カナダ、留学生ビザを2年間制限(2024/01/24)
カナダは、人口増加により深刻化する住宅や医療ケア問題への対策として、2年間留学生へのビザ発給を制限すると発表している。
1月24日付
『ロイター通信』:「カナダ、住宅危機で留学生ビザを制限」:
カナダは22日、留学生へのビザ発給を当座として2年間制限すると発表した。また、一部卒業生への労働ビザも廃止するとしている。移民増加による住宅危機への対策とされる。
カナダ移民省の声明によると、今回の制限により、2024年の学生ビザ発給数は、2023年から35%減少し、およそ36万人になるとみられている。...
全部読む
1月24日付
『ロイター通信』:「カナダ、住宅危機で留学生ビザを制限」:
カナダは22日、留学生へのビザ発給を当座として2年間制限すると発表した。また、一部卒業生への労働ビザも廃止するとしている。移民増加による住宅危機への対策とされる。
カナダ移民省の声明によると、今回の制限により、2024年の学生ビザ発給数は、2023年から35%減少し、およそ36万人になるとみられている。
移民による急激な人口増加は医療や教育などのサービス分野にも影響を与え、住宅価格を引き上げている。世論調査ではこれらの問題はトルドー首相の再選に影響を与えるとされ、政府の解決が急務とみられる。
昨年2023年の第三四半期、人口増加は過去60年以上の間で最も急増し、学生が大半を占める「非永住者」は31.2万人増加した。
カナダ学生協会同盟(CASA)は、この政策を住宅危機への対策という点で批判している。一方、トロント大学は制度を悪用する一部を対象としており、大学への悪影響はないとして好意的に受け止めている。
1月23日付英『BBC』:「カナダ、留学生受け入れを2年間制限」:
カナダのマーク・ミラー移民・難民・市民権大臣は22日、カナダは住宅や医療問題対策として、2年間留学生へのビザ発給を制限すると発表。
2022年は海外からの留学生が、前年比で21.4万人増加し、80万人を超えた。今年は36万人の大学生へビザが発給される。各州や地区へは、人口や現状の学生受け入れ体制を元に、割り当てられ、州の主導で大学やカレッジに発給枠が定められる。ビザの制限はディプロマ・プログラムや学部生に限られ、更新する学生は対象外となる。
その他の変更点として、政府は9月以降、オンタリオ州で盛んな官民パートナーシップ型制度「カレッジ卒業生への労働ビザ発給」を廃止する。私立学校の中には留学生に頼った経営をしている機関もある。
背景としては、トルドー政権下、住宅不足問題が深刻化している。カナダの住宅価格は平均で75万カナダドル(約8,250万円)、賃貸価格は過去2年で22%増加している。住宅建築が前例なき人口増加に追いついていないため、住宅不足の要因として移民増加が指摘されている。
2022年にカナダの人口は100万人増加しており、そのほとんどが移民の増加によるもの。昨年2023年は、4000万人を突破した。政府機関カナダ住宅ローン住宅公社(CMHC)は、2030年までに、350万軒超の不足が生じると予測している。
人口増加も問題の要因ではあるが、専門家は、住宅不足は高金利など他の要因、コロナ禍によるインフレや供給不足による建築材の値上がりも大きな理由であると指摘する。
カナダはこれまで歴史的に、労働者確保や高齢化対策として、移民に寛容な国であった。カナダ中等教育機関連合は、大学院が非対象なのは歓迎するとしながらも、留学生が留学先としてカナダを選ばなくなるのではないかとの懸念を示している。
閉じる
カナダ;労働力確保のため移民受け入れ増を望むも家賃高騰問題対処のため留学生受け入れには制限措置【北米メディア】(2024/01/15)
1月13日付
『CBCニュース』(1941年設立のカナダ最大のニュース放送局)、
『CTVニュース』(1961年設立、カナダ最大の民放TV放送局)、1月14日付
『ロイター通信』は、カナダ政府が、労働力確保のために移民受け入れを倍増させる一方で、近年の家賃高騰問題に対処するため、留学生の受け入れは絞る意向だと報じている。
カナダ政府は、高齢化による労働人口減少に対応するばかりか、コロナ禍後の経済活動再活性化のため、移民労働者の受け入れに注力してきた。...
全部読む
1月13日付
『CBCニュース』(1941年設立のカナダ最大のニュース放送局)、
『CTVニュース』(1961年設立、カナダ最大の民放TV放送局)、1月14日付
『ロイター通信』は、カナダ政府が、労働力確保のために移民受け入れを倍増させる一方で、近年の家賃高騰問題に対処するため、留学生の受け入れは絞る意向だと報じている。
カナダ政府は、高齢化による労働人口減少に対応するばかりか、コロナ禍後の経済活動再活性化のため、移民労働者の受け入れに注力してきた。
特に、医療関係を含む社会福祉分野での労働力不足を補うため、2025年までの移民労働者受け入れ数を年50万人と、2015年比倍増させる方針を決定している。
一方で、2022年の留学生受け入れ数が80万人と、2012年時の27万5千人からほぼ3倍増となっていることもあって、大都市を中心に家賃高騰問題を引き起こす結果を招いている。
かかる背景から、ショーン・フレーザー住宅問題・インフラ・コミュニティ担当相(39歳、2023年就任)及びマーク・ミラー移民・難民・気候変動担当相(50歳、2023年就任)は1月12日、連名での声明を発表し、“移民労働者を増加させねば、コロナ禍後の経済活動立て直しに支障を来す”とし、“医療関係従事者を含めて、カナダ国民が望む社会福祉事業を取り進めるためには、移民労働者の助けが必要で、さもなくば大変な事態を招くことになる”と訴えた。
両相は同時に、“移民増に伴う家賃高騰問題は承知しているため、移民労働者は2025年・2026年とも50万人受け入れるが、代わって留学生については受け入れを大幅に制限することになろう”と言及した。
その上で、“今後は、留学生ビザ発行条件として、学生寮が確保できているか、あるいはキャンパスの外の住居手当ての目処がついているかが求められることになる”と付言している。
更に、ミラー移民相は1月13日、『CTVニュース』の番組に出演して、“目下、カナダが受け入れている留学生数は途方もないレベルとなっており、留学生受け入れシステムは制御できない状態になってしまっている”とした上で、“早速、今年第一(1~3月)及び第二四半期(4~6月期)それぞれにおいて、受け入れ留学生数に上限を設けることになる”とコメントしている。
ただ同相は、具体的な制限数に言及していない。
なお、家賃高騰問題はジャスティン・トルドー首相(52歳、2015年就任)率いる自由党政権にとって、非常に頭の痛い問題となっている。
特に、同政権が8年余りも続いていることもあって支持率が急落している一方、代わって支持率を大きく伸ばしている野党・保守党のピエール・パウリーブ党首(44歳、2022年就任)が、住宅問題に適切に対応していないとして自由党政権を猛批判しているからである。
閉じる
その他の最新記事