FBIの暗号解除と日本企業の関与(2016/04/01)
米連邦捜査局(以下FBI)がアップル社のiPhoneの暗号ロック解除に成功して、アップルとFBIの対立は決着がついた。FBIは詳細を公表しないが、第三の支援者に日本企業の名前が浮上した。既にイスラエルメディアはイスラエルのセレブライト社が技術提供をした事を報じるが、この企業は2007年から日本のサン電子グループ傘下にある。フランスメディアは次の通り報じる。
仏最大経済紙
『レゼコー紙』は「日本企業グループがFBIのiPhoneハッキングで一攫千金」と見出しをつける。サン電子はセルブライト社経由で首謀者のiPhoneのロック解除支援を行ったが、「iPhoneロック解除の報道で、水曜日にジャスダックで、知名度がないサン電子が半日で12%近く上昇した」からだ。「レゼコー紙」によると、セレブライト社は2007年にサン電子グループ傘下に入り、iPhoneからデータを取り出す技術支援で多くの国に入り込んだ。...
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『レゼコー紙』は「日本企業グループがFBIのiPhoneハッキングで一攫千金」と見出しをつける。サン電子はセルブライト社経由で首謀者のiPhoneのロック解除支援を行ったが、「iPhoneロック解除の報道で、水曜日にジャスダックで、知名度がないサン電子が半日で12%近く上昇した」からだ。「レゼコー紙」によると、セレブライト社は2007年にサン電子グループ傘下に入り、iPhoneからデータを取り出す技術支援で多くの国に入り込んだ。フランスではシャルリエブド襲撃事件の2014年1月、中国では2015年9月に発足した。「iPhoneの暗号ロック解除の成功と、メディアを巧みに使った世界的な宣伝で、世界中の“機関”興味を引くだろう」と評する。原文で使用された「機関」という単語は「諜報機関」を連想させる単語が使われ、世界中の諜報機関は今後セレブライト社の技術でiPhoneのセキュリティを破る事が出来る事を予見させる。
仏経済紙
『トリビューン紙』はiPhone暗号解除を「アップル社敗北という名の停戦」と結論付ける。「アップル製品は万全でなく、サイバー犯罪者も侵入可能と世界中に証明する事になった」。この打撃は大きい。またFBI訴訟の破棄により「アップル社が公的機関との訴訟に勝利する可能性」と「セキュリティやプライバシーに関連する法的前例」を奪った。しかしFBIも無傷ではなかった。iPhoneの情報を入手したものの、「民間企業の捜査協力」と「製造者にロック解除を義務付ける法的前例作り」に失敗した。
「FBIを助けた謎の第三者」
「トリビューン紙」は二つの可能性を指摘する。断言を避けるが、セレブライト社の技術提供である。「セレブライト社はPCなど電子機器内の記録やデータ取出と解析が専門」で、興味深い事に「iOS8で作動するアップル製品の暗号解読に特化したサービス“CAIS U01”を販売」する。もう一つは、ハッカーにお金を払ってセキュリテイを破らせる「ホワイトマーケットの利用」。「ホワイトマーケットを利用しないアップル社の欠陥発見で得をするのは諜報機関」とパリ政治学院のエペルボアン教授は見る。「FBIの利用は信憑性が高い」。
「プライバシーと安全保障の議論」と新たな問題
「トリビューン紙」は「FBIはロック解除の方法を公表し、アップル社は知らされるのか?」と疑問を提起する。「もしFBIが今回iPhone侵入のために脆弱性を利用したら、アップル社が欠陥修正してサイバー攻撃から守れるよう知らせる必要がある」と電子フロンティア財団は指摘する。これは「Vulnaerabilites Equities Process(以下VEP)というガイドライン適用」を意味する。今後は「国家の安全保障がセキュリティやプライバシーより優先権される」。前述のVEPを盾に、「プライバシーやセキュリティ擁護団体を始め、IT企業が攻勢をかける可能性が高い」と見る。
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仏メディアが見る各国中央銀行の金融政策見送り(2016/03/17)
欧州中央銀行(以下ECB)のさらなる大規模緩和策の後に、各国の中央銀行は続かなかった。日本銀行が追加の金融政策を見送り、米国連邦準備委員会(以下FRB)は金利の現状維持を決定した。フランス経済紙は今後の動向を次の通り読み解く。
仏最大経済紙
『レゼコー紙』は、各国中央銀行の慎重な姿勢を「嵐の前の静けさ」とみる。
●日銀が春に本格的に一斉射撃を行う前の一時休止
●FRBは2016年内に金利を再び引上げる
●英国の中央銀行は、EU離脱問題の決着がつかないため、慎重姿勢が長期化する
また「レゼコー紙」はかねてから、経済成長に対する金融緩和策の効果は限定的と見てきた。「今までの経済サイクルでは国内消費が経済成長の引き金となった。...
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仏最大経済紙
『レゼコー紙』は、各国中央銀行の慎重な姿勢を「嵐の前の静けさ」とみる。
●日銀が春に本格的に一斉射撃を行う前の一時休止
●FRBは2016年内に金利を再び引上げる
●英国の中央銀行は、EU離脱問題の決着がつかないため、慎重姿勢が長期化する
また「レゼコー紙」はかねてから、経済成長に対する金融緩和策の効果は限定的と見てきた。「今までの経済サイクルでは国内消費が経済成長の引き金となった。国内消費の大幅な上昇が見込めない現在では、同じやり方ではデフレ衝撃を吸収できない」と分析する。短期的には財政刺激策が有効だが、「中期的成長には構造改革」が不可欠で、各国の中央銀行は自国の与党に構造改革を求め続けている。今後は「各国政府が役割を果たすべき時」と繰返す。
また「レゼコー紙」と共に仏経済紙
『トリビューン紙』も特にFRBの金利現状維持の決定に注目し、今後の動向を分析する。両紙ともECBバズーカの副作用も一部認める。
「トリビューン紙」
●市場の予測と期待と一致させた決定。
●原油価格暴落や中国経済悪化に加えて先週のECBバズーカによるドル高の影響
●国内では失業率が8年ぶりに4.9%を記録したため金利変更の緊急性がない。インフレが予想以上に起こりやすい。
●FRBの2016年末の金利は0.9%の見通しは現実的であると同時に、FRBがこれまでになく慎重である事を示す。日和見主義。
「レゼコー紙」はやや否定的な見方を示す。
●世界中が金利現状維持を当てにしているため、金利変更で市場を悪化させる事を避ける
●FRBが現状維持でも、ECBバズーカと日銀の追加策見送りによって、米国とそれ以外の国との溝は既に広がった。ドル高で米国の輸出が不利益を被った。
●年内金利引き上げへの心の準備:イエレン議長は記者会見を利用して4月か6月の金利引上げへ心の準備をさせた。ただし米国の石油生産が崩壊し中国経済悪化が続けば金利引上げは見送る。
●イエレン議長は金利引き上げを長く待ちすぎている。日和見主義で明確ではない。
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