米国:中国に対抗しベトナムとの連携強化(2023/09/11)
ベトナムと米国との貿易、投資関係が拡大、半導体や鉱物分野で協議が行われている。ベトナムは米国にとって、南シナ海上で覇権を主張する対中国戦線の前線と捉えられており、領有権を主張する中国との溝が深まっている。
9月10日付米
『CNBC』(ロイター通信):「米、中国に対抗しベトナムとの関係強化」:
ベトナムは米国との外交関係を中国やロシアと並ぶ最上位国に引き上げた。
米国は数ヶ月に渡り、中国関連のリスクから世界のサプライチェーンを守る戦略として、ベトナムとの関係強化を求めてきた。長い冷戦時代から半世紀を経て、バイデン氏はハノイに到着、小学生らが米国旗を振る中、ベトナム共産党主催の歓迎式典に出席した。...
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9月10日付米
『CNBC』(ロイター通信):「米、中国に対抗しベトナムとの関係強化」:
ベトナムは米国との外交関係を中国やロシアと並ぶ最上位国に引き上げた。
米国は数ヶ月に渡り、中国関連のリスクから世界のサプライチェーンを守る戦略として、ベトナムとの関係強化を求めてきた。長い冷戦時代から半世紀を経て、バイデン氏はハノイに到着、小学生らが米国旗を振る中、ベトナム共産党主催の歓迎式典に出席した。
国際経済競争の中、ベトナムは、独自の地位を模索し、米国と中国の緊張関係の中バランス外交をしてきた。ベトナムは大国中国との関係も維持する方向で、習首席をはじめとする中国の高官が、今後数日か数週間のうちにベトナムを訪問するとみられている。一方、ロシアとの関係は、ウクライナ情勢をめぐり、米国の制裁に繋がる武器の供与合意などで不安定となっている。
米越関係強化は、安全保障面にも影響がある。現時点では武器合意の段階にはないが、米国や同盟国により、軍事面でロシアへの依存から脱却できるような提案が行われる可能性が指摘されている。両国間の貿易や投資関係がますます盛んになる一方、南シナ海でのベトナムと中国の領土対立は激しさを増している。
経済面では、半導体分野での合意が中心となるとみられる。半導体分野でのエンジニア不足から、技術訓練支援も合意に盛り込まれるとみられる。ベトナムへの「友好的移転」の重要性を強調し、グーグル、インテル、ボーイング等の米IT業界幹部は11日、ベトナムのIT幹部やブリンケン国務長官らとハノイで会合を行う。
レアアース等の重要鉱物のサプライチェーン強化も重要な課題。米国の調査によると、ベトナムは中国に次ぐ世界最大のレアアース埋蔵地とされる。バイデン氏の訪問中、同分野での合意の可能性も期待されているが具体性に乏しく、過去の米企業とベトナムのレアアース企業との契約は失敗に終わっているという。
人権問題では、活動家の逮捕や表現の自由がないことが米国当局から批判されているため、ベトナム側が善意を示し、活動家を開放する可能性も指摘されている。
同日付米『フィナンシャル・タイムズ』:「ベトナムと米国が中国への対抗措置として関係格上げ」
バイデン大統領はG20サミット開催地のインドから出発し、ベトナム・ハノイを訪問。中国が覇権を主張する中、ベトナムが米国との関係を強化。
米国は10日、「包括的戦略パートナーシップ」に合意。(包括的パートナーシップから)2つ上の最上位に格上げされた。これはかつて、中国、ロシア、インドのみだったが、昨年時点では、韓国も加わっていた。ベトナムは中国の反応を恐れ、米国との関係強化を避けてきた。
米国と同盟国は、対ロシアで世界的コンセンサスを築くようグローバルサウスを説得している。米国は、インド太平洋へ権力を広めようとする中国へ対抗するために、アジアの途上国の国々を重要視しており、ベトナムは南シナ海上で覇権を主張する対中国戦線の前線と捉えられている。
バイデン氏はベトナムとの関係の重要性を示すため、G20前にジャカルタで開かれた東アジアサミットを欠席。ベトナム戦争終結からほぼ半世紀というタイミングでの関係強化となった。
今回の動きに懸念を示した中国は、バイデン氏の訪越に先立ち、今週急遽、高官をハノイに派遣。中国共産党中央対外連絡部の劉建超氏がグエン・フー・チョン書記長と会談し、両国の「政治的相互関係強化」について協議した。
シンクタンク「シンガポール国際問題研究所」のサイモン所長は、米国側への大きな転換期であり、ベトナムはオーストラリア、シンガポール、インドネシア、日本との関係強化にも意欲を示している」とする。
安全保障面だけでなく、米国との関係格上げは、経済面、特に半導体でも重要性が増してくる。米産業への「半導体サプライチェーン支援」もパートナーシップ合意に含まれている。
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中国の新地図に近隣国が抗議(2023/09/01)
中国が新たに発表した、南シナ海などでの領有権が主張されている地図を巡り、近隣国が抗議をしているという。
8月31日付米
『CNBC』(ロイター通信):「フィリピン、台湾、マレーシアが中国の最新南シナ海地図を拒否」:
中国は先月28日、南シナ海の90%を含めたU字線の地図を発表。この地図に対し、フィリピン、マレーシア、台湾、ベトナムは、根拠もなく南シナ海などで領有権が主張されているとし拒否している。
フィリピンは31日、中国に対し、国際法や2016年の仲裁裁判判決に基づく「責任ある行動と責務」を求め「国際法と、自分たちが掲げる独自の境界線に法的妥当性はないとした2016年の仲裁裁判所判決を踏まえ、責任ある行動をしてほしい」と要求した。...
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8月31日付米
『CNBC』(ロイター通信):「フィリピン、台湾、マレーシアが中国の最新南シナ海地図を拒否」:
中国は先月28日、南シナ海の90%を含めたU字線の地図を発表。この地図に対し、フィリピン、マレーシア、台湾、ベトナムは、根拠もなく南シナ海などで領有権が主張されているとし拒否している。
フィリピンは31日、中国に対し、国際法や2016年の仲裁裁判判決に基づく「責任ある行動と責務」を求め「国際法と、自分たちが掲げる独自の境界線に法的妥当性はないとした2016年の仲裁裁判所判決を踏まえ、責任ある行動をしてほしい」と要求した。また、マレーシアは地図を巡り、外交的な抗議を提出したとしている。
一方の中国は、境界線は歴史的地図に基づくものだと主張している。地図上の中国のU字線は中国海南省の南方1500キロまで伸び、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシアの排他的経済水域(EEZ)に入り込んでいる。2009年に国連に提出され、いわゆる「九段線」が入ったものと異なるこの最新地図は、1948年の中国地図に似ており、台湾を含む10箇所に線が書かれていた。中国では2013年にも10段線の地図が出版されている。
29日の国営放送中国中央テレビによると、現在、中国では「国家地図意識宣伝ウィーク」となっているという。
中国外務省の汪文斌副報道局長は、9段線ではなく10段線の地図を公表した理由について、中国国内では領土に関して一貫した認識があるとし、「中国の南シナ海問題への認識は常に明確だ。当局が毎年、様々な基準による種類の地図を定期的に更新し公表している。関係各所が客観的かつ理性的に対応することを臨む」としている。
台湾外務省の劉永健報道官は、台湾は「決して中国の一部ではない。中国政府がいくら台湾の領有地位を捻じ曲げようとしても、客観的事実を変えることはできない」とコメントしている。
ベトナムの外務相は31日、「中国の地図は価値がなく、ベトナムや国際法に違反している。段線に基づく東海でのあらゆる主権主張を断固拒否する」としている。また、ベトナム当局が、今週はじめ南シナ海で2人が負傷した中国国籍の船舶によるベトナム漁船攻撃事件を捜査中だとしている。
同日付シンガポール『CNA』:「係争地を巡る中国の新地図に抗議するインド、マレーシア、フィリピンも抗議」
中国が新たに公表した係争地が描かれた地図に関し、インドが抗議、これにマレーシアとフィリピンが続いた。一方でインドネシアは領土境界線は国際法に準拠すべきだとしている。
中国自然資源省は8月28日、「2023年度版標準地図」を出版。そこには南シナ海におけるマレーシア、ベトナム、フィリピン、ブルネイとの係争地域、またインドやロシア内の複数地域の主権が示されていた。
地図の公開は、中国の首脳らが参加を予定し、インドネシアで9月5日から7日まで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議、インドでのG20首脳会議を控えた時期となった。
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