富士通(1935年設立)は、英国ポスト・オフィス(PO、1986年設立の郵便・銀行業務部門)向けに勘定系システム「ホライゾン」を長い間提供してきた。しかし、同システムの不具合が原因とみられる英国郵便局大冤罪事件(注後記)が発覚し、現在進められている詳細調査の結果、同システムの不具合に責任があると判断されると、膨大な損害賠償リスクにさらされる可能性がある。
1月10日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース、英国
『BBCニュース』は、英国郵便局大冤罪事件の主たる原因が富士通提供のシステム不具合にあったと認定された場合、膨大な損害賠償リスクを負うことになると報じている。
英国政府閣僚らは、2020年から本格的に着手された英国郵便局大冤罪事件の原因特定に関わる公的調査の結果、富士通が長年POに提供してきた勘定系システム「ホライゾン」の不具合が原因だということになれば、同社は補償を行う必要があると主張している。...
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1月10日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース、英国
『BBCニュース』は、英国郵便局大冤罪事件の主たる原因が富士通提供のシステム不具合にあったと認定された場合、膨大な損害賠償リスクを負うことになると報じている。
英国政府閣僚らは、2020年から本格的に着手された英国郵便局大冤罪事件の原因特定に関わる公的調査の結果、富士通が長年POに提供してきた勘定系システム「ホライゾン」の不具合が原因だということになれば、同社は補償を行う必要があると主張している。
POを管轄する企業・市場・中小ビジネス省のケビン・ホリンレイク政務次官(60歳、2022年就任)は1月8日晩、“調査によって富士通に責任の一端があると判明すれば、英国政府は同社に対して賠償金の一部負担を求めることを検討する”と表明した。
また、メル・ストライド労働・年金相(62歳、2022年就任)は1月9日、『タイムズ・ラジオ』(2020年開局)のインタビューに答えて、“2020年に着手された公的調査は年内に結論が出る見込みだ”とした上で、“この問題のツケは納税者(公的資金)負担になることはないのは明らかだ”と強調した。
その上で同相は、“富士通が多くの意図的ミスを犯し、その結果様々な問題を誘発したと判断されれば、同社にとって非常に深刻な結果を招くことになろう”ともコメントした。
更に、首相府報道官も、“公的調査の結果、原因が特定された企業・関係者には、法的にも金銭的にもそれ相応の責任を課すことになる”との声明を発表している。
これに対して富士通広報担当は、“民間受諾郵便局長らが被った苦痛に関し、当社に一端の責任があることを謝罪する”とした上で、“英国政府の実態調査に真摯に協力していき、全容解明に資するように努めている”と表明している。
なお、同社のシステム「ホライゾン」は、元々英国インターナショナル・コンピューターズ社(ICL、1968年設立)が1990年代に開発したものであるが、1980年代に日本政府の後押しもあって富士通の傘下に入っている。
当時日本政府は、世界のIT業界を牽引する米IBM(1911年設立)に対抗するとの戦略を立て、富士通を含む3大IT企業に資金的援助を積極的に行うこととなり、その一環で同社がICLを買収したものである。
(注)英国郵便局大冤罪事件:2000年から2014年に、700人以上の民間受諾郵便局長が横領や不正経理の無実の罪を着せられた事件。実際には、富士通の会計システム「ホライゾン」の欠陥で、窓口の現金とシステム上の記録額に不整合が発生していたことが原因。この事件では、地域の郵便局の窓口業務を担っていた人々が、支店口座の不足額を埋めるために借金したり、横領罪で収監されたりしたが、これまでに72人の有罪判決が取り消し。また集団訴訟の結果、2019年12月に、郵政の窓口業務を担当するPOが555人に対し、計5,800万ポンド(約90億円)を支払うことで和解。
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1月3日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース、フランス
『AFP通信』、豪州
『豪州AP通信』、香港
『香港フリーペイパー』等は、羽田空港で発生したJAL機・海上保安庁小型機(海保機)の衝突炎上事故について速報している。
・英国の航空コンサルタント「アセンド・バイ・シリウム」のポール・ヘイズ理事(航空安全部門)は『ロイター通信』のインタビューに答えて、“今回の衝突原因は、海保機が何故JAL機着陸直前に当該滑走路に進入したかに尽きる”とコメント。
・新鋭旅客機は、緊急脱出スライドの半分しか使用できなかったとしても、搭乗者全員が90秒以内に脱出できるような性能(乗員の訓練が行き届いていることが条件だが)。
・JAL機体提供のエアバス社(1970年設立)は、至急専門家チームを派遣し、事故原因究明等で日本政府に協力する旨表明。
・香港入境局(1961年設立)の発表では、同機搭乗の香港人10名は全員無事と確認。
・豪州政府は、同機搭乗の豪州人12名は全員無事であることを確認した上で、かかる惨事の中、搭乗者全員が無事脱出できたことを称賛。
・豪州アルバニージー首相(60歳、2022年就任)は、“友好国日本の友人らにできる限りの支援・救済を行う”旨表明。
・史上最悪の航空機事故は、1977年にスペイン・テネリフェ島(カナリア諸島)のロスロデオス空港で発生した、ボーイング・ジャンボ機2機の滑走路上での衝突事故で、犠牲者は計583人(両機の乗客乗員計644人)。
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