ウクライナ戦争:ロシアの工業生産が赤字に
ロシア政府は欧米の制裁にうまく抵抗していると主張しているが、数字はロシア経済が苦しんでいること示している。禁輸の対象外であるガスの輸出も大幅に減少している。
仏誌
『レクスプレス』によると、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアの工業生産が初めて赤字になった。ロシア連邦国家統計局 (Rosstat)によると、工業生産が1年間で1.6%、先月には1ヶ月間で8.5%減少している。例えば自動車産業は、依存する外国製スペアパーツの納入が停止したことで麻痺状態に陥っている。フランス国立東洋言語文化学院の経済学講師ジュリアン・ベルキューユ氏は次のように述べている。「自動車産業は特にフランス、ドイツ、日本といった西洋のバリューチェーンに組み込まれているため、ほとんど完全に停止している。...
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仏誌
『レクスプレス』によると、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアの工業生産が初めて赤字になった。ロシア連邦国家統計局 (Rosstat)によると、工業生産が1年間で1.6%、先月には1ヶ月間で8.5%減少している。例えば自動車産業は、依存する外国製スペアパーツの納入が停止したことで麻痺状態に陥っている。フランス国立東洋言語文化学院の経済学講師ジュリアン・ベルキューユ氏は次のように述べている。「自動車産業は特にフランス、ドイツ、日本といった西洋のバリューチェーンに組み込まれているため、ほとんど完全に停止している。ロシアの自動車生産台数は1年間で85%以上減少している。鉱業の分野でも困難に直面している。欧州諸国が決定した8月からの石炭禁輸が影響している。」
なお、石油・ガス生産量も1ヶ月で10.9%減少している。こうした中、欧州連合(EU)はロシアに対して第6次制裁措置を採決し、その一環として、ロシアの石油輸入がほぼ90%制限されることになった。また、ガスについては、EU27ヶ国の一部の国のロシア依存度が高いものの、ロシアの輸出量は2022年1月から5月の間に27.6%減少している。
こうした減少は、EU諸国がガス購入の3分の1について新しい供給元を見つけ、いくつかの国はロシアの要求するルーブルでの支払いを拒否したことに起因していると考えられる。供給が停止されたことで、ロシアはブルガリア、ポーランド、最近ではデンマークやフィンランドなどの市場を失ったことにもなる。そして、原油価格の上昇と輸入品の減少によって維持されていたルーブルが、その価値を失う危機に瀕している。
4月の消費については、現在18%近いインフレのため、前年比10%減となったが、ベルキューユ氏は「ロシアでは内需が成長の主なエンジン」になっていると強調する。プーチン大統領は、国民を安心させるために「専門家たちは、インフレ率は年末までに15%を超えることはない」と述べているが、ロシア中央銀行を含む他の専門家たちは、18%から23%の間で推移すると見ている。
なお、仏経済紙『ラ・トリビューヌ』は、ロシア政府は、加盟国がモスクワに対する第6次制裁措置の一部として決定した石油禁輸措置の影響を「最小限に抑える」ことができると自信を示したと伝えている。ロシアはヨーロッパが依存しているガスからの収入をまだ当てにできる。しかし、インフレの加速など制裁の影響が出始めており、多くのエコノミストは今後数ヶ月のうちに状況は悪化すると考えている。
米『ブルームバーグ』によると、ドイツのロベルト・ハーベック副首相兼経済相は2日、ウクライナ侵攻に伴う国際的な制裁によりロシア経済は大きな打撃を受けており、そのダメージは今後ますます明確になると語った。副首相は連邦議会で、石油やガスなどの商品から収入を得ているものの、ロシアは「そのほとんど使うことができない」と指摘した。また、航空機のソフトウェアセキュリティのアップデートの遅れにより航空機はまもなく飛べなくなり、ハイテク機器の不足は「生産工程の破壊につながるだろう」と述べた。そして、「プーチンはこれ以上長くは戦争を続けられない。時間はロシアに有利には働かず、ロシアに不利に働き、ロシア経済に不利に働いている。」と主張した。「我々はロシア経済を徹底的に切り崩すつもりだ。」とも述べた。
しかし、ウクライナ戦争が4カ月目に入った今でも、制裁によってプーチン大統領が軍事作戦を放棄するような姿勢は全く見えてこない。
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中国、李克強首相が経済の危機的状況を報告
中国は現在、2020年初頭以来最悪の新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われており、上海など大都市での厳しい自宅待機命令と渡航制限によって感染を抑え込もうとしている。そうした厳しいゼロコロナ政策によって打撃を受けた経済を立て直すために、25日に、全国規模の緊急テレビ会議が開かれた。李克強首相は会議の中で、厳しい経済状況について報告している。
米
『CNBC』によると、中国国営メディアは25日、李克強首相が緊急会議の場で、中国経済がいくつかの分野で、パンデミックに襲われた2020年よりも深刻な状態にあると述べたことを報じた。李克強首相は、中国経済の通年見通しを決定するための「重要な時期」にあると警告し、第2四半期の成長と失業率の低下のために「懸命に働く」よう関係者に呼びかけたという。
中国銀行のZong Liang主席研究員は、このような規模の会合は何年も行われておらず、一度にこれほど多くの階層の関係者が参加した会合は前例がないと述べた。...
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米
『CNBC』によると、中国国営メディアは25日、李克強首相が緊急会議の場で、中国経済がいくつかの分野で、パンデミックに襲われた2020年よりも深刻な状態にあると述べたことを報じた。李克強首相は、中国経済の通年見通しを決定するための「重要な時期」にあると警告し、第2四半期の成長と失業率の低下のために「懸命に働く」よう関係者に呼びかけたという。
中国銀行のZong Liang主席研究員は、このような規模の会合は何年も行われておらず、一度にこれほど多くの階層の関係者が参加した会合は前例がないと述べた。通常、中国政府の政策は政府のいくつかの層を通して伝達されるため、今回のようなあらゆる層に直接語りかけるような会議は効率が良いと指摘した。ゴールドマンサックスのアナリストたちは、このテレビ会議を「全国の省、市、県レベルの地方政府関係者」を含めた会議であったと説明している。仏『RFI』は、会議には全国から10万人が参加したと報じている。
専門家たちは、李克強首相が会議の場で、第2四半期に成長を達成するよう求めたことについて、「今年3月初めに設定した5.5%前後の成長目標が非常に厳しいということを暗に認めたのかもしれない」と述べている。『ブルームバーグ』の調査では、今年の経済成長率はわずか4.5%と予想されており、モルガン・スタンレーは3.2%まで下方修正している。香港『サウスチャイナモーニング・ポスト』は、今年に入ってからの中国経済の急激な反転は、3月下旬からの上海での強硬なロックダウンが一因となり、消費財から電気自動車まで、幅広い産業分野に打撃を与えたと伝えている。例えば、上海では4月に新車が1台も売れず、全国の新エネルギー車の販売台数は前月比で38.3%減少した。
李首相は、税収が影響を受けていること、一部の地方が中央政府に借金を要請していることも明らかにした。土地の売却は依然として地方自治体の主要な財源であるものの、ここ数カ月で不動産収入が30%近くも減少しているという。李克強は、さらなる減税と雇用支援を約束した。
なお、英『エコノミスト』は、中国では16歳から24歳の若者の都市部での失業率は昨年平均で14%強であったが、今年4月には18.2%に上昇し、2018年の調査開始以来最高水準となったと伝えている。『サウスチャイナモーニング・ポスト』も、中国の厳格なゼロ金利政策の下、ハイテクから新エネルギー自動車に至るまで、あらゆる業界で新入社員の内定取り消しが急増しており、中国の若者に就職の危機が迫っていると伝えている。
20年以上ぶりに、内定を持たない卒業生の数が、内定を持つ卒業生の数を大幅に上回る可能性があると見られている。上海のトップのロースクールである華東政法大学から流出した文書によると、5月上旬の時点で就職先が決まった卒業生は5人に1人に過ぎなかった。同校は中国の公式メディアに対し、流出したデータは実像を表していないと述べたが、それ以外の数値は明らかにしなかった。
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