欧米諸国は、ロシアによるウクライナ軍事侵攻を非難して、一斉に対ロシア制裁を強化している。これに対して、ロシア側も細やかな抵抗ながら、国際宇宙ステーション(ISS、注後記)への補給船の輸送等に提供されているソユーズ・ロケットの打ち上げ協力を停止すると発表した。
2月27日付米
『スペース・ポリシー・オンライン』ニュース(1973年設立の米宇宙政策等の専門ニュース)は、「ロシア、米国及び欧州との宇宙開発協力事業の一部を停止と発表」と題して、欧米諸国からの制裁に抵抗して、ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス、1992年設立)が、欧米諸国と進めている宇宙開発事業の一部について協力を拒否すると発表したと報じた。
すなわち、米国及び欧州諸国は、ロシアによるウクライナ軍事侵攻を非難して、対ロシア制裁を強化したが、これに対抗するかのように、ロシア側は、ISSへの補給船の輸送等に提供されているソユーズ・ロケットの打ち上げ協力を停止すると発表した。
ロスコスモスのドミトリー・ロゴ-ジン長官(58歳、2018年就任)が2月26日に発表したもので、ソユーズ・ロケットの打ち上げ事業に関わっているフランス領ギアナ(南米北東端)のクールー宇宙センター派遣のロシア人スタッフ87人全員を帰国させることとし、これによってソユーズ・ロケットの打ち上げを停止することとしたものである。
同長官は、“欧州によるロシア企業等への制裁に対抗するため、ロスコスモスはクールー宇宙センターにおける欧州側との協力事業を停止することとし、宇宙飛行士含めた関係技術者も全て引き揚げさせる”と表明した。
同宇宙センターからは、ロスコスモスと欧州ロケット打ち上げ企業アリアンスペース(1980年設立、フランス本拠)が直近10年余り、欧州製のアリアン・ロケット(大型)及びベガ・ロケット(小型)、そしてロシア製のソユーズ・ロケット(中型)打ち上げで協力してきた。
欧州連合(EU)は、米国製のグローバル・ポジショニング・システム(全地球衛星測位システム)と近似のガリレオ・ナビゲーション・サテライトシステム用衛星を打ち上げるためにソユーズ・ロケットを最も頻繁に使用してきており、実際、今年4月にも追加衛星の打ち上げが予定されていた。
しかし、欧州委員会(1967年設立のEU政策執行機関)の宇宙開発担当のティエリ―・ブルトン委員(67歳、元フランス財務相)は、ガリレオ用衛星はアリアン・ロケットでも打ち上げられるので、ロシア側の決定に遭っても影響は限定的だと述べた。
2月26日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュースは、「ロスコスモス、米国の対ロシア追加制裁に抵抗してベネラ-D計画での協力事業を停止と発表」と題して、ロシアが主導で進めている金星探査機打ち上げ計画ベネラ-Dにおける協力事業を停止することとしたと報じている。
ロスコスモスのロゴージン長官は2月26日、米国による対ロシア制裁発動に抵抗して、金星探査計画のベネラ-Dにおける米国との共同事業を停止すると発表した。
ロシアは、2029年11月に金星探査機ベネラ-Dを打ち上げる予定である。
更に、2031年6月及び2034年6月にも追加探査機打ち上げを計画していて、米国航空宇宙局(NASA、1958年設立)も、同様に2028~2030年を目標に2度の金星探査機打ち上げを計画していて、開発計画実施に当たって協力していくこととなっていた。
(注)ISS:米国・ロシア・日本・カナダ及び欧州宇宙機関 (ESA、2012年設立) が協力して運用している宇宙ステーション。地球及び宇宙の観測、宇宙環境を利用した様々な研究や実験を行うための巨大な有人施設。1998年11月から軌道上での組立が開始され、2011年7月に完成。当初の運用期間は2024年までの予定であったが、2022年2月、米航空宇宙局NASAは2030年まで運用を継続すると発表。
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<ハイライト>(10月15日午後11時現在の総感染者数順の報告)
●欧州連合(EU):欧州医薬品庁(EMA、1995年設立、本部オランダ・アムステルダム)、英国アストラゼネカ製抗体複合薬物(免疫システム脆弱者用薬品)の緊急認可用臨床試験を開始。
●米国:ジョー・バイデン大統領(78歳)、約6,600万人のワクチン未接種者への接種励行に躍起。
●インド(印):4月の国内感染者急増で一時停止していた国内産ワクチンをこのほど輸出再開。
●英国:10/14の感染者が4万5千人超と7/20以来の最高値。主として学校再開に伴う児童の感染者。
●ロシア(露):10/14の感染者及び死者数が再び最多更新。偏に、低調なワクチン接種率と大雑把な感染症防止措置。
●インドネシア(尼西):バリ島、感染率減少に伴い、10/14から海外からの旅行者受け入れ再開。但し、ワクチン接種済みか陰性者、かつ(感染下火の)特定国に限定。
●チェコ(捷克):アンドレイ・バビシュ首相(67歳、2017年就任)、3度目のワクチン接種を受け、65歳以上で未だワクチン未接種の34万人余りの市民にワクチン接種を励行。
●ハンガリー(洪牙利):(1)10/14、感染者及び入院患者数ともに直近5ヵ月間で最多となり第4波襲来の恐れ。7月初めに行動制限が大幅に解除され、マスク着用義務が撤廃されたことが要因。
(2)シーヤールトー・ペーテル外務・貿易相(42歳、2014年就任)、今年中にロシア製ワクチン・スプートニクⅤの生産上の技術情報取得予定と発表。国内のみならず世界のワクチン需要を見越して、同ワクチンの国内工場を建設中で2022年末完工予定。ただ、同ワクチンはEMA及び世界保健機関(WHO、1948年設立)とも依然未認可。
●エジプト(埃及):ハラ・ザイード保健相(54歳、2018年就任)、ワクチン接種率が未だ8%強と低調なことから、公務員、大学及び学校の教職員、更に学生・生徒を対象としたワクチン接種キャンペーンを推進と表明。
●中国:外交部(省に相当)、WHOが再度COVID-19起源調査に専門家チームを派遣するとの表明を“政治的操作”だとして非難。
<EU>
・EMAは10月14日、英国アストラゼネカ製抗体複合薬物(免疫システム脆弱者用薬品)の緊急認可用臨床試験を開始したと発表。
・これまでの同薬品の試験結果では、ガン・紅斑性狼瘡等を罹患していて免疫抑制が起きやすい患者の77%がCOVID-19発症リスク減少。
・アストラゼネカ社は先週、米食品医薬品局(FDA、1906年設立)に対しても、同薬品の特例認可(緊急使用許可)申請。認可されれば米国初だが、対象はワクチンだけでは十分な抗体が得られない免疫力が脆弱な人に限定。
<米国>(感染者4,476万7,906人、死者72万1,563人、致死率1.6%)
・バイデン大統領は10月14日、ワクチン接種義務化に関わる偽情報を非難し、約6,600万人のワクチン未接種者に対して、接種励行を強く推奨。
・同大統領は、今後数週間内に100人以上の従業員を抱える経営者に対してワクチン接種促進義務を課す意向だと表明し、また、連邦政府・産業界及び市町村に対して、“ワクチン接種が有益であると強調し、偽情報を撲滅する”べくはたらき続けるよう厳命。
<インド>(感染者3,403万592人、死者45万1,814人、致死率1.3%)
・外務省のアリンダム・バグチ報道官は、4月の国内感染者急増で一時停止していた国内産ワクチンの輸出をこのほど再開したと発表。
・同報道官によると、輸出停止前までに6,600万回分のインド産ワクチンを100ヵ国以上に供与もしくは販売しており、輸出再開後には、ネパール・バングラデシュ・イラン・ミャンマー向けに供給済み。
・インド国内では既に9億6千万回分余りのワクチンを提供済みで、成人のほぼ70%が少なくとも1回のワクチン接種済み。
<英国>(感染者831万7,439人、死者13万8,237人、致死率1.7%)
・10/14の感染者が4万5,066人と7/20以来の最高値。主として学校再開に伴う児童の感染者増。
・10/14の死者は157人と、かつて程高くなっていないが、感染者増の傾向で死者数も増加する懸念。
<ロシア>(感染者777万3,388人、死者21万6,403人、致死率2.8%)
・10/14の感染者3万1,299人及び死者986人と、再び最多記録を更新。偏に、低調なワクチン接種率と大雑把な感染症防止措置。
・ミシュスチン首相(55歳、2020年就任)は10月12日、ワクチン接種者は約4,300万人で、全体の約29%と依然低調と警鐘。
・プーチン大統領(69歳、2012年就任)も早急なるワクチン接種率向上の必要性を訴えているが、接種義務化には否定的。
<インドネシア>(感染者423万2,099人、死者14万2,848人、致死率3.4%)
・同国リゾート地のバリ島では、感染率減少に伴い、10/14から海外からの旅行者受け入れ再開を決定。
・ただ、国際線の就航が決まっていないため、実際の外国人受け入れは低調で、観光庁の見通しでは、多数の外国人訪問は11月以降。
・ジャワ及びバリ島のCOVID-19対応を担当しているルフット・ビンサル・パンジャイタン海事・投資促進担当相(74歳、2016年就任)は10月13日夕、WHOがCOVID-19感染防止対策を成し遂げていると評価している19ヵ国からの旅行者を歓迎すると表明。
・但し、同相は、バリ島到着時、ワクチン2回接種や陰性証明書携行に加えて、到着後5日間は指定ホテルでの自主隔離が必要であり、かつ、ホテル・レストラン・ビーチにおける厳格な感染防止ルールに従うことが条件である旨付言。
<チェコ>(感染者170万4,436人、死者3万524人、致死率1.8%)
・バビシュ首相は10月14日、3度目のワクチン接種を受け、65歳以上で未だワクチン未接種の34万人余りの市民にワクチン接種を励行。
・同首相は、“ワクチン接種が命を守る唯一の解決方法だ”と強調。
・同国では9月20日以降、60歳以上の高齢者、医療従事者、及び基礎疾患者向けのブースター接種(3回目)を推奨。対象者は3万人余り。
・なお、直近3日連続で新規感染者が1,500人超と、今年5月初め以来の高い数値。
<ハンガリー>(感染者83万1,866人、死者3万341人、致死率3.6%)
(1)・保健当局は、10/14の感染者1,141人、入院患者742人と、直近5ヵ月間で最多となり第4波襲来の恐れがあると発表。
・7月初めに行動制限が大幅に解除され、マスク着用義務が撤廃されたことが要因。
・ハンガリー科学学会(1825年設立)は10月11日、“COVID-19の第4波を軽減”するため、室内やイベント参加の際、また、公共交通機関利用の場合にマスクを着用するよう提言。
・欧州疾病予防管理センター(2005年設立)によると、10月14日現在のハンガリーにおけるワクチン接種率は66.6%で、EU加盟国平均値の74.7%より低調。
(2)・モスクワ訪問中のシーヤールトー外務・貿易相は10月14日、今年中にロシア製ワクチン・スプートニクⅤの生産上の技術情報を取得することでロシア側と合意したと発表。
・ロシア製スプートニクⅤは70ヵ国以上で認可・使用されているが、ハンガリーがEU加盟国の中で最初に同ワクチンを受け入れ決定。
・そこで、ハンガリーは国内のみならず世界のワクチン需要を見越して、同ワクチンの国内工場を同国第2の都市デブレツェン(同国東部)に建設することを決定。同工場は目下、2022年末完工予定。
・但し、同ワクチンはEMA及びWHOとも依然未認可。
<エジプト>(感染者31万5,842人、死者1万7,846人、致死率5.7%)
・ザイード保健相は10月13日の閣僚会議の席上、ワクチン接種率が未だ8%強と低調なことから、公務員、大学及び学校の教職員、更に学生・生徒を対象としたワクチン接種キャンペーンを推進中と説明。
・1日当たりの新規感染者は1千人弱で推移しているが、ワクチン接種率が10%に達していないことから、今後の感染拡大を懸念。
・なお、実際の感染者・死者総数はもっと多いとの情報。
<中国>(感染者9万6,488人、死者4,636人、致死率4.8%)
・外交部の趙立堅報道官(チャオ・リーチアン、48歳)は、WHOが再度COVID-19起源調査に専門家チームを派遣するとの表明について、中国に難癖をつける国による“政治的操作”だとして非難。
・WHOは10月13日、今年2月の中国・武漢(ウーハン)の現地調査が不十分だったとして、再調査のために新たに現地に派遣する25人の専門家を受け入れるよう中国側に要求すると発表。
・なお、2月の調査隊は、中国側からウィルスに関わる生データの提出を保留されていたにも拘らず、COVID-19が武漢研究所から漏出した可能性は“極めて低い”との報告書を出していて、多くの専門家から、入念に検査していない不十分な報告書だとの非難の声。
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