仏メディアは安倍首相の刺激策に懐疑的(2016/07/29)
安倍首相が27日に28兆円規模の経済刺激策を発表した。数週間前から日本政府は経済回復対策を準備しており、8月に詳細を明らかにすると示唆してきたが、突然前倒しで発表した。英国EU離脱の影響からの避難通貨として、日本円は円高という形で離脱の影響を直接的に受けやすいとフランスメディアは6月から報じてきた。しかし今回のバズーカ砲の有効性には否定的なようだ。
仏経済紙
『レゼコー紙』は、10~20兆円というアナリストの予想を上回る28兆円(ユーロ換算で2400億相当)の刺激策を「途方もない額の最終手段を着手」と報じる。
進行中の日銀金融政策委員会で日銀が新たな金融政策を打ち出すよう促すための発表である事は一致した見方である。実際GDPの5.7%相当の刺激策発表で日経平均を1.72%押し上げ円安が進んだが、「市場をごく短期的に上昇させる場合、長期的な有効性はない」、「一連の刺激策の莫大な金額は数学的な錯覚」とするアナリストに同意する。...
全部読む
仏経済紙
『レゼコー紙』は、10~20兆円というアナリストの予想を上回る28兆円(ユーロ換算で2400億相当)の刺激策を「途方もない額の最終手段を着手」と報じる。
進行中の日銀金融政策委員会で日銀が新たな金融政策を打ち出すよう促すための発表である事は一致した見方である。実際GDPの5.7%相当の刺激策発表で日経平均を1.72%押し上げ円安が進んだが、「市場をごく短期的に上昇させる場合、長期的な有効性はない」、「一連の刺激策の莫大な金額は数学的な錯覚」とするアナリストに同意する。また、日銀は今週中に国債買い入れとETF(上場投資信託)買い入れの増額を発表すると同時に「マイナス金利をさらに進める」とみる。
「レゼコー紙」が最も問題視するのは、「その支出が予定されていなかった予算案の中で、金利優遇の融資によって数年間資金提供される民間プロジェクトの見積もりと、補正予算の合計額とをまぜこぜにする」事だ。公的資金の追加額は8月2日に確定され、5兆円を上回る見通しだが、「今回の追加の財政支出は氷山の一角」である。
『トリビューン紙』は、インフレ政策による日本経済回復の2012年就任時の公約を実施するために、安倍首相が7月10日参議院の圧勝を待った事に触れる。しかし大規模刺激策の手段について異論があった事に触れる。安倍首相が28兆円の刺激策を発表する数日前に刺激策の手段について麻生財務大臣が疑念を表明した事を強調する。特に「追加の財政支出を伴うかどうか」と、「支援先は中小企業か」が問題になったとみる。また「投資家が日銀の新たな大規模緩和策を望む」事から緩和策拡大を確信する。
『ルモンド紙』は「円安がアベノミクスの基盤の一つ」だが、英国離脱の影響による円高対策の必要性を理解するが、「常軌を逸した」と形容する。また「既に深刻な負債を抱える日本政府による新たな財政支出」を疑問視し、「来週刺激策が明らかになれば、市場の反応は悪化する」というエコノミストの見解を採用する。
閉じる
仏メディア:英国離脱後初のECB理事会と今後の動向(2016/07/22)
21日に英国離脱決定後初の欧州中央銀行(以下、ECB)理事会が開かれた。ECBの動向が注目される中ドラギ総裁は記者会見を開いた。ECBは金利現状維持だけでなく、加盟国の各政府による不良債権購入案の可能性に言及した。フランスメディアは次の通り報じる。
仏経済紙
『レゼコー紙』によると、離脱後初のECB理事会が開かれて、さらなる介入に期待が寄せられたが、金融政策は修正せず金利も現状維持された。英国離脱によって「3年間で0.2%から0.5%ユーロ圏に影響がでる」と見積ったが、「今すぐマイナス金利を拡大するのは時期尚早」で、「もう少し差し迫った状況まで待つ」とドラギ総裁は発表した。「英国離脱の直接的な影響」と報じる。債権購入は毎月800億ユーロのペースで2017年3月末まで変更なく継続される。...
全部読む
仏経済紙
『レゼコー紙』によると、離脱後初のECB理事会が開かれて、さらなる介入に期待が寄せられたが、金融政策は修正せず金利も現状維持された。英国離脱によって「3年間で0.2%から0.5%ユーロ圏に影響がでる」と見積ったが、「今すぐマイナス金利を拡大するのは時期尚早」で、「もう少し差し迫った状況まで待つ」とドラギ総裁は発表した。「英国離脱の直接的な影響」と報じる。債権購入は毎月800億ユーロのペースで2017年3月末まで変更なく継続される。それ以後はインフレ目標に沿って必要があれば実施。
また「ユーロ圏の有力者を驚かせる決定を生んだのは欧州金融の経済状態」で、問題点は「支払い能力ではなく、低い収益性」と「レゼコー紙」は指摘する。このためECBドラギ総裁は「例外的な場合での国家介入、すなわち不良債権購入案」を擁護した。不良債権の大量売りを回避するためだ。この発言後、欧州優良銘柄株価指数を表すStoxxは2%上昇した事から「市場に対しては的を得ていた」と「レゼコー紙」は認める。今後欧州銀行で公的支援が広がる可能性が高い。
仏経済紙
『トリビューン紙』はドラギ総裁の発表を「巧みにかわす技を磨いた」と題し、「英国離脱の影響について不明瞭」、「潜在的な問題を先送り」と様子見の姿勢を揶揄する。「ドラギ総裁は、一部機関が発表したユーロ圏への離脱の影響評価に対して警告」し、「さらにデータが必要」と慎重な姿勢を見せた。「英国とEUの交渉に要する時間や交渉結果次第で評価の妥当性が変わる」との見解を示した。「トリビューン紙」は、ドラギ総裁は「金融界の不安を和らげ」、「離脱決定後数日間の銀行や金融市場の回復力を称賛する」など、「市場の期待に報いる事に終始した」と報じる。しかし、今後のECBの特定の方策や、負の影響に対する具体的な準備は理事会で議論されなかった。記者会見でドラギ総裁が唯一明確に答えたのは「ポルトガル、スペイン、イタリアの銀行など、不良債権が深刻な銀行への公的なセーフティネット案」だった。
また「トリビューン紙」は、現行法の枠組みでは公的支援は「欧州委員会の合意の下」で、「不良債権市場ができた後」に、「例外的な場合のみで実施される」べきである事に言及する。ドラギ総裁の発言はEUの法律への喚起警告の意味合いもあると指摘する。
ドラギ総裁は次回の理事会会合を9月8日に決定した。それまでがECBと欧州委員会などEUとの摺り合せ期間ともなりそうだ。
閉じる
その他の最新記事