中国の新地図に近隣国が抗議(2023/09/01)
中国が新たに発表した、南シナ海などでの領有権が主張されている地図を巡り、近隣国が抗議をしているという。
8月31日付米
『CNBC』(ロイター通信):「フィリピン、台湾、マレーシアが中国の最新南シナ海地図を拒否」:
中国は先月28日、南シナ海の90%を含めたU字線の地図を発表。この地図に対し、フィリピン、マレーシア、台湾、ベトナムは、根拠もなく南シナ海などで領有権が主張されているとし拒否している。
フィリピンは31日、中国に対し、国際法や2016年の仲裁裁判判決に基づく「責任ある行動と責務」を求め「国際法と、自分たちが掲げる独自の境界線に法的妥当性はないとした2016年の仲裁裁判所判決を踏まえ、責任ある行動をしてほしい」と要求した。...
全部読む
8月31日付米
『CNBC』(ロイター通信):「フィリピン、台湾、マレーシアが中国の最新南シナ海地図を拒否」:
中国は先月28日、南シナ海の90%を含めたU字線の地図を発表。この地図に対し、フィリピン、マレーシア、台湾、ベトナムは、根拠もなく南シナ海などで領有権が主張されているとし拒否している。
フィリピンは31日、中国に対し、国際法や2016年の仲裁裁判判決に基づく「責任ある行動と責務」を求め「国際法と、自分たちが掲げる独自の境界線に法的妥当性はないとした2016年の仲裁裁判所判決を踏まえ、責任ある行動をしてほしい」と要求した。また、マレーシアは地図を巡り、外交的な抗議を提出したとしている。
一方の中国は、境界線は歴史的地図に基づくものだと主張している。地図上の中国のU字線は中国海南省の南方1500キロまで伸び、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシアの排他的経済水域(EEZ)に入り込んでいる。2009年に国連に提出され、いわゆる「九段線」が入ったものと異なるこの最新地図は、1948年の中国地図に似ており、台湾を含む10箇所に線が書かれていた。中国では2013年にも10段線の地図が出版されている。
29日の国営放送中国中央テレビによると、現在、中国では「国家地図意識宣伝ウィーク」となっているという。
中国外務省の汪文斌副報道局長は、9段線ではなく10段線の地図を公表した理由について、中国国内では領土に関して一貫した認識があるとし、「中国の南シナ海問題への認識は常に明確だ。当局が毎年、様々な基準による種類の地図を定期的に更新し公表している。関係各所が客観的かつ理性的に対応することを臨む」としている。
台湾外務省の劉永健報道官は、台湾は「決して中国の一部ではない。中国政府がいくら台湾の領有地位を捻じ曲げようとしても、客観的事実を変えることはできない」とコメントしている。
ベトナムの外務相は31日、「中国の地図は価値がなく、ベトナムや国際法に違反している。段線に基づく東海でのあらゆる主権主張を断固拒否する」としている。また、ベトナム当局が、今週はじめ南シナ海で2人が負傷した中国国籍の船舶によるベトナム漁船攻撃事件を捜査中だとしている。
同日付シンガポール『CNA』:「係争地を巡る中国の新地図に抗議するインド、マレーシア、フィリピンも抗議」
中国が新たに公表した係争地が描かれた地図に関し、インドが抗議、これにマレーシアとフィリピンが続いた。一方でインドネシアは領土境界線は国際法に準拠すべきだとしている。
中国自然資源省は8月28日、「2023年度版標準地図」を出版。そこには南シナ海におけるマレーシア、ベトナム、フィリピン、ブルネイとの係争地域、またインドやロシア内の複数地域の主権が示されていた。
地図の公開は、中国の首脳らが参加を予定し、インドネシアで9月5日から7日まで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議、インドでのG20首脳会議を控えた時期となった。
閉じる
BRICSサミット、新興6ヵ国の追加メンバー受け入れ合意も、その他は同床異夢で何ら未決定【米メディア】(2023/08/29)
BRICS新興5ヵ国(2011年発足)はこの程、南アフリカにおいて首脳会議(サミット)を開催し、新たに新興6ヵ国の追加メンバー国の受け入れで合意した。しかし、その他、西側支配への挑戦や国際通貨基金(IMF、1945年創設)・世界銀行(1945年創設)等の欧米主導の国際機関への対抗を謳っていたものの、共通通貨の採用はもとより、基軸通貨の脱米ドル政策でも合意に至らず、むしろ加盟国間の思惑の不一致を露呈してしまっている。
8月28日付
『ビジネス・インサイダー』オンラインニュース(2009年開設のビジネス・技術専門メディア)は、直近開催のBRICSサミットにおいて、新興6ヵ国の追加参加が決まって規模は大きくなるものの、本来の主眼である西側対抗軸構築の構想では全く纏まりを欠いたと報じている。
BRICSサミットが、8月24日までの3日間、南アフリカで開催され、新たに新興6ヵ国(イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア)の加盟が決定された。...
全部読む
8月28日付
『ビジネス・インサイダー』オンラインニュース(2009年開設のビジネス・技術専門メディア)は、直近開催のBRICSサミットにおいて、新興6ヵ国の追加参加が決まって規模は大きくなるものの、本来の主眼である西側対抗軸構築の構想では全く纏まりを欠いたと報じている。
BRICSサミットが、8月24日までの3日間、南アフリカで開催され、新たに新興6ヵ国(イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア)の加盟が決定された。
しかし、当初から標榜していた、西側支配への挑戦や欧米主導の国際機関への対抗を推進するための構想では何ら結論を見出せなかった。
すなわち、昨年来、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)等が打ち出していた、BRICS共通通貨の創設や、国際基軸通貨での脱米ドル政策について、具体的進捗をみせることはできなかった。
まず、オンライン形式で参加したプーチン大統領が、“グループ内での金融・商取引をより強固なものにするため、決済通貨を脱米ドルとし、各々の通貨で決済することが重要だ”と訴えた。
西側諸国の対ロシア制裁で、米ドル決済を禁じられて以来、ロシアとしては脱米ドルに向かわざるを得ない状況になっている。
次に、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(77歳、2023年就任)が、“グループ国間の商取引決済上の脆弱性を克服するためには、新たな共通通貨の創設が必要だ”と訴えた。
英国『フィナンシャル・タイムズ』紙報道によれば、同大統領が4月に訪中した際、“金本位制でなくなった後、誰が米ドルを基軸通貨と決めたのか”とした上で、“今こそBRICS共通通貨の採用について真剣に討議すべきだ”と発言したという。
一方、インドのハーディープ・シン・プーリ石油・天然ガス担当大臣(71歳、2021年就任)は8月25日、インドで開催された主要20ヵ国経済相会議後に米『CNBCニュース』のインタビューに答えて、“脱米ドルを進める一環で、インド通貨のルピーを国際通貨に押し上げたいと考えているが、現実的には容易な話ではないと思っている”と表明している。
また、習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)は、“国際金融システムの見直しが必要だ”とし、BRICS共通通貨については何らコメントしなかったが、“人民元が国際基軸通貨になることを望んでいる”と言及した。
ただ、同国家主席は、人民元が米ドルに取って代わることまでは明言しなかった。
更に、今回のBRICSサミット議長国の南アフリカのエノック・ゴドンワナ財務大臣(66歳、2021年就任)は8月24日、米『ブルームバーグ』オンラインニュースのインタビューに答えて、“(BRICSサミットでは)どの国からもBRICS共通通貨の話は出なかった”とし、“何故なら、共通通貨採用を準備するということは、これまでの国際基軸通貨の使用を止めることを意味し、それは余りにもリスクが大きく、どの国もそのような態勢が取れる状況にないからだ”とコメントした。
なお、南アフリカのポール・マシャティル副大統領(61歳、2022年就任)が今年4月、BRICSは米ドル依存度を減少させようと試みていると語っていた。
一方、金融大手ゴールドマンサックス(1869年設立)の元エコノミストだったジム・オニール氏(66歳、2001年にBRICsと命名)は今年8月、『フィナンシャル・タイムズ』紙のインタビューに答えて、“BRICS共通通貨の構想があるそうだが、愚かな話だ”と一刀両断した。
更に同氏は、“中国とインドが何ら合意できないということは、西側諸国にとっては好ましい”とし、“何故なら、もし両国が国際通貨で何らかの合意をすれば、それは国際基軸通貨の米ドルにとって大きな障害となるからだ”と付言している。
なお、国際銀行間通信協会(SWIFT、注後記)の今年7月のデータによると、SWIFT利用の国際金融取引の約46%が米ドルで行われていて、これはこれまでの最高値となっている。
(注)SWIFT:銀行間の国際金融取引を仲介するベルギーの協同組合。1973年発足。約4千の国際金融機関で採用されていて、支払いの40%近くが30分以内に、90%余りが24時間以内に完了している。
閉じる
その他の最新記事