仏メディア: IMF中国の負債急増に警告(2016/08/16)
国際通貨基金(以下、IMF)が中国の負債急増に対して再度警告を発した。以前から中国企業の負債拡大に懸念を示してきたが、最新の年次報告書の中で、中国に一刻の猶予も与えず対応を促す構えである。フランスメディアは次の通り報じる。
『レゼコー紙』によると、IMFは特に企業債務の急激な上昇を懸念する。金融以外の分野では、負債は2015年にはすでにGDPの120%に達したが、このままいけば2019年には140%まで拡大する可能性があると指摘する。もっと深刻なのが不良債権の増加で、現在不良債権は全負債の5.5%を占めるが、手を打たなければ15.5%にまで膨れ上がる。
ずっと問題視さされてきたのが中国の鉄鋼業界と石炭部門における過剰生産だが、この生産過剰状態は、急増する債務の影響をかなり受けている。...
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『レゼコー紙』によると、IMFは特に企業債務の急激な上昇を懸念する。金融以外の分野では、負債は2015年にはすでにGDPの120%に達したが、このままいけば2019年には140%まで拡大する可能性があると指摘する。もっと深刻なのが不良債権の増加で、現在不良債権は全負債の5.5%を占めるが、手を打たなければ15.5%にまで膨れ上がる。
ずっと問題視さされてきたのが中国の鉄鋼業界と石炭部門における過剰生産だが、この生産過剰状態は、急増する債務の影響をかなり受けている。中国は過剰生産を大幅に削減すると約束したが、包括的な解決策が欠如しているため特に国営企業グループの改革が進まないと報告書は指摘する。
「レゼコー紙」はIMFが警告する危険性の中でも、特に次の点に警鐘をならす。「このリスクが短期的成長におけるリスクではない」事と、「中国の出す経済見通しが幸先のよいまま」である事、「その見通しもリスクも同調する迎合的なマクロ経済政策によって支持される」事などを挙げる。
『トリビューン紙』はIMFが指摘する負債の大きさに注目する。金融分野以外で負債が3年以内に140%に達し、中でも全負債の5.5%を占める不良債権はどんなに資金を注入しても返済不可能なところまで行っているようだ。消費社会をベースに重工業からサービス産業へと経済構造を変換する事による大混乱状態が続く事を確実視する。
負債増加の元凶が、いわゆる「ゾンビ企業」だ。殆ど実体がなくとも事実上無制限に融資が行われるが故に存続するゾンビのような国営企業の存在は鉄鋼業と石炭業界で顕著である。「非効率を助長」し、「資本配分を歪める」と「トリビューン紙」も以前から指摘してきた。IMFは、「ゾンビ企業の整理を含めた構造改革は今ならまだ対応可能だが、これ以上放置すれば中国は永久に低成長から抜け出せなくなる」と警告する。「トリビューン紙」によると、ゾンビ企業の整理に抵抗するのは、大量解雇を懸念する地方当局のようだ。地方当局は大量の失業者が社会不安を引き起こす事を懸念し細心の注意を払う。
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仏メディアが注目する日本の経済金融政策の動向(2016/08/05)
日本円が英国離脱の影響下においける避難通貨である事から、日本経済、金融の動向の一挙一動にフランスメディアは注目してきた。特に先週から、安倍内閣の28兆円の経済策に日銀の最小限の刺激策に加え、麻生財務大臣は成都G20後すぐにパリに訪問しサパン財務大臣と会談が実施された。フランスメディアは最近の日本の動向に注目する。
『レゼコー紙』はG20終了後の日仏財相会談に注目する。一番の話題はやはり英国離脱の影響で、「日本は英国離脱の影響に特別な関心をみせた」と、日本の懸念は相当なものである事を報じる。日本は英国離脱の背後で既に行動を開始しており、「英国に欧州の本拠地を置いてきた日本の銀行は、英国からの移転の必要性を検討」し、パリでのこの会見を急いだのも「英国とフランスのどちらが優位かの比較検討」するためだとの見方を示す。...
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『レゼコー紙』はG20終了後の日仏財相会談に注目する。一番の話題はやはり英国離脱の影響で、「日本は英国離脱の影響に特別な関心をみせた」と、日本の懸念は相当なものである事を報じる。日本は英国離脱の背後で既に行動を開始しており、「英国に欧州の本拠地を置いてきた日本の銀行は、英国からの移転の必要性を検討」し、パリでのこの会見を急いだのも「英国とフランスのどちらが優位かの比較検討」するためだとの見方を示す。これまでも「レゼコー紙」は避難通貨である円をもつ日本は、「英国離脱の最大の被害者」と指摘してきた。実際に、現在日本の銀行は様々なプランをスタンバイさせており、例えば現在英国向けインフラ資金が保留されている。「レゼコー紙」はこのような形での「保護主義の台頭」こそが、英国離脱による本質的な影響と懸念する。これ以外には、日本のJICAの開発援助と仏開発庁(以下、AFD)の間で、アフリカでの共同プロジェクトの協力体制が強化される事、、ソブリン債を扱うパリクラブ(*1)への中国加入が協議された事を報じる。しかし中国の加盟に「日本でゴーサインを出す事を肯定するのは麻生大臣だけ」と報じる。
『トリビューン紙』は、日銀の刺激策と安倍首相の28兆円規模の経済対策が対照的だったから、「日銀が政府に圧力をかける」と評した。これまで大規模刺激策の補正を最も日銀に呼び掛けたのはむしろ麻生大臣や政府だったが、「その位置関係が逆転した」と日本国内の変化を報じる。日銀は金融政策だけでは成長率回復は不可能との認識に至ったが、安倍首相と日銀の見解の相違がある可能性を「トリビューン紙」が示唆する。先週も「トリビューン紙」は「安倍首相が28兆円の刺激策を発表する数日前に刺激策の手段について麻生大臣が疑念を示し、大幅に低い金額を予測した」事に注目した。安倍政権内で意見が割れる可能性を指摘。
「トリビューン紙」によると、特に中央銀行と政府のこの構図は欧州でもみられる。英国離脱後の7月に市場は落ち着きを保ったため、どの中央銀行も動かなかった。FRBも9月に金利上昇路線を再開する。現時点で「離脱の影響は限定的」であり、「中央銀行に単独で対応させる戦略の限界」を各国の中央銀行が認識する事を示す。「この疑問はECBでも常に示されるが、ECBは各国政府を経済対策に向き合わす事ができず、この日銀の戦略を行使出来ない」ようだ。
(*1)パリクラブとは、主要債権国政府が債務問題を協議するためにパリで開催される国際会議。対外債務返済が困難な債務国に対するリスケや債務削減などの救済措置を協議する。1956年アルゼンチンの延滞対外債務のリスケ協議が始まり。債権国代表者による友好的でゆるやかな集まり。OECD加盟国を中心に19ヶ国が加盟。援助だけでなく、現実的なリスケ条件交渉まで行う。
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