タックスヘイブンを巡る「パナマ文書」の衝撃
パナマの法律事務所から流出した大量の内部文書により、オフショアのペーパーカンパニーを利用した租税回避に世界の政治家や著名人多数が関与している事実が明らかになってきた。流出した大量の文書は、南ドイツ新聞社(Sueddeutsche Zeitung)が匿名の提供者から入手し、報道調査国際連合(ICIJ)と連携して調査を行ってきたものであり、今回その一部が公開された。調査が進むに従い、今後さらに大きな脱税スキャンダルが明るみに出てくる可能性があり、世界中に衝撃が広がっている。
4月5日付の米ソーシャルメディア
『フュージョン』は、米メディアとしてパナマ文書の調査プロジェクトに参加し、プロジェクトがどのようにして大量の文書の解明を行ったかを報じている。
パナマのモッサック・フォンセカ法律事務所から流失した2.6テラバイトの「パナマ文書」と呼ばれるデータには、世界中の政治家、著名人、資産家が秘密のオフショア口座で租税回避をしていることを示す膨大な情報が収められていた。...
全部読む
4月5日付の米ソーシャルメディア
『フュージョン』は、米メディアとしてパナマ文書の調査プロジェクトに参加し、プロジェクトがどのようにして大量の文書の解明を行ったかを報じている。
パナマのモッサック・フォンセカ法律事務所から流失した2.6テラバイトの「パナマ文書」と呼ばれるデータには、世界中の政治家、著名人、資産家が秘密のオフショア口座で租税回避をしていることを示す膨大な情報が収められていた。
今月4日、世界中の報道機関が連携した報道調査国際連合(ICIJ)によって、驚くべき流出情報の第一弾が公表された。米国報道機関としては、フュージョン社とマックラチー新聞社の2社だけがこのプロジェクトに参加した。
そもそもの発端は、昨年初め内部告発により大量の資料が南ドイツ新聞社に流出し、その内容を見た編集者らがICIJに協力を求め、流出データを共有することになったものである。この調査は「プロメテウス・プロジェクト」と命名され、世界250の報道メディアが参加した。
最初の課題は、タイムゾーン毎に報道機関が発見した内容を共有し、透明性が高く協力し易い報道のプロセスを構築することであった。最初は、ミュンヘンやワシントンンなどの都市で大会合を開いて協議したが、実際の調査・連携はICIJのデータベースをイントラネットで共有し、プロジェクト参加者はフェースブックを通じて情報交換した。参加者はそれぞれの調査内容を相互に交換し、テーマごとのグループを作り真相解明に向けて協力した。
ペーパーカンパニーは更にいくつものペーパーカンパニーに保有されるなど何重にも複雑に隠されているため、それを所有する人物を特定することは簡単なことではない。ある記者が面白そうな手掛かりを見つけた場合、イントラネットに投稿し、本来は特ダネ競争をする記者らがコメントや自分の情報を提供して協力した。
第一弾の発表後も、調査活動は続いており、今後数カ月で更に多くの新たな事実が明るみに出てくるはずである。フュージョン社は4月17日にこれに関するドキュメンタリー番組を公開する。パナマ文書の与えるインパクトは、単独の記者や新聞社・テレビ局では絶対にできないほど凄いものである。
4日付
『フォーチュン』誌は、「パナマ文書」のニュースが世界に衝撃を与えていると報じた。
昨年初め、過去40年分に亘る著名な政治家などに関係する持株会社や口座の詳細なデータが、南ドイツ新聞社に流出した。同新聞社はICIJと連携し調査に乗り出した。
75ヵ国から約400人のジャーナリストが参加した大掛かりな国際調査プロジェクトが、オフショア持株会社の設立を専門とするパナマの法律事務所から流出した約1150万件の文書を調査した。
パナマ文書の一部が公表され、アイスランド首相がオフショア・ペーパーカンパニーを所有していることが明るみに出て強い非難を浴びるなど、数ヵ国で重大ニュースとなっている。また、合計20億ドルの資産を持つ複数の持株会社がロシアのプーチン大統領と関係があるとしている。
さらに、中国の習近平国家主席やキャメロン英首相の父親が租税回避目的で持株会社を所有している疑惑が持ち上がっているほか、ウクライナやパキスタンの指導者についても調査が進んでいる模様である。
閉じる
中国で習近平氏辞任要求の文書、権力闘争の兆候?
中国で政府系の「無界新聞」ニュースサイトに、習近平国家主席の外交や経済面などの失政を非難し、辞任を求める公開書面が掲載され、当局が徹底的な捜査に乗り出している。無界新聞の職員14人が逮捕されたほか、ジャーナリストや人権活動家およびその家族など多数が逮捕、拘束されている模様である。
最近、この他にも習体制に対する批判的な発言がネット上に投稿されており、来年の19回党大会での執行部人事に向けて、権力闘争が始まる兆候との見方も出ている。
28日の
『ABCニュース』は、中国で習近平国家主席の辞任を要求する手紙を巡り、厳しい捜査が行われていると報じている。
“忠実な共産党同志”と署名された公開文書に対し中国当局は極めて激しく反応し、少なくとも20人が逮捕され、その家族は拘束され脅迫されている。中国の常識では、国家主席の辞任要求などは前例の無いとんでもないことである。更に、共産党内部から出状したことを覗わせる記載があり、中国政府としては受け入れ難いものである。...
全部読む
28日の
『ABCニュース』は、中国で習近平国家主席の辞任を要求する手紙を巡り、厳しい捜査が行われていると報じている。
“忠実な共産党同志”と署名された公開文書に対し中国当局は極めて激しく反応し、少なくとも20人が逮捕され、その家族は拘束され脅迫されている。中国の常識では、国家主席の辞任要求などは前例の無いとんでもないことである。更に、共産党内部から出状したことを覗わせる記載があり、中国政府としては受け入れ難いものである。
この書面は、今月初め政府系の「無界新聞」ウエブサイトに投稿されたが、誰が書いたのか、党員が関与しているのかなどは不明である。書面では、習国家主席を独裁者であるとし、経済・外交等での失政を非難している。当局は大規模な捜査をおこない、少なくとも「無界新聞」の編集局長を含む14人を逮捕した。友人らによると彼らは連絡が取れない状態である。
28日付
『フォーチュン』誌は、「中国で、近く重大な権力闘争が始まる兆候」との見出しで、習近平氏の権力基盤が試練に立たされる可能性を示唆している。
2月、不動産王で38百万人のネットファンを持つ任志強氏は、習近平主席が中国メディアに対し共産党への無条件の忠誠を求めたことを公開の場で冷笑した。政府は任氏のウエブアカウントを閉鎖したが、ネット市民は憤激して当局を非難し任氏が発言した勇気を称賛した。また、「新華社通信」の周魴記者は3月7日、インターネット検閲当局による国民の主権侵害を調査するよう投稿した。更に、3月4日には習国家主席の辞任を要求する匿名の文書が「無界新聞」のウエブサイトに投稿された。このような出来事が習氏の失脚を狙ったものかは定かでないが、中国の体制内で緊張が高まっていることを示している。
こうした反抗の動きは自然発生的なものであり、習近平体制の政策や報道の自由に対する弾圧に国民が幻滅していることを示している。一党独裁体制のもとでは国民はエリート政治家へ直接的に大きな影響を持ち得ないが、彼らの声は国民感情を変える可能性がある。中国政府は思想統一と毛沢東流のプロパガンダに立ち帰ろうとしているが、国民は反対しており、習近平体制への支持が揺らぐ可能性がある。
中国共産党は、2017年の第19回党大会で今後5年間の執行部を選任するが、習近平氏が国家主席に再任されるとみられる。これまでの例では、党大会の前に権力闘争が起きている。習近平氏は中国共産党の党首として、次回党大会に向けてライバルよりはるかに優位な立場である。しかし、ライバル同士が集まり、習氏の権力集中化や体制の私物化を阻止しようとする可能性がある。
習近平氏の明らかな弱点はライバルを徹底的に排除し、習体制への中央集権化を目指しているところである。その結果、習体制は幅広い支持基盤が無く、政治運営を官僚に依存せざるを得ない。しかし、頼みとする官僚は反腐敗闘争を深く恨んでおり、習近平氏の失脚を願っている。
閉じる
その他の最新記事