仏メディアがみるオバマ大統領の広島訪問(2016/05/13)
オバマ大統領の広島訪問は、フランス各メディアでも「歴史的」と注目する。
経済紙
『トリビューン紙』は、現職大統領としては初だが、既にカーター大統領とニクソン大統領が任期外に広島を訪問した事に注目する。原爆投下の認識をめぐり米国内のせめぎあいの跡が伺える。「カーター大統領も核廃絶を訴えたが、任期終了の3年後まで訪問を待つ必要があった」。「ニクソン大統領は就任5年前の1964年に慰霊碑に献花までしたが、米国では殆ど報じられず、記念館の訪問者ウィキペディアリストにさえ載らなかった」。...
全部読む
経済紙
『トリビューン紙』は、現職大統領としては初だが、既にカーター大統領とニクソン大統領が任期外に広島を訪問した事に注目する。原爆投下の認識をめぐり米国内のせめぎあいの跡が伺える。「カーター大統領も核廃絶を訴えたが、任期終了の3年後まで訪問を待つ必要があった」。「ニクソン大統領は就任5年前の1964年に慰霊碑に献花までしたが、米国では殆ど報じられず、記念館の訪問者ウィキペディアリストにさえ載らなかった」。その上世論を考慮したのか1985年にニクソン大統領は「広島と長崎への原爆投下で命を救った」と発言。また「原爆投下についてマッカーサー元帥に対する事前相談は一切なかった」事、「マッカーサー元帥は非戦闘員の市民に対する原爆投下は悲劇だと語った」事を報じる。
オバマ大統領の訪問の意図は「謝罪のためでない」と報じ、「原爆投下で犠牲を抑える事が出来た、大戦終結を早めた」という認識について、オバマ大統領は「議論を蒸し返すつもりはない」が「被爆都市広島がより広く認知される事が日米共通の歴史認識に不可欠と認識する」と伝える。
保守系
『フィガロ紙』も米大統領の訪問を「謝罪のためでなく」「第二次世界大戦で命を落とした全ての罪なき人を追悼する機会」と報じる。「オバマ大統領の来日は真珠湾攻撃追悼記念75周年の少し前」と、謝罪の意味合いを消すタイミングで実施される事に触れる。「フィガロ紙」は原爆投下について、米世論と同じ「広で14万人長崎で7万4千人の死者を出したが、日本の降伏と第二次世界大戦終結を早めた」との説明を記載する。
「核なき世界を訴える公約を強調するため」、「任期終了前に大仕事をして幕を引きたい」というオバマ大統領の意図に加えて、安倍首相の思惑を挙げる。「ナショナリストの安倍首相は第二次世界大戦の(日本の)懺悔を終わらせようとする」、「米国の監視をそらそうとする」とし、米国の不承認をかったソチでのプーチン大統領への表敬訪問を例に挙げる。
左派系
『ルモンド紙』は「謝罪はない」「オバマ大統領が推進する核なき世界への取り組みの一環」と総括する。また「核廃絶の取組みと責任で、米国は世界をリードする唯一の存在」と米国の立場を形容し、「(原爆問題を)正当な議論に取りくむなど問題外」と評する。しかし「日米関係に影響を及ぼす驚くべき変化を起こす」とも指摘する。
「ルモンド紙」は「安倍首相がこの秋のAPECペルー時に日米の直接対決の引き金となった真珠湾訪問を打診」と報じ、これが日米両国の落としどころとなった可能性を示唆する。また「悲劇的な過去を超え、敵国同士が継続的な同盟関係を築くというサインを両国は送りたい」と評する。「オバマン大統領の広島訪問で被爆国のイメージを維持して、日本軍が行った残虐行為を消し去ることになる」と韓国や中国では受け止められていると事にも触れる。
閉じる
EU内で中国との自由貿易協定待望論(2016/04/28)
欧州連合(以下EU)のシンクタンク欧州政策研究センターは、研究報告書の中で中国との自由貿易の協定を奨励した。現在EUでは、包括的大西洋横断パートナーシップ(TTIP)と呼ばれる米国との自由貿易協定の議論が続いている。その渦中で発表された中国との二国間協定の待望論について、フランス経済紙が報じる。
『レゼコー紙』は「EUと中国の協定は有益なものとなりうる」と見出しをつけ、中国との交渉開始を支持する。EUではこれまで米国とのTTIPの方に議論が集中し、支持派と反対派の間で激論が続くため、中国との自由貿易協定の交渉はまだ開始していなかったようだ。
「レゼコー紙」は研究結果の中で指摘するメリットを挙げる
●これまでは2030年までに中国のGDPは0.76%増加を見込んだが、この研究は1.87%(890億ユーロ相当)と予測する。...
全部読む
『レゼコー紙』は「EUと中国の協定は有益なものとなりうる」と見出しをつけ、中国との交渉開始を支持する。EUではこれまで米国とのTTIPの方に議論が集中し、支持派と反対派の間で激論が続くため、中国との自由貿易協定の交渉はまだ開始していなかったようだ。
「レゼコー紙」は研究結果の中で指摘するメリットを挙げる
●これまでは2030年までに中国のGDPは0.76%増加を見込んだが、この研究は1.87%(890億ユーロ相当)と予測する。対中国輸出は2030年までに110%上昇し中国の対EU貿易は60%上昇する。
自由貿易協定締結の影響は規模によるため、この予測は不確かな要素が多いと著者も認めるが、「レゼコー紙」は「相互関係がより深まる両貿易ブロックを隔てる経済格差をきちんと査定した」点で信頼を置く。「現在欧州では250万の雇用が対中国輸出と直接関係する」事から締結の必然性を説く。
●中国の法外な関税:中国との二国間貿易がこの20年で10倍となり2014年で5260億ユーロに達する一方EUの貿易赤字は拡大した。中国は1400の製品に15%から45%と法外な関税を適用するが、EUは45品目しか適用していない。
●極めて閉鎖的な中国公的市場:中国市場は厳しく制限され、一部部品は国営企業が独占。公的市場への参入は困難だが、中国企業は定期的に欧州で公的な契約を獲得する。投資でも不均衡があり、外国直接投資(FDI)は、,欧州での中国のFDIは完全自由だが逆はOECD加盟国で最も厳し制限を課す。
「レゼコー紙」もこの不均衡は放置出来ないとみているようだ。「自由貿易協定締結へむけて、中国に世界貿易機関(WTO)の公開市場への参入に関して多国間協定に参加するようEUは警告する」事に同意する。「二国間協定の交渉開始はその後始まる」という。
最大の目的は「中国の外国直接投資(FDI)の中国市場を欧州に開放する事」。今のところEUと中国の相互保護を目的とするが、中国にも思惑がある。WTOへの中国加盟が議定書の中で想定されていたように、EU中国に市場経済の地位を与えるかどうか見極めるために、中国は貿易交渉開始を年末まで待つ意向。「EUと中国の間の壮大な駆け引きは難航する気配」と「レゼコー紙」は見る。いずれにせよ、世界経済における中国への求心力は衰えを見せない。
中国との交渉開始の背後にはTTIPの難航があるようだ。仏経済紙
『トリビューン紙』は「欧州での右傾ポピュリズムの台頭と米国の超保護主義、NATOで既に見られるようなフランスの単独主義的な独自路線と、それからくるEU内の統一感の欠如とフランスの孤立」などを指摘する。
閉じる
その他の最新記事