中国:ウクライナ戦争勃発後初めて中央政府幹部をロシアに派遣【欧米・香港メディア】(2022/09/05)
中国は、表向きは西側諸国の対ロシア制裁を非難してきたが、ロシアとの高官レベルの往来は控えてきた。しかし、ウクライナ戦争でロシアが劣勢となった場合に起こり得る中国への影響を慮ってか、この程、習国家主席・李首相に次ぐ第3位の政府幹部をロシアに派遣して、強固な中ロ関係を内外に示すこととしている。
9月4日付欧米
『ロイター通信』は、「中国政府幹部高官、ロシアで開催される東方経済フォーラムに出席」と題して、中国政府が、ウクライナ戦争勃発後初めて幹部高官をロシアに派遣すると報じている。
中国の全国人民代表大会(共産党大会)常務委員会の栗戦書委員長(リー・チャンシュー、71歳、2018年就任)が、9月5日からロシアを訪問して、同地で開催される第7回東方経済フォーラム(EEF、注1後記)に出席することになった。...
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9月4日付欧米
『ロイター通信』は、「中国政府幹部高官、ロシアで開催される東方経済フォーラムに出席」と題して、中国政府が、ウクライナ戦争勃発後初めて幹部高官をロシアに派遣すると報じている。
中国の全国人民代表大会(共産党大会)常務委員会の栗戦書委員長(リー・チャンシュー、71歳、2018年就任)が、9月5日からロシアを訪問して、同地で開催される第7回東方経済フォーラム(EEF、注1後記)に出席することになった。
中国国営メディア『新華社通信』が報じたもので、栗委員長は習近平国家主席(シー・チンピン、69歳、2012年就任)・李克強首相(リー・クーチアン、67歳、2013年就任)に次ぐNo.3の地位にあり、ウクライナ戦争勃発以降に訪ロする最高幹部となる。
同委員長は、9月5日からウラジオストクで開催されるEEFに出席した後、9月7日から17日にかけて、モンゴル、ネパール、韓国を歴訪する予定であるという。
ただ、同委員長は、来月中旬に開催される中国共産党大会を最後に退任するとされている。
なお、習国家主席は今年2月、北京冬季大会開会式出席のために訪中したプーチン大統領と首脳会談した際、中ロ両国間は“無限の”パートナーシップ関係にあると表明している。
同日付香港『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙は、「中国No.3の栗戦書委員長が訪ロ」として、ウクライナ戦争勃発後初となる最高幹部の訪ロについて、習国家主席・プーチン大統領間首脳会談の露払いとなるとみられると報じている。
中国中央政治局(注2後記)第3位の地位にある栗委員長が、9月5日の週からロシア他を歴訪する。
中央政治局委員は習国家主席を含めて、2020年初めの新型コロナウィルス感染流行問題(パンデミック)発生以来、外遊を控えてきているため、栗委員長の訪ロでいよいよそれが解禁されることになるとみられる。
また、ウクライナ戦争勃発後以降、中国高官の訪ロは初めてとなるが、9月15日にウズベキスタンで開催される上海協力機構(SCO、注3後記)に中ロ両首脳が出席するとみられるため、今年2月以来の両首脳会談開催の露払いのための訪ロとも考えられる。
なお、中国外交トップである楊潔篪中央外事活動委員会弁公室主任(第16位の地位、ヤン・チエチー、72歳、2013年就任)は、パンデミック後も唯一外遊し、アントニー・ブリンケン国務長官(59歳、2021年就任)との会談のために訪米したりしていた。
(注1)EEF:ロシア極東部へ外国からの投資を促すのが主目的の国際会議で、2015年から毎年9月にウラジオストクの極東連邦大学を会場として開催。ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)、安倍晋三首相(1954~2022年、2006~2007年及び2012~2020年在任)も毎年出席していた。
(注2)中国中央政治局:中国共産党を指導し、政策を討議・決定する機関。同委員会は25名で組成。通常5年に一回開かれる全国人民大会(共産党大会)で指名・承認される。なお、同局の上部機関に中央政治局常務委員会(トップ7人で構成)が実質的な最高機関である。
(注3)SCO:中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの8ヵ国による多国間協力組織、もしくは国家連合。2001年に、前身となる上海ファイブ(最初の5ヵ国)として設立されたために「上海」の名を冠するが、本部(事務局)は北京。
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カナダ、外国投資家の住宅購入を2年間禁止へ(2022/04/08)
カナダではコロナ禍や実際に住んでいない外国人投資家が買い占めることによる住宅供給不足から、住宅価格が過去2年で50%増加、今年2月には記録的な高騰となった。そこで外国投資家による住宅購入を2年間禁止するという。
4月7日付
『U.S.ニュース&ワールドレポート』(AP通信):「カナダ、市場対策として外国投資家の住宅購入を2年間禁止へ」:
カナダのジャスティン・トルドー首相は7日、高騰を続ける住宅市場の安定を狙い、外国投資家による住宅購入を2年間禁止すると発表した。カナダでは昨年、住宅価格が20%以上高騰し、賃貸価格も上昇していることから政府は対策を迫られていた。
クリスティア・フリーランド財務相は、今年度の政府予算を示し、記録的な住宅価格への対策とし多くの対策を発表。...
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4月7日付
『U.S.ニュース&ワールドレポート』(AP通信):「カナダ、市場対策として外国投資家の住宅購入を2年間禁止へ」:
カナダのジャスティン・トルドー首相は7日、高騰を続ける住宅市場の安定を狙い、外国投資家による住宅購入を2年間禁止すると発表した。カナダでは昨年、住宅価格が20%以上高騰し、賃貸価格も上昇していることから政府は対策を迫られていた。
クリスティア・フリーランド財務相は、今年度の政府予算を示し、記録的な住宅価格への対策とし多くの対策を発表。永住者や外国人学生を除くなどの例外措置は設けられているが、1年以内に住宅を手放す際の増税措置も示された。また、新規定期預金開設や初回住宅購入者への控除など、新築物件を増やし、カナダ人が住宅を所有できるよう支援が行われる。
一方、軍事予算の増強も課題となっている。カナダ政府からはウクライナへ3.5億ドルの軍事、人道支援が計画されている。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、他国が軍事費を増強している一方、カナダはNATOが目標とするGDP2%の防衛費負担にはるか及んでいない。先月政府は、ロッキードマーティン社のF35戦闘機購入計画を発表している。
同日付中国『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』:「カナダが外国人の住宅購入を2年間禁止へ、中国やインドの移民を念頭に価格高騰対策」:
カナダは今後2年、外国人の家購入を禁止する。これは、近年、永住権取得者が多い中国やインドの投資家への影響が避けられない措置である。一方、学生、外国人労働者、永住者は対象外となるとみられる。
カナダではパンデミックにより、新築物件が激減し供給不足となり、住宅価格が過去2年で50%増加。今年2月には記録的な急騰となった。トルドー首相は、住宅価格高騰によるインフレへの政治的批判への懸念を強めており、価格上昇を抑えるため住宅供給対策支援を行う。
政府統計によると、ブリティッシュコロンビア州における外国人の住宅所有者は3.8%、オンタリオ州では2.2%と比較的少ない。また、ブリティッシュコロンビア州のほぼ全地区では既に外国人購入者には20%の税が課せられており、購入禁止措置により、市場に大きな影響は期待できないとの見方もある。
カナダが2019年に受けいれた永住者は34万1180人。2020年にはコロナ禍の渡航制限の影響で18万人に下がっているが、一貫して移民受け入れに門戸を開いてきた。中国本土からの移住者は2019年で3万人、2020年には1.6万人。インドからは、2019年に8.5万人、2020年には4.2万人が移住している。
政府は2022年~2024年の年間受入数を43~45万を目標としている。カナダ政府は、中国による国家安全法措置を受け、香港からの移住者に仮設住宅を提供しており、これにより、購入者に多少の影響があるとみられる。近年の住宅購入者の約30%が外国人ともみられ、香港からの移民希望者が増加しているとみられる。
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