米国が、中国本土への渡航禁止勧告を出したり、あの北朝鮮までが、中朝国境を封鎖する動きをしたりと、中国発祥の新型コロナウィルス感染の脅威に対する懸念が尋常ではない。これまで中国の支援を受けてきたような国からも、中国人お断りの声が上がるにつけて、どこの国も内実は、これまでの中国の経済力・軍事力を嵩にかけての傍若無人な振る舞いに辟易していたことが窺える。
1月30日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「コロナウィルス感染拡大に連れて、アンチ中国の動きも活発に」
中国で猛威を振るい始めた新型コロナウィルスは、中国国内だけで感染者が7千人以上、犠牲者も170人を超えた。
他国への急速な感染拡大を受けて、世界保健機関(WHO)もついに1月30日、緊急事態宣言を発表し、世界各国の保健当局に対して、感染拡大防止に向けた監視強化や措置拡充などを要請した。
しかし、例えばハワイ大学アジア問題研究専門のクリスティ・ゴベラ准教授は、新型コロナウィルス感染拡大阻止にかこつけて、中国人そのものを拒否する動きが出始めていると指摘する。
同准教授によれば、この背景には、中国がこれまでに経済的及び軍事的圧力でアジア諸国に対してきたことや、また、西側の競合国にも挑戦的な対応を取ってきたことから、潜在的な外国人恐怖症(すなわち、対中国人全般に対して)が表れたと分析している。
もちろん、偏見を抱くのではなく、純粋に新型コロナウィルス感染拡大を防止するために行動を起こすことや、また、苦境に陥っている中国に救いの手を差し伸べるべきとの声も上がってはいる。
主要な国の動きや反応は以下のとおり;
<日本>
・ツイッターで、“中国人の来訪お断り”とのやりとりが上げられている。また、中国人観光客を“汚い”、“無神経”、更には“生物兵器”とまで揶揄する表現も使われている。
・一方、いつも多くの中国人観光客で賑わう銀座で衣料品店を営む女主人は、こういうときこそ中国や中国人のために何か支援の手を差し伸べられないか考えるべき、とコメントしている。
<シンガポール>
・数万人の市民が、政府に対して“中国人の入国拒否の決定”を求める署名活動を実施している。
<香港>
・ホテルやレストラン等では、中国人観光客は歓迎できないとの声が上がり始めている。
・例えば、あるケータリングサービスのチェーン店は1月26日にフェイスブック上に、“英語もしくは広東語(香港や華僑が用いる言語)を話す顧客のみを対象とし、マンダリン(中国本土の標準語)話者はお断り”と掲載。
・この背景には、香港のビジネス界では、中国中央政府に対抗して民主化運動を進めるグループを支援していることが背景にある。
<ベトナム>
・ダナン(ベトナム中部の港湾都市)のあるホテルは1月22日、新型コロナウィルス感染拡大阻止のため、“中国人観光客の宿泊お断り”と宣言した。
・ダナン南部の観光地ホイアン(古い港町)のあるレストランは、“中国人お断り”の看板を店頭に掲げた。
・ベトナム市民は、南シナ海での中国による漁業妨害や、石油掘削事業への言いがかり等に対して反発してきている。
<インドネシア>
・政府が武漢市からの航空機の乗り入れを拒否する決定を行った。
・これを受けて、市民の間には、全ての中国人観光客を拒否すべきとの声が高まりつつある。
・しかし、西スマトラ州知事はかかる声を無視して、1月26日に到着する174人の昆明(中国南西部雲南省)からの中国人観光客を空港まで出迎えている。
<韓国>
・ユーチューブ上に、“中国の生物化学兵器工場が新型コロナウィルスの発生源”とするデマが流布されている。
<マレーシア、フィリピン、ロシア>
・武漢市のある湖北省住民、あるいは全ての中国人の入国ビザ発給を一時的に中止すると発表している。
<イタリア>
・コンテ首相は1月30日晩、中国行き及び中国からの全ての航空機の受け入れを拒否することを決定した。
<豪州>
・『ヘラルド・サン』紙(メディア王と呼ばれる豪州系米国人のルパート・マードック氏が所有)が“中国のウィルス、パンダモニウム(1980年代初めに米『CBSテレビ』が放映した3匹のパンダの漫画番組)”と掲載。
・これに怒った現地中国人コミュニティの4万6千人余りの住民が、“寛容できない人種差別”と異議を申し立て。
・また、シドニーの店で販売されているフォーチュンクッキー(中華料理店で出されるクッキー)、コメ、中国製レッドブル(オーストリア発祥の清涼飲料水)は汚染されている、とのデマがインスタグラムに上げられている。
<カナダ>
・トロントの政治家、教育委員会、またいくつかのコミュニティ・グループは1月27日、“中国のある省で発症したからと言って、それを中国ウィルスと呼ばない”とし、“無用な外国人恐怖症を芽吹かせない”よう注意喚起する声明を発表した。
・実は現地では、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)で44人が犠牲になった際、中国コミュニティに対しての差別が横行した経緯があった。
1月31日付マレーシア『ザ・スター・オンライン』:「コロナウィルス最新情報:世界の感染者がほぼ1万人」
WHOは1月30日、世界の新型コロナウィルス感染者が9,950人余りと、SARS伝染病よりも患者数が増えたことより、緊急事態を宣言した。
これを受けて、各国は緊急対応に追われている。
<米国、日本>
・国民に対して中国への渡航中止を指示。
<シンガポール、ベトナム>
・中国人宛のビザ発給を停止。
<パキスタン>
・中国発及び中国行きの全ての航空機の乗り入れを2月2日まで停止。また、北端の中国との国境開放時期延期を検討。
<香港>
・林鄭月娥行政長官は、春節時の休校を3月2日まで延長することを決定。
・同長官はまた、中国本土との国境を封鎖するよう求める要請に反対する一方、ストライキを企てている医療従事者に対して、コロナウィルス問題解決まで思い止まるよう要請。
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BRICS新興国首脳会議が7月25~27日、ヨハネスバーグ(南アフリカ)で開催されている。それに先立ち、ウラジーミル・プーチン大統領は、敵対する欧州のみならず、相変わらず相容れない米国に対抗していくため、今こそ新興国グループの結束を更に強化していく必要があると表明している。
7月25日付米
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース:「プーチン大統領、BRICSグループの結束強化が必要と強調」
BRICS新興国首脳会議出席を前に、ウラジーミル・プーチン大統領は、同メンバー間、地域及び国際社会等、多方面における関係国の対話及び協力が不可欠だと強調した。
今年で10回目を迎えるBRICSサミットは、7月25~27日の間、ヨハネスバーグ(南アフリカ)で開催される。
BRICS新興国にとって、貿易や安全保障面等で、様々な対応や貢献が求められてきている現在、出席する各国首脳は、これまでの10年を振り返り、かつ、同グループの将来の発展を見据えて種々協議することになる。
ロシアの外交政策顧問のユーリ・ウシャコフ氏は、具体的議題が決まっている訳ではないが、BRICS首脳が一堂に会して、様々な議論を交わすことが肝要だと語った。
今年のBRICSサミットを主催する南アフリカは、アフリカ諸国のアンゴラ・コンゴ・エチオピア・ガボン・レソト・マダガスカル・マラウィ・モーリシャス・モザンビーク・ルワンダ・セネガル・セイシェル・タンザニア・トーゴ・ウガンダ・ザンビア・ジンバブエ首脳を招待している。
一方、アフリカ諸国以外では、ウシャコフ顧問によると、主要20ヵ国会議(G-20)の議長国を務めたアルゼンチン、イスラム協力機構の議長国であるトルコ、カリブ共同体(カリブ海地域の経済・外交政策調整機構)の今年の議長国のジャマイカが招待されているとする。
同日付ジャマイカ『ザ・グリーナ―』紙(『AP通信』配信):「プーチン大統領と習国家主席、BRICSサミットにおいて対米関税問題で共同戦線」
南アフリカで開催されるBRICSサミットにおいて、プーチン大統領、習国家主席初め同グループ首脳は、ドナルド・トランプ大統領が仕掛けてきている関税賦課問題について、共同戦線を張る意向である。
輸出取引に頼る新興国グループにとって、米国による輸入品への関税賦課は大きな問題となるからである。
ただ、BRICSグループとしては、世界貿易を牽引する国際的勢力として成熟しておらず、グループ内でも一枚岩ではない。
すなわち、BRICS内で世界人口の約40%に匹敵する30億人を擁し、民主主義国家から独裁国家までと多岐にわたり、中国とインド間では国境問題で対立理、また、南アフリカ自身も中国と貿易不均衡問題を抱えているからである。
しかし、在南アフリカ中国大使の林松田(リン・ソンチャン)氏は、南アフリカの『ザ・スター』紙に投稿し、“ある超大国”が推進しようとしている“無謀な一国主義や保護主義”に対抗し、“国際貿易や秩序”を毀損させないよう、グループが一致団結するときであると主張している。
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