米・フランス・ロシア・中国メディア;南シナ海問題近況(2016/06/23)
6月22日付【
時流:国際司法判断で中国はどう動くか】の中で、“中国は、南沙、西沙に加えて、フィリピン沖のスカボロー礁も埋め立て、南シナ海の中心部を三角形のようにして、軍事支配をしようと企てている。今回の国際司法判断は、こうした中国の南シナ海戦略に大きな打撃を与えるものになる可能性はあるが、中国の外交戦略も侮れないものである”と記されている。そして、常設仲裁裁判所(PCA)の裁定が下るタイミングが秒読み段階となり、米国含めた関係各国がいろいろなことを言い出し、また行動し始めている。
6月22日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』記事引用):「米国、中国及びその他関係国に対し裁定が出ても冷静な行動を要請」
「・米国務省高官は6月22日、数週間内に下されると思われるPCAの裁定結果について、中国及びその他関係国とも、冷静な行動を取るよう要請すると表明。
・南シナ海問題で初めての国際仲裁判断となるが、その後の関係国間外交交渉をどう進めていくのかが重要と付言。...
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6月22日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』記事引用):「米国、中国及びその他関係国に対し裁定が出ても冷静な行動を要請」
「・米国務省高官は6月22日、数週間内に下されると思われるPCAの裁定結果について、中国及びその他関係国とも、冷静な行動を取るよう要請すると表明。
・南シナ海問題で初めての国際仲裁判断となるが、その後の関係国間外交交渉をどう進めていくのかが重要と付言。
・中国はこれまで、フィリピンによるPCA提訴を認めておらず、仮に中国側にとって不利な判断が下されても、逆に益々強硬な行動に出る恐れ。
・なお、同高官は、最近中国の沿岸警備艇が中国漁船に随行してインドネシア領のナトゥナ諸島の領海内に侵入したため、インドネシア海軍による警告射撃事件に発展していることも懸念。」
同日付フランス
『フランス 24』オンラインニュース(
『AFP通信』記事引用):「米高官、
中国が漁船団を使って海洋活動範囲拡大と指摘」
「・米国務省高官は6月22日、最近中国の武装した沿岸警備艇に伴われた中国漁船団が、インドネシア領のナトゥナ諸島沖に進出しており、憂慮すべき行動だと警告。
・かかる行動は、中国の覇権を具体化しようとするもので、同海域における挑発的かつ安定を損なうものと批判。
・インドネシアはこれまで、中国との間で領有権問題はなかったが、中国漁船団が、同国の排他的経済水域(EEZ、注後記)まで侵入して度々違法操業してきていることから、両国間で深刻な問題になりつつある。」
6月21日付ロシア
『イタルタス通信』:「ロシア大使:南シナ海の緊張関係は人為的なもの
と発言」
「・駐中国ロシア大使のアンドレイ・デニソフ氏は6月21日、南シナ海の緊張関係は、域外の他国が干渉して人為的に発生させたものと発言。
・同氏は、中国が主権範囲と主張する同海域内で、航行の自由と称した脅威が引き起こされたがためだと(暗に米国を非難する)コメント。
・ロシアの考えは、領土問題は関係当事国間の交渉で解決すべきものとの立場。」
6月22日付中国
『人民日報』(
『新華社通信』記事引用):「英国の法律専門家:南シナ海の
領有権問題にPCA関与は疑問との見解発表」
「・英国の2人の著名な法律専門家が最近、南シナ海領有権問題に関し、PCAが関与することは多くの点で疑問とする研究論文を発表。
・オックスフォード大学国際法部門のアントニオ・ツァナコポーロス准教授及び英国外務・英連邦省の元法律副顧問のクリス・ホマースリー氏。
・2人はそれぞれ、中国とフィリピン以外の国も関わる南シナ海領有権問題について、PCAがフィリピン・中国間の争いとして判断をするのは不適当であるし、裁定そのものの結果で、更に問題を複雑・困難化させかねない等と主張。
・そして、最適な方法は、領有権問題は棚上げにし、関係国間の共同開発等に委ねることだと提案。」
一方、同日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、2020年までに領有権争いのある南沙(ス
プラトリー)諸島に民間定期船就航を画策」
「・中国国営メディアの
『チャイナ・デイリィ』紙は6月22日、中国の海南省(ハイナン)政府が、2020年までに領有権問題のある南沙諸島に民間定期船を就航させる計画であると報道。
・これは習近平(シー・チンピン)主席が唱える“一帯一路”政策に沿う事業計画とするもの。
・中国外交部の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は、計画の詳細は不詳だが、海南省政府が中国主権内で旅行事業を開拓しようとするのは当然のことで何ら問題はないとコメント。」
121ヵ国が批准しているPCAが、フィリピンの提訴を審理するのが妥当と判断している以
上、それが不当であって不服従だと一方的に主張するのは、PCA批准国である中国のご都
合主義としか言いようがない。更に、ロシア大使にしても、また英国の法律専門家にして
も、最近になって中国支援を打ち出したアフリカや中東諸国と同様、中国の経済力に屈し
た上での発言なり論文発表だと勘繰られても仕方があるまい。
(注)EEZ:国連海洋法条約に基づいて設定される、天然資源及び自然エネルギーに関する主権的権利、並びに人工島・施設の設置、環境保護・保全、海洋科学調査に関する管轄権がおよぶ水域のこと。
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米・ロシア・フランス・中国メディア;南シナ海におけるせめぎ合い(2016/05/26)
これまで本欄の「南シナ海における米中のつばぜり合い(1)~(4)」等で、米中それぞれのつばぜり合いについて触れてきた。そして、両国以外の南シナ海問題関係国もせめぎ合いをしており、日本も米国側を後方支援すべく奔走している。
5月24日付米
『ロイター通信米国版』の報道記事「日加両国首相、南シナ海問題について“重大な懸念”表明」:
「・安倍首相は5月24日のカナダ・トルドー首相との会談において、中国による南シナ海の人工島建設及び軍事拠点化について、両国とも“重大な懸念”を有していることで一致したと発表。
・今週後半の主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)に先駆けて、両国首相が会談したもの。」
5月25日付米
『ユーラシア・レビュー』通信の報道記事「フィリピンのドゥテルテ新大統領の外交方針は?」:
「・暴言で悪名高いロドリゴ・ドゥテルテ新大統領であるが、南シナ海問題について、地政学的ニュアンスの違いを踏まえて洗練された解決に導き、また、中国・フィリピン間関係改善を成し遂げるのではないかと期待。...
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5月24日付米
『ロイター通信米国版』の報道記事「日加両国首相、南シナ海問題について“重大な懸念”表明」:
「・安倍首相は5月24日のカナダ・トルドー首相との会談において、中国による南シナ海の人工島建設及び軍事拠点化について、両国とも“重大な懸念”を有していることで一致したと発表。
・今週後半の主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)に先駆けて、両国首相が会談したもの。」
5月25日付米
『ユーラシア・レビュー』通信の報道記事「フィリピンのドゥテルテ新大統領の外交方針は?」:
「・暴言で悪名高いロドリゴ・ドゥテルテ新大統領であるが、南シナ海問題について、地政学的ニュアンスの違いを踏まえて洗練された解決に導き、また、中国・フィリピン間関係改善を成し遂げるのではないかと期待。
・欧米メディアが“東アジアのトランプ”とのレッテルを張っているが、実際ドゥテルテ氏はトランプ氏と異なり、二十有余年に及ぶ政治家としての揺るぎない実績を以て対応。
・具体的には、対峙する米中両大国に対して、ラモス政権(1992~1998年)及びアロヨ政権(2001~2010年)と同様、案件ごとに、また、フィリピンの国益に沿って、それぞれの国と等距離の外交政策を取ると分析。
・これまでベニグノ・アキノ政権は、安全保障のために米国及び日本の支援を仰ぎ、また、東南アジア諸国連合(ASEAN)をして中国に対抗せしめようと画策し、更に、中国を国際仲裁裁判所に提訴する等、敵対的な対応。
・そこでドゥテルテ新大統領は、来年ASEAN会議の議長国になることもあって、南シナ海問題について、中国側代表との直接対話を希望し、同海域の資源開発に関し、両国による共同開発を提案する意向を表明。
・また、オバマ大統領から最初に大統領選当選を祝うメッセージを受領したものの、ドゥテルテ新大統領は、これまで同様テロ対応で米国の支援を仰ぐものの、それ以外の安全保障上の連携については見直す可能性が大。」
5月24日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「“オバマ氏の策略”
は中国に対抗する中小国への支援」:
「・オバマ大統領は、中国と直接に全面対決するのではなく、中国と相対するベトナム、フィリピン、豪州などに部分的な支援を施すことで、中国対抗勢力を強化するとの策略だ、と国際政治専門家は分析。
・その一例が、長い間関係修復に手間取っていたベトナムに対して、武器禁輸政策の解除であり、これは明確に中国政府に対する牽制。」
5月25日付フランス
『フランス 24』オンラインニュース(
『AFP通信』記事引用)の報道
記事「中国、南シナ海問題に関わり様々な外交政策を展開」:
「・中国外交部の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は5月25日、ニジェール(アフリカ中西部の共和国)が他の40ヵ国以上の国と同様、南シナ海問題は関係国同士の直接対話に委ねるべきで、(フィリピンが提訴した)国際仲裁裁判所で裁かれるものではない、とする中国の方針に賛同したと発表。
・ニジェールの他、地政学上南シナ海に一切関わらないが、トーゴ(アフリカ西部)、ブルンジ(同中部)、アフガニスタン(中央アジア)なども賛同。
・これらの国に共通しているのは、いずれも貧しく、中国との交易や中国からの投資等に頼る国。
・ただ、フィジー(南太平洋)やスロベニア(中央ヨーロッパ)などは、中国外交部の発表は誤りで、中国もフィリピンもどちらの肩も持たないと即座に声明を発表。」
同日付中国
『新華社通信』の報道記事「中国とロシアの両外相、タシケントで両国間連携を強調」:
「・中国の王毅(ワン・イー)外交部長とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は5月24日、タシケント(ウズベキスタン)で会談し、両国間連携と国際問題の共通認識について再確認したと強調。
・両外相は、同地で開かれた“上海協力機構(SCO、注1後記)”外相会議に出席。」
同日付中国
『東方日報(上海)』の報道記事「SCO、南シナ海の平和と安定を支持」:
「・SCOのラシッド・オリモフ事務局長は5月24日、SCO加盟国は南シナ海含め、アジア太平洋地域の平和と安定を支持するとの共同声明を発表。
・SCO加盟国はまた、南シナ海の領有権問題について、国連憲章、国連海洋条約、平和五原則(注2後記)その他の国際法に準拠すべきであると強調。
・更にSCOは、当該領有権問題は当事国同士の対話と、南シナ海行動規範に基づき解決されるべきだとも表明。」
(注1)SCO:中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの8ヵ国による多国間協力組織。2001年6月、上海にて設立。
(注2)平和五原則:中国の周恩来首相とインドのネルー首相の会談に基づき1954年に合意された、一般の国際関係における原則を内容とする文書。
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