日本では、新型コロナウィルス(COVID-19)感染が再爆発していて、地方の夏祭りの多くが再び中止に追い込まれている。そうした中、7月初めに報じたとおり、米カリフォルニア州サンノゼ(シリコンバレー中心都市)の盆祭りが復活開催されたが、マレーシア随一の観光地ペナン島(「東洋の真珠」と呼ばれる観光地)でも盆祭りが復活している。
7月31日付
『ザ・スター・オンライン』(1971年設立の英字紙)は、「ペナン島で盆踊りを通じて日本文化を堪能」と題して、COVID-19感染問題でしばらく中止になっていた盆祭りが復活したと報じている。
ペナン島ジョージタウンで、COVID-19感染問題でしばらく中止となっていた盆踊り祭りが復活した。
7月16日に3年振りに開催された盆祭りには、約3万5千人の市民・観光客らが参加した。
また、当該イベントには、ゲームコーナー、土産屋、浴衣レンタル、写真撮影、飲食等の露店が100余り出店し、中央ステージでは音楽に合わせて盆踊りが催された。
祭りに参加した、地元の大学で生物学を修習する20代の学生らは異口同音に、“日本の文化を間近に感じられて楽しい”と感想を述べた。
彼女らは、マレーシア国内の様々な都市の出身であるが、日頃共通の趣味である日本のアニメを楽しんでいたことから、今回この盆祭りに参加することを決めたという。
また、家族と共に参加した40代の看護士は、“異国の文化に触れることは有意義だ”とした上で、“訪日したことはないが、ペナンで日本の文化を堪能することができるのは素晴らしいことだ”と語った。
来賓として出席した在マレーシア髙橋克彦大使(59歳、2021年就任)は、“両国国交65周年、かつ、マレーシアの「東方重点施策(注後記)」実施40周年に当たる今年に本イベントが再開できて大変喜ばしい”とした上で、“盆踊り祭りを通じて、両国間の理解が進み、今後の関係が更に強固になる機会となれば幸いだ”と挨拶した。
また、ペナン州のチョー・コン・ヨー首席大臣(63歳、2018年就任)は、グローバリゼーションが進む現代にあって、かかる文化イベントが相互理解を促進させるための架け橋となると表明した。
同イベントには、ペナン州のアフマド・フジ・アブダル・ラザク知事(73歳、2021年就任)、在ペナン折笠弘維総領事(2021年就任)及び同州のヤオ・スーン・ヒン観光・クリエイティブエコノミー大臣(45歳、2018年就任)も参列していた。
一方、ダトゥック・イドリス・アフマド首相府大臣(58歳、2021年就任)は、“盆踊りは他宗教の要素を含んでいるので、イスラム教徒は参加しないように”と呼び掛けた。
この呼び掛けに反発して、セランゴール州君主のスルタン・シャラフディン・イドリス・シャー(76歳、第9代スルタン、2001年就任)はイスラム宗教庁に対して、個人が当該“文化イベント”に参加することを禁止しないよう命令を下している。
(注)東方重点施策(ルックイースト政策):マハティール・ビン・モハマド氏(現97歳)が第4代首相(1981~2003年在任)の時代に進めたもので、敗戦後に大躍進を遂げた日本を参考に、マレーシアの経済発展を成し遂げるとした政策。
閉じる
フィリピンでは5月9日、6年に一度の大統領選が行われる。ロドリゴ・ドゥテルテ現大統領(76歳、3月28日に77歳、2016年就任)は就任早々から脱米国、親中国・ロシアを標榜してきた。しかし、近年の中国による南シナ海領有権問題に関わる威圧的な姿勢の激化に加えて、直近のウクライナ軍事侵攻に伴う国際社会からの強烈な対ロシア制裁をみるにつけて、次期大統領は誰がなっても、従来の親米路線に復帰するとの見方が強い。これは、3月28日に幕を開ける近年で最大規模の米比合同軍事演習が実施されることからも、十分窺い知ることができる。
3月25日付香港
『アジアタイムズ』オンラインニュース(1995年設立)
2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、開口一番、脱米国、親中国・ロシア政策を打ち出した。
最初の外遊先を中国に決め、2016年10月の訪問時には、“これからは、中国・フィリピン・ロシアの3ヵ国連携が世界に対抗する唯一の同盟だ”とまで言ってのけた。
更に、数日後に来日した際には、安倍晋三首相(当時62歳、2012~2020年在任)との会談前に、“就任後2年以内に、駐留米軍に退去してもらう”と言い切っていた。...
全部読む
3月25日付香港
『アジアタイムズ』オンラインニュース(1995年設立)
2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、開口一番、脱米国、親中国・ロシア政策を打ち出した。
最初の外遊先を中国に決め、2016年10月の訪問時には、“これからは、中国・フィリピン・ロシアの3ヵ国連携が世界に対抗する唯一の同盟だ”とまで言ってのけた。
更に、数日後に来日した際には、安倍晋三首相(当時62歳、2012~2020年在任)との会談前に、“就任後2年以内に、駐留米軍に退去してもらう”と言い切っていた。
その関係もあって、フィリピン政府は、2016年のバリカタン演習(注後記)を突然中止とすると決定している。
また、その後の演習は規模を縮小して続けられたが、2020年の演習は、折からの新型コロナウィルス感染問題深刻化の影響で中止に追い込まれている。
しかし、フィリピン国軍(AFP、1897年創設)は昨年10月、2022年以降バリカタン演習を最大規模で開催し、また、それ以外の小規模共同訓練を300回以上実施する旨発表した。
この背景には、中国軍が南シナ海において、フィリピン軍艦や漁船団に対する度重なる威圧的行為を激化してきていることと、武器供与に頼っていたロシアが、直近のウクライナ軍事侵攻に伴って国際社会から非常に厳しい制裁を科されるに至っていることがある。
すなわち、ドゥテルテ大統領は親中国路線に伴って、総額260億ドル(約3兆1,200億円)に上る大規模経済援助の約束を取り付けたものの、同大統領任期中には大型インフラ・プロジェクトが唯の一つも完成していないにも拘らず、フィリピンが主権を主張する南シナ海スプラトリー諸島(南沙諸島、フィリピン呼称:西フィリピン海)において、中国側の一方的海洋進出が進められてしまっている。
そこで、同大統領としても昨年開催の東南アジア諸国連合(ASEAN、1967年設立)・中国サミットにおいて、中国側蛮行を直接的に非難する対応をしている。
同大統領以上に、国民や軍関係者の中では、もっと中国への不信感が醸成されているようで、フィリピン民間NPO社会気象ステーション(1958年設立の研究機関)が2019年に実施した世論調査によると、中国支持は僅か33%であったのに対して、米国支持は72%にも上っていた。
また、2018年にフィリピン国防大学(1963年創立の国立大学)所属の学生らに対する調査の結果、大多数が中国よりも米国との関係強化を望んでいることが分かった。
一方、ロシアについても、同大統領は就任当初、ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)を“好ましい英雄”と褒め称えていたが、直近のウクライナ侵攻で国際社会から孤立する状況に追い込まれてしまっていることから、“プーチンは自暴自棄”とまで扱き下ろす程である。
かかる背景もあって、5月9日投開票の大統領選において、どの候補が当選しようとも、脱中国・ロシア、親米路線復帰という政策が取られることになろう。
同日付マレーシア『ザ・スター・オンライン』(1971年設立)
AFPは3月25日、3月28日~4月8日の間、米比両軍合計9千人近くの将兵が参加する、ドゥテルテ政権下では最大規模のバリカタン演習を実施すると発表した。
チャールトン・ショーン・ガエラン少将によれば、“バリカタン演習は、フィリピンと米国両国間の安全保障関係の強靭さを証明するものだ”とする。
今年の同演習は、海上治安活動、水陸両用作戦、実弾訓練、市街戦、飛行訓練、テロ対策、人道支援及び災害復旧に注力して実施されるという。
米第3海兵師団(1942年創設)司令官のジェイ・バージェロン少将は、“米軍及びAFPは、世界の現実的問題に高い能力と責任を以て対応していくため、戦術・先端技術共有、及び具体的作戦実施の成果を高めていく共同訓練を実施する”としている。
なお、1990年代に始められた同演習は、ドゥテルテ政権下で一時期縮小化されていたが、同大統領自身、近年の中国軍の台頭及び南シナ海領有権問題での威圧的行動を目の当たりにして、親米路線に舵を切り始めたことから、大規模演習を復活させている。
(注)バリカタン演習:1998年の在フィリピン米軍基地閉鎖に伴って開催されるようになった米比年次軍事演習。「バリカタン」はタガログ語で「肩を並べて」の意。
閉じる