3月22日付
『FITSニュース』:「米海兵隊、南シナ海の有事に対し準備万端」
南シナ海においては、数年前からの中国による一方的な海洋進出が、周辺国を悩ませている。
米軍は機会を捉えて、米同盟国のフィリピン等を擁護するためのみならず、年5兆ドル(約555兆円)にも上る貨物船の往来に支障を来さないよう、中国に対して“航行の自由作戦(FONO)”等を実施して警告を発してきている。
そしてこの程、同海域での有事に備えるため、今週初めに沖縄の伊江島において大規模訓練を実施した。
第31海兵遠征部隊(沖縄駐留の部隊)の将兵らが、上部組織の第3海兵遠征軍、第3海兵補給群、第1海兵航空団、及び空軍第353特殊作戦群(沖縄嘉手納空軍基地駐屯)、更に、陸軍第1大隊、陸軍第1特殊部隊の支援を得て上陸作戦などを行った。
同訓練には、F-35Bステルス戦闘機やC-130J軍用輸送機も加わっている。
第31海兵遠征部隊長のロバート・ブロディ大佐は、今回の訓練で、速やかな上陸作戦を展開し、圧倒的な戦闘力を配備することが可能であることを確認した、との声明を発表した。
一方、米軍を束ねる統合参謀本部議長のジョセフ・ダンフォード海兵隊大将は先週、米上院の公聴会において、中国の肥大化する軍事的脅威を考えた場合、海兵隊の本来の任務である臨戦態勢構築のため、太平洋地域における準備が焦眉の急である、と訴えている。
(注1)米海兵隊:前身の大陸海兵隊は1775年、米独立戦争時に組織。海外での武力行使を前提とし、米国の国益を維持・確保するための緊急展開部隊として行動。また、必要に応じ水陸両用作戦(上陸戦)を始めとする軍事作戦を遂行することも目的とする。本土の防衛が任務に含まれない外征専門部隊であることから「殴り込み部隊」とも渾名される。太平洋戦争、ベトナム戦争、グレナダ侵攻、湾岸戦争、イラク戦争など、米国の行った大規模軍事行動には常に最前線に投入され、米海兵部隊は規模の大小はあるものの全世界に展開されており、有事の際には世界中どこにでも展開できる能力を保有。
(注2)伊江島:沖縄本島北西部の約9キロメーター沖にある、周囲約22キロメーターの小島。太平洋戦争時、旧日本軍の基地があったことから、激戦地となった。同島北西部には、島全体の約35%を占める、米海兵隊の補助飛行場がある。
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3月5日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「フィリピン、南シナ海で米中武力衝突の巻き添えを懸念」
フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は3月5日、1951年相互防衛条約(MDT、注後記)の存在のため、南シナ海で米軍が中国軍と“武力衝突”を起こした場合、フィリピンの意思に拘らず、巻き込まれる恐れがあると懸念を表明した。
同国防相によれば、MDT内の曖昧な部分は再検証する必要があると言い、例えば、フィリピンが実効支配していたスプラトリー諸島内のミスチーフ礁が、1990年代半ばに中国軍によって収奪された際、米国はそれを止めようとしなかったとした。...
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3月5日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「フィリピン、南シナ海で米中武力衝突の巻き添えを懸念」
フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は3月5日、1951年相互防衛条約(MDT、注後記)の存在のため、南シナ海で米軍が中国軍と“武力衝突”を起こした場合、フィリピンの意思に拘らず、巻き込まれる恐れがあると懸念を表明した。
同国防相によれば、MDT内の曖昧な部分は再検証する必要があると言い、例えば、フィリピンが実効支配していたスプラトリー諸島内のミスチーフ礁が、1990年代半ばに中国軍によって収奪された際、米国はそれを止めようとしなかったとした。
すなわち、同国防相の説明では、1992年に米軍がフィリピンから撤退して、フィリピンが米軍の庇護からはずれた途端、中国が隙を狙って、その数年後の1995年、実際の武力攻撃ではなかったものの、武力侵略で以て同礁を奪いにきたが、米軍は何もできなかったという。
MDTは、アジア地域内の米同盟国と締結している最も古い防衛条約である。
しかし、同国防相が指摘したとおり、フィリピン側からはMDTの見直しについて協議を提案してきており、2月28日晩にハノイから飛んできたマイク・ポンペオ国務長官と、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領他政府要人との間で交渉が行われている。
同国務長官は交渉の中で、もしフィリピン軍、航空機、船舶が南シナ海において敵に攻撃されたなら、米軍は必ず援軍を派遣すると、米高官として初めて公に約束した。
ただ、同国防相が心配しているのは、米軍の航行の自由作戦の展開が頻繁に行われている現状下、いつ何時米中間で武力衝突が発生するか判らず、しかし、MDTが存することから、フィリピンの意思に拘らず同紛争に巻き込まれる恐れがあることである。
従って、フィリピンとしては、MDTを現状に即した形で見直しすることが必要だとしている。
同日付フィリピン『マニラ・ブルティン』紙:「ロレンザーナ国防相、1951年MDTは戦争抑止力どころか大混乱をもたらすと警鐘」
ロレンザーナ国防相は3月5日、1951年締結のMDTは、今の時代においては、戦争抑止力どころか、むしろ危機に陥った際に大混乱を引き起こしかねないと警鐘を鳴らした。
特に、軍事力を増大してきた中国に対して、米国が増々強硬に南シナ海において航行の自由作戦をしばしば断行している現状下、万一米中間で武力衝突が発生した場合、MDTがあるために、フィリピンの意思に拘らず、その紛争に巻き込まれてしまう恐れがあるからだと強調した。
従って、同国防相は、MDT内に潜む曖昧な箇所を見直す必要があるとして、昨年12月から米国側に交渉を持ちかけているとした。
しかし、テオドロ・ロクシン外相は、今回訪比したポンペオ国務長官が、南シナ海において万一フィリピンが攻撃された場合、MDT第4条に基づいて、米軍は必ず援軍を出すと公に約束したとして、MDTの見直し交渉は必要でなくなったのではないかと言及している。
(注)MDT:1951年8月にワシントンで調印された米国とフィリピンとの間の相互防衛条約。1952年8月発効。条約の趣旨は、武力攻撃を受けた場合、自国の憲法上の手続きに従って共同行動をとること。その適用範囲は、フィリピン、米国の領土及び両国管理下の地域、軍隊、船舶、航空機で、非常に広い。有効期間は無期限だが、いずれか一方の他方に対する通告後1年でこの条約を終了させることができる。
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