黄之鋒(ジョシュア・ウォン)や周庭(アグネス・チョウ)氏ら3人の民主派活動家が23日、香港の法廷に召喚された。3人とも有罪を認める意思を示し、身柄を拘束された。彼らは、昨年6月に「逃亡犯条例」改正案に反対するため警察本部を包囲するデモに参加し、違法な集会を組織した罪などで起訴されていた。量刑は12月2日に言い渡される。
仏
『ルポワン』は、香港で最も有名な民主派活動家の一人である黄之鋒(ジョシュア・ウォン)と他の著名な活動家2人が、23日に行われた裁判の結果、有罪判決が下され、即日身柄を拘束されたと報じている。
香港は昨年、ほぼ毎日のように中国の半自治区への影響力を糾弾するデモが行われ、1997年に北京に引き渡されて以来、最も深刻な政治的危機を経験した。しかし、連日続く大規模デモにもかかわらず、香港政府はデモに譲歩せず、民主派活動家を精力的に取り締まることで対応してきた。
2014年に起きた民主的な選挙を求める「雨傘運動」の中心的メンバーでもあった黄之鋒氏は23日、法廷に入る前に記者団に対し「私たちは自由のために戦い続け、今は中国政府に押しつぶされたり、降伏したりする時ではない 」と語った。
仏『ルフィガロ』は、23日に即日収監された若き活動家、黄之鋒氏についてより詳しく報じている。黄之鋒氏はまだ24歳であるが、すでに9年前から香港の野党リーダーとして活躍してきた。プロテスタントの中流階級の家庭に生まれ、失読症と診断された平均的な学生であった黄氏だが、反政府運動を通してリーダーとして頭角を現すようになったという。
2011年、わずか14歳の時に、学生運動組織「学民思潮」を立ち上げ、「洗脳」だとする国民教育の導入に対する反対運動を開始した。2012年には、1万2000人以上の生徒を動員した。この中学生の決意の前に、当時の香港行政長官、梁振英(2012年~2017年)が導入撤回に追い込まれた。
2年後の2014年、高校生になった黄氏は、中国政府が求める選挙改革に反対する運動に加わり、「雨傘革命」の象徴的な存在となる。しかし、民主化運動の指導者の一人と確認され、初めて逮捕される。これがきっかけで、若き活動家の顔は世界中で知られるようになり、米タイム誌は2014年に、世界で「最も影響力のあるティーンエイジャー」の一人として紹介する。2015年には、米フォーチュン誌が「世界の最も偉大なリーダー」の一人として紹介し、2017年にはノーベル平和賞にもノミネートされている。
仏『ルフィガロ』は、黄氏や民主派活動家らは、中国が香港に与えた特別な地位が失効する2047年に目を向けており、2047年の香港の独立を目指していると述べている。それまで香港には、民主的な制度を保障するとされる「基本法」という独自の憲法があり、香港資本主義を中国共産主義に並存させる「一国二制度」が存続できる。
仏『RFI』は、今回黄氏ら3人が起訴内容を認めたことは、刑罰を軽くするという目的だけでなく、自分がしたことに責任を持つという意志の表明であるとともに、象徴的な行動であると報じている。香港政府や中央政府に反対する民主化運動の市民不服従の理念と全く一致する政治的姿勢であり、世界に向けて、我々は香港の自由のために戦っており、法廷措置の代償を支払う覚悟があるとの表明であると報じている。
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ファッション(服装や装身具等の流行)はよくその時代を表すと言われている。ただ、その時々に流行った食事も時代を映す鏡だとして、米メディアが直近100年を振り返って報じている。
8月21日付
『ニューズウィーク』誌:「食事も時代を映す鏡」
ファッションはよくその時代や世代を表すと言われている。しかし、多くの人が気付いていないが、食事も服装と同様、その時々の流行を映し出している。
例えば、1960年代には、ベルボトム(パンタロン・ラッパズボン)、ゴーゴー・ブーツ(踵の低い脹脛高さのプラスチック製ブーツ)、ローウェスト・ドレスが流行ったが、当時の食卓には甘くておいしいゼラチン・ベースの食べ物が並んだ。
1970年代には、ペザント・ブラウス(身頃と袖がゆったりした欧州の農民風のブラウス)、ミリタリージャケット、フレイド・ジーンズ(裾を擦り切れ状にしたジーンズ)とともに、ダイエット食品や産地直送の食物が人気であった。
そして、1980年代には、体にぴったりしたスパンデックス製(ポリウレタン弾性繊維)のエアロビクス・スーツや人目を引くジャンプスーツ(シャツとズボンが一続きになった婦人服)が流行ったように、見た目の美しさを追及して、ダイエット・コークをちびちび飲みながらリーン・クイジン(北米で売られたローファット、低カロリーの料理銘柄)を食べることが流行した。
ただ、これまでの流行を見てみると、ファッションは十数年から数十年単位で流行が繰り返される傾向にあるのに対して、食事の方は革新的に次から次へと新しい物が流行ってきていると言える。
例えば、人気商品のビックマック(マクドナルドの商品)は、その10年以上前にワッパー(バーガーキングの商品)が発売されていなければ、この世に出ていなかったかも知れない。
なお、1921~2020年に流行った食べ物の歴史を辿るに当たって、新聞・生活雑誌(ニューヨーク・タイムズ、シカゴ・トリビューン、アトランティック、ビジネス・インサイダー等)及び食べ物専門誌(イーター、キッチン、テイスト・オブ・ホーム、デイリィ・ミール)等を参考にした。
その結論として、直近1世紀余りにわたり、クラフト・フーズ(2012年創業、チーズ・乳製品が主力)、ペッパーリッジ・ファーム(1937年創業、クッキー・ビスケット等のスナック菓子)、マクドナルド(1940年創業、ファーストフード・チェーンストア)、マース(1911年創業、ペットケア・チョコレート製品が主流)、コカ・コーラ(1892年創業、清涼飲料水)が私たちに流行りの食べ物を提供してきてくれたことが分かった。
1921年:冷蔵庫が開発・販売され、家庭で食物を新鮮に保つことが可能となり、食生活に変化。
1923年:マース社がミルキーウェイ・キャンディ(チョコレートバー)を発売。
1925年:スピークイージー(注1後記)で出される、フィンガーフード(指で摘まんで食べるオードブル等)が流行り。
1933年:ビタミンD(カルシウムの働きに関わり、骨などの健康に関与する栄養素)入りミルク販売開始。
1936年:健康食品専門ストアが開業。
1937年:クラフト・フーズが箱入りマカロニ・アンド・チーズ(グラタン料理)を発売。世界恐慌(1929~1930年代後半)下にあって大人気に。
1942年:ビタミン等の栄養素入りホワイトブレッドが流行。
1944年:世界初の冷凍食品(肉・ポテト・野菜料理)発売。特に航空会社や海軍の需要大。
1957年:バーガーキング(1954年創業)がワッパーを発売。
1960年:ゼラチン・ベースのデザートが登場。
1963年:米食品・医薬品局(FDA、1906年設立)が、ペスト菌除去のために放射線照射の小麦・小麦粉発売を許可。
1968年:マクドナルドがビッグマックを発売開始。
1971年:カリフォルニア州のシェ・パニーズ・レストラン(1971年創業)が産地直送・オーガニック食材使用の食事を提供開始。今現在も、予約の取りにくい店として繁盛。
1973年:1910年代にサンフランシスコの日本庭園内の茶屋で日系人が始めたフォーチュン・クッキー(注2後記)を、中国人経営者が再開。
1977年:政府指導もあって、ローファット・ダイエットフードが市場を席捲。
1979年:米国生まれの巻き寿司、カリフォルニア・ロールがロスアンゼルスのレストランで誕生。
1982年:コカ・コーラがダイエット・コークを発売開始。
1983年:電子レンジで簡単にできるポップコーンが売り出され、3年後には映画館での定番メニューとして大人気商品に。
1985年:FDAが、寄生虫を抑えるために放射線照射の豚肉販売を許可。
1990年:食品に栄養素・成分の表示を義務化する法律が施行。
1994年:FDAが遺伝子組み換え食品の製造・販売を認可。
1995年:クラフト・フーズが冷凍ピザを発売開始。
2001年:ピザハット(1958年創業)が、宣伝を兼ねて国際宇宙ステーション(ISS、1998年打ち上げ、注3後記)にピザを宅配。総費用は100万ドル(約1億700万円)。
2002年:農務省(1862年設立)が、化学肥料・農薬不使用が守られた作物のみにオーガニック・シール貼付による表示を義務化。
2007年:ロカボア(地産地消主義者)がオックスフォード大学出版局(1896年設立)により“時の言葉(流行語のようなもの)”に選出。
2008年:リーマンショックに端を発した世界金融危機によって、世界の食品価格が45%も高騰。
2010年:インスタグラム普及によって、顧客受けするよう、食品製造会社・レストランなどが色使い等見栄えの良い商品・メニューに注力。
2012年:ミールキット(注4後記)が爆発的人気に。3年後には10億ドル(約1,070億円)規模まで拡大。
2014年:米国成人の半分以上が1日平均2.8個のスナック菓子を消費。4年前から倍増。
2016年:ホール30ダイエット(注5後記)がグーグル検索で急上昇する程トレンドに。
2018年:植物由来のミルクに切り替える人が増え、動物由来のミルク製品の売り上げが11億ドル(約1,177億円)も急落。
2019年:健康志向の高まりより、バーガーキング(1954年創業)、ダンキンドーナッツ(1950年創業)等がベジタリアン用に植物由来のフェイクミートの食品を提供開始。
2020年:新型コロナウィルス感染流行問題より、外出自粛、景気後退等より、外食費削減、自宅でのパン食等の生活が常態化。
(注1)スピークイージー:アルコール飲料を密売する場所。米国で禁酒法が施行されていた時期(1920年から1933年の間で、州によってはもっと長い)に隆盛していて、この時期の米国ではアルコール飲料は販売も生産も輸送(密輸)も禁止されていた。
(注2)フォーチュン・クッキー:1800年代の江戸時代に日本で誕生したおみくじ入り菓子で、米国移民の日系人が1910年代にサンフランシスコで売り出し始め盛況に。ただ、第二次大戦で捕虜収容所に捕らわれ、日系人の店が閉店したことから、代わって中国人が再開。
(注3)ISS:米国、ロシア、日本、カナダ及び欧州宇宙機関が協力して運用している宇宙ステーション。地球及び宇宙の観測、宇宙環境を利用した様々な研究や実験を行うための巨大な有人施設で、地上から約400km上空を時速約2万7,700キロメートル(秒速約7.7キロメートル)で周回(約90分で1周)。
(注4)ミールキット:料理に必要な食材と料理の作り方(レシピ)がまとめて用意された一式のこと。レシピに沿って調理すれば料理が完成する。宅配サービスなどを通じて提供されることが多く、献立に迷ったり、買い物に行ったりする手間を省いて手料理が作れる。
(注5)ホール30ダイエット:アルコール、砂糖、穀物、豆類、乳製品、添加物を30日間食事から切り取ることを奨励して行うダイエット・プログラム。
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