4月19日付【風の流れ:ぶつかり合う世界貿易ルール】で触れられているとおり、国際通貨基金(IMF)は、4月20日からワシントン特別区で開かれる主要20ヵ国(G-20)財務相・中央銀行総裁会議に向けて、最新の世界経済見通しを公表した。それによると、弾力的な中国経済、原油等貿易価格の上昇、強靭な金融市場を追い風に、前回見通しを上方修正するに至っているが、依然、トランプ政権の保護主義的政策や、中東・アジアの地政学上の緊張リスクがマイナスにはたらく可能性があるとしている。
4月19日付米
『CBSニュース』(
『AP通信』配信):「IMF、世界経済見通しは力強いと予想」
IMFは4月18日、弾力的な中国経済・原油等貿易価格の上昇・強靭な金融市場のお蔭で、今年の世界経済見通しは力強く、また、2008年の世界金融危機以来続いてきた憂鬱を払拭させることができると予想する旨公表した。
それによると、2017年の世界経済見通しは、2016年の3.1%を凌ぎ、また、今年1月の前回予想値の3.4%より0.1%高くなるという。具体的には、米国が2016年の1.6%より2.3%(前回予想値に同じ)に上昇し、ユーロ圏19ヵ国は昨年同様1.7%成長(前回予想値より+0.1%)が期待され、日本も1%だったのが今年は1.2%(前回予想値より+0.4%)と見込んでいるが、中国については昨年の6.7%が今年は6.6%(但し、前回予想値より+0.1%)としている。
なお、IMFは、ワシントン特別区で開催される、G-20財務相・中央銀行総裁会議に先駆けて当該データをリリースした。
同日付英
『メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「IMF専務理事、加盟国な皆自由かつ公平な貿易を求めていると発言」
IMFのクリスティーン・ラガルド専務理事は4月19日、創立70年を迎えるIMFは全189ヵ国の加盟国の期待に副うべく進化していくとした上で、自由かつ公平な貿易に異論を唱える国はないと信じるとコメントした。
IMFと世界銀行との会合では、トランプ政権が標榜する“米国第一主義”に則った保護主義的貿易政策に懸念が表明されたが、同専務理事は、IMF全加盟国が公平な条件下での貿易を享受できるような体制維持に努めていくと言明した。
なお、中国における石炭・鉄鋼製品の余剰生産体制について、同専務理事は、中国がすでに具体的対策に取り掛かっており、今年11月か12月には更なる対策強化が図られると期待すると述べた。
同日付中国
『東方日報(上海)』:「IMF、中国の経済見通しを上方修正」
IMFはこの程、2017年及び2018年の中国経済見通しを、それぞれ6.6%(前回見通しより+0.1%)及び6.2%(同+0.2%)上方修正した。
中国の今年第1四半期(1~3月期)の経済成長率は、6.9%と予想を大幅に上回ったが、潤沢な銀行貸し出しや中央政府による予想以上の公共インフラ投資の影響であり、以前程の底堅い経済成長は政府の景気刺激策にかかっている。
一方、中国の対国内総生産(GDP)債務比率が、2015年末の254%から2016年末は277%まで上昇しているため、新規国債発行高の上昇を如何に抑えるかが注目される。
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中国は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立・運営で主導権を発揮し、国際通貨基金(IMF)には人民元を国際基本通貨に認めさせる等、米国に勝るとも劣らない大国への道を邁進している。そしてこの程、国際刑事警察機構(Interpol、注1後記)総会開会に当り、米国が推す台湾のオブザーバー参加計画を阻止しただけでなく、中国公安官僚を初めて同機構総裁に就任せしめた。しかし、国際人権団体からは、これまで以上に中国が、中国国外逃亡犯の逮捕のために同機構を使おうとしていると非難の声が上がっている。
11月10日付米
『CNNニュース』:「中国公安官僚がInterpolトップに就任」
「●Interpolは11月10日、バリ島(インドネシア)で開催された年次総会で、中国公安部(省に相当)の孟宏偉(メン・ホンウェイ)次官を新総裁に選出。
●国際人権団体アムネスティのニコラス・ベクリン東アジア地域担当主任は、中国はかつてInterpolを使って、中国国外逃亡犯を逮捕しようとした経緯があり、深刻な人権弾圧問題を起こしている中国が、今後益々海外避難の政治犯に捜査の手を広げかねないと非難。
●なお、Interpol設立憲章第3条は、いかなる政治的、軍事的、宗教的、人種差別的行為への関与を禁止」
同日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「中国高官のInterpolトップ就任に非難の声」
「●Interpolは、“レッドノーティス(注2後記)”と呼ばれる国際逮捕状の発行が可能。
●これまで、ロシアやイランは、レッドノーティスを利用して、反政府活動家の拘束等を実施しているとの批判の声。
●今回、人権弾圧問題を抱える中国公安高官がInterpolのトップに就任(任期4年)することで、中国がこれを濫用する恐れがあると非難。
●なお、習近平(シー・チンピン)主席は2014年4月、腐敗撲滅政策の名の下、100人の国外逃亡犯の逮捕をInterpolに求め、以来その3分の1が本国送還。」
同日付英
『BBCニュース』:「中国高官孟宏偉氏、Interpolトップに就任」
「●Interpol総裁就任に当り孟氏は、世界は目下第二次大戦以来治安が最も深刻となっているので、全力を挙げて国際犯罪に立ち向かっていくと発言。
●しかし、アムネスティ・インターナショナルのべケリン氏は、中国市民に対するレッドノーティスが出された場合、(Interpol設立憲章第3条に違反していないか)厳しい目でチェックする必要があるとコメント。」
同日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)』テレビニュース:「中国とロシア高官がInterpol初の幹部就任」
「●中国の孟氏のInterpol総裁就任と同時に、ロシアのアレクサンダー・プロコーチュク氏が副総裁(欧州担当)に就任。
●両氏の選任は、Interpol第85回年次総会(164ヵ国の約830人の警察官僚代表らが出席)の選挙で決定。
●中国は1923年に加盟(*)、また、ロシアも1990年に加盟して以来、それぞれ初めての幹部選出。」
11月11日付中国
『東方日報(上海)』(
『新華社通信』配信):「中国、Interpol支援を約束」
「●中国の孟氏がInterpol総裁に選出されたことを受けて、外交部の陸康(ルー・カン)報道官は11月10日、中国はInterpolの活動の重要性を更に認識し、同機構をこれまで以上に支援していくと発言。
●更に同報道官は、世界の治安維持のために多くの国と協力していくともコメント。
●Interpol加盟国は190ヵ国と、国連に次ぐ大組織。
●中国は1984年に加盟(*)。」
(*)中国の加盟:1923年は中華民国(当時の国民党政権、現在の台湾)の時代のもので、1984年は中華人民共和国(現在の共産党国家)が加盟した年。
(注1)Interpol:1923年9月設立の、国際犯罪の防止を目的として世界各国の警察機関により組織された国際組織。本部はリヨン(フランス)で、加盟国は190ヵ国・地域を数え、国際連合に次ぐ大組織。日本の加盟は1952年。
(注2)レッドノーティス:指名手配犯を記載し、本国引渡しの目的で逮捕するよう求めるInterpolの通知。
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