豪州政府、コロナ禍による専門職等の労働力不足補填のため永住ビザ発給増加を決定【米・豪州メディア】(2022/09/02)
新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題は、世界各国に景気後退等様々な災禍をもたらしている。豪州も同様で、様々な業種で必要とされる専門職等の労働者が確保できなかったことから、従来の保守的政策を改め、永住ビザ発給の上限を引き上げて外国人労働者確保に努めることにしている。
9月2日付米
『AP通信』は、「豪州政府、永住ビザ発給上限を3万5千人増やして19万5千人に引き上げ決定」と題して、COVID-19禍で慢性的な労働力不足に陥っていることから、看護士、空港スタッフ、果樹園労働者等の確保のために、外国人労働者に従来上限の2割増しの永住ビザを発給して補填することを決定したと報じている。
豪州政府は9月2日、COVID-19禍によって専門職等の慢性的労働力不足に遭っていることから、外国人労働者で補填すべく、従来の受け入れ上限を年3万5千人増やして19万5千人に永住ビザを発給することとしたと発表した。...
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9月2日付米
『AP通信』は、「豪州政府、永住ビザ発給上限を3万5千人増やして19万5千人に引き上げ決定」と題して、COVID-19禍で慢性的な労働力不足に陥っていることから、看護士、空港スタッフ、果樹園労働者等の確保のために、外国人労働者に従来上限の2割増しの永住ビザを発給して補填することを決定したと報じている。
豪州政府は9月2日、COVID-19禍によって専門職等の慢性的労働力不足に遭っていることから、外国人労働者で補填すべく、従来の受け入れ上限を年3万5千人増やして19万5千人に永住ビザを発給することとしたと発表した。
クレア・オニール内務相(41歳、2022年就任)が、政府高官・労働組合・実業界代表ら140人が参加した「豪州雇用・技能サミット」において公表したもので、今年度(2022年7月~2023年6月)中に実現するとしている。
同相によると、人員不足の医療業界では、直近2年間で一人の看護士が従来の2倍も3倍もシフトに入って就労する必要があり、空港職員不足で飛行便がキャンセルされることもあり、また、果樹園ではスタッフが足りず、多くの果物が収穫されないまま腐ってしまっているという。
同相は、“豪州市民の就業確保を第一に考えていることから、新たな就業訓練や女性その他就労機会が与えられなかった人たちの雇用に注力してきている”としながらも、“現実的には、COVID-19禍による労働力不足は深刻である”と言及した。
しかし、“最も聡明な人々”(外国人専門職を指す)が、豪州ではなく、カナダ・ドイツ・英国への移住を選択しているとの現実があるとする。
何故なら、同相によると、従来の豪州政府の移住者用ビザは70種以上に分かれた“ひどく複雑な”制度だからだとしている。
従って、同相は、新たな移住者用ビザ制度を再構築するための有識者会議を立ち上げるとした。
一方、アンソニー・アルバニージー首相(59歳、2022年就任)は9月1日の「豪州雇用・技能サミット」初日、専門職人員不足を補うため、職業訓練校に18万人を無償で受け入れるべく、来年1豪州億ドル(74万8千ドル、約1億5百万円)予算計上すると表明している。
なお、豪州はCOVID-19感染問題初期段階で20ヵ月にわたる厳格な入国制限措置を講じており、昨年12月に漸く専門職の外国人労働者の受け入れを再開していた。
同日付豪州『スカイニュース』(1996年開局)は、「アンソニー・アルバニージー首相、より多くの専門職に移住してもらえるよう年間永住ビザ発給数の上限を引き上げ」として、豪州における専門職受け入れ拡大を模索していると報じた。
アルバニージー首相は、豪州市民権(国籍)を取得し易いようにして、より多くの外国人専門職が移住してくる体制を敷くべく努めると宣言した。
豪州政府は9月2日、2日間開催された「豪州雇用・技能サミット」閉会に当たって、2022~2023年における永住ビザ発給上限を従来の年16万人から19万5千人に引き上げる案を含めて、36もの新たな政策提案を披露した。
同首相は、豪州政府はこれまで短期の外国人専門職に頼り過ぎていたが、今後は国内専門職と永住ビザ交付の外国人専門職をうまくバランスさせて門戸を広げていくとした。
その上で同首相は、“COVID-19禍で我々が学んだことは、国内の専門職をもっと増やす必要があるという点と、(感染症拡大防止対策のために)外国人の退去を求め、また入境制限をすると、あっと言う間に専門職不足に陥るという現実を見た点である”と言及した。
更に同首相は、“今後、国内専門職及び外国人専門職をバランス良く確保していく最良の方策を採用すべく努める”とした上で、“外国人専門職受け入れについて述べれば、将来豪州市民権が取得できる道筋が付けやすいよう、外国人専門職への永住ビザ発給施策を具体化していく意向だ”と強調した。
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『ロイター通信』世論調査;日本大手企業が求人難で漸く賃金アップに舵切り(2022/08/18)
日本の平均年収は過去二十年間ほぼ横ばい状態で、経済協力開発機構(OECD、1948年前身設立)加盟国中22位と下位に低迷している(2020年データ)。そうした中、
『ロイター通信』が直近で行った世論調査の結果、労働力不足に喘ぐ大手企業の多くが漸く賃金アップに舵を切る意向であることが分かった。
8月18日付
『ロイター通信』は、「世論調査:以前の調査時より多くの日本企業が労働力不足に対応するため賃金アップに舵切り」と題して、5年前の調査時より倍近い企業が、労働力不足問題を乗り切るために賃金アップを行う意向であることが分かったと報じている。
『ロイター通信』が、日経リサーチ(1970年設立の日経新聞グループの総合調査会社)に委託して直近で行った世論調査の結果、数十年間横ばいだった日本の平均賃金を緩やかながら漸く引き上げる意向とする企業が、前回調査時より倍近くに増えていることが分かった。...
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8月18日付
『ロイター通信』は、「世論調査:以前の調査時より多くの日本企業が労働力不足に対応するため賃金アップに舵切り」と題して、5年前の調査時より倍近い企業が、労働力不足問題を乗り切るために賃金アップを行う意向であることが分かったと報じている。
『ロイター通信』が、日経リサーチ(1970年設立の日経新聞グループの総合調査会社)に委託して直近で行った世論調査の結果、数十年間横ばいだった日本の平均賃金を緩やかながら漸く引き上げる意向とする企業が、前回調査時より倍近くに増えていることが分かった。
8月18日に公表した、8月2~12日間に非金融業の大手495社を対象に実施したアンケートの結果、約半数の企業から回答があり、そのうち44%が賃金アップを行う意向である旨回答している。
前回2017年の調査結果では、25%しか賃金アップの意向を示していなかったことから、ほぼ倍近くの企業が重い腰を上げようとしていることが分かる。
日本企業はこれまで長い間、デフレーションに見舞われていたことから、コスト上昇分を販売価格に転嫁することが難しく、結果として労務費が抑えられてきた。
しかし、世界での物価上昇及び現下の円安に見舞われて日本における生活費が大幅上昇し、状況は一変している。
かかる状況下、岸田文雄首相(65歳)も経済界に対して賃金アップを要請するに至っている。
ただ、ある卸売事業会社マネージャーによると、“全般的に労働力不足問題に直面していて、特にスーパーマーケットのパート従業員確保に苦闘している”とし、“賃金アップで雇用確保に努めようとしているが、(一挙に大幅アップなどはできず)できることは限られている”という。
また、別の卸売企業のマネージャーも、労働力確保に対して“有効な手が打てない状態だ”とコメントしている。
しかし、SMBC日興証券(1918年前身創業、2011年現社名に変更)の宮前耕也シニアエコノミスト(42歳)は、“潮目は変わりつつあり、労働力不足に喘ぐ企業のうち、賃金アップを実施する企業がもっと多くなる”と分析している。
同氏は、“日本の労働市場における高齢化及び萎縮が進む以上、(賃金アップの傾向は)正に始まったばかりで今後は更にその傾向に拍車がかかるだろう”とも言及した。
回答企業のうち実に54%が労働力不足問題に直面していて、特に非製造業で顕著となっており、59%がスタッフの遣り繰りに苦労しているという。
そこで企業側としては、通年での採用方針や、退職年齢を引き上げて少しでも長く働いてもらうような体制を取りつつある。
日本における労働力確保に関わる問題は、同じく高齢化が進む欧米の先進国にとっても参考事例として注目されている。
しかし、かかる状況にも拘らず、日本の為政者は、労働力確保のための移民政策緩和方針を途中で止めてしまっている。
ただ、今回の回答企業のうち19%は、外国人労働者採用で賄っているとしており、前回2017年時の13%より増えている。
なお、今回の調査においても、実に4分の3の企業が岸田政権に対して、生活費大幅上昇に対抗していくための経済成長を促すべく、大型景気刺激政策の実行を望むとしている。
奇しくも、調査直前の政府公表データによると、直近4~6月期の国内総生産(GDP)が3四半期連続でプラス成長している。
ただ、経済アナリストの分析では、日本における新型コロナウィルス感染者大幅再上昇に加えて、米国及び中国経済の成長率鈍化に伴って、今後の見通しが不透明になるとしている。
(参考)OECD加盟38ヵ国中、2000年及び2020年それぞれの平均年収比較データによると、上位1・2位の米国・アイスランドは平均年収が+25%、3・4位のルクセンブルク・スイスで+15%、また、19位の韓国も+44%上昇しているが、22位の日本は僅か+0.4%上昇に留まっている。
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