ドイツはメルケル首相時代、ロシアとの連携を模索してロシア産天然ガス等への依存度を高めてきた。しかし、ショルツ新政権下では、ウクライナ軍事侵攻を契機に対ロシア政策を見直す必要となり、脱ロシア・エネルギー戦略に舵を切る一環で、地球温暖化対策に逆行する自国石炭鉱山の増産という苦渋の選択を強いられている。
4月24日付
『AP通信』は、「数千人がドイツの田舎町での石炭鉱山増産計画に抗議するデモ行進」と題して、地球温暖化対策に逆行する石炭鉱山増産に反対するデモ行進について報道している。
数千人の人々が4月23日、ドイツ西端の田舎町ルツェラート在の石炭鉱山増産計画に反対して抗議デモを行った。
ドイツの『DPA(ドイツ通信社)』報道によると、地元警察発表では、ケルンの約40キロメートル(25マイル)西方の町で、約2千人が参加して整然とデモ行進が行われたという。
この数週間前、ドイツの電力会社RWE(ライン・ベストファーレン電力会社、1898年設立、ドイツ第2位)から立ち退きを迫られていた最後の農夫が敗訴していた。
しかし、同町には依然幾人かの環境活動家がツリーハウスを作って立てこもり、RWE所有のガルツバイラー露天掘り炭鉱(1980年代初め開鉱)の増産計画を阻止すべく活動している。
環境活動家は、ドイツの温暖化ガス排出量削減政策に逆行する、発電用燃料炭の生産は即刻停止すべきだと主張している。
同デモには、ウクライナの環境活動家イリエス・エル・コルトビ氏も参加していて、ドイツがロシアから購入している石炭・原油・天然ガス代金がロシアのウクライナ軍事侵攻に使われているとして抗議した。
ただ、ドイツの高官は、即時にロシア産化石燃料輸入量を削減するためには、火力発電代替燃料確保の一環でガルツバイラー褐炭(最も低品位の、水分・不純物の多い石炭)の増産等を行う必要があると訴えている。
なお、同鉱山近くにはEU域内最大の石炭火力発電所があり、そこからは温暖化ガスの大半占める二酸化炭素を多く排出している。
一方、同炭鉱が属するノルトライン=ベストファーレン州では5月に地方選挙が予定されているが、直近の世論調査では、2021年総選挙で議席を伸ばして与党・社会民主党他と連立政権を担っている環境政党の緑の党(1979年設立)の支持率が急増している。
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10日前の前回報道時より、感染者数及び死者数ともに増加の勢いは全く衰えていない。特に南米やインド、更には直近ではアフリカ大陸での増加が深刻度を増している(記事中のデータは、米ジョンズ・ホプキンス大学集計の7月26日午後6時現在)。
7月25日付
『AP通信』他:「新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題に関わる直近の状況」
<注目ニュース>
●米国;(1)激震地だったニューヨーク州の入院患者減少。
(2)ハワイ州では、ハリケーン避難所のボランティア・スタッフが高齢のため、COVID-19感染懸念から支援活動に支障。
●ブラジル;陽性だった大統領が4度目の検査で漸く陰性。
●インド;COVID-19用ワクチンの臨床試験開始。
●パキスタン;中国・パキスタン経済回廊(CPEC、注後記)政策下でパキスタンに出稼ぎに来ている中国人労働者らに初めて感染が確認され隔離。
●アフリカ大陸;依然南アフリカが大陸全体の感染者の半数を占めるものの、ケニア等東アフリカでの感染者増に懸念。
●イタリア;新たに制定された州条例に基づき、密閉空間でのマスク不着用の住民に1,000ユーロ(1,150ドル、約12万3千円)の罰金賦課。
●ドイツ;都市封鎖解除後初のクルーズ船出航。
<米国>(感染者425万380人、死者14万8,593人、致死率3.50%)
・ニューヨーク州アンドリュー・クオモ知事(民主党)は7月24日、同州のCOVID-19罹患入院患者が646人と最低レベルまで減少と公表。
・同州知事は、かつて最も感染が多い州であったが、改善がみられていることを称賛するも、引き続いてのマスク着用及びソーシャルディスタンシング保持が必須と強調。
・ハワイ州では、感染者増傾向にあるが、ハリケーン襲来によって避難所の整備が必要。
・しかし、従来より避難所の支援者は米赤十字社のボランティアに頼ってきたが、そのボランテイアが高齢だったり既往症保有者であるため、COVID-19感染防止のため自宅待機が求められているため、全体的に支援者不足。
・更に、避難所内でソーシャルディスタンシングを保つ必要から、収容人数が限られ、避難所不足の状態。
<ブラジル>(感染者239万6,434人、死者8万6,496人、致死率3.61%)
・7月7日に陽性と判定されたジャイール・ボルソナーロ大統領が4度目の検査の結果、漸く陰性。
・そこで、同大統領は早速官邸を出て支持者と対話。
<インド>(感染者138万9,221人、死者3万2,128人、致死率2.31%)
・同国初のCOVID-19用ワクチンの臨床試験開始。
・7月24日一日の感染者が4万9千人近くと最多、また、死者757人と依然深刻な状況。
・よって、人口世界2位の同国としては、有効なワクチン開発が最重要課題。
・ただ、若年層が多い人口構成から、感染者数1位の米国、2位のブラジルに比較して、致死率は低い。
<パキスタン>(感染者27万3,113人、死者5,822人、致死率2.13%)
・同国保健省が7月24日、CPEC政策下で進められている発電所建設に従事する中国人労働者ら14人が感染と発表。
・当局が感染者発生を認めたのは初めてのケースで、目下病院で隔離の上で治療中。
・CPEC進展に伴い、把握しきれない数の中国人出稼ぎ労働者が同国に入国。
<アフリカ大陸>
・南アフリカの感染者は43万4,200人と、アフリカ大陸全54ヵ国の総計81万8人の半分以上を占める。
・しかし、直近では東アフリカのケニアの感染者が1万6,643人と漸増傾向。
・世界保健機関(WHO)は早くから、医療体制が脆弱なアフリカ大陸での感染拡大を懸念。
・公衆衛生専門家は、アフリカ大陸では、一度感染が拡大すると中々収束できず、長い間“くすぶり続ける”と警鐘。
<イタリア>(感染者24万5,864人、死者3万5,102人、致死率14.3%)
・南部カンパニア州のビンセンツォ・デ・ルーカ知事が7月24日、公衆の密閉空間でのマスク不着用に1,000ユーロの罰金を科すとの州条例に署名。
・そして、7月25日、同州南部のサレルモ市のストア内でマスク不着用の3人に対して、市当局が罰金刑。
・同州では7月25日、感染者21人、死者5人が出ていて感染は全く収束しておらず、かかる厳しい措置は止む無しとの声。
<ドイツ>(感染者20万6,332人、死者9,202人、致死率4.46%)
・『ドイツ通信』によると、都市封鎖措置解除後初となるクルーズ船“マイン・シフ2(我が船の意)”が7月24日夜、ノルウェーに向けてハンブルグ港を出航。
・但し、感染防止のため、2,900人収容のところ乗客は1,200人のみで、7月27日にドイツに戻るまで、ノルウェー含めて下船は不可。
・更に、乗員・乗客とも1.5メートルの間隔を保つか、あるいはマスク着用義務。
・しかし、かかる制限下でも、クルーズ船運航会社としては、何ヵ月も営業停止を余儀なくされていたことから、渡りに船とコメント。
<英国>(感染者29万8,681人、死者4万5,738人、致死率15.3%)
・政府は、将来の第2波に備えるためにも、住民の健康維持が必須との考えから、感染が依然収まっていない状況ながら、プールとジムの再開を許可。
・イングランド水泳協会のジェーン・ニッカーソン最高責任者は『BBCニュース』のインタビューに答えて、感染によって都市封鎖措置が講じられる以前から、プール経営は厳しく、政府の支援がなくば、潰れるところが出てくるとコメント。
<フランス>(感染者18万528人、死者3万192人、致死率16.7%)
・保健省発表では、7月24日の感染者が1,150人と再び上昇傾向。
・そこで、2ヵ月間の都市封鎖措置を余儀なくされた5月時点の状況に戻りつつあるとして、感染防止のための“組織的な規律”、すなわち、テレワークの励行、また、感染疑いのある人は進んで検査受診を要請。
(注)CPEC:中国が主導する「一帯一路」構想で計画される6つの経済回廊の一つ。中国の新疆ウイグル自治区のカシュガルからパキスタンのアラビア海沿岸にあるグワーダル港を結ぶ、パキスタンを北から南まで縦断する全長約2000キロメートルの巨大経済インフラプロジェクト。中国の支援によるプロジェクト規模は発表当時460億ドル(約4兆9.220億円)で、現在では620億ドル(約6兆6,340億円)にまでふくれあがっている。全体の完成は2030年を予定。
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