4月29日付米
『ロイター通信米国版』の報道記事「英国の金融事業家、EU離脱でロンドンに活気と主張」:
「・EU離脱派はキャンペーンの一環で、英国の著名金融事業家100人以上の賛同署名を集めたと発表。
・EU離脱によって、シティ(ロンドン金融街)が再び世界最大の金融センターとして、英国経済及び雇用確保に大いなる貢献をすることが可能となると主張。」
同日付米
『CNBCニュース』の報道「英国離脱で他国のEU離脱派に追い風か」:
「・米大手コンサルタント会社テネオ・インテリジェンスのアントニオ・バロッソ上級副社長は、英国がEU離脱を決定した場合、デンマーク、チェコ、ポーランドも残留か離脱かの国民投票に進む可能性ありと指摘。
・デンマークは2000年の国民投票で、ユーロではなく自国通貨(クローネ)を選択した上、現在も可能な限りEUとの関わりを制限しようとする意見が大勢。
・チェコはデンマーク以上にユーロ採用に否定的で、依然自国通貨(コルナ)に固執。
・また、ポーランドの他、オーストリア、オランダ、フィンランド、ハンガリー、スウェーデンもEU離脱の機運が高まる恐れあり。
・ただ、EU設立の立役者のドイツとフランスが英国のEU離脱に反対。
・なお、直近の英国世論調査の結果では、EU離脱派は依然40%程度。」
4月30日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ英国版』オンラインニュースの
報道記事「どの経営者がEU離脱派か、残留派か」:
「・デビッド・キャメロン首相やジョージ・オズボーン財務相はEU残留を訴えているが、ロンドンのボリス・ジョンソン市長、右翼の英国独立党のニゲル・ファラージ党首や保守党のマイケル・ゴウブ議員はEU離脱を主張。
・国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)などの国際組織ばかりか、オバマ大統領まで英国のEU離脱に否定的。
・今年2月、200人に上る企業経営者がEU離脱に反対を表明。
・4月にも、BPなど大手企業トップのみならず、ロイズ保険取引所、HSBC銀行、JPモーガン投資銀行、バークレイズ金融グループ、シティグループなどがEU離脱の場合の雇用喪失やロンドンからの拠点変更につき警鐘。
・しかし、3月になってEU離脱派は、HSBC前最高経営責任者のマイケル・ジョーゲガン氏、JDウェザースプーン・グループ創設者のティム・マーチン氏、その他著名ホテル・チェーン会長などを含めた250人もの企業経営者のリストを作成し、EU離脱の有効性をアピール。」
同日付フランス
『フランス 24』オンラインニュースの報道記事「何故フランスは英国の
EU離脱に反対なのか」:
「・4月初めに英国、フランス、ドイツ、スペイン、ポーランドで行われた世論調査の結果、フランス人の59%が英国のEU残留を支持していたが、残りの約40%は、他国以上に英国のEU離脱を強く主張。
・すなわち、英国がEU離脱を決定しても大して驚かないし、むしろ、EU離脱でロンドンを去らなければならない国際企業の英国法人・支店の次の受け入れ先として、ドイツのベルリンとともにパリが選択されることを歓迎。
・一方、フランソワ・オランド大統領初め主だった政治家は、英国がEUに留まることの意義を力説。
・なお、EU残留を最も明確に表したのが
『ル・モンド』紙で、英国がEU離脱を決定すれば、ワーテルローの戦い(注後記)に敗れたナポレオン皇帝が終焉を迎えたと同様の痛手となろうと主張。」
同日付ドイル
『ドイツ通信』の報道記事「英国地方選にもEU残留か離脱かの国民投票の影」:
「・英国では目下、計2,700の地方議会議席、3市の市長、及び41ヵ所の警察コミッショナー(長官もしくは本部長に相当)の地方選挙が5月5日に行われるが、地方の政策のみならず、EU残留か離脱かの国民投票の前哨戦的意味合い。
・特に、最近凋落気味の労働党にとって、自身はEU残留派だが、移民に仕事を奪われてきた低所得者階級の有権者に対して、EU残留派であることを強く訴えられず、そこに最近勢いを増した英国独立党(昨年5月の総選挙で13%の支持率を得て第3党に躍進)に付け入れられて議席を奪われることを懸念。
・なお、政治評論家は、ロンドン市民は何度も選挙に足を運びたがらないため、6月23日に国民投票があることから、ロンドン市長選の投票率がこれまでの実績32~45%を下回ると予想。よって、労働党のサディク・カーン候補が、初のイスラム教徒の市長となるかとの話題も消沈気味。」
4月29日付中国
『新華社通信』の報道記事「世論調査では、英国のIT企業経営者の多くは
EU離脱に反対」:
「・英国のIT技術支援シンクタンクのテック・シティによる直近の調査結果では、英国のIT企業経営者の70%がEU残留を支持。
・理由の一つは、英国のみならずEUという大市場にアクセスできること。
・二つ目は、居住許可や就労許可なくEU域内従業員を雇用できること。
・三つ目は、EU離脱後の英国は国際ITビジネス市場として魅力に欠けること。
・なお、OECDのアンゲル・ガリア事務局長は4月27日、英国がEU離脱した場合、経済損失という“EU離脱税”を長い間払い続けることになろうとの分析報告を発表。」
OECDのリリースした分析報告によると、2020年の英国の国内総生産(GDP)は、EU離
脱の場合に残留に比し▼3.3%減少するとし、これは1世帯当り2,200ポンド(約34万2
千円)の損失に相当するという。更に、2030年にはGDPの減少幅は▼5.1%に拡大すると
推計し、「EU離脱は継続的に増加する損失を経済に課す“税(EU離脱税)”を負うことに
なる」と分析している。
(注)ワーテルローの戦い:1815年6月、ベルギー(当時はオランダ領)のワーテルロー近郊において、英国・オランダ連合軍及びプロイセン軍と、フランス皇帝ナポレオン1世(ナポレオン・ボナパルト)率いるフランス軍との間で行われた一連の戦闘を指す名称。フランス軍が敗北し、ナポレオン戦争最後の戦闘となり、皇帝ナポレオンの統治は終焉。
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4月28日付「中国習主席の富国強兵政策」等で触れたとおり、習近平(シー・チンピン)
指導部は、核弾道装着可能な超高速ミサイルの発射実験を実施する一方、北京開催の“アジア相互協力信頼醸成措置会議”に出席した三十数ヵ国代表を前に、朝鮮半島の紛争化阻止のために北朝鮮を諌めるだけでなく、米国側にも慎重な対応を求めた。更に、南シナ海問題で、フィリピンが提訴の国際仲裁裁判所で不利な審理結果が出る前に、東南アジア諸国の抱き込みに奔走している。そして今度は、中国の体制を脅かすと公安(警察に相当)が判断した海外NGOを取り締まる「海外非政府組織(NGO)国内活動管理法」を制定し、7千以上のNGOの活動の監視を強化しようとしている。
4月29日付米
『CNBCニュース』の報道「中国、7千の海外組織の活動を取り締まり」:
「・全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は4月28日、海外NGOのみならず、海外NGOと交流のある国内NGOも含めた、7千余りのNGOの活動を公安が監視することを許容する“海外NGO国内活動管理法”を制定。
・本法は、中国の国家安全や国家利益を損なうような活動を取り締まる目的で、2017年1月1日発効。
・同法によって、全てのNGOは業務内容、資金の流れ等を明らかにすることが求められ、また、全ての従業員が尋問対象。
・公安部の高官は、香港の民主活動家やチベットの反政府分子などとつながる、中国の体制を脅かす恐れのあるNGOを厳しく取り締まる必要があると言明。
・この結果、人権擁護活動家や弁護士などを支援するNGOの活動が制限される恐れ。
・既に今年1月、人権弁護士の活動や役人相手の訴訟を支援してきた“中国緊急支援グループ”の中心メンバーだったスウェーデン人のピーター・ダーリン氏が拘束され、国外追放処分。」
同日付米
『クォーツ』ビジネスニュースサイトの報道記事「G20は、習近平政権のNGO取締法に断固反対すべき」:
「・今年9月、杭州(ハンチョウ、中国南東部浙江省の省都)で開催される主要20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット、注1後記)は、これまでと違って中国国内のNGO代表が招待されない恐れ。
・当初のG20サミットは、政府関係者のみに限られ、経済や金融情勢につき偏った協議しかされないとの批判から、以降市民団体、労働組合、企業家、シンクタンク、女性組織、青年組織等も加わる開かれた国際会議に変革。
・しかし、従来中国は体制批判を懸念して、市民団体や人権活動家らを取り締まってきており、この程“海外NGO国内活動管理”を制定するに至り、益々政府主導の国際会議の色合いが濃くなり、当然国内NGOの参画を求めない意向。
・今年のG20サミットの議長国は中国であるが、他の同サミット参加国は、これまで関わってきた市民団体やNGOなども参加させることによって、中国の閉鎖的な対応を再考させるよう働きかけるべき。」
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ英国版』オンラインニュースの報道記事「西側政府及び人権グループ、中国導入の7千の海外NGO取締法に懸念表明」:
「・全人代常務委法制工作委員会の郭(グォ)委員は、中国は多くの海外NGOを歓迎しており、本法に憂慮する必要はない、と言明。
・この新法制定に対して、米国が率先して懸念を表明。
・米国家安全保障会議のネッド・プライス報道官は、中国に対して、人権団体、ジャーナリスト、企業家等市民社会を形成する団体の権利と自由を保障するよう求めると主張。
・また、アムネスティ・インターナショナル(注2後記)代表は、これまでも制限されてきた表現の自由や平和的集会などが、この新法によって益々厳しく取り締まられると懸念表明。」
一方、同日付中国
『東方日報(上海)』の報道記事「海外NGOを取り締まる新法制定」:
「・全人代常務委法制工作委員会の張勇(チャン・ヨン)副主任は、中国の法律に従う限り、新法導入を何ら懸念する必要はないと明言。
・また、同委の郭委員も、新法によってNGOの権利は保護されるが、ごく少数の組織は社会の安定と国家安全を脅かす恐れがあるので、それらを取り締まるためのものと強調。」
(注1)G20サミット:1997年のアジア通貨危機を契機に、1999年から主要20ヵ国の財務相・中央銀行総裁が年一度集り、世界金融情勢につき打合せ。2008年のリーマンショック以降は、G20首脳も毎年春・秋に集り、世界経済及び金融情勢につき討議。参加国は以下のとおり。
・アジア・太平洋地域:日本、中国、韓国、豪州、インド、インドネシア(6ヵ国)
・中東・北アフリカ地域:サウジアラビア、トルコ(2ヵ国)
・欧州:英国、ドイツ、フランス、イタリア、ロシア、EU(6ヵ国・地域)
・サハラ以南アフリカ地域:南アフリカ(1ヵ国)
・北米地域:米国、カナダ(2ヵ国)
・南米地域:メキシコ、ブラジル、アルゼンチン(3ヵ国)
(注2)アムネスティ・インターナショナル:国際連合との協議資格をもつ、国際的影響力の大きいNGO。国際法に則って、死刑の廃止、人権擁護、難民救済など良心の囚人を救済、支援する活動を行っている。1961年7月設立で、本部はロンドン。
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