日本製新型コロナウィルス治療薬;先行するアビガンに俄かに対抗馬登場【米メディア】(2020/05/13)
既報どおり、安倍晋三政権は先週、新型コロナウィルス(COVID-19)治療薬として米製薬会社製抗ウィルス薬“レムデシビル”を、申請から僅か4日間という異例のスピードで承認した。同政権の次なる期待は、日本の製薬会社製の“アビガン”の有効性確認、承認である。そうした中、遥か昔から別の疾病用の治療薬として開発された薬が、COVID-19治療薬として俄かに注目され始めていると米メディアが報じている。
5月13日付
『ロイター通信』:「日本で2種類のCOVID-19治療薬に期待増」
安倍晋三政権はこの程、抗ウィルス薬として日本の製薬会社、富士フイルム富山化学製の“アビガン”を可及的速やかに承認し、増産体制確立のための補助金1億2,800万ドル(約137億円)拠出を検討していると表明した。
しかし、日本製の抗ウィルス薬として、もうひとつ有力候補がある。
小野薬品工業(注1後記)が35年前に、慢性膵炎の薬として開発した“カモスタット”で、政府レベルからまだ関心は持たれていないが、日本や海外の感染症専門家の間ではCOVID-19治療薬として注目され始めている。...
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5月13日付
『ロイター通信』:「日本で2種類のCOVID-19治療薬に期待増」
安倍晋三政権はこの程、抗ウィルス薬として日本の製薬会社、富士フイルム富山化学製の“アビガン”を可及的速やかに承認し、増産体制確立のための補助金1億2,800万ドル(約137億円)拠出を検討していると表明した。
しかし、日本製の抗ウィルス薬として、もうひとつ有力候補がある。
小野薬品工業(注1後記)が35年前に、慢性膵炎の薬として開発した“カモスタット”で、政府レベルからまだ関心は持たれていないが、日本や海外の感染症専門家の間ではCOVID-19治療薬として注目され始めている。
本薬は、まだ臨床試験で有効性が認められていないが、かつて、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウィルスに対する研究で、動物実験での効果が認められていた。
そこで、今回のCOVID-19治療薬としての可能性も注目され、3月発行の科学誌『セル(注2後記)』に掲載された、イェール大学医学大学院(1810年設立、コネチカット州の私立大学)のジョセフ・ビネッツ博士の研究論文によると、“カモスタット”は、COVID-19ウィルスが肺に侵入するのに必要な酵素を退けたという。
同教授は、“35年間の使用実績があり、安全性は保証されている”とし、“更に有効性確認のための研究を続けたい”としているが、そのための資金が必要だとも付言している。
また、イスラエルのシーバ・メディカル・センター(1948年設立の同国最大規模の病院)のイチャック・レビー医師は、4月に“カモスタット”の試験投与を始めていて、“14例で効果がみられており、今後に期待している”と表明している。
更に、ケンタッキー大学(1865年設立の州立大学)でも“カモスタット”の研究が続けられているが、同大学のエリヤ・カカーニ助教授は、“期待し過ぎないようにして、問題の有無について冷静に考慮に入れて研究していく必要がある”とコメントしている。
なお、安倍政権は今月初め、米バイオ医薬品製薬会社ギリアド・サイエンシズ(1987年設立、本社はカリフォルニア州)製の“レムデシビル”を先行して特別承認し、COVID-19の重症患者治療用に充てる意向である。
一方、“アビガン”については、中国の医師団が今年3月、COVID-19患者に投与して効果があったと発表したことから、日本において俄然注目されることになっている。
安倍政権としては、本薬について十分な治験を経た上で今月末までに承認し、製薬会社側の増産を支援した上で、海外43ヵ国からの正式要請を踏まえて無償で供与していきたいと考えている。
なお、富士フイルム富山化学の親会社、富士フイルム(1934年設立の精密化学メーカー)の古森重隆会長(80歳)は長年の安倍首相支援者である。
ただ、同社広報は、今回の“アビガン”採用について、同社会長と安倍首相の関係とは一切関係がないとコメントしている。
(注1)小野薬品工業:1947年、前身の日本理化学工業として大阪で設立された医家向け医薬品製薬会社。ガン免疫薬のオプジーボが有名。
(注2)セル:米セル出版が発行している、1974年創刊の隔週刊の学術雑誌。医学・生化学・分子生物学等、ライフサイエンス分野における世界最高峰の学術雑誌で、同誌からの論文の引用の数を示すインパクトファクターが高いことで有名。『ネイチャー』、『サイエンス』とともに三大科学誌に数えられている。
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アフリカ、新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大は見られず(2020/05/13)
医療体制の脆弱なアフリカで、新型コロナウイルスの大流行を懸念する専門家が多い。しかし、2月14日に最初の患者が報告されて以降、欧米諸国が経験しているような大きな波は来ておらず、懸念とは反対にアフリカの多くの国で重傷者や死亡者の増加も抑えられている。その理由は何か。
2月14日にエジプトで中国人が最初の新型コロナウイルス感染症例となって以来、ウイルスはアフリカ大陸のほぼ全域に広がった。
しかし『アフリカニュース』によると、5月12日時点で、約12億人が住むアフリカ大陸で新型コロナウイルスの陽性者数は 66,319人、死亡者数が 2,344人、回復者数は23,143人、感染者のいない国が1国(レソト)となっている。
最初の感染症例が発生してから、2か月以上が経った今も、欧米諸国で起こっているような最悪の事態が起こっていない。...
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2月14日にエジプトで中国人が最初の新型コロナウイルス感染症例となって以来、ウイルスはアフリカ大陸のほぼ全域に広がった。
しかし『アフリカニュース』によると、5月12日時点で、約12億人が住むアフリカ大陸で新型コロナウイルスの陽性者数は 66,319人、死亡者数が 2,344人、回復者数は23,143人、感染者のいない国が1国(レソト)となっている。
最初の感染症例が発生してから、2か月以上が経った今も、欧米諸国で起こっているような最悪の事態が起こっていない。
『フランスアンフォ』は、数字上でもこのことが確認できると報じている。世界人口の17%が集まるアフリカ大陸は、全世界の感染者のわずか1.4%の感染者しかかかえておらず、死者数も0.7%しか占めていない。 これまでに約2,340人が亡くなっているアフリカは、パンデミックを免れていると言える。
感染症の専門家であるタノン教授は、国境の閉鎖と公共の場所の消毒のおかげだと説明している。専門家たちは、アフリカ諸国はヨーロッパよりも1カ月早くウイルスの感染拡大防止対策を実行した点を挙げている。
『フュチュラ・サイエンス』によると、アフリカ疾病予防センター所長のジョン・ンケンガソン氏は、検査数の少なさやデータ不足を考慮すると感染者数は間違いなく大幅に過小評価されているとAFPに対し認めている。しかし、多くの感染者が見逃されていることは考えにくいとも説明している。そうであれば「病院は患者で溢れてかえっているはずだが、それが起こっていない」と言う。
感染の拡大が抑えられていることにいくつかの要因が考えられる。
まず、ウイルスはヨーロッパの数週間後にアフリカに広がったため、アフリカ大陸では前もって予防策を講じることができた。ルワンダでは感染者が出る前から衛生面での対策が取られ、南アフリカ、チュニジア、モロッコ、アルジェリアでは、感染が拡大する前に都市封鎖や外出禁止令が課された。
1平方キロメートルあたりの人口が43人のアフリカは、西ヨーロッパの181人、東南アジアの154人と比較すると、人口密度の低い大陸だということも分かる。また多くの地域で、人々は依然としてほぼ自給自足の孤立した生活を送っている。そのため、感染の拡がりは自ずと制限される。人口密度の高い都市もあるが、そうした都市は早々に都市封鎖の措置が取られたため、人同士の濃厚接触を制限することが出来た。
更に、アフリカはまだ観光客が少なく、世界で最も利用者の多い50の空港のうち、アフリカ大陸からはヨハネスブルグの空港1つしかランクインしていない。アフリカには海外在住の留学生もまだ限られており、中国やインドのように感染が拡がっている海外の国から帰国する学生の帰国に対応する必要性に直面していない。
何よりもアフリカの人口の約60%が25歳未満という、若い大陸であることが挙げられる。コロナウイルスは特に高齢者が重症化しやすいことが分かっているが、あるアフリカの作家は新聞のコラムに、アフリカにはウイルスによって殺される高齢者がそもそも生存していない、と皮肉を込めてコメントしている。
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