太平洋諸島フォーラム;キリバス脱退の背景に中国の影響力?【フランス・NZメディア】
太平洋諸島フォーラム(PIF、注後記)首脳会議が今週開催される。しかし、直前になってミクロネシア圏のキリバス(1979年英国から独立、2019年台湾と断交し、代わって中国と国交樹立)が脱退を表明した。同国は、PIF事務総長はメラネシア圏・ポリネシア圏・ミクロネシア圏それぞれの所属国から輪番で選ばれる、という紳士協定が破られたことを理由に挙げているが、近年影響力を拡大してきた中国と従来からの支援国である米・豪州・NZ間の対立激化が背景にあるとの見方もされている。
7月11日付フランス
『AFP通信』は、「キリバス、PIFから脱退」と題して、PIF首脳会議開催の直前、キリバスが脱退を通告してきたと報じている。
キリバス(ミクロネシア圏所属)はこの程、気候変動に伴う海面上昇問題や、中国による南太平洋地域での安全保障圏拡大意図等について協議するとしていたPIFから脱退すると発表した。
『AFP通信』が7月9日に入手した書簡によると、キリバスのタネスィ・マアマウ大統領(61歳、2016年就任)は、昨年のPIF事務総長選出に当たって、(輪番制で)ミクロネシア圏の代表が務めることになるとの“紳士協定”が破られていることから、“通告即日の脱退”という“国としての決定”を行ったと述べている。...
全部読む
7月11日付フランス
『AFP通信』は、「キリバス、PIFから脱退」と題して、PIF首脳会議開催の直前、キリバスが脱退を通告してきたと報じている。
キリバス(ミクロネシア圏所属)はこの程、気候変動に伴う海面上昇問題や、中国による南太平洋地域での安全保障圏拡大意図等について協議するとしていたPIFから脱退すると発表した。
『AFP通信』が7月9日に入手した書簡によると、キリバスのタネスィ・マアマウ大統領(61歳、2016年就任)は、昨年のPIF事務総長選出に当たって、(輪番制で)ミクロネシア圏の代表が務めることになるとの“紳士協定”が破られていることから、“通告即日の脱退”という“国としての決定”を行ったと述べている。
同大統領はまた、PIF首脳会議開催当日の7月12日が同国の独立記念日であることから、物理的にも出席できないとも言及している。
一方、PIFのヘンリー・プナ事務総長(72歳、2021年就任、ポリネシア圏のクック諸島前首相)は7月11日、PIF首脳会議前夜祭において、“今回のPIF首脳会議においては、地域及び世界において拡大・深刻化している喫緊の課題について協議される”と表明した。
同事務総長は更に、“新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題、気候変動問題、海洋汚染問題等の重要問題について、地域間及び多国間での協力の必要性が高まっている”とも言及した。
なお、PIF援助供与国の豪州及びNZは、中国が南太平洋地域における影響力を拡大しつつあることから、PIF内での安全保障問題における結束の重要性を訴えている。
同日付NZ『スタッフ』オンラインニュース(2000年設立)は、「ジャシンダ・アーダーン首相、キリバスのPIF脱退に“失望”と表明」として、キリバスのPIFからの突然の脱退表明について、アーダーンNZ首相がPIFの協調の必要性を強調するも、“失望”していると吐露したと報じている。
ジャシンダ・アーダーン首相(41歳、2017年就任)は、COVID-19感染問題沈静化後に初めて対面で開催されるPIF首脳会議に出席するため、開催地のスバ(フィジー首都)に向かった。
この直前の先週末、キリバスがPIFより脱退すると突然表明した。
同首相は、PIFが今後とも一致協力して難題に取り組んでいくとし、当該ニュースについて重要視しない意向を示した。
しかし、太平洋地域専門家は、PIFが気候変動問題や中国の影響力拡大に伴う軋轢等について対応していくに当たって、(キリバスの脱退は)団結を拠り所とするPIFにとって打撃となるとする。
同首相は7月11日、NZ政府公式ウェブサイト上で、“NZの立場はPIF加盟国に支援を行うことで、この目的に沿って、PIFが立ち向かうべき気候変動問題等について今後とも協調していく”とした。
同首相はまた、キリバスの脱退は“団結を脅かすような問題”ではないとしたが、“失望”していることは認めた。
キリバスは先週末、PIFの事務総長職をポリネシア圏、メラネシア圏、ミクロネシア圏所属の島嶼国が交替で務めるとされたこれまでの慣習が破られていることを理由として、PIFから脱退すると突然宣言していた。
これに先立つ昨年2月、ミクロネシア圏島嶼国代表(マーシャル諸島)が、同月に実施されたPIF事務総長選挙において僅差でポリネシア圏候補者(クック諸島)に敗れたことを不f服として、今年6月までにPIFから離脱すると表明していた。
ただ、その後の展開で、彼らはPIFに“恐らく止まることになる”と翻意している。
(注)PIF::南太平洋の独立国及び自治政府を対象にした地域経済協力機構。もともとはフランスの核実験などに反対して結成された政治的団体で、島嶼国の主体性を堅持し、結束を図ることを目的として1971年8月に創設。加盟国は18ヵ国(援助供与国:豪州・NZ、メラネシア圏:パプアニューギニア・フィジー・ソロモン諸島・バヌアツ、ポリネシア圏:ツバル・サモア・トンガ・クック諸島・ニウエ、ミクロネシア圏:ミクロネシア・マーシャル諸島・パラオ・ナウル・キリバス、準メンバー:ニューカレドニア・フランス領ポリネシア)。
閉じる
米メディア;現司法長官のハーバード大法科大学院時代の恩師、長官はトランプを訴追することになろうと発言、と報道
既報どおり、米下院特別委員会(1/6 HSC)主導による2021年1月6日発生の議事堂乱入事件の調査報告や重要参考人の証人喚問で、ドナルド・トランプ前大統領の責任追及度合が増している。そしてこの程、現司法長官のハーバード大法科大学院時代の恩師が、長官はトランプ訴追に動くかも知れない、との私見を披露したと米メディアが報じている。
7月2日付
『CNNニュース』は、「メリック・ガーランド司法長官の法科大学院時代の恩師、同長官はトランプ訴追に動く可能性」と題して、これまでの1/6 HSCによる調査報告や重要参考人の証人喚問を踏まえて、司法長官によるトランプ訴追の可能性について、同長官の恩師のインタビュー記事を掲載している。
メリック・ガーランド司法長官(69歳、2021年就任)のハーバード大法科大学院(1817年設立)時代の恩師であるローレンス・トライブ名誉教授(80歳、注後記)が、これまで明らかになった“有力な証拠”に基づき、同長官がトランプ前大統領を訴追する可能性が高い、との私見を述べている。...
全部読む
7月2日付
『CNNニュース』は、「メリック・ガーランド司法長官の法科大学院時代の恩師、同長官はトランプ訴追に動く可能性」と題して、これまでの1/6 HSCによる調査報告や重要参考人の証人喚問を踏まえて、司法長官によるトランプ訴追の可能性について、同長官の恩師のインタビュー記事を掲載している。
メリック・ガーランド司法長官(69歳、2021年就任)のハーバード大法科大学院(1817年設立)時代の恩師であるローレンス・トライブ名誉教授(80歳、注後記)が、これまで明らかになった“有力な証拠”に基づき、同長官がトランプ前大統領を訴追する可能性が高い、との私見を述べている。
トランプを訴追することは、反トランプ派にとって長い間の切実な希望であったが、直近で1/6 HSCが行っている公開聴聞を通じて、その可能性が益々高まってきている。
特に、大統領首席補佐官だったマーク・メドウズ氏(62歳、2020~2021年在任)のスタッフのキャシディ・ハッチンソン氏(30代)が6月28日、1/6 HSCの公聴会において行ったトランプの1月6日当日の行動に関する爆弾証言が大いに注目されている。
そこで『CNN』は7月1日晩、長年の反トランプ派で、ガーランド司法長官の恩師でもあるトライブ名誉教授にインタビューを行っている。
『CNN』の主要キャスターのウルフ・ブリッツァー氏(74歳、ジャーナリスト・作家、1990年より『CNN』レポーター)がトライブ名誉教授に、司法省はトランプ前大統領を訴追すると思うかとの直球の質問をぶつけたところ、同名誉教授は、“ガーランド長官は真面目で誠実な人物である”とし、“司法省のトップとして、確たる証拠や証言が示されたならば、法に則って忠実に判断しよう”とコメントした。
その上で同名誉教授は、“1/6 HSCが調査してきた内容や、現実に、ジョン・イーストマン(62歳、1/6 暴動を扇動した容疑)やその他関係者が拘束されていること等から、トランプ前大統領が訴追される可能性は高まったと思う”と付言した。
これに対してブリッツァー氏は、“では、ガーランド司法長官はトランプ前大統領を訴追すると考えているのか”と改めて質問した。
同名誉教授は、“あくまで私の直感だが、訴追すると思う”と答えた。
ブリッツァー氏から、“訴追するに当たっての問題点”を問われて、同名誉教授は、“訴追することによって、トランプが民衆を焚き付け、暴動を引き起こす可能性があるし、また、トランプ妄信者の陪審員が訴追に反対するかも知れない”とコメントした。
しかし、“社会の中で、トランプの責任を問う声が日増しに高くなってきており、訴追しないことによって起こる米国民の不満の方が遥かに大きく、大きな暴動に発展しかねない”として、“訴追することが最も望ましいことだ”と強調している。
その上で、“前任大統領が新任大統領への権限移譲を拒否し、また、選挙結果を覆そうとする等、前代未聞の事態が発生していることに目をつぶってしまったら、それこそ民主主義は終焉してしまう”とも付言している。
(注)トライブ名誉教授:1972年にハーバード大法科大学院法学部教授として招聘。教え子に、バラク・オバマ第44代大統領(2009~2017年在任、現60歳)、テッド・クルーズ上院議員(51歳、テキサス州選出共和党員、2013年初当選)、ジョン・ロバーツ最高裁長官(67歳、2005年就任)、エリーナ・キーガン最高裁判事(62歳、2010年就任)等がいる。
閉じる
その他の最新記事