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『ウォールストリート・ジャーナル』は、中国政府は今年、成長を阻む問題が山積する中、経済を活性化し続けるための大きな試練に直面している、と伝えている。「ゼロ・コロナ」政策は、個人消費に打撃を与え、不動産逼迫とテクノロジーや教育などの産業に対する規制強化が経済に打撃を与えている。
ロシアのウクライナ侵攻とそれに対する欧米の制裁は、商品価格を高騰させ、企業のコストを押し上げ、小麦、石油、金属、その他の商品のグローバルサプライチェーンを混乱させている。...
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『ウォールストリート・ジャーナル』は、中国政府は今年、成長を阻む問題が山積する中、経済を活性化し続けるための大きな試練に直面している、と伝えている。「ゼロ・コロナ」政策は、個人消費に打撃を与え、不動産逼迫とテクノロジーや教育などの産業に対する規制強化が経済に打撃を与えている。
ロシアのウクライナ侵攻とそれに対する欧米の制裁は、商品価格を高騰させ、企業のコストを押し上げ、小麦、石油、金属、その他の商品のグローバルサプライチェーンを混乱させている。インフレの加速は欧米の消費者を圧迫し、中国の製造品に対する海外からの需要も減っている。戦争、インフレ、そして長年にわたってアメリカや他の先進国の成長の柱であった金融緩和政策の急速な撤回によって、世界経済の見通しは暗くなる一方である。
こうした中、中国の国家統計局が4月に発表した第1四半期のGDPは、年間4.8%増と、2021年の最終3カ月に記録した4%増や、専門家が予測していた4.6%増よりも速いペースであったことを発表した。ただし、第1四半期の成長のほとんどは、1月と2月に集中している。3月には、新型コロナウイルスの発生を抑えるための閉鎖措置が、深セン、上海、東北部の吉林省などの主要な工業地帯に広がった。これらの閉鎖措置のほとんどはまだ実施されている。データによると、コロナ規制によって労働力が制限され、サプライチェーンが寸断されたため、3月の工場生産高は減少した。それでも3月の工業生産は前年同月比5%増を記録したという。最近の貿易統計によると、3月の中国の輸入はほぼ2年ぶりに減少し、輸出も伸びが鈍化した。
また、3月の小売売上高は前年同月比3.5%減となり、1月から2月期の同6.7%増から減少した。また、第1四半期の住宅販売件数は前年同期比25.6%減、着工面積は17.5%減となった。どちらも、今年最初の2カ月間より落ち込みが激しかった。
国家統計局の報道官は、「国内外の環境の複雑さと不確実性が増し、経済発展はより多くの困難と挑戦に直面している」と述べた。特にゼロ・コロナ政策により、北部の工業都市太原、南部の大都市広州など、全国各地で新たに閉鎖措置がとられたり、拡大・延長されたりしている。野村證券の調査によると、4月には、中国の45都市(人口3億7300万人)が完全または部分的なロックダウンが強いられた。この45都市は中国の人口の4分の1以上、経済総生産額の約40%を占めている。
なお、中国の失業率の主要指標である都市部の失業率は、3月に5.8%に上昇し、過去2年間で最高となった。『ウォールストリート・ジャーナル』は、多くのエコノミストにとって、GDPの成長がどこから来ているのかは明確ではない、と指摘している。
米『フォーブス』は、「中国は国内総生産(GDP)の帳尻を合わせているのではないか」という根強い疑問が残ると報じている。中国の23の省の成長率が、共産党が四半期ごとに発表する全国ベースの数字と乖離しているたびに再浮上してくる疑問だという。同誌は、中国の第1四半期のGDP4.8%という数字は、不動産市場の暴落や大規模なロックダウンが再開される中、意味をなさないと指摘している。
米シンクタンク「ロディウム・グループ」のエコノミスト、ローガン・ライト氏は、不動産業界、産業生産、独立系の調査データから衛星データまであらゆるデータを監視しており、中国の現在の統計データは「相当あり得ない」ものだと考えている。「データの長期的な信頼性に関して、より大きな疑問が生じ始めている」と米『ブルームバーグ』に語っている。
フランスの投資銀行ナティクシス社のエコノミスト、アリシア・ガルシア-へレロ氏は、1月と2月の固定資産投資が好調であったという統計データは、電力とセメントの落ち込みと相容れないものだと説明している。同氏は、第1四半期のGDPは「現場で実際に起きていることをいくらか歪曲した形で示している」のではないかと疑っている。専門家達は、3月の新築住宅販売件数が29%減少した一方で、GDPは勢いを増していることに疑問を感じている。BNPパリバのジャクリーン・ロン氏は、中国では「データに示される不動産の回復力と現場の感覚との間にかなり大きなギャップがある」と指摘している。
『フォーブス』は、習近平は、情報に対する「グレート・ファイアウォール」をより大きく、より不透明なものにし、香港の報道機関を追及するなどメディアの自由を抑えたことで、10年前よりも中国をブラックボックス化させたと伝えている。そして、信頼される市場経済への転換を目指した習近平時代から10年が経過したが、疑心暗鬼の人々にとっては、答えよりも疑問の方が多いのが現状だと伝えている。
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オーストラリアとインドは4月2日、暫定的な自由貿易協定(FTA)について合意したことを発表。「豪印経済協力・貿易協定(ECTA)」と題されたこの協定は、両国間の貿易を飛躍的に増加させるだけでなく、オーストラリアの中国へのサプライチェーン依存を解消することを目的としている。しかし、一部のメディアは、インドは中国の代わりにはなれないと報じている。
香港の
『サウスチャイナモーニング・ポスト』は、オーストラリアとインドとの協定は、地政学的変化の中で、オーストラリアが切望していた貿易の多様化と安全保障上の同盟国であるインドとの関係を深める手段として有効だと見られていると伝えている。オーストラリアのモリソン首相は、豪印協定は民主主義諸国がサプライチェーンの安全性を確保するために協力するというメッセージであり、パンデミックが中国を中心とした供給網に大混乱を招いて以来、その必要性がより一層高まっていると述べている。
シドニー工科大学教授でチーフエコノミストのティム・ハーコート氏は、今回の協定は「経済的というより地政学的」なものであり、総選挙を控えている豪政府は有権者に対して複数の主要貿易相手国を持つことを示す必要があったと述べている。一方で「インドが新しい中国になることはあり得ない」と指摘している。豪シンクタンク「パースUSAsiaセンター」の政策研究員で豪印関係を専門とするソニア・アラクカル氏は、「オーストラリアは、インドであれ中国であれ、一つの貿易相手をやみくもに優遇することはできず、多様化戦略を追求しなければならないことを学んだ」と述べている。
アデレード大学国際貿易研究所のピーター・ドレイパー事務局長は、完全な貿易協定を結んだとしても、オーストラリアにとってインドは中国に取って代わることはできない、と主張している。インドは汚職や「制度的空白」など、国内の制度的な弱点を抱えており、より規制の厳しい環境に慣れている起業家にとっては、インドでのビジネスは困難なものだという。
オーストラリアの政治アナリストで米誌「ディプロマット」のコラムニストであるグラント・ワイス氏は、インドは中国共産党政府が過去20年にわたって行ってきたような開発を指示できる中央集権的メカニズムに欠けていると指摘している。
米『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』によると、ロングアイランド大学のウダヤン・ロイ教授も、「インドの市場の非効率性は、商品市場や資源市場において非常に根深く、近い将来に改善されるとは思えない。例えば、労働市場では、10人以上の企業は解雇ができない。これは、企業が大きくなり、規模の経済を実現するための阻害要因になる」と指摘している。さらに、公共事業、通信、運輸、エネルギー、銀行など経済のいくつかの分野で、政府と大企業の癒着があり、競争を制限し、資源を浪費しているという。例えば、「銀行は経済的な基準ではなく、政治的な基準に従って企業に資源を配分している」という。
シンクタンク「Sibylline」のアジア太平洋地域担当リードアナリストであるGuo Yu博士は、「インドと中国は発展段階が異なるため、一方が他方に取って代わるという考え方をするのは助長的(あるいは有益)ではない。」と述べている。また、「インドは若い人口を大量に抱え、労働集約的な製造業でますます優位に立ち、その民主的な政治制度から多くの欧米諸国から好まれるパートナーとなっている。これとは対照的に、中国はここ数年、中国と米国の戦略的対立の激化に支えられ、敵対的とは言えないまでも厳しい地政学的環境に直面している。欧米の多くの政府は中国に対して強硬な姿勢をとり、中国の貿易や投資に対する監視を強化している。」それでも、「中国は比較的よく整備されたインフラ、高度なスキルを持つ労働力、急速に拡大する中間層を抱える広大な市場により、政治的・地政学的な課題にもかかわらず、国際ビジネスにとって魅力的な経済国であり続けている。」そのため、インドが中国に代わる存在になることは難しいと見ている。
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