<ハイライト>(10月15日午後11時現在の総感染者数順の報告)
●欧州連合(EU):欧州医薬品庁(EMA、1995年設立、本部オランダ・アムステルダム)、英国アストラゼネカ製抗体複合薬物(免疫システム脆弱者用薬品)の緊急認可用臨床試験を開始。
●米国:ジョー・バイデン大統領(78歳)、約6,600万人のワクチン未接種者への接種励行に躍起。
●インド(印):4月の国内感染者急増で一時停止していた国内産ワクチンをこのほど輸出再開。
●英国:10/14の感染者が4万5千人超と7/20以来の最高値。主として学校再開に伴う児童の感染者。
●ロシア(露):10/14の感染者及び死者数が再び最多更新。偏に、低調なワクチン接種率と大雑把な感染症防止措置。
●インドネシア(尼西):バリ島、感染率減少に伴い、10/14から海外からの旅行者受け入れ再開。但し、ワクチン接種済みか陰性者、かつ(感染下火の)特定国に限定。
●チェコ(捷克):アンドレイ・バビシュ首相(67歳、2017年就任)、3度目のワクチン接種を受け、65歳以上で未だワクチン未接種の34万人余りの市民にワクチン接種を励行。
●ハンガリー(洪牙利):(1)10/14、感染者及び入院患者数ともに直近5ヵ月間で最多となり第4波襲来の恐れ。7月初めに行動制限が大幅に解除され、マスク着用義務が撤廃されたことが要因。
(2)シーヤールトー・ペーテル外務・貿易相(42歳、2014年就任)、今年中にロシア製ワクチン・スプートニクⅤの生産上の技術情報取得予定と発表。国内のみならず世界のワクチン需要を見越して、同ワクチンの国内工場を建設中で2022年末完工予定。ただ、同ワクチンはEMA及び世界保健機関(WHO、1948年設立)とも依然未認可。
●エジプト(埃及):ハラ・ザイード保健相(54歳、2018年就任)、ワクチン接種率が未だ8%強と低調なことから、公務員、大学及び学校の教職員、更に学生・生徒を対象としたワクチン接種キャンペーンを推進と表明。
●中国:外交部(省に相当)、WHOが再度COVID-19起源調査に専門家チームを派遣するとの表明を“政治的操作”だとして非難。
<EU>
・EMAは10月14日、英国アストラゼネカ製抗体複合薬物(免疫システム脆弱者用薬品)の緊急認可用臨床試験を開始したと発表。
・これまでの同薬品の試験結果では、ガン・紅斑性狼瘡等を罹患していて免疫抑制が起きやすい患者の77%がCOVID-19発症リスク減少。
・アストラゼネカ社は先週、米食品医薬品局(FDA、1906年設立)に対しても、同薬品の特例認可(緊急使用許可)申請。認可されれば米国初だが、対象はワクチンだけでは十分な抗体が得られない免疫力が脆弱な人に限定。
<米国>(感染者4,476万7,906人、死者72万1,563人、致死率1.6%)
・バイデン大統領は10月14日、ワクチン接種義務化に関わる偽情報を非難し、約6,600万人のワクチン未接種者に対して、接種励行を強く推奨。
・同大統領は、今後数週間内に100人以上の従業員を抱える経営者に対してワクチン接種促進義務を課す意向だと表明し、また、連邦政府・産業界及び市町村に対して、“ワクチン接種が有益であると強調し、偽情報を撲滅する”べくはたらき続けるよう厳命。
<インド>(感染者3,403万592人、死者45万1,814人、致死率1.3%)
・外務省のアリンダム・バグチ報道官は、4月の国内感染者急増で一時停止していた国内産ワクチンの輸出をこのほど再開したと発表。
・同報道官によると、輸出停止前までに6,600万回分のインド産ワクチンを100ヵ国以上に供与もしくは販売しており、輸出再開後には、ネパール・バングラデシュ・イラン・ミャンマー向けに供給済み。
・インド国内では既に9億6千万回分余りのワクチンを提供済みで、成人のほぼ70%が少なくとも1回のワクチン接種済み。
<英国>(感染者831万7,439人、死者13万8,237人、致死率1.7%)
・10/14の感染者が4万5,066人と7/20以来の最高値。主として学校再開に伴う児童の感染者増。
・10/14の死者は157人と、かつて程高くなっていないが、感染者増の傾向で死者数も増加する懸念。
<ロシア>(感染者777万3,388人、死者21万6,403人、致死率2.8%)
・10/14の感染者3万1,299人及び死者986人と、再び最多記録を更新。偏に、低調なワクチン接種率と大雑把な感染症防止措置。
・ミシュスチン首相(55歳、2020年就任)は10月12日、ワクチン接種者は約4,300万人で、全体の約29%と依然低調と警鐘。
・プーチン大統領(69歳、2012年就任)も早急なるワクチン接種率向上の必要性を訴えているが、接種義務化には否定的。
<インドネシア>(感染者423万2,099人、死者14万2,848人、致死率3.4%)
・同国リゾート地のバリ島では、感染率減少に伴い、10/14から海外からの旅行者受け入れ再開を決定。
・ただ、国際線の就航が決まっていないため、実際の外国人受け入れは低調で、観光庁の見通しでは、多数の外国人訪問は11月以降。
・ジャワ及びバリ島のCOVID-19対応を担当しているルフット・ビンサル・パンジャイタン海事・投資促進担当相(74歳、2016年就任)は10月13日夕、WHOがCOVID-19感染防止対策を成し遂げていると評価している19ヵ国からの旅行者を歓迎すると表明。
・但し、同相は、バリ島到着時、ワクチン2回接種や陰性証明書携行に加えて、到着後5日間は指定ホテルでの自主隔離が必要であり、かつ、ホテル・レストラン・ビーチにおける厳格な感染防止ルールに従うことが条件である旨付言。
<チェコ>(感染者170万4,436人、死者3万524人、致死率1.8%)
・バビシュ首相は10月14日、3度目のワクチン接種を受け、65歳以上で未だワクチン未接種の34万人余りの市民にワクチン接種を励行。
・同首相は、“ワクチン接種が命を守る唯一の解決方法だ”と強調。
・同国では9月20日以降、60歳以上の高齢者、医療従事者、及び基礎疾患者向けのブースター接種(3回目)を推奨。対象者は3万人余り。
・なお、直近3日連続で新規感染者が1,500人超と、今年5月初め以来の高い数値。
<ハンガリー>(感染者83万1,866人、死者3万341人、致死率3.6%)
(1)・保健当局は、10/14の感染者1,141人、入院患者742人と、直近5ヵ月間で最多となり第4波襲来の恐れがあると発表。
・7月初めに行動制限が大幅に解除され、マスク着用義務が撤廃されたことが要因。
・ハンガリー科学学会(1825年設立)は10月11日、“COVID-19の第4波を軽減”するため、室内やイベント参加の際、また、公共交通機関利用の場合にマスクを着用するよう提言。
・欧州疾病予防管理センター(2005年設立)によると、10月14日現在のハンガリーにおけるワクチン接種率は66.6%で、EU加盟国平均値の74.7%より低調。
(2)・モスクワ訪問中のシーヤールトー外務・貿易相は10月14日、今年中にロシア製ワクチン・スプートニクⅤの生産上の技術情報を取得することでロシア側と合意したと発表。
・ロシア製スプートニクⅤは70ヵ国以上で認可・使用されているが、ハンガリーがEU加盟国の中で最初に同ワクチンを受け入れ決定。
・そこで、ハンガリーは国内のみならず世界のワクチン需要を見越して、同ワクチンの国内工場を同国第2の都市デブレツェン(同国東部)に建設することを決定。同工場は目下、2022年末完工予定。
・但し、同ワクチンはEMA及びWHOとも依然未認可。
<エジプト>(感染者31万5,842人、死者1万7,846人、致死率5.7%)
・ザイード保健相は10月13日の閣僚会議の席上、ワクチン接種率が未だ8%強と低調なことから、公務員、大学及び学校の教職員、更に学生・生徒を対象としたワクチン接種キャンペーンを推進中と説明。
・1日当たりの新規感染者は1千人弱で推移しているが、ワクチン接種率が10%に達していないことから、今後の感染拡大を懸念。
・なお、実際の感染者・死者総数はもっと多いとの情報。
<中国>(感染者9万6,488人、死者4,636人、致死率4.8%)
・外交部の趙立堅報道官(チャオ・リーチアン、48歳)は、WHOが再度COVID-19起源調査に専門家チームを派遣するとの表明について、中国に難癖をつける国による“政治的操作”だとして非難。
・WHOは10月13日、今年2月の中国・武漢(ウーハン)の現地調査が不十分だったとして、再調査のために新たに現地に派遣する25人の専門家を受け入れるよう中国側に要求すると発表。
・なお、2月の調査隊は、中国側からウィルスに関わる生データの提出を保留されていたにも拘らず、COVID-19が武漢研究所から漏出した可能性は“極めて低い”との報告書を出していて、多くの専門家から、入念に検査していない不十分な報告書だとの非難の声。
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国連では今週、第76回総会が2年振りに多くの首脳を迎えて開催されている。そのうち、就任後初出席となったジョー・バイデン大統領(78歳)、そしてビデオ出席となった習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)が異口同音に、具体的国名は言及しなかったものの、大国間の争いに勝利すると宣言している。そこで国連事務総長が、このまま新たな米中冷戦に突き進むことの懸念を表明し、米ソ冷戦時代とは違って、鎮静化が非常に難しいとして双方に関係修復を促している。
9月22日付米
『SBGニュース』(1986年設立の全米最大級のローカルテレビ局運営のシンクレア・ブロードキャスト・グループ):「国連事務総長、米中冷戦勃発を懸念」
地球温暖化対策、遅れ気味の世界レベルの新型コロナウィルス(COVID-19)ワクチン配布問題、更には世界経済の再活性化と、世界をリードする大国にとって、一緒に戦っていくべき長期的かつ切実な問題が山積している。
しかし、9月19日に『AP通信』のインタビューに答えたアントニオ・グテーレス国連事務総長(72歳、ポルトガル元首相、2017年就任)は、両大国が向かおうとしている危険極まりない対決姿勢について警鐘を鳴らした。
同事務総長は、現下の米中関係は、“全くの機能不全”に陥っていると、具体例を挙げて強調した。
同事務総長は、“現在懸念される米中新冷戦は、かつての米ソ冷戦と違って、より多くの危険をはらみ、かつ、うまく治めるのは非常に困難な代物であるから、何としてでもこれを回
避させる必要がある”と訴えた。
多くの専門家も懸念するとおり、COVID-19対応問題に関わる様々な衝突、米軍撤退後のアフガニスタンにおける中国軍の展開、更には、米中貿易に関わる関税賦課合戦や中国によるサイバー攻撃等、米中間の対立事態は余りにも多い。
ジョー・バイデン大統領は9月21日、国連総会での演説で、“我々は新冷戦に突入することは全く考えていない”と強調している。
しかし、米中両国の対立が激しくなるのは疑いもないことであろう。
何故なら、先週(9月15日)に合意された米・英・オーストラリア3ヵ国の安全保障枠組み(AUKUS)の仮想敵国は中国とされており、同大統領自身もこの安全保障取り組みが最優先される事項だと言及しているからである。
「やがて訪れる中国の崩壊」(2001年発刊)の著者であるゴードン・チャン氏(70歳、作家・弁護士)は、“バイデン政権は、中国が米国政府を打倒するために、総合的かつ悪意のあるやり方で迫ってくるということをよく理解する必要がある”とコメントしている。
同氏の見解は、多くの人に受け入れられてはいないが、無視できないことは、香港・チベット・ウィグル族問題から南シナ海における一方的な制海権固執にみてとれるように、中国が世界の民主主義を押し退けようとしているという点である。
なお、米国防総省のロイド・オースティン長官(68歳)は9月16日、“我々は中国共産党政府と良好な関係を築く努力をしていくが、彼らが既に確立された国際秩序を覆そうとする活動を行わないか、しっかり注視していく意向である”と発言している。
9月21日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「グテーレス国連事務総長、新冷戦を回避するため米中両国に関係修復を要求」
グテーレス国連事務総長は、国連総会開催前に『AP通信』のインタビューに答えて、米中関係は“完全に破壊されて”しまっており、このままでは米中新冷戦に突入し、その結果世界中の多くの国に累が及ぶことになる恐れがあるので、両国に対して関係修復に努めるよう強く要求すると語った。
同事務総長は具体的に、米中両国が、気候変動対策、世界経済再活性化、人権問題、サイバーセキュリティ、南シナ海領有権問題等々、お互いにもっと協力すべく振舞う必要がある、と強調した。
これに対して、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官(42歳)は9月20日、同事務総長が言及した、米中関係は破壊されているという評価について、米国政府は受け入れられないと表明した。
同報道官は、両国は“衝突というより競合関係”にあるとした上で、バイデン大統領も、“世界のどの国とも冷戦に発展させる意向は全くない”と明言している、と付言した。
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