英シンクタンク、2024年の生活水準下げ止まり予測
英シンクタンクの調査によると、英国では平均的な労働者世帯で来年には2019年と比べ4%生活水準が下がると予測されている。
9月6日付英
『Guardian』:「2024年労働者の生活レベルは2019年より低下との予測」:
低中所得世帯を調査する英シンクタンク「Resolution Foundation」によると、来年、平均的な国民では4%生活レベルが下がる一方で、安泰なのは富裕層の年金生活者だという。
英国の労働者の生活水準は、次期総選挙を控えた来年下げ止まり、2019年よりも落ち込んでいると予測され、報告では、「英国世帯はこれ程貧困を経験したことがないレベル」だという。...
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9月6日付英
『Guardian』:「2024年労働者の生活レベルは2019年より低下との予測」:
低中所得世帯を調査する英シンクタンク「Resolution Foundation」によると、来年、平均的な国民では4%生活レベルが下がる一方で、安泰なのは富裕層の年金生活者だという。
英国の労働者の生活水準は、次期総選挙を控えた来年下げ止まり、2019年よりも落ち込んでいると予測され、報告では、「英国世帯はこれ程貧困を経験したことがないレベル」だという。
住宅ローンの上昇、税金の急激な引き上げ、経済の低迷により、1950年代以降の統計史上5カ年間で最も低い所得となっている。
エコノミストは、「来年の所得の安定予測が多くの世帯により安心材料となるが、生活水準でみると、先行きは厳しく、より低所得層でダメージが大きい」とする。
別の調査によると、来年の景気悪化は、EU離脱による貿易減少を一旦とする欧州および各国への輸出量の減少によるものだという。
英国商工会議所 (BCC) の四半期予測によれば、今年、英国は不景気を回避できたが、「経済指数は危険信号」で今後2年は「深刻な低成長」だとしている。
シンクタンクのアナリストは、平均的な労働者世帯では、2024~25年の所得は2019~2020年に比べ4%減少、2005~2006年から2010~2011年の1%減少を大きく上回る。
一方で改善している点としては、インフレ率が昨年の11.1%から今年7月は6.8%に下がっており、金利引き上げは数ヶ月で終了すると見られている。ローン金利高や家賃高、増税、財政悪化により回復は遅れるとみられる。
金利上昇により貯蓄を持つ人々が恩恵を受けている。来年の金利による総収入増加で、貯蓄が多くローンのない年金受給者が最も有利となる。65~74歳の世帯では、35歳未満の世帯より、平均6倍の収入増となっている。
最貧困層(平均所得の4割と定義)の数は、来年30万人増加し、2024年には1200万人に達するとみられている。
同日付英『フィナンシャル・タイムズ』:「次期選挙まで英国民の生活水準は下げ止まりか」
英シンクタンクの調査によると、英国では労働者世帯で来年までに生活水準の改善はみられそうにない。
「The Resolution Foundation」が6日、インフレ緩和の影響で、平均賃金が消費者物価価格より早いペースで上昇している一方、所得は高額増税やローンの支払い、政府による生活費支援の終了により相殺されると発表。課税最低額は2028年まで固定されており、税控除後の所得の回復は遅れる見通しとしている。
労働者平均では、可処分所得が横ばい、過去2年では4%の減少を予測。政府による支援で最も恩恵を受けてきた最貧困層の半数世帯では、1%の可処分所得の減少も予測されている。
このような経済状況から、スナク英首相は、パンデミック以降の経済回復を示す最新データがある一方で苦しい選挙戦となるとみられている。
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BRICSサミット、新興6ヵ国の追加メンバー受け入れ合意も、その他は同床異夢で何ら未決定【米メディア】
BRICS新興5ヵ国(2011年発足)はこの程、南アフリカにおいて首脳会議(サミット)を開催し、新たに新興6ヵ国の追加メンバー国の受け入れで合意した。しかし、その他、西側支配への挑戦や国際通貨基金(IMF、1945年創設)・世界銀行(1945年創設)等の欧米主導の国際機関への対抗を謳っていたものの、共通通貨の採用はもとより、基軸通貨の脱米ドル政策でも合意に至らず、むしろ加盟国間の思惑の不一致を露呈してしまっている。
8月28日付
『ビジネス・インサイダー』オンラインニュース(2009年開設のビジネス・技術専門メディア)は、直近開催のBRICSサミットにおいて、新興6ヵ国の追加参加が決まって規模は大きくなるものの、本来の主眼である西側対抗軸構築の構想では全く纏まりを欠いたと報じている。
BRICSサミットが、8月24日までの3日間、南アフリカで開催され、新たに新興6ヵ国(イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア)の加盟が決定された。...
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8月28日付
『ビジネス・インサイダー』オンラインニュース(2009年開設のビジネス・技術専門メディア)は、直近開催のBRICSサミットにおいて、新興6ヵ国の追加参加が決まって規模は大きくなるものの、本来の主眼である西側対抗軸構築の構想では全く纏まりを欠いたと報じている。
BRICSサミットが、8月24日までの3日間、南アフリカで開催され、新たに新興6ヵ国(イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア)の加盟が決定された。
しかし、当初から標榜していた、西側支配への挑戦や欧米主導の国際機関への対抗を推進するための構想では何ら結論を見出せなかった。
すなわち、昨年来、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)等が打ち出していた、BRICS共通通貨の創設や、国際基軸通貨での脱米ドル政策について、具体的進捗をみせることはできなかった。
まず、オンライン形式で参加したプーチン大統領が、“グループ内での金融・商取引をより強固なものにするため、決済通貨を脱米ドルとし、各々の通貨で決済することが重要だ”と訴えた。
西側諸国の対ロシア制裁で、米ドル決済を禁じられて以来、ロシアとしては脱米ドルに向かわざるを得ない状況になっている。
次に、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(77歳、2023年就任)が、“グループ国間の商取引決済上の脆弱性を克服するためには、新たな共通通貨の創設が必要だ”と訴えた。
英国『フィナンシャル・タイムズ』紙報道によれば、同大統領が4月に訪中した際、“金本位制でなくなった後、誰が米ドルを基軸通貨と決めたのか”とした上で、“今こそBRICS共通通貨の採用について真剣に討議すべきだ”と発言したという。
一方、インドのハーディープ・シン・プーリ石油・天然ガス担当大臣(71歳、2021年就任)は8月25日、インドで開催された主要20ヵ国経済相会議後に米『CNBCニュース』のインタビューに答えて、“脱米ドルを進める一環で、インド通貨のルピーを国際通貨に押し上げたいと考えているが、現実的には容易な話ではないと思っている”と表明している。
また、習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)は、“国際金融システムの見直しが必要だ”とし、BRICS共通通貨については何らコメントしなかったが、“人民元が国際基軸通貨になることを望んでいる”と言及した。
ただ、同国家主席は、人民元が米ドルに取って代わることまでは明言しなかった。
更に、今回のBRICSサミット議長国の南アフリカのエノック・ゴドンワナ財務大臣(66歳、2021年就任)は8月24日、米『ブルームバーグ』オンラインニュースのインタビューに答えて、“(BRICSサミットでは)どの国からもBRICS共通通貨の話は出なかった”とし、“何故なら、共通通貨採用を準備するということは、これまでの国際基軸通貨の使用を止めることを意味し、それは余りにもリスクが大きく、どの国もそのような態勢が取れる状況にないからだ”とコメントした。
なお、南アフリカのポール・マシャティル副大統領(61歳、2022年就任)が今年4月、BRICSは米ドル依存度を減少させようと試みていると語っていた。
一方、金融大手ゴールドマンサックス(1869年設立)の元エコノミストだったジム・オニール氏(66歳、2001年にBRICsと命名)は今年8月、『フィナンシャル・タイムズ』紙のインタビューに答えて、“BRICS共通通貨の構想があるそうだが、愚かな話だ”と一刀両断した。
更に同氏は、“中国とインドが何ら合意できないということは、西側諸国にとっては好ましい”とし、“何故なら、もし両国が国際通貨で何らかの合意をすれば、それは国際基軸通貨の米ドルにとって大きな障害となるからだ”と付言している。
なお、国際銀行間通信協会(SWIFT、注後記)の今年7月のデータによると、SWIFT利用の国際金融取引の約46%が米ドルで行われていて、これはこれまでの最高値となっている。
(注)SWIFT:銀行間の国際金融取引を仲介するベルギーの協同組合。1973年発足。約4千の国際金融機関で採用されていて、支払いの40%近くが30分以内に、90%余りが24時間以内に完了している。
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