ドナルド・トランプ大統領(74歳)の退陣はほぼ確定しているが、対中強硬政策継続のための置き土産としてか、国防総省高官が米同盟国のフィリピンを訪問し、南シナ海領有権争いで中国対峙の際の支援の一環で、追加武器を供与した。
12月9日付米
『AP通信』:「米国、爆弾や狙撃対応兵器をフィリピンに供与」
国防総省トップは12月8日、イスラム過激派の武力攻撃に備えるためとして、30千万ドル(約31億円)相当の武器をフィリピンに提供したと発表した。
直近でフィリピンを訪問したクリストファー・ミラー長官代行(55歳、注後記)が、フィリピン国防相及び外相と面談した際に明らかにしたもので、狙撃や爆弾攻撃に備える武器であるという。
フィリピン国防部によると、同長官代行はデルフィン・ロレンザーナ国防相(72歳)に対して、フィリピン国軍(AFP)防衛力強化支援のため、今月下旬にロッキード製C-130輸送機も提供すると伝えたという。
また、同長官代行自身、ロレンザーナ国防相とテオドロ・ロクシン外相(72歳)との会談の際、“南シナ海及びインド太平洋を自由で開かれた海域とするための共同軍事力強化”について主に協議したとする。
アジアにおける最も古い米同盟国のフィリピンには、3週間前にもロバート・オブライエン大統領補佐官(米国家安全保障問題担当、54歳)が訪問していて、その際、フィリピンがもし南シナ海領有権争いで攻撃を受けた場合には、米軍が支援に立ち上がると宣言している。
なお、同補佐官の発言は、今年初めにマイク・ポンペオ国務長官(56歳)が表明した、“南シナ海に展開するフィリピン軍、航空機、あるいは公船が武力攻撃を受けた場合、米比防衛協力協定に基づき行動を起こす”との声明を改めて強調したものである。
同日付フィリピン『マニラ・ブルティン』紙:「フィリピン、米国より13億8千万ペソ相当の防衛装備品供与」
フィリピンはこの程、米国防総省より13億8千万ペソ(2,900万ドル、約30億円)相当の防衛装備品の供与を受けた。
来訪中のミラー米国防総省長官代行と面談した、ロレンザーナ国防相とロクシン外相が明らかにした。
同長官代行は同国防相に対して、AFP宛に12月17日、C-130輸送機を提供するとも伝えた。
ロレンザーナ国防相は、“米国支援により、AFPの増強が図れるので、大いに称賛する”と述べた。
同相はまた、フィリピンはインド太平洋地域で米軍から最も多くの支援を受けている国だとも付言した。
同長官代行のフィリピン訪問は、11月22、23日のオブライエン大統領補佐官、11月25日のバーバラ・バレット空軍長官(69歳)の来訪に続くものである。
なお、フィリピンは2015年以降、米国から航空機、軍艦、装甲戦闘車、その他装備品等、合計330億ペソ(6億5千万ドル、680億円)相当の供与を受けている。
(注)クリストファー・ミラー長官代行:米国家テロ対策委員会幹部で、2020年11月に現職就任。マーク・エスパー長官(56歳)が、人種差別問題に伴う国内暴動鎮圧のため米軍を派遣するとのトランプ大統領主張に反対して罷免されたことから、急遽任命されたもの。
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6月9日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「フィリピン国防相、領有権問題で揺れる南シナ海の島の恒久施設完工式に出席」
フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は6月9日、国軍の高官を引き連れて、南シナ海スプラトリー(南沙)諸島内のティトゥ島(フィリピン呼称パグアサ島、タガログ語で希望の意)を訪れた。
現地で当日開催された、漁船等が停泊できる埠頭建設の一環となる、ビーチランプ(海岸~陸地を繋ぐ傾斜路)建設の完工式に列席するためであり、国内外に知らしめるためにジャーナリストも同行させている。...
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6月9日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「フィリピン国防相、領有権問題で揺れる南シナ海の島の恒久施設完工式に出席」
フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は6月9日、国軍の高官を引き連れて、南シナ海スプラトリー(南沙)諸島内のティトゥ島(フィリピン呼称パグアサ島、タガログ語で希望の意)を訪れた。
現地で当日開催された、漁船等が停泊できる埠頭建設の一環となる、ビーチランプ(海岸~陸地を繋ぐ傾斜路)建設の完工式に列席するためであり、国内外に知らしめるためにジャーナリストも同行させている。
式典の挨拶で同相は、長い間実効支配してきた同島を、軍事拠点化することなく広く一般市民が居住できる場所にするため、今後も“全力を挙げて”開発に取り組んでいくと発言した。
同島は、中国が同海域内で一方的に建設を進めたスビ礁人工島の近海にある。
しかし、同相は、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領と中国首脳らとの緊密な関係より、中国軍が同島駐留のフィリピン国軍に攻撃を仕掛けてくることはないと中国側も言っていると言及した。
同相は更に、フィリピンは同島含めて9つの島の開発権を有しているとも付言した。
当該ビーチランプ建設によって、フィリピン軍艦や貨物船の停泊が容易になり、建築資材や重機械の搬入が可能になる。
そこで同相は、今後の新規プロジェクト-海水で腐食の滑走路の修復、兵舎・一般市民住居・学校・水産物冷凍プラント・太陽光発電所建設、またラジオ放送局の設置等-詳細を披露した。
また、同島の漁船の緊急避難場所も既に完成していて、フィリピンの独立記念日である6月12日(1898年スペインからの独立を宣言)に完成式典が開催される。
一方、同相は、政府としてはトゥティ島にミサイル配備や大砲設置、またその他重武器の導入は全く考えていないとした。
しかし、同島と中国人工島のあるスビ礁に挟まれたサンディ・ケー(3つの砂洲からなる)が中比間の新たな対峙海域となっている。
すなわち、数年前にフィリピンが同砂洲に人工施設の建設に取り掛かろうとしたことから、中国側が猛反発してこれを阻止し、以降同海域に中国海警艦・漁船・軍艦を代わる代わる派遣して、フィリピン側動静を常時監視しているからである。
同日付フィリピン『マニラ・ブルティン』紙:「フィリピン、西フィリピン海のパグアサ島でビーチランプ完工式」
ロレンザーナ国防相が完工式を行った、パグアサ島のビーチランプは3年の歳月をかけて建設された。
同島には現在、200人程の漁民と、フィリピン海軍兵士らが居住しているが、同ランプ完成によって、同島の恒久施設の建設に拍車がかかることになる。
同ランプ建設は、同島の恒久施設建設計画の第一段階で、2億6,700万ペソ(約5億7,600万円)を要した。
そして、滑走路修復、兵舎・市民住居・学校・発電所等恒久施設の建設を含めた総合開発計画には13億ペソ(約28億円)が投じられることになる。
なお、今回の完工式が行われた6月9日は、同じく西フィリピン海内のリード堆周辺で、フィリピン漁船が中国船によって沈められた事件発生から丁度一年目に当たる。
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