ヨーロッパで最も売れているドイツのタブロイド日刊新聞「ビルド」が、人工知能(AI)が生成する記事を導入することで、数百人単位の編集人員を削減するビジネスモデルを発表している。
6月20日付英
『Guardian』:「ドイツ、タブロイド紙が編集業務にAI導入へ」
ヨーロッパで最も売れているタブロイド紙「ビルド」は、一部編集作業をAIに置き換える方針。ヨーロッパ最大のメディア出版社「アクセル・スプリンガー」社によると、AI導入により、現在編集作業にあたっている人員数百人が解雇される見込みだという。
同社は1億ユーロ(150億超)のコスト削減計画の一貫となるこの計画を、スタッフにメールで周知。...
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6月20日付英
『Guardian』:「ドイツ、タブロイド紙が編集業務にAI導入へ」
ヨーロッパで最も売れているタブロイド紙「ビルド」は、一部編集作業をAIに置き換える方針。ヨーロッパ最大のメディア出版社「アクセル・スプリンガー」社によると、AI導入により、現在編集作業にあたっている人員数百人が解雇される見込みだという。
同社は1億ユーロ(150億超)のコスト削減計画の一貫となるこの計画を、スタッフにメールで周知。地方紙においても、大幅な人員削減に繋がる再編を計画しているという。
アクセル・スプリンガーは、「残念ながら、デジタル化時代においてAIや自動プロセスが担うタスクを行っている人員は削減せざるを得ない。エディター、版下制作者、編集補佐、校正者、写真編集者の役割は、今後存在しなくなるだろう」としている。
同社は今年2月、「デジタルメディア企業」に向けて動き出すと発表。チャットGPTのようなAIツールは、「独立系ジャーナリズムを生まれ変わらせる可能性がある。情報の収集においてはAIはジャーナリストを上回る。調査報道やオリジナリティのある解説等の最高の独自コンテンツを作り出した出版社のみが生き残るだろう」としていた。
他にも今年、米「バズフィード」社が、コンテンツやオンラインクイズを充実させるためAIを活用すると発表。英国の「デイリー・ミラー」紙や「デイリー・エクスプレス」紙もAIの導入を検討中である。
チャットGPTのようなAIツールは、単純な入力により、非常に手の込んだテキストを生成できる。エッセイや求職申請、ポエム、フィクション等作り出せるが、一方で不正確性や虚構も散見される。
今年4月、ドイツのタブロイド紙「Die Aktuell」は、スキー事故で脳損傷を患い、2013年12月から公けに姿を現していないにも関わらず、AIが捏造したF1レジェンドレーサー、ミハエル・シューマッハのインタビューを掲載し、家族に謝罪。家族は出版社を相手取り法的措置に出ている。
ドイツジャーナリスト協会は、スプリンガー社の計画を批判し、人員削減は「非社会的であり非効率的」で不当だとしている。
同日付豪『シドニー・モーニング・ヘラルド』:「ドイツで最も売れている新聞”ビルド”がAI導入で人員解雇へ」:
ドイツで最も売れているビルド紙が、数百人の人員を削減。編集者に代わりAIを導入することで、購読者数増加や評判回復に向け大胆なビジネスモデルに踏み切ると発表している。
人員削減の規模は発表されていないが、数百人程度とみられる。その仕事の多くはAIが代行することになるという。
ビルド紙は、政治的でセンセーショナルな報道で知られるが、今も法廷闘争が続く社員の性的暴行事件や、4月にはマティアス・デプフナーCEOが前回のドイツ総選挙結果に影響を与えようとテキストメッセージを流出させ批判されたこと等で問題を抱えている。
購読数は、2000年前後のピーク時の450万部から、昨年末には100万部超にまで落ち込み、今後3年の売上アップとコスト削減施策を行っている。そこで、数年後は「デジタルのみ」のタブロイド紙を掲げ、、2026年までにオンラインで一日あたり2000万人ビューを目標としている。「ポリティコ」や「インサイダー」を傘下とするKKRが最大株主の同社グループは、米国への展開も視野に入れている。
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4月26日付
『ウォールストリート・ジャーナル』、
『ニューヨーク・タイムズ』、
『AP通信』、
『CBSニュース』等が、トランプ陣営が控訴していた、2020年大統領選の結果を覆そうとしたトランプ前大統領の疑惑捜査に関わるペンス前副大統領の証言差し止め請求が連邦高裁によって却下された旨一斉に報道している。
ワシントンDCの米連邦控訴審は4月26日、2020年大統領選に関わるドナルド・トランプ前大統領(76歳、2017~2021年在任)の不正疑惑について、トランプ陣営が控訴していた、マイク・ペンス前副大統領(63歳、2017~2021年在任)による連邦大陪審での証言差し止め請求を却下する決定を下した。
米連邦ワシントンDC地裁は3月末、トランプ陣営から提訴されていた、同前副大統領の証言差し止め請求を棄却する判断を下していた。
本件疑惑は、メリック・ガーランド司法長官(70歳、2021年就任)が任命したジャック・スミス特別検察官(2022年就任)によって捜査が進められていた。
すなわち、同特別検察官は、同前大統領による2021年1月6日発生の議事堂乱入事件への関与疑惑等について捜査していて、同前副大統領に対して、事件当日の前大統領との会話等について証言するよう求めていた。
同前副大統領は当初、米憲法第1条第6節に謳われた、“上下院議員の身分にある者の不逮捕特権や免責等”を理由として証言を拒んでいたが、連邦地裁がこの請求を退け、証言するよう命令していた。
そこで、同前副大統領が控訴することを諦め、証言する旨表明したことから、トランプ陣営がこの証言を阻止すべく、法廷闘争に打って出ていたものである。
なお、連邦控訴審の今回の判断は、グレゴリー・カサス判事(58歳、2017年トランプ大統領によって任命)、パトリシア・ミレット判事(59歳、2013年にオバマ大統領によって任命)及びロバート・ウィルキンス判事(59歳、2014年にオバマ大統領によって任命)の合議によってなされている。
一方、連邦地裁は今年3月、議事堂乱入事件に関し、前大統領側近だったマーク・メドウズ前首席補佐官(63歳、2020~2021年在任)、ダン・スキャビノ前次席補佐官(2020~2021年在任)、スティーブ・ミラー前政策担当上級顧問(37歳、2017~2021年在任)等に対しても、連邦大陪審で証言するよう命令を下している。
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