中国の大都市圏でCOVID-19感染が再拡大し、少なくとも44都市で大掛かりの都市封鎖措置、あるいは部分的な行動制限が取られている。
この措置に伴う経済活動の停滞が発生し始めていて、長期の外出禁止等に遭っている住民の不満が噴出しているのみならず、後退気味の中国経済の足かせから世界市場への悪影響までが懸念され始めている。
2,500万人の人口を抱える上海市では、大規模都市封鎖に多くの住民が不満を募らせたことから、一部規制緩和に動き始めているが、多くの経済活動は停止したままである。...
全部読む
中国の大都市圏でCOVID-19感染が再拡大し、少なくとも44都市で大掛かりの都市封鎖措置、あるいは部分的な行動制限が取られている。
この措置に伴う経済活動の停滞が発生し始めていて、長期の外出禁止等に遭っている住民の不満が噴出しているのみならず、後退気味の中国経済の足かせから世界市場への悪影響までが懸念され始めている。
2,500万人の人口を抱える上海市では、大規模都市封鎖に多くの住民が不満を募らせたことから、一部規制緩和に動き始めているが、多くの経済活動は停止したままである。
また、香港北西部の広州市(クワンチョウ)では、半導体等の多くの工場が今週一杯閉鎖させられている。
更に、野村総合研究所(1965年設立)のエコノミストが4月14日に公表した報告によると、14億人の国民に食糧を供給するために農村部で行われる春の作付けが阻害されることから、不足となる小麦やその他食料を世界市場から手当てすることを余儀なくされ、結果として価格高騰を招く恐れがあるとしている。
COVID-19感染再拡大は中国共産党に大きな困惑をもたらしており、大きく後退した経済成長を再活性化しようと目論んでいた政府幹部に冷水を浴びせることとなっている。
また、今秋に5年に一度開催される共産党大会において、これまでの慣例を破って、3期目を勝ち取ることを狙っていた習近平国家主席にとっても痛手となる。
しかし、『新華社通信』報道によると、習国家主席は4月13日、規制緩和に動いている欧米諸国と違って、「ゼロコロナ政策」を堅持すると表明したという。
同国家主席は、“防疫管理の取り組みを緩和することはできない”とし、“人民至上、生命至上の原則を堅持することが勝利をもたらす”と強調したとする。
かかることから、野村総研エコノミストの盧亭(ルー・ティン)、王敬(ワン・チン)、ハリソン張(チャン)の3氏は報告書の中で、“物流は悪化の一途”であり、“これに加えて、春の作付け遅延で中国産穀物の市場価格高騰が懸念される”と解説している。
中国国家衛生健康委員会(NHC、1949年前身設立)は4月14日、中国本土の新規感染者が2万9,411人に上り、うち95%に相当する2万7,719人が上海市で発生したと発表した。
NHC高官は4月13日、上海市は依然新規感染制御ができていないにも拘らず、一部行動制限を緩和してしまったと非難している。
ただ、一部緩和されたとは言え、例えば世界最大の貨物取扱量を誇る上海港においては、中国欧州商工会議所(2000年設立、本部北京)によると荷捌き量が40%も減少していて、部品調達に混乱を来した自動車メーカー等が生産停止を余儀なくされているという。
更に、中国南部含めて感染拡大に伴う経済活動制限に遭って、世界市場向けのスマートフォン・家電等の生産・供給に影響が出始めていることから、経済専門家らは、中国の2022年経済成長率が5%まで落ち込むことになるとの予想を立てている。
なお、2021年の成長率は8.1%だったが、昨年半ば以降の金融引き締め政策に伴う不動産市場の下落等もあって、2021年第4四半期(10~12月期)が年率換算4.0%にまで落ち込んだこともあって、共産党政府は2022年成長率を5.5%と、従来より低めに設定していた。
閉じる
中国国営メディアは、新型コロナウイルスの封鎖が国内流通と国際輸送に深刻な問題を引き起こしていると報じている。中国の輸入は、世界的なパンデミックの回復の中で、1月と2月に15.5%増加し、専門家たちは3月に少なくとも8%の成長を予測していたが、代わりに0.1%の減少となった。
米
『ブライトバート』によると、ピンポイント・アセット・マネージメントの首席エコノミスト、張智威氏は「中国の3月の輸出は好調を維持したが、輸入は崩壊した。輸入の低迷は、オミクロンの発生により中国の主要港を通過する物資の流れが滞ったことを反映していると思われる。3月の輸入はそれ以前の注文を反映しているので、おそらく需要減退が原因ではない」と指摘している。張氏は「サプライチェーンの混乱は工業生産に悪影響を及ぼす」ため、4月には輸入がさらに減少し、少なくとも5月までは低迷する可能性があると予想している。
中国国営紙の環球時報は12日、新型コロナウイルスによるロックダウンが「物流の混乱と出荷の遅れ」を引き起こしていると報じ、数日間の大量検査が完了すれば、通常の出荷は必ず再開されると伝えた。12日の別の環球時報の記事は、輸入の減少は、「新型コロナウイルスの流行からの回復の遅れ、米国のインフレ率の急上昇、ロシア・ウクライナ紛争、米国の高金利」、さらに中国の一部で新型コロナウイルスが再燃していることによると指摘している。また、「上海での流行は、貿易の流れにも影響を及ぼしている。世界最大のコンテナ港である上海港はまだ操業しているが、周辺地域の封鎖や交通遮断により、配送が困難になっている」と伝えている。
香港の『サウスチャイナモーニング』は、中国の輸入が1年半ぶりに月間で減少したことで、中国当局は、強硬なゼロコロナ戦略が中国の輸出を脅かし、経済成長の重荷になりかねないという警鐘が鳴らされているようだと伝えている。同紙は、オミクロンの発生を抑えるための主要港の閉鎖や、ロシア・ウクライナ戦争による商品価格の高騰など、多くの要因があげられると伝えているが、税関総局の13日の発表は、内需とサプライチェーンの混乱も原因の一つになっていると報告している。世界第4位の港を持つ深センは3月中旬の1週間、ほとんどの経済活動を停止し、世界で最も忙しい港を持つ商業の中心地、上海は先月末に封鎖された。天津や広州など他の主要な港湾都市でも感染が報告されている。
カナダからの購入量は28.2%減少し、次いでアメリカからの購入量が12%減少し、EUからの購入量が11.6%減少した。しかし、同紙の計算によると、中国の主要なエネルギー供給国であるロシアからの輸入は、先月26.4%増加した。中国の輸出は先月、前年同期比14.7%増の2760億米ドルとなったが、1~2月期の16.3%から減速している。
世界のサプライチェーンの要である中国は、膨大な数の中間製品を輸入し、加工してから再輸出している。専門家たちは、原油から鉄鉱石、穀物まで世界最大の購入国である中国は、原材料の国際価格高騰に対して特に脆弱であると警告している。3月の原油輸入は前年同月比14%減の4270万トンとなった。国内建設に不可欠な製鉄原料である鉄鉱石の購入量は、3月は14.5%減の8728万トンとなった。一方、中国の先月の穀物輸入量は約1200万トンで、前年比5.6%減となった。輸入の減少により、間もなく輸出が打撃を受ける可能性があると、専門家たちは述べている。
閉じる