米メディア;中国軍に東・南シナ海において、ロシア軍のウクライナ軍事侵攻作戦を模倣させない手段は?(2022/03/30)
3月23日付GLOBALi「
米海軍幹部、中国が南シナ海の3つの人工島を完全武装化と非難」で報じたとおり、中国がBig 3と呼ばれる南シナ海・スプラトリー諸島(南沙諸島)内のミスチーフ礁・スビ礁・ファイアリークロス礁上の人工島を完全武装化した。これによって、中国軍は、米国はもとより周辺国の艦船や戦闘機の活動を十分制御できる優位性を確保したとみられる。そこで中国が、ロシアのウクライナ軍事侵攻の例に倣って、尖閣諸島や台湾含めて、領土拡大のための実力行使に出てくる場合に備えて、米国やその同盟国はどう対応したら良いのか?
3月29日付
『ニューヨーク・ポスト』紙は、米保守系NPOハドソン研究所(1961年設立の安全保障・公共政策専門の大手シンクタンク)のブライアン・クラーク上級研究員兼安全保障問題研究部門長による中国軍の軍事行動に関わる寄稿文を掲載した。
同氏は、米軍が優位な水中戦を仕掛けて、中国本土・南シナ海人工島基地間の通信を遮断する等、中国軍の行動前に具体策を講じることが必要と説いている。
すなわち、北大西洋条約機構(NATO)加盟国首脳は先週、ロシア軍の侵攻を受けているウクライナに軍装備品等を支給するとともに、対ロシア制裁を更に厳格化することで支援していくことで一致した。...
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3月29日付
『ニューヨーク・ポスト』紙は、米保守系NPOハドソン研究所(1961年設立の安全保障・公共政策専門の大手シンクタンク)のブライアン・クラーク上級研究員兼安全保障問題研究部門長による中国軍の軍事行動に関わる寄稿文を掲載した。
同氏は、米軍が優位な水中戦を仕掛けて、中国本土・南シナ海人工島基地間の通信を遮断する等、中国軍の行動前に具体策を講じることが必要と説いている。
すなわち、北大西洋条約機構(NATO)加盟国首脳は先週、ロシア軍の侵攻を受けているウクライナに軍装備品等を支給するとともに、対ロシア制裁を更に厳格化することで支援していくことで一致した。
これに対して、ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)は何らコメントしなかったが、側近の軍幹部からは、ウクライナ軍の強固な抵抗に遭っていることもあって、攻撃部隊の縮小の考えを仄めかした。
かかる状況下、米国及びアジアの同盟国にとって、中国がロシアの軍事作戦に倣って、インド太平洋地域において攻勢をかけてこないか十分注意する必要がある。
つまり、ロシアは2014年のクリミア半島併合に続いて東ウクライナのドンバス地方を武力で以て影響下に置く作戦を展開してきているが、中国が、数十年間グレイ・ゾーンとされてきた東・南シナ海における領有権確保のために、ロシアの戦略を模倣する可能性がないとは言えないからである。
中国はこれまで既に、南シナ海の人工島を完全武装化していることから、対艦や対空ミサイル等を駆使して、米軍やその他同盟国の船舶や戦闘機を港や飛行場に釘付けにすることが可能である。
更に、東・南シナ海の領有権を主張する海域において、日本や周辺国の船舶や漁船を排除しようと活動する中国海警局艦船や武装漁船を、人工島上の拠点から十分援護できるからである。
従って、米軍や同盟国は、中国軍が具体的に活動を起こしてからそれを阻止するのは難しいと言わざるを得ない。
米軍が何年も実施してきた「航行の自由作戦」も、また、近年の英国・フランス等米同盟国軍艦船による監視航行を以てしても、中国による南シナ海軍事拠点化を差し止めることができなかったからである。
米国防総省は今週、“軍事行動”含めて3つの具体的な活動方針を固めたと公表した。
具体的活動について詳しくは明かさなかったが、米軍の強制力減少を食い止め、敵対国の行動決定への影響力行使、また米国及び同盟国の作戦遂行能力の強化が考えられる。
そこで、米軍の作戦及び抑止力のため、具体的軍事行動が中心となるべきと考える。
何故なら、ウクライナ侵攻の例でみられるように、中国の行動は脅しだけでは抑止することができないと考えられるからである。
かかる状況下、有効と思われるのは、まず、無人攻撃機MQ-9Bリーパーによって人工島の中国軍事拠点に電子戦を仕掛けることである。
これによって、中国軍のレーダーやラジオ通信設備を損傷させることで、同軍の活動を大きく制限することが可能となる。
また、米軍が得意とする水中戦能力を最大限に活用することも挙げられる。
例えば、冷戦時に対ソ連に十分効果を発揮したように、無人水中艇(水中ドローン)を駆使することで、中国本土と南シナ海人工島間を繋ぐ通信ケーブルを切断することが考えられる。
これによって、中国海警局艦船や武装漁船との通信網を遮断することが可能となる。
ともかく、中国軍による東・南シナ海における軍事行動を抑止するためには、行動を起こされる前に、阻止活動の実行が必須である。
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中国;米原子力潜水艦の衝突事故に関わる米軍発表の大幅遅延に隠蔽体質だと非難声明【米・中国メディア】(2021/10/22)
米国原子力潜水艦が今月初め、インド太平洋を航行中に未確認物体に衝突する事故を起こした。米軍による同事故の発表が5日後のことであったことから、中国側がこの時とばかりに、無責任な隠蔽体質だと非難する声明を出した。
10月21日付米
『ユーラシア・レビュー』:「中国、米軍潜水艦衝突事故を理由に航行の自由作戦中止を要求」
中国はこの程、今月初めに米軍原子力潜水艦が起こした未確認物体に衝突する事故について“愚かな過ち”と非難するとともに、これを契機に南シナ海で米軍が展開している航行の自由作戦(FONOP)を中止するよう要求した。
この中国の声明は、10月2日に高速攻撃型原子力潜水艦“コネチカット”(注後記)が衝突事故を起こしてから数日後に米軍が公表して以来、最も厳しいものとなっている。...
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10月21日付米
『ユーラシア・レビュー』:「中国、米軍潜水艦衝突事故を理由に航行の自由作戦中止を要求」
中国はこの程、今月初めに米軍原子力潜水艦が起こした未確認物体に衝突する事故について“愚かな過ち”と非難するとともに、これを契機に南シナ海で米軍が展開している航行の自由作戦(FONOP)を中止するよう要求した。
この中国の声明は、10月2日に高速攻撃型原子力潜水艦“コネチカット”(注後記)が衝突事故を起こしてから数日後に米軍が公表して以来、最も厳しいものとなっている。
専門家は、中国が厳しい態度に出た背景には、9月中旬に発足した、中国を仮想敵とするAUKUS(米・英・豪3ヵ国の軍事同盟)の存在があるとコメントした。
更に、米上院外交委員会が今週初め、南シナ海の平和と安定を脅かす中国の政策に関与した中国企業や高官に対する制裁法案を可決したことから、それへの腹いせとも考えられる。
中国国防部(省に相当)の譚克非報道官(タン・ケーフェイ、45歳)は10月19日、当該潜水艦衝突事故について“中国は重大な懸念を抱いている”と表明した。
同報道官はまた、“米国は当事国として、事故詳細について説明する責任と義務がある”と主張した。
そして更に、米国が行っている行為は“周辺国の安全保障に脅威となるだけでなく、地域の緊張を悪戯に高めるだけである”ので、米国に対して、中国近海や領空におけるFONOPや偵察行為を直ちに中止するよう要求する、とも言及した。
最後に同報道官は、米国が事故発生から5日も経ってから発表したことは、“事故そのものを隠蔽しようとした無責任な行動である”とし、“かかる行動は誤解や誤った判断を誘発しかねない”と糾弾している。
なお、専門家の推測によると、当該潜水艦は沈没した船舶・コンテナ、あるいは海図に表示されていない物体に衝突したものとみられるという。
一方、中国国営メディア『環球時報』は先週、複数の専門家の分析を引用して、米軍潜水艦は“愚かな過ち”を犯したと報じた。
そのうちのひとり李潔氏(リー・ジエ)は、米軍潜水艦は、機動作戦遂行時や複雑な地形の海底を潜航する場合に必須の“探知機”のスイッチを入れ忘れた恐れがあり、それで恥ずべき失敗を糊塗しようとしたと推測される、と述べている。
10月19日付中国『環球時報』:「中国、米軍潜水艦“コネチカット”の衝突事故の原因等詳細説明を要求」
国防部の譚報道官は10月19日、米軍潜水艦が南シナ海の公海において“未確認物体”と衝突した事故について、米国に対して事故の詳細について説明を求めるとの声明を出した。
その上で同報道官は、“米軍は長い間、FONOPの下、南シナ海にしばしば空母、戦略爆撃機、原子力潜水艦等を派遣して、周辺国に脅威を及ぼし、地域の安定を棄損している”と強調した。
10月8日付メディア報道によると、当該原子力潜水艦が10月2日、南シナ海の海中で衝突事故を起こしていたという。
米海軍の発表によると、同艦がインド太平洋の公海における作戦遂行中に、不特定物体と衝突したが、乗組員の中に命に関わる程の負傷者はおらず、また、同艦の原子力発電施設含めて安全で安定した状態だという。
なお、譚報道官は更に、米・英・豪3ヵ国による軍事同盟(AUKUS)に基づいて、原子力潜水艦整備協力を推進しようとしているが、それこそ無用な核兵器拡大リスクをもたらすだけでなく、核拡散防止条約(1970年発効)の精神に反する深刻な違法行為、また、東南アジアを非核地域としようとする活動を阻害するものだ、と糾弾した。
一方、外交部の趙立堅報道官(チョウ・リーチアン、48歳)も10月8日、“米軍潜水艦の衝突事故に深刻な懸念を抱いている”とした上で、“同艦の南シナ海を航行した目的は何か、また、事故に伴う放射線漏洩で海の環境に悪影響を及ぼすことにならないか等、事故の詳細について説明を求める”、と表明していた。
(注)原子力潜水艦“コネチカット”:排水量9284トン規模で、原子炉1基を装着し、25ノット(時速46.3キロメートル)以上の速度での運航が可能。乗組員は140人、トマホークミサイルとMK48魚雷で武装。原子力による動力を使うが、戦略原子力潜水艦と違って核兵器は運用しない。
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