年始めの株式市場は世界株安で幕開け(2016/01/05)
年明けの世界の株式市場は、中国経済の減速や中東での緊張の高まりが影響し、各国市場で全面安のスタートとなった。中国政府が株式市場安定化のために導入した「サーキットブレーカー」が初日から発動されたが、その制度を問題視する声が出ている。今年の株式相場については、グローバル経済減速、利上げ、中東情勢などの懸念材料が多く、各メディアは悲観的な見通しを報じている。
1月4日付
『ワシントンポスト』紙は、中国が発端となる世界的株安によってニューヨーク株式市場は乱高下の幕開けとなったと伝え、グローバルな経済成長が減速し米金利が上昇し始めているなかで、投資家は今後1年間不安定な相場と向き合うことになりそうだと報じている。
株売り相場は中国からアジア、欧州、米国へと伝播し、上海・深圳の上場大型株300銘柄の指標であるCSI300は7%下落し、日経平均およびユーロ・ストックスはともに3%以上値下がりした。...
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1月4日付
『ワシントンポスト』紙は、中国が発端となる世界的株安によってニューヨーク株式市場は乱高下の幕開けとなったと伝え、グローバルな経済成長が減速し米金利が上昇し始めているなかで、投資家は今後1年間不安定な相場と向き合うことになりそうだと報じている。
株売り相場は中国からアジア、欧州、米国へと伝播し、上海・深圳の上場大型株300銘柄の指標であるCSI300は7%下落し、日経平均およびユーロ・ストックスはともに3%以上値下がりした。米ダウ工業株30種平均は、終日3%以上の低値で取引されたが引値は1.6%安まで持ち直した。世界的な株売りの動きは、投資家が中国の経済減速を恐れていることを物語っている。世界第2位の中国経済は冷え込んでおり、4日には中国製造業はさらに縮小していると発表された。中国政府は有効な景気刺激策を打つ能力が無いのではとの疑念が再浮上している。また、中国は、株の売買を一時的に停止する「サーキットブレーカー」を導入したが、これが投資家の不安を煽っている。
一方、中東での緊張が強まったことで一部の投資家は苛立っている。世界最大の原油輸出国であるサウジが3日、イランとの外交関係を断絶し、これにバーレーンやスーダンが続き、スンニ派とシーア派の数十年にわたる勢力争いは最悪の危機を迎えている。また、過去1年以上低迷した原油価格は、中東紛争によって原油供給が妨げられることを懸念し、一時3%近く値上がりした。
更に投資家は、FRBが昨年12月に第1回目の利上げをした後次の利上げをいつ頃おこなうかを注視している。金融専門家は、株安は一時的なことであり、狼狽売りをせず冷静を保つことが大事だと指摘している。
1月4日付、
『フォーチュン』誌は新年の株式市場が値下がりの幕開けとなったことを受け、「未だパニックになる必要はない」としながらも、先行きの悲観的な見通しを報じている。それによると、初日の株価は今後1年の動きを予想する上では何の意味もなく、1月中は様子を見たほうが良い。統計的には、1月の株価は72%の確率で年間の動きを反映している。
しかし、株価は企業収益からみると歴史的な高値であり、FRBは利上げを指向しており、物価はグローバル経済成長がひ弱なことを示している。2016年は投資家にとって失望の年になりそうであると報じている。
1月5日付
『ザ・ディプロマット』誌は、中国政府が導入した「サーキットブレーカー」制度などが株式市場に悪影響を与えていると指摘している。
月曜日の中国株式市場は、午後1時12分に5%下落して一時取引停止となり、取引再開後すぐに7%値下がりしたため1時33分にその日の取引が中止された。取引再開後暴落したことについて、専門家はサーキットブレーカー制度そのものに問題があると指摘している。月曜日の中国株式市場の値下がりは12月の弱い製造指数が発表されたことに反応したものである。しかし、専門家は、投資家が昨年7月8日大株主に課せられた6ヵ月の持株売り禁止の措置が解除された後の影響を心配し、売却に走ったものと推測している。サーキットブレーカー同様、売却禁止措置は市場を安定化させる目的で導入されたものであるが、予想外の効果を引き起こしている。「新華社通信」は、中国人アナリストが初日の市場の動きは「通常の健全で合理的な調整」であると分析していることを紹介し、平静さを装っている。
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パリ気候変動会議、協定合意に向け最終局面(2015/12/09)
COPパリで開催中のパリ気候変動会議(気候変動枠組み条約第21回締約国会議)は、今週末の閉会に向けて、2020年以降の新たな温暖化対策の枠組みについての最終調整をおこなっており、大きな山場を迎えている。今回の会議では、世界の気温上昇を産業革命以前から2℃未満に抑えるという目標は達成できないが、この目標を見据えつつ、すべての参加国が合意する現実的で実効性のある大胆な温暖化対策を打ち出せるかどうかが焦点となっている。このまま何もしなければ、世界の温暖化ガス排出量はさらに増加することが確実であり、タイムリミットが迫っているという危機意識が広がっている。
12月7日付
『ロイター通信』は、パリの気候変動会議は、資金などについて意見の相違はあるものの、今週末には協定の合意ができそうであると報じている。会議を主催するフランスのファビウス外相は、「各国は設定した自主基準を尊重しなければならない。目標は明確であり、その方法やスケジュールもはっきりしている」と述べている。
パリ会議に先立ち各国が提出した自主基準では、地球気温の上昇を産業革命以前比で2℃以内に抑えることは難しいことはすでに明らかである。...
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12月7日付
『ロイター通信』は、パリの気候変動会議は、資金などについて意見の相違はあるものの、今週末には協定の合意ができそうであると報じている。会議を主催するフランスのファビウス外相は、「各国は設定した自主基準を尊重しなければならない。目標は明確であり、その方法やスケジュールもはっきりしている」と述べている。
パリ会議に先立ち各国が提出した自主基準では、地球気温の上昇を産業革命以前比で2℃以内に抑えることは難しいことはすでに明らかである。しかし、少なくとも途上国が化石燃料の使用を止めるためには、より多くの資金が必要であるという認識が広がりつつある。先進国は既に2020年までに1000億ドルの資金提供を約束しているが、パリ会議では、毎年の拠出額をどれだけ引き上げていくか、有力な新興国も資金提供すべきかなどが議論されている。国連関係者は「1000億ドルは最低限であり上限ではない」と述べている。目標とする拠出金額のカウントの仕方について、公的資金または民間資金なのか、約束済みの資金も加えるのかなどについて意見の不一致がある。
ファビウス外相は、合意形成への弾みをつけるために、残された主要課題への取り組みを検討する少人数の作業部会を複数立ち上げた。主要課題とは、富める国と貧しい国の責任区分や、将来の各国の取り組み努力をいかに高めるか等である。
12月7日付
『ワシントンポスト』紙は、気候変動は経済活動に大きな悪影響を及ぼすと報じている。気候変動については、エコノミストの間では潜在的な経済への影響は従来考えられた以上に重大であり、広汎かつ厳しいものであるというコンセンサスが広がっている。少なくとも、ニューヨーク大学法学部統合政策研究所が公表した調査報告書はそのように結論付けている。
同調査によると、大多数のエコノミストは、気候変動が近い将来(2025年までには)、明らかな経済的悪影響が起こり始めると見ており、米国経済のなかでも特に、農業、漁業、林業、電気水道事業、野外娯楽産業などは被害を受けると予想している。気候変動によるこうした被害を減らすために政府は強力な対策を執るべきとの意見で一致している。
この報告書の中で、温暖化排出ガスの社会的コストに関する部分は最も重要である。米国では政府が推計した温暖化ガス1トン当たり37ドルという数値が最も普及しており、将来の温暖化ガス排出の影響を定量化したり、ガス排出を減らすための経済政策を最適化するための検討などに用いられている。しかし、多くの専門家はこれまでもこの数値は相当過小評価しているのではないかと指摘している。調査によると、エコノミストは今世紀末までに産業革命以前比で地球気温が3℃上昇した場合、世界GDPの5~10%が減失すると予想し、10~20%の壊滅的気候災害のリスクがあると考えている。パリ気候変動会議で温暖化ガス排出削減についての協定合意ができるかどうかが、正念場であると報じている。
12月7日付
『フォーチュン』誌は、パリで開催中の気候変動会議にこれまで以上の企業指導者が参加していると報じている。アクセンチュア社の調査によると、従来、産業界は製造効率を阻害したり消費を抑制することについては躊躇していたが、今や、10人中9人までが気候変動は最優先の課題であると考えている。
産業界では、これまでこの問題については保険業界が主導してきた。保険で求償される気候関連の請求は1980年代以降3倍に増え、金額は年間100億ドルから500億ドルに増加している。今や気候変動問題に注目しているのは保険業界だけではない。戦争やサブプライムローン問題以上に、異常気候による災害は世界経済を沈滞させる可能性がある。イングランド銀行頭取のマーク・カーネイ氏は、「気候変動が金融の安定を左右する問題になったときでは、既に遅すぎる」と警告している。
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