英
『デイリー・テレグラフ』と仏
『ルモンド』紙によると、国連人権高等弁務官事務所に勤務していたエマ・ライリー(42歳)さんは、国連が中国の圧力に屈して、国連人権理事会(UNHRC)でスピーチをする予定の反体制派の情報を渡していることで、中国にいるその家族を深刻な危険にさらしていると何年も前から声高に訴えていた。
国連からの情報提供の結果、スイスで開催される国連人権理事会(UNHRC)に出席しないよう北京から圧力がかかったり、中国で逮捕されたり、拷問を受けたり、死に至ったケースもあるという。
ライリーさんによると、2013年に国連ジュネーブ事務局での中国代表部が、人権理事会で発言する予定の「中国の反政府分離主義者」の確認を求めてきた際に、この慣行を発見したという。その中には、世界ウイグル会議の現会長であるドルクン・イサ氏などが含まれていた。
ライリーさんは、クルド人活動家に関するトルコの要求を国連が拒否したように、この要求を拒否するよう提案したという。しかし、流出したメールによると、上司である人権高等弁務官事務所(OHCHR)の人権理事会支部長エリック・ティストゥネ氏が、公開会議であるため、名前の共有を遅らせれば「中国の我々に対する不信感を悪化させるだけだ」として、中国に名前を共有するよう助言した。
中国は、北西部の新疆ウイグル自治区に住むイスラム教徒のウイグル人に対して、人道に対する罪を犯し、大量虐殺を行った可能性があると告発されている。
ライリーさんは昨年、イギリスのLBC放送局で、「人権理事会で中国の虐殺に異議を唱えようとしている人がいても、国連は彼らを助けるどころか、その名前を中国に渡してしまう。中国はその情報をもとに、家族から本人に国連には行かないようにと電話して頼むよう圧力をかけたり、家族を逮捕したり、収容所に拘束したり、拷問したりしている。私は2013年からこのことを告発している」と語っていた。
テレグラフ社が入手した文書によると、国連は今週、ライリーさんに「重大な違法行為」を理由に解雇を通告した。その理由として、「国連の公式活動に関する問題に関して、外部の当事者と無許可でコミュニケーションをとった」ことが挙げられている。
ライリーさんは、「アントニオ・グテーレス国連事務総長は、国連人権委員会が反体制派の名前を中国当局に渡しているという真実を伝えたため、私を解雇した。名前を渡した(その後リストを「消失した」)国連職員は全員昇進した。調査も行われなかった。止めることができなかったのは残念だ。しかし、私はその証拠を各国政府に渡した」とツイートした。そして、各国には、「国連の最新の嘘をコピーペーストするのではなく、そろそろ行動してもらえないか?」と付け加えている。
『デイリー・テレグラフ』は、このニュースを受けて、事務総長の報道官は、国連が「内部告発者を解雇し、反体制派を弾圧する中国を助けるビジネスを行っている」ことを否定したと伝えている。
解雇の前兆として、今年6月、公益通報者保護制度の適用が認められていたライリーさんから国連が適用の除外を求めている動きがあった。こうした動きに対し、国際弁護士で元国連調査官のピーター・アンソニー・ギャロ氏は、米『フォックス・ニュース』の取材に対し、ライリーさんの試練は、明らかな不正行為に対して敢えて声を上げた職員を国連がどれだけ黙らせるかを示していると語っている。ギャロ氏は、「米国政府や他の加盟国は、このような道義に反した行為に妙に寛容だが、普通の国連職員は、エマ・ライリーに対する扱いを見て、自分も汚職や不正行為を報告すれば同じ運命をたどると理解し、報告することはしなくなるだろう。」と警鐘を鳴らしている。
一方、ライリーさんはフォックス・ニュースの取材に対し、「私は出勤することさえ許されず、国連はその理由さえ説明してくれていない。こうした報復は、中国が新しいボスであり、国連職員は中国政府を喜ばせるために規則を破ることを、報告してはならないという、すべての国連職員への露骨なメッセージを送るためのものだ」と述べていた。
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ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(67歳)は、かつてロシアを牽制するために親欧州政策を執っていたが、自国内の反政府活動家らを力づくで排除していること等を理由にして欧州連合(EU)から経済制裁を科せられてしまっている。そこで、同じくEU制裁を受けているロシアに歩み寄り、今夏に二国間軍事協力に合意して連携を強めている。以降、ロシア側の後ろ盾を受けたこともあって、中東やアフリカの難民に観光ビザを与えて自国経由隣国ポーランドやリトアニアに不法入国させることで国境問題を深刻化させ、EU制裁に対する報復措置とみられる脅しをかけている。
11月8日付米
『AP通信』:「ベラルーシの支援を受けた多数の難民がポーランド国境に押し寄せ」
数百から数千人と思しき難民が11月8日、ベラルーシからポーランド国境に押し寄せ、ワイヤーフェンスをハサミで断ち切り、枝などによじ登ってポーランド側に違法入国しようとしている。
ポーランドの内務省は、不法入国者は撃退しており、事態は収拾しつつあるとした。
また、国防省は、武装した警官隊が不法侵入を試みている難民らに薬液スプレーを浴びせる等して侵入を防ぐ対応を取っている映像を公開している。...
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11月8日付米
『AP通信』:「ベラルーシの支援を受けた多数の難民がポーランド国境に押し寄せ」
数百から数千人と思しき難民が11月8日、ベラルーシからポーランド国境に押し寄せ、ワイヤーフェンスをハサミで断ち切り、枝などによじ登ってポーランド側に違法入国しようとしている。
ポーランドの内務省は、不法入国者は撃退しており、事態は収拾しつつあるとした。
また、国防省は、武装した警官隊が不法侵入を試みている難民らに薬液スプレーを浴びせる等して侵入を防ぐ対応を取っている映像を公開している。
ベラルーシ側のメディア映像では、警官隊に物を投げつけたり、また、長い棒等を持って」フェンスを無理やり越えようとしている難民の姿が映し出されている。
ポーランド治安部隊のスタニスロー・ザリン報道官は、“ベラルーシの手引きで多数の難民がポーランド国境に押し寄せ、国境問題を引き起こさせる等ベラルーシからの対ポーランド攻撃が激化しつつある”と表明した。
そして同報道官は、“ベラルーシの治安部隊や軍隊にコントロールされた多数の難民によって、EUへの入り口でもあるポーランド国境が突き破られようとしている”とした上で、“アレクサンドル・ルカシェンコ大統領が対ベラルーシ制裁を解除させようと、ポーランドや他のEU諸国に揺さぶりをかけてきている”と糾弾した。
また、ピオトール・ミューラー内閣府報道官(32歳)は、ポーランド国境のベラルーシ側に3千~4千人の難民が押し寄せていると発表した。
なお、ポーランド国境警備担当官は11月9日朝から当該国境を封鎖するとしている。
一方、ベラルーシ内でのジャーナリストの取材活動が制限されているばかりか、目下ポーランドで非常事態宣言が出されていて、ジャーナリストや人権活動家らが国境付近に立ち入ることが禁止されているため、実際に何が起こっているのか確かなことは分からない状況である。
ただ、この中東等からの難民がベラルーシ経由EUに不法侵入しようとしているのは何ヵ月も前から起こっていて、最初にリトアニアとラトビアが標的にされ、今は主としてポーランドが狙われている。
これに対して、ベラルーシ国境警備隊のアントン・ビチコフスキー報道官は『AP通信』のインタビューに答えて、国境に殺到している難民は、“EUにおいて難民認定を申請するという権利を主張したい人たちだ”とし、“安全保障上の脅威でも何でもない”と主張した。
しかし、ポーランドや他のEU諸国は多数の難民が押し掛けるのを脅威と捉えており、難民問題に柔軟な対応をしてきたドイツのアンゲラ・メルケル首相(67歳)のシュテッフェン・ザイバート報道官(61歳)も、“ベラルーシ政権は人身売買業者のような行いをしている”と糾弾した。
また、欧州委員会(EU政策執行機関)のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(63歳)も、ベラルーシ当局による“複雑で手の込んだ攻撃”の責任を追及していくためにも、EUの27加盟国に対ベラルーシ制裁継続の承認を求めていくと表明している。
更に、在ポーランド米国臨時代理大使のビックス・アリュー氏も、ルカシェンコ政権は難民の命を危うくさせた上で、“彼らを使って国境問題を深刻化させてポーランドを挑発している”とし、“ベラルーシによる敵対的行為をすぐさま停止させる必要がある”とツイッターで訴えている。
一方、ベラルーシ出身の政治評論家バレリー・カーバレビッチ氏は『AP通信』のインタビューに答えて、“ベラルーシの手引きによって大多数の中東・アフリカ難民がEU加盟国国境付近に押し寄せ始めたのが、ロシアとベラルーシが今夏に軍事協力協定に合意してから3日後であったことから、ロシア政府が裏で糸を引いているとみられ、ベラルーシを使ってEU側に脅しをかけていると思われる”と分析している。
なお、ポーランド外務省のパウエル・ヤブロンスキー副大臣(35歳)は、在ポーランドのイラク臨時代理大使フセイン・アル=サフィー氏と面談した際、バグダッド及びアルビール(イラク北部)在のベラルーシ領事館が、これら難民に観光ビザを発行してベラルーシ経由EU域内への不法入国活動を支援していたとして、イラク政府が両領事館を閉鎖するとした措置に対して謝意を表明している。
11月9日付英国『ザ・テレグラフ』紙:「ポーランド、“EU全体の安全保障”への脅威だとしてベラルーシとの国境を封鎖」
ポーランドは11月9日、ベラルーシからポーランドに不法入国しようとする難民を阻止するため、同国国境の一部を封鎖した。
同国のマテウシュ・モラビエツキ首相(53歳)は、“ベラルーシのルカシェンコ政権が企てている難民を使って国境不安を煽る策略に恐れることはなく、EUや北大西洋条約機構(NATO)加盟国の安全保障が脅かされないよう、国境を封鎖して徹底抗戦をしていく”とツイートしている。
ポーランド政府発表によると、同国国境付近のベラルーシ側には約4千人の難民がテントを張って、隙を伺って不法侵入しようとしているという。
また、同国治安部隊の報道官によれば、ベラルーシ国内には1万2千人近くの中東・アフリカ難民が滞在しているとする。
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