仏メディア:FBIのiPhone暗号ロック解除の舞台裏(2016/04/13)
FBIはiPhoneのロック解除に成功した技術も第三者の名前についても沈黙を守り続ける。
イスラエルメディアで日本の子会社セレブライト社の名が浮上したが、FBIが認めない以上推測の域を出ない。「FBIが今回iPhoneの脆弱性を利用して侵入したなら、欠陥を修正してサイバー攻撃から守れるように、企業に知らせる必要がある」(「トリビューン紙」)との指摘もある。どのような技術だったのか?仏メディアはセレブライト社と業界を追う。
『ルモンド紙』によると、セレブライト社の技術やサービスは非公開。3月末パリでのセレブライト社主催の会合で、自社のデータ抽出機UFEDの特徴や新技術のプレゼンを行った。集まったのは警察や軍関係、諜報機関のメンバーや法律専門家だった。しかし警察の代表も出席する会合に業界外の「ルモンド紙」の出席は断られた。FBIが「アップル社の協力はもう必要ない」と発表したのも同じ3月末で、この会合で発表した新技術がFBIの突破口となった可能性が高いと「ルモンド紙」は見る。...
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『ルモンド紙』によると、セレブライト社の技術やサービスは非公開。3月末パリでのセレブライト社主催の会合で、自社のデータ抽出機UFEDの特徴や新技術のプレゼンを行った。集まったのは警察や軍関係、諜報機関のメンバーや法律専門家だった。しかし警察の代表も出席する会合に業界外の「ルモンド紙」の出席は断られた。FBIが「アップル社の協力はもう必要ない」と発表したのも同じ3月末で、この会合で発表した新技術がFBIの突破口となった可能性が高いと「ルモンド紙」は見る。
FBIの苦境を救った技術は謎
セレブライト社がこの質問に一切答えなかったが、
『ルモンド紙』は専門家の見解を採用する。「iPhone5以上はUFEDには高度過ぎる保護システムを搭載するため不可侵モデルのはずだった。しかし一部専門家はパスワードにハッキング可能な脆弱性を指摘していた」。iPhone5の壁を突破するため、セレブライト社は数十名の技術者による特別チームを配置。アップル社のセキュリティを脅かす最大の敵はもはやハッカーではない。
セレブライト社の技術も万能ではない。
『ルモンド紙』は仏警察の内部資料から「仏警察も他の欧米諸国のように、セレブライト社のサービスを利用する」が、「最近の仏司法警察中央総局(DCPJ)の最近捜査対象となった幾つかのiPhoneの暗号バイパスには成功しなかった」と報じる。FBIと同じくiPhone5の継承機種など新機種への対応ができていない。
『トリビューン紙』は「この業界は個人や小規模研究所による研究開発が多く、FBIはセレブライト社以外の研究者や企業の協力も得た」とシャンベリー高等裁判所の司法専門家が断言したと報じる。業界をあげての取り組みかもしれない。
セレブライト社
『トリビューン紙』によると、セレブライト社はスウェーデンのMSAB社と共に携帯データ抽出技術の最先端を行く業界では有名企業。iPhoneの進化と普及に伴い警察の携帯アクセスの必要性が高まった。これに答えてセレブライト社は主力商品UFEDを開発した。
『ルモンド紙』は「セレブライト社はここ数年あらゆる事件で共同作業を行い、FBIと多数の契約を締結してきた」と報じ、中でも「3月28日に異例の料金引上げ(191,000ユーロ)で契約を更新した」事に注目する。また親会社のサン電子株の急騰も、協力へのご褒美である「企業に多大な利益をもたらす宣伝広告効果」と揶揄する。
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仏メディア:パナマ文書とタックスヘイブン(2016/04/06)
通称「パナマ文書」によって明らかになる租税逃れは底なしである。アイスランド首相から習近平国家主席の親族まで世界の大物政治家や著名人の名前が次々挙がる。これは序章にすぎない。国際報道ジャーナリスト連合(以下ICJI)が中心となった調査の集大成。衝撃的な内容だけでなく、先例となる新たな調査手法も見られる。フランスでは特に「ルモンド紙」と「レゼコー紙」がパナマ文書に大きく関わる。
ことの発端:謎の内部告発者「ジョン・ドウ」
『レゼコー紙』によると、1年程前に「ジョン・ドウ」と名乗る内部告発者が南ドイツ新聞に1150万件のファイルを提供した。身の安全の保証以外の金銭的な見返りは一切要求しなかった。ICIJ登録の107のメディアのどこもジョン・ドウの身元を知らず、直接会う事もなかった。提供されたのはパナマの法律事務所モサック・フォンセカが所有する機密文書ファイルで、各国首脳や裕福層の個人がパナマに隠し持つ資産情報を示す。...
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ことの発端:謎の内部告発者「ジョン・ドウ」
『レゼコー紙』によると、1年程前に「ジョン・ドウ」と名乗る内部告発者が南ドイツ新聞に1150万件のファイルを提供した。身の安全の保証以外の金銭的な見返りは一切要求しなかった。ICIJ登録の107のメディアのどこもジョン・ドウの身元を知らず、直接会う事もなかった。提供されたのはパナマの法律事務所モサック・フォンセカが所有する機密文書ファイルで、各国首脳や裕福層の個人がパナマに隠し持つ資産情報を示す。
前例なき調査・取材方法
『レゼコー紙』によると、パナマ文書のデータが膨大だったため、南ドイツ新聞の調査ユニットはICIJに協力を求めた。適材適所のジャーナリストに仕事を割り振る事がICIJの役割だからだ。この判断が「調査成功の第一歩」と「レゼコー紙」は評価する。実際の解析作業は暗号化メールとウェブ上で行う。オンラインフォーラムでジャーナリストは自由に意見情報交換が出来た。フランスでは
『ルモンド紙』と
『フランス2』の系列会社が関与した。「13名の組織が世界的インパクトを持つ事を可能にした方法」と形容する。
ICIJの作業革命:デジタルと分散化
パナマ文書では、メール、PDFや証明書内のデータが要素ごとに分割されていた。2.6テラバイト相当(テレビドラマなら34000回分以上)の文書を全てデータベース化して検索効率を上げた。名前を入力すれば、その名前に関する書類全てを簡単に検索可能。調査結果をジャーナリスト会合で直接交換することで、従来のICIJより大幅に作業が早くなった。これ以降「ICIJはデジタルと分散化した作業が前提となった」と「レゼコー紙」は注目する。
フランスへの影響と対応
『トリビューン紙』は「仏政府は租税条約を適用して全加盟国にパナマ文書ファイル転送を要請する」と報じる。フランスも昨年のHSBC所得隠しで顧客リスト転送に応じた。EU内でも問題視されてきた海外ダミー会社の租税逃れを一斉摘発する構え。
『レゼコー紙』は「仏財務大臣がパナマを税務問題の非協力国リストに再度含める」と発言した事に反発して、パナマ政府が報復措置をとる」と報じる。「パナマのGDPの80%を金融分野とパナマ運河による収益が占める。脱税捜査の協力を求めて仏政府はパナマ当局と協定を結んだ。引き換えに2012年からパナマを非協力国リストから削除していた」。暴露が進めばこの種の外交問題が多発するだろう。
今後の展開
『レゼコー紙』は「パナマ文書の情報の公表順序が極めて慎重に選ばれた」と報じる。その第一段階がアイスランド首相だったのだろう。まだ序章で「4月17日まで毎日順次公表され」、「6日に南ドイツ新聞の記者二人が大波乱の調査の全容を執筆した本が出版される」。
『ルモンド紙』によると第二段階はサッカー界がやり玉にあがる。選手の他FIFAの汚職撲滅を掲げるファンティーノ新会長の名前が浮上する。
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