米下院特別委員会;2021年1月6日議事堂乱入事件の調査報告及び証人喚問をテレビ中継(5)【米メディア】
既報どおり、昨年1月6日の議事堂乱入事件を調査する米下院特別委員会(1/6 HSC、2021年6月設立)による8回目となる公開聴聞会が7月21日に開催され、プライムタイム(東部標準時午後8~11時)に全米テレビ中継された。この結果、ドナルド・トランプ前大統領(現76歳)による虚偽発言を契機に如何にして支持者による議事堂乱入事件に繋がったか、また、大統領権限で暴動を収めようともしない不作為の罪の疑いがあることが明らかにされている。
7月21日付
『AP通信』は、「1/6 HSC調査結果:トランプは選挙結果を覆すため“あらゆる手段”を講じたことが判明」と題して、昨年1月6日午後のドナルド・トランプ前大統領による虚偽の演説を契機に当日の暴動へと繋がったことや、乱入事件をテレビで上機嫌で視聴するだけで暴動を止めようともしなかったとして、1/6 HSCの公開聴聞会の結果、トランプの法的責任を問う勢いが増していると報じている。
1/6 HSCが開催した7月21日の公開聴聞会で、事件発生当時の大統領顧問らが、ジョー・バイデン候補の勝利を承認するのを止める様にとの要求を拒否したマイク・ペンス副大統領(現63歳)を非難するツイートをトランプが投稿したことから、それが“火に油を注ぐ”結果に繋がった、と証言した。...
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7月21日付
『AP通信』は、「1/6 HSC調査結果:トランプは選挙結果を覆すため“あらゆる手段”を講じたことが判明」と題して、昨年1月6日午後のドナルド・トランプ前大統領による虚偽の演説を契機に当日の暴動へと繋がったことや、乱入事件をテレビで上機嫌で視聴するだけで暴動を止めようともしなかったとして、1/6 HSCの公開聴聞会の結果、トランプの法的責任を問う勢いが増していると報じている。
1/6 HSCが開催した7月21日の公開聴聞会で、事件発生当時の大統領顧問らが、ジョー・バイデン候補の勝利を承認するのを止める様にとの要求を拒否したマイク・ペンス副大統領(現63歳)を非難するツイートをトランプが投稿したことから、それが“火に油を注ぐ”結果に繋がった、と証言した。
米国家安全保障担当副補佐官だったマット・ポッティンガー氏(現49歳、2019~2021年在任)が証言したもので、トランプの投稿を契機に、暴徒集団が口々に“マイク・ペンスを吊るせ”と叫んでいたと言及した。
ポッティンガー氏は、長年の共和党員で当時ホワイトハウス副報道官を務めたサラ・マシューズ氏(2020~2021年在任)とともに証言台に立ったが、両氏ともトランプのツイートを見て即刻職を辞することを決めたとも証言している。
両氏は、憤ったトランプが、乱入事件が発生している際に自身も議事堂に行くと強硬だったことや、(大統領専用車が出ないことを知って)そのまま執務室に戻り、トランプの家族や側近が挙って暴力行為を止めるよう要請したのにも拘らず、彼は何ら行動を起こそうとしなかったとも明らかにした。
1/6 HSCのエレイン・ルリア委員(46歳、バージニア州選出民主党下院議員、2019年初当選)は、トランプの当日の発言・行動によって引き起こされた事態を“分刻み”で明らかにしていく意向だとした上で、上記の側近の証言で、トランプがホワイトハウスで支持者に向かって議事堂まで行進するよう訴えてから“僅か15分以内に、彼らが議事堂に乱入し始めたが、この事態をトランプも承知していた”ことが判明したと言及した。
更に同委員は、6月末の公聴会でキャシディ・ハッチンソン氏(30代、マーク・メドウズ大統領首席補佐官付きスタッフ)が、議事堂前に集結している支持者グループに加わるべくトランプが米シークレットサービス(USSS、1865年設立の大統領警護機関)に対して大統領専用車を出せと執拗に命令したと証言したが、今回の追加の証言でこれが裏付けられたとも付言した。
その他、ワシントンDC市警所属の巡査部長だったマーク・ロビンソン氏(退職済み)の証言がビデオ映像として流され、その中で同氏は、トランプは議事堂に行進した支持者の一部が武装していることを承知していたが、それでも議事堂に向かうと強く主張していたと述べている。
これらの証言に先立って、同特別委は既に録画していた4人のホワイトハウス職員の証言を公開した。
彼らは、ケイリー・マケナニー前報道官(34歳、2020~2021年在任)、キース・ケロッグ米安全保障問題担当前補佐官(78歳、2017~2021年在任、元陸軍中将)、パット・シポローネ前顧問弁護士(56歳)、モリー・マイケル前特別補佐官で、異口同音に、トランプは大統領専用食堂で議事堂乱入のテレビ報道に見入っていたと証言した。
これら証言を踏まえて、同特別委のリズ・チェイニー副委員長(55歳、ワイオミング州選出共和党下院議員、2017年初当選)は、“トランプが電話を取って、暴動を収めるための指示を出す等何もしなかったことが明らかになった”とし、“本来なら、米軍や国防長官や司法長官、更には国土安全保障長官等に指示を出すべき所、一切電話をかけようともせず、マイク・ペンスが代わってそれを行った”と強調した。
また、ベニー・トンプソン委員長(74歳、ミシシッピー州選出民主党下院議員、1993年初当選)は、トランプが演説の中で“選挙は盗まれた”と虚偽の発言をしたことから、それに焚き付けられた支持者らが議事堂に押し入る結果を引き起こしたことは明白である、とした上で、“トランプは、選挙結果を覆すためにあらゆる手段を講じようとした”と言及している。
一方、メリック・ガーランド司法長官(69歳、2021年就任)は7月20日、“司法省が手掛ける最も広範囲でかつ重要な事案だ”とした上で、“法と証拠に基づいて、厳正に対応していき、責任を負うべき如何なる人物に対しても、選挙という正当な手段の結果を覆そうとした罪を償わせるべく努める”とコメントした。
なお、同特別委は、今回の8回目の公開聴聞会をもってしばらく夏季休会に入り、9月に引き続いて聴聞会を継続開催するとしている。
その上で同特別委は、予備調査報告書を今秋にまとめあげ、最終報告書は会期末までに提出するとしている。
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米下院特別委員会;2021年1月6日議事堂乱入事件の調査報告及び証人喚問をテレビ中継(4)【米メディア】
6月23日付GLOBALi「
米下院特別委員会;2021年1月6日議事堂乱入事件の調査報告及び証人喚問をテレビ中継(3)」で報じたとおり、昨年1月6日の議事堂乱入事件を調査する米下院特別委員会(1/6 HSC、2021年6月設立)が6月21日に実施した公聴会において、州の選挙管理委員会に従事していた職員らが、トランプ前大統領による選挙結果の反覆圧力に抵抗したところ、様々な嫌がらせや脅迫に遭ったと証言した。そして今度は、トランプ前大統領の事件当日の行動に関わるホワイトハウス職員の6月28日の公聴会証言を裏付ける証拠について、米シークレットサービス(USSS、1865年設立の大統領警護機関)が廃棄したとの告発があったことから、この件に関わる8回目となる公聴会をプライムタイム(午後8~11時)にテレビ中継することになった。
7月15日付
『AP通信』は、「1/6 HSC、関係通信記録を廃棄した疑いでUSSSに召喚状」と題して、トランプ前大統領の事件当日の行動に関わる通信記録を廃棄した疑いがあることが判明したことから、1/6 HSCが8回目となる公聴会で明らかにするとし、それをプライムタイムに全米テレビ中継されることになったと報じている。
1/6 HSCは7月15日、ドナルド・トランプ前大統領の2021年1月6日の行動に関連し、USSSが当時の通信記録を廃棄していた疑いがあることから、7月21日夜に公開聴聞することになったと発表した。...
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7月15日付
『AP通信』は、「1/6 HSC、関係通信記録を廃棄した疑いでUSSSに召喚状」と題して、トランプ前大統領の事件当日の行動に関わる通信記録を廃棄した疑いがあることが判明したことから、1/6 HSCが8回目となる公聴会で明らかにするとし、それをプライムタイムに全米テレビ中継されることになったと報じている。
1/6 HSCは7月15日、ドナルド・トランプ前大統領の2021年1月6日の行動に関連し、USSSが当時の通信記録を廃棄していた疑いがあることから、7月21日夜に公開聴聞することになったと発表した。
当該公開聴聞は6月9日に始められ、全米で2千万人が視聴していて、次回で8回目となる公聴会は午後8時からのプライムタイムに全米テレビ中継される。
同特別委のベニー・トンプソン委員長(74歳、ミシシッピー州選出民主党下院議員、1993年初当選)は声明文の中で、当時の通信記録が“消去”されたと理解していると表明した。
同委員長は、“USSSは、「通信機器交換プログラム」の一環を理由として、1月5~6日の間の関係通信記録を消去していた”と言及した。
更に同委員長は、“USSSに対して、事件当日及びその後の関係通信記録等を復元して提出するよう求めた”とも付言した。
今回の同特別委のUSSS召喚状については、数時間前に非公開で行われた、USSSを管轄する米国土安全保障省(DHS、2002年に前年の同時多発テロ事件を契機に設立)の監査官室(OIG)に対する7月15日の聴聞の結果に基づくものである。
OIG証言によると、トランプ前大統領が議事堂前に集結している支持者グループに加わろうとしたとの関係者証言に関し、これを示す証拠となるUSSS内通信記録が喪失していることが判明したとする。
同特別委の聴聞に応じたのは、DHS監査担当のジョセフ・カファリ監査官(62歳、2019年就任)で、同監査官は7月13日、上院及び下院国土安全保障委員会に宛てて、1月6日事件の調査の一環でUSSSに当日の通信記録を提出するよう請求したところ、「通信機器交換プログラム」の一環で1月5~6日の間の記録を消去していたことが判明した、との報告書を提出していた。
これに関してトンプソン委員長は7月15日、『AP通信』のインタビューに答えて、同特別委は当初、かかる証拠の提出要求は3月に行われたと理解していたが、実際にはもっと早い時期に行われていて、かつ、提出要請後に関係記録が消去されていたとの疑いが持ちあがったことから、USSSのジェームズ・マレー長官(2019年就任)宛に召喚状を送付したと明かした。
ところが、USSSのアンソニー・ガグリエルミ報道官(2022年就任)は、“関係通信記録の提出を求められた後に、USSSが故意に当該記録を消去したとの憶測がなされているがそれは誤りだ”と表明した。
同報道官は更に、“USSSは監査官の求めに応じて全ての文書や通信記録等を提出している”とした上で、“「通信機器交換プログラム」に伴う機器の入れ替えは2021年1月から進められていて、監査官が2月26日に初めて通信記録の提出を求めてきた際には、多くの消去処理が済んでしまっていたというのが実際の顛末である”と強調している。
一方、DHS監査官の報告書に関し、上院国土安全保障委員会上級メンバーのロブ・ポートマン委員(66歳、オハイオ州選出共和党上院議員、2011年初当選)は、報告内容に“非常に憂慮”しているとした上で、“USSSは監査官のみならず、議会そして米国民に対して透明性を担保することが必須である”との声明を発表している。
なお、事件当日のトランプ前大統領の行動が問題視されているのは、1/6 HSCが6月末に実施した公開聴聞で、当時のホワイトハウス職員だったキャシディ・ハッチンソン氏(30代、マーク・メドウズ大統領首席補佐官付きスタッフ)が、トランプ前大統領が議事堂前に集結している支持者グループに加わるべく自身で大統領専用車を運転しようとしたとか、ホワイトハウスを訪れてくる支持者に対する金属探知機による銃器携帯有無の検査を不要とするよう指示した等と、爆弾証言していたからである。
これに対して、USSSの大統領専用車運転手を務めていたロバート・エンゲル氏は、トランプ前大統領が議事堂前に向かうために制止を振り切って無理やりハンドルに手をかけようとしたことはないとし、また、幹部のトニー・オーナト氏も、前大統領からUSSS職員が叱責されたことはない等々、ハッチンソン氏の証言を否定する発言をし始めている。
従って、1/6 HSCの次回公開聴聞で、事件当日のUSSS内の実際の遣り取りが明らかにされることが期待される。
(注)OIG:1978 年に連邦監察官法により制定された監査官制度に基づき設立された、独立かつ客観的な監督機関。OIGは各連邦政府機関の中に設置されていて、全米の事業所における監査・調査・評価を通して、事業とマネジメ ントの問題点を長官及び議会の両方に対して報告し、改善を勧告する。
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