仏メディア:バローゾ前欧州委員長ゴールドマン入りの波紋(2016/07/15)
欧州連合(以下、EU)の中枢機関である欧州委員会の長である欧州委員長はEUの最高権限をもつ。その前委員長バローゾ氏が米国ゴールドマンサックスの顧問に就任する事が欧州で波紋を呼んでいる。とりわけ、フランスとバローゾ氏の出身国ポルトガルで激しい非難と憤りを呼ぶ中、ついにフランスが攻勢に出た。
『レゼコー紙』によると、バローゾ前委員長は、英国離脱後の影響からゴールドマンサックスの利益を守るべく経営コンサルティングすべくリクルートされ、ロンドンを拠点とする。しかし「英国離脱を受けて強化が必要とされる今」、この就職は反発を呼んだ。さらに「ゴールドマンサックスは2008年の金融危機の元凶となった」事や、ギリシャ政府の会計報告に細工した」事から、「けしからぬスキャンダル」とフランスが激怒した事に理解を示す。...
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『レゼコー紙』によると、バローゾ前委員長は、英国離脱後の影響からゴールドマンサックスの利益を守るべく経営コンサルティングすべくリクルートされ、ロンドンを拠点とする。しかし「英国離脱を受けて強化が必要とされる今」、この就職は反発を呼んだ。さらに「ゴールドマンサックスは2008年の金融危機の元凶となった」事や、ギリシャ政府の会計報告に細工した」事から、「けしからぬスキャンダル」とフランスが激怒した事に理解を示す。「道徳的、政治的、職業倫理的な過ち」「EUに対する最悪の恩返し」とフランスのデジール欧州問題担当大臣は痛烈に非難する。
『フィガロ紙』によると、欧州議会で嘆願書が飛び交い反対運動の機運が高まった。フランスはバローゾ前欧州委員長にゴールドマンサックス顧問就任を断念するよう「厳粛に」求め、EUに欧州委員会の委員に対する「行動規範」(*1)を変更するよう要請した。
この行動規範は欧州委員の民間天下りを規制する内容を含む。欧州委員は任期終了してから18ケ月の間に民間企業に再就職する場合、元雇用者に許可を求める事が義務付けられている。一方で18か月過ぎると全く規制がない。
『トリビューン紙』によると、バローゾ氏はポルトガル首相を務めた後に欧州委員長に就任し、2014年に2期満了で退任した。18か月間の規制期間が終わるタイミングでの再就職だった。このためフランスは「民間企業への天下り規制期間を延長し、兼職禁止範囲を拡大して規制強化」する事をEUに求めた。また「欧州議会主導で、この種の再雇用を禁止して利害対立を評価するための独立機関設置」を提案した。
「トリビューン紙」、「レゼコー紙」、「フィガロ紙」は共に「バローゾ前委員長はアンチEUを招いた張本人」との見方に同意する。この事が欧州の怒りの火に油を注いだようだ。
(*1)法令ではないが強制力のある行動指針。例えばフェイスブックでのヘイトスピーチは言論の自由が認められていても、他の発言を委縮させる作用を持つことから、EU内ではフェイスブックは24時間以内に削除する義務を負う。
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仏メディア がみる日銀現状維持の決定(2016/06/17)
日銀は新たな緩和策を実施せず現状維持する事を決定した事がフランスでも注目される。「世界的なマイナス金利の行方と評価」、一週間後に国民投票でその是非を問う「EU離脱問題」を占う指標の一つとして、フランス経済紙は取り上げる。
『トリビューン紙』は日銀の発表後の円高の加速や東京市場の下落を報じる。また一部投資家やエコノミストによる新たな緩和策への期待、米国連邦準備理事会(以下、FRB)が金利を据え置いた事などと同様に、ECBが実施したマイナス金利検証の材料と一つとして取り上げる。何より、日銀が声明の中で直接触れずとも、「英国のEU離脱による市場への著しい影響」を考慮しての現状維持であると重く受け止める。英国の離脱が「欧州経済と欧州の地政学的リスク」との見方を示した。...
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『トリビューン紙』は日銀の発表後の円高の加速や東京市場の下落を報じる。また一部投資家やエコノミストによる新たな緩和策への期待、米国連邦準備理事会(以下、FRB)が金利を据え置いた事などと同様に、ECBが実施したマイナス金利検証の材料と一つとして取り上げる。何より、日銀が声明の中で直接触れずとも、「英国のEU離脱による市場への著しい影響」を考慮しての現状維持であると重く受け止める。英国の離脱が「欧州経済と欧州の地政学的リスク」との見方を示した。
東京市場の反応について、
『レゼコー紙』は「英国の国民投票を一週間後に控えて、国際市場の不確実性と日本経済分析結果が芳しくない中で、投資家は、新たな黒田バズーカが出ると期待していた」、「円高抑制のために、日銀が新たな緩和策を是とするのに十分な論拠を持つと投資家は考えていた」と分析する。
国民投票結果が出るまで様子見とするのはもちろん、「英国が離脱すれば、避難先となる円を高騰させるため、バズーカ砲の弾薬を温存」するためである。同時に「日銀は英国離脱の可能性が高いと仮説を立てた」と「レゼコー紙」は分析する。
「レゼコー紙」が他に引用した分析は次の通りである。
「日銀金融政策委員会のメンバーは次期尚早に介入したくなかった。EU離脱の国民投票後の主導性が不足しているので、市場が動揺する」。最も悲観的な分析は、「日銀は策が尽きて緩和策のための余裕があまりない」。デフレ完全脱出のために、「日銀は既に日本国債を80兆円以上も毎年乱発し、マイナス金利で大手金融グループに深いダメージを与え」、「日銀は不動産投資REITなどよりリスクの高い金融商品の購買を大幅に指揮し」、「日銀は、投資家に影響を与えるような資産購入をわずかに調整する事しかできない」等の分析を引用する。
また「ECBゼロ金利に対するフランス人の驚くべき回答」と題して、フランスではマイナス金利後でも、貯蓄から投資へという循環が起こらなかった事を報じる。「単なる貯蓄がフランス人にとって最も安全な金融投資とみなされる」と指摘し「ECBマイナス金利の実質的効果はもうない」と結論付ける。「フランス人の安全志向」と共に、口座維持費を預金者が支払うフランスでは、マイナス金利の埋め合わせが容易である事と関連付ける。
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