ロシア残留西側企業、時が経つほど撤退が困難に【米メディア】
8月27日付GLOBALi「
オランダのビール醸造会社、漸くロシア撤退完了も損失額は3億ユーロ」で報じたとおり、世界2位のハイネケン(1863年設立)がロシア事業売却によってロシア撤退を完了させたが、損失額は3億ユーロ(約470億円)に上っている。そうした中、多国籍企業2社もロシア撤退を図ったが、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)によって事業没収と同様のペナルティが科せられたことから、時が経つほどロシア撤退が困難になりつつあると専門家が分析している。
9月11日付
『CNBCニュース』は、ウクライナ戦争勃発後1年半余りも経過した現在、これからロシア撤退を果たそうとする西側企業にとって、ロシアに留まる以上に困難が待ち受けていると報じた。
オランダのビール醸造大手のハイネケンは8月25日、ロシア撤退意向を表明後1年余り経過後、漸く事業撤退を完了した。
しかし、撤退計画進行に当たって、ロシア人従業員1,800人の雇用確保交渉に難航したこともあって、実際には事業継承先のロシア複合企業アーネスト・グループ(1971年設立、化粧品・日用雑貨・製缶業大手)に1ユーロ(約157円)の名目上の価格で売却せざるを得なかった。...
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9月11日付
『CNBCニュース』は、ウクライナ戦争勃発後1年半余りも経過した現在、これからロシア撤退を果たそうとする西側企業にとって、ロシアに留まる以上に困難が待ち受けていると報じた。
オランダのビール醸造大手のハイネケンは8月25日、ロシア撤退意向を表明後1年余り経過後、漸く事業撤退を完了した。
しかし、撤退計画進行に当たって、ロシア人従業員1,800人の雇用確保交渉に難航したこともあって、実際には事業継承先のロシア複合企業アーネスト・グループ(1971年設立、化粧品・日用雑貨・製缶業大手)に1ユーロ(約157円)の名目上の価格で売却せざるを得なかった。
この結果、同社は3億ユーロもの損失を計上することになっている。
また、今年の7月に撤退を完了させた、デンマークのビール醸造会社カールスバーグ(1799年設立)とフランスの食品大手ダノン(1919年設立、スペイン発祥)の場合は、事業売却を画策していたにも拘らず、結果的にはウラジーミル・プーチン大統領の側近に強制的に接収されてしまっている。
かかる動きから、英国の経営コンサルタント会社コントロール・リスクス(1975年設立)幹部であり元『モスクワ・タイムズ』編集長だったナビ・アブダラーエフ氏は先月、“西側企業は、対ロシア制裁や金融危機の中、ロシア撤退を希望しているが、時が経つに連れてロシアに居残るより厳しい局面に曝されるようになっている”と『CNBCニュース』のインタビューに答えた。
同氏は更に、“その結果、幾つかの西側企業がロシア残留を決めている”とした上で、“何故なら、ロシア政府が次々に法律を変更して、残った資産の略奪等、撤退企業に無理難題を押し付けようとしているだけでなく、雇用されていたロシア人を犯罪者として訴追するリスクも高まっているからである”とも言及している。
また、英国の国際関係シンクタンク、国際戦略研究所(1958年設立)経済制裁問題上級研究員のマリア・シャギーナ氏は、“ロシア政府によるカールスバーグ・ダノンへの仕打ちは、今後ロシア撤退をしようとしている西側企業に対する強烈な警告になっているはずだ”と分析している。
かかる背景もあってか、依然ロシアには、英国の一般消費財メーカー大手のユニリーバ(1930年設立)、スイスの世界最大食品・飲料メーカーのネスレ(1866年設立)、米国の世界最大煙草メーカーのフィリップモリス(1900年設立)、イタリアの銀行ウニクレディト(1998年設立)、スイス金融グループのライファイゼン(1899年設立)、米食品・スナック・飲料メーカーのペプシコ(1965年設立)等が居残っている。
シャギーナ氏によれば、まだ500社余りの西側企業がロシアに留まっているという。
ただ、止むを得ずロシアに残留している企業は、ロシア政府から追加納税を強いられるだけでなく、西側諸国からの非難に曝されることになる。
例えばウクライナ政府は、“ユニリーバやその他ロシア残留企業は、ロシアによるウクライナ戦争の支持者だ”と酷評している。
なお、シャギーナ氏は『CNBCニュース』の取材に対して、“対イラン、対北朝鮮制裁と違って、対ロシア制裁は抜け穴があり、一般のロシア市民向けやその他人道支援関連ビジネスの制裁は除外されているため、ロシア残留西側企業はこの分野での事業継続は可能である”とコメントしている。
一方、米コンサルティング会社テネオ(2011年設立)中央・東欧州地域担当のアンドリアス・ターサ顧問は、“国際的対ロシア制裁及び数百社の西側企業のロシア撤退に伴い、ロシア経済は段々疲弊することになろう”とし、“時が経てば経つ程、ロシア経済は先細りとなり、益々中国頼みとなろう”と分析している。
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米国:中国に対抗しベトナムとの連携強化
ベトナムと米国との貿易、投資関係が拡大、半導体や鉱物分野で協議が行われている。ベトナムは米国にとって、南シナ海上で覇権を主張する対中国戦線の前線と捉えられており、領有権を主張する中国との溝が深まっている。
9月10日付米
『CNBC』(ロイター通信):「米、中国に対抗しベトナムとの関係強化」:
ベトナムは米国との外交関係を中国やロシアと並ぶ最上位国に引き上げた。
米国は数ヶ月に渡り、中国関連のリスクから世界のサプライチェーンを守る戦略として、ベトナムとの関係強化を求めてきた。長い冷戦時代から半世紀を経て、バイデン氏はハノイに到着、小学生らが米国旗を振る中、ベトナム共産党主催の歓迎式典に出席した。...
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9月10日付米
『CNBC』(ロイター通信):「米、中国に対抗しベトナムとの関係強化」:
ベトナムは米国との外交関係を中国やロシアと並ぶ最上位国に引き上げた。
米国は数ヶ月に渡り、中国関連のリスクから世界のサプライチェーンを守る戦略として、ベトナムとの関係強化を求めてきた。長い冷戦時代から半世紀を経て、バイデン氏はハノイに到着、小学生らが米国旗を振る中、ベトナム共産党主催の歓迎式典に出席した。
国際経済競争の中、ベトナムは、独自の地位を模索し、米国と中国の緊張関係の中バランス外交をしてきた。ベトナムは大国中国との関係も維持する方向で、習首席をはじめとする中国の高官が、今後数日か数週間のうちにベトナムを訪問するとみられている。一方、ロシアとの関係は、ウクライナ情勢をめぐり、米国の制裁に繋がる武器の供与合意などで不安定となっている。
米越関係強化は、安全保障面にも影響がある。現時点では武器合意の段階にはないが、米国や同盟国により、軍事面でロシアへの依存から脱却できるような提案が行われる可能性が指摘されている。両国間の貿易や投資関係がますます盛んになる一方、南シナ海でのベトナムと中国の領土対立は激しさを増している。
経済面では、半導体分野での合意が中心となるとみられる。半導体分野でのエンジニア不足から、技術訓練支援も合意に盛り込まれるとみられる。ベトナムへの「友好的移転」の重要性を強調し、グーグル、インテル、ボーイング等の米IT業界幹部は11日、ベトナムのIT幹部やブリンケン国務長官らとハノイで会合を行う。
レアアース等の重要鉱物のサプライチェーン強化も重要な課題。米国の調査によると、ベトナムは中国に次ぐ世界最大のレアアース埋蔵地とされる。バイデン氏の訪問中、同分野での合意の可能性も期待されているが具体性に乏しく、過去の米企業とベトナムのレアアース企業との契約は失敗に終わっているという。
人権問題では、活動家の逮捕や表現の自由がないことが米国当局から批判されているため、ベトナム側が善意を示し、活動家を開放する可能性も指摘されている。
同日付米『フィナンシャル・タイムズ』:「ベトナムと米国が中国への対抗措置として関係格上げ」
バイデン大統領はG20サミット開催地のインドから出発し、ベトナム・ハノイを訪問。中国が覇権を主張する中、ベトナムが米国との関係を強化。
米国は10日、「包括的戦略パートナーシップ」に合意。(包括的パートナーシップから)2つ上の最上位に格上げされた。これはかつて、中国、ロシア、インドのみだったが、昨年時点では、韓国も加わっていた。ベトナムは中国の反応を恐れ、米国との関係強化を避けてきた。
米国と同盟国は、対ロシアで世界的コンセンサスを築くようグローバルサウスを説得している。米国は、インド太平洋へ権力を広めようとする中国へ対抗するために、アジアの途上国の国々を重要視しており、ベトナムは南シナ海上で覇権を主張する対中国戦線の前線と捉えられている。
バイデン氏はベトナムとの関係の重要性を示すため、G20前にジャカルタで開かれた東アジアサミットを欠席。ベトナム戦争終結からほぼ半世紀というタイミングでの関係強化となった。
今回の動きに懸念を示した中国は、バイデン氏の訪越に先立ち、今週急遽、高官をハノイに派遣。中国共産党中央対外連絡部の劉建超氏がグエン・フー・チョン書記長と会談し、両国の「政治的相互関係強化」について協議した。
シンクタンク「シンガポール国際問題研究所」のサイモン所長は、米国側への大きな転換期であり、ベトナムはオーストラリア、シンガポール、インドネシア、日本との関係強化にも意欲を示している」とする。
安全保障面だけでなく、米国との関係格上げは、経済面、特に半導体でも重要性が増してくる。米産業への「半導体サプライチェーン支援」もパートナーシップ合意に含まれている。
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