(約48兆2,600億円)、そして3番目は東南アジア諸国連合(ASEAN)で2兆1,100億元(約40兆900億円)である。一方、5番目の日本については、11%減の1兆2,700億元(約24兆1,300億円)となっているが、日本向け輸出額6,186億元(約11兆7,500億円)に対して、輸入額が6,555億元(約12兆4,500億円)であるため、依然369億元(約7,000億円)の貿易赤字となっている。」と伝えた。
ただ、上記に述べられている数値の解説以上に、中国国内の景気落ち込みはすさまじい。世界の工場と言われた広東省では5千社以上が夜逃げ同様の工場閉鎖となっており、不動産バブル崩壊の後遺症も深刻で、多くの大都市近郊の高層マンション等が入居者のいない廃墟同然となっている。例えば、5年前には石炭バブルに沸いた内蒙古自治区オルドスでは、北京までの200キロメーター道路が石炭搬送トラックの渋滞で、移動に20日間かかったと言われていたが、習主席の温暖化対策や北京市の冬季オリンピック招致のための石炭火力発電所の閉鎖等もあって、今やオルドスは中国最大の鬼城(ゴーストタウンの中国語)となっている。
かかる状況にも拘らず、習主席が時代錯誤的な大軍事パレードを主導したことに対する批判は厳しい。何故なら、世界に軍事力を誇示するためだけで、数日間の工場閉鎖、商店・レストランなどの営業停止を強いたこともあって、経済損失は215億元(約4,080億円)に上ると言われているからである。
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アメリカでフォルクスワーゲン社が排気ガスを不正に操作する違法なソフトウェアを
搭載した車を販売していたことで、リコールや制裁金など様々な問題が起こりつつあ
る。各メディアはこのスキャンダルが、経済的な影響にとどまらない問題を包含して
いるとする。
まず、スキャンダル自体の及ぼす直接的な影響について
9月24日付
『ラピッド・ニュース』はフォルクスワーゲン社のスキャンダルはアメリ
カのみならず、世界に広がりつつあるとする。韓国は同社の代表者を呼んでスキャン
ダルについての尋問を行うとしている。また、イギリスやフランスも調査に乗り出す
意向だという。
9月24日付
『PRニュースワイヤー』によると、9月21日の時点で同社の株価は20%以上
下落し、23日には最高経営責任者であるマルチン・ヴィンターコルン氏が引責辞任し
たことを伝え、2009年から2015年製造の同社の該当自動車の所有者は集団訴訟を弁護
士に相談するよう呼びかけている。...
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まず、スキャンダル自体の及ぼす直接的な影響について
9月24日付
『ラピッド・ニュース』はフォルクスワーゲン社のスキャンダルはアメリ
カのみならず、世界に広がりつつあるとする。韓国は同社の代表者を呼んでスキャン
ダルについての尋問を行うとしている。また、イギリスやフランスも調査に乗り出す
意向だという。
9月24日付
『PRニュースワイヤー』によると、9月21日の時点で同社の株価は20%以上
下落し、23日には最高経営責任者であるマルチン・ヴィンターコルン氏が引責辞任し
たことを伝え、2009年から2015年製造の同社の該当自動車の所有者は集団訴訟を弁護
士に相談するよう呼びかけている。
次にスキャンダルが及ぼす2次的な影響について
9月24日付
『ロイター通信』によると、ドイツ政府は同社のスキャンダルがダイム
ラーやBMWといった、他のメーカーにも悪影響を及ぼすことを懸念しているとい
う。ドイツは22日に「スキャンダルがあってもなお自動車産業は自国の経済を支える
要であり、革新的で利益をもたらす産業でもある」と発表している。ただ、専門家に
よれば、中国経済の減退などに加えて今回のスキャンダルがドイツの今年度の経済成
長率予測1.8%に影を落とすだろうと予測している。2014年時点で、実に77万5000人
がドイツ国内の自動車産業に従事していおり、これは国内の全労働力の2%近くだと
いう。また、ドイツの自動車関連の売上げは2014年に対国外で2000億ユーロ(27兆
円)であり、ドイツの輸出額の約5分の1を占める。
もっとも、
『ロイター通信』はこのスキャンダルにより、ドイツの自動車産業が途端
にダメになるとみるべきではないとする意見にも言及している。コメルツ銀行のチー
フエコノミスト、イエルク・クレイマー氏はロイター通信のインタビューに対し「一
会社のせいで景気が後退するとは考えにくい」と述べたという。
最後にこのスキャンダルが暗示する問題点について
9月24日付
『フュージョン』はまず、今回のスキャンダルはたまたまフォルクスワー
ゲン社が挙げられただけで、他の会社が製品に同様のプログラムを組み込むことも十
分にあり得ると指摘する。
『フュージョン』はその例として1998年のフォード社のス
キャンダルに言及している。これはフォード社が車の燃費をよくするため、高速道路
で有害な排気ガスを大量に放出する違法な「電子制御装置」を自社製品に組み込み、
政府から課金されたという事件である。これらの問題は結局のところ法と利潤追求の
とのせめぎ合いに行きつくとする。
さらに
『フュージョン』は車のみならず、テレビ、スマートフォン、タブレット、ロ
ボット、さらにはおもちゃまで、人工知能が発達したおかげで様々な商品による悪事
が発見されにくくなり、デジタル犯罪
の時代が幕開けを迎えつつあるとしている。例えば人工知能を搭載した車が人間を目
的地まで時間内に運ぶために巡回中のパトカーがいないことを認識したうえでスピー
ドオーバーし、その記録をアップデートのために消去してしまう場合や、工場で、ロ
ボットが動きをチェックされていない時を検知して作業の能率を落とすなどとという
ようなことが考えられるという。これらは監督されていれば最大限努力し、そうでな
ければ手を抜くという人間特有と思われている傾向と全く同じである。
このデジタル犯罪では二つの点が問題になるという。まず、違法性の発見である。こ
の点についてはロボットを取り締るロボットが出現する可能性がある。そして次に違
法行為を行うロボットを開発者が故意に開発したのか否かという点の立証であるとい
う。今回は政府の執拗な追及にフォルクスワーゲン社が過失を認めたことにより発覚
したが、フォルクスワーゲン社が認めなければ2009年から2010年のトヨタの事件のよ
うに、立証により長い歳月が費やされることになったであろうとする。
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