米地質研究学者ら、北米大陸への人類到達が従前説より約7千年も前だったことを改めて証明【欧米メディア】(2023/10/07)
米地質調査所(USGS、1879年設立、内務省傘下の科学的研究機関)の地質研究学者のチームが2021年、北米大陸に人類が到達した年代は、従前の考古学説であった約1万6千年前よりも更に約7千年も前であったとの研究結果を発表した。しかし、多くの専門家が「リザーバー効果(注後記)」に伴う誤った解釈だと批判した。そこで同研究チームはこの程、新たな科学的証拠を積み上げて、2年前の新説を再び証明した。
10月5日付
『ロイター通信』、
『CNNニュース』は、USGSの地質研究学者らのチームが、北米大陸の内陸部で発見された人類の足跡は2万3千年から2万1千年前のものであることが改めて証明されたと発表したと報じている。
USGS所属の地質研究学者のチームは2021年、ニューメキシコ州のホワイトサンズ国立公園内で、太古の人類の足跡を発見した。
同公園内の、浅い水のほとりの柔らかい泥の中にあったもので、同チームは、足跡がみつかった場所の上下の堆積層に含まれた水性植物の種子の放射性炭素年代測定を実施した結果、これまでの学説であった時代より約7千年も前に人類が初めて北米大陸に到達していたことが分かったと発表した。...
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10月5日付
『ロイター通信』、
『CNNニュース』は、USGSの地質研究学者らのチームが、北米大陸の内陸部で発見された人類の足跡は2万3千年から2万1千年前のものであることが改めて証明されたと発表したと報じている。
USGS所属の地質研究学者のチームは2021年、ニューメキシコ州のホワイトサンズ国立公園内で、太古の人類の足跡を発見した。
同公園内の、浅い水のほとりの柔らかい泥の中にあったもので、同チームは、足跡がみつかった場所の上下の堆積層に含まれた水性植物の種子の放射性炭素年代測定を実施した結果、これまでの学説であった時代より約7千年も前に人類が初めて北米大陸に到達していたことが分かったと発表した。
すなわち、2000年代に盛んに主張されていたのが約1万6千年前だったのに対して、同チームは、氷河期末期の氷の障壁によってアラスカから北米大陸南部への道が閉ざされる前の約2万3千年~2万1千年前に、人類が北米大陸に到達し居住していたと主張した。
しかし、同チームの調査結果が掲載されることになった米科学誌『サイエンス』(1880年創刊の科学学術週刊雑誌)の審査の初期段階で指摘されていた「リザーバー効果」について、多くの専門家が、この影響によって年代測定の推定値に疑問が生じるとして、従来説を覆すには無理があるとの批判を浴びせた。
そこで同チームは、2年近くをかけて更に研究を続け、水性植物の種子ではなく針葉樹の花粉粒を採取して、放射性炭素年代測定を行い、当時の主張を裏付ける結果を得たことから、改めて2021年の研究成果が正しかったと公に発表した。
10月5日に行われた会見に臨んだ、『サイエンス』掲載の共同研究報告チームメンバーの発言骨子は以下である。
●地質研究学者ジェフ・ピガティ研究チーム共同筆頭著者
・全ての年代測定手法には長所と短所があるが、今回我々は、3つの異なる手法で同じ年代に収束するとの結論に至った。
●地質研究学者キャスリーン・スプリンガー同チーム共同筆頭著者
・2年前の発表は物議を醸したが、今回の研究では、前回とは別の種子の年代を特定することによって前回発表結果を裏付けることができた。
●英国ボーンマス大学環境・地理科学部教授マシュー・ベネット同チーム共同著者
・今回の研究成果で、北米大陸に人類が初めて到達したのは約1万6千年前より遥かに昔だったことが分かったが、まだホワイトサンズでの発見例しかないこと、また、彼らがどのルートでホワイトサンズに辿り着いたのか依然不詳である。
(注)リザーバー効果:水性植物が水中の溶存炭素原子から炭素を獲得できるとする科学的根拠から、古い炭素が放射性炭素年代測定の結果に影響を与え、遺跡を実際よりも古く見せることがあるとするもの。
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地球の境界の危険度、専門家が警鐘(2023/09/14)
「地球の境界(プラネタリー・バウンダリー)」は、越えると取り返しのつかない環境変化が生じる可能性がある閾値で、9つの境界(気候変動、海洋の酸性化、オゾン層破壊、窒素使用、淡水利用、土地システムの変化、生物多様性の損失、大気エアロゾルの負荷、化学物質による汚染)が2009年に発表された。最新の発表では地球の状況は更に悪化しているとされる。地球の境界枠組みは、政策やビジネスにも影響を与えている。
9月14日付
『ロイター通信』:「人間の活動が地球の生命維持装置を危険にさらす」:
13日に発表された科学研究によると、人間による活動の結果、地球の生命維持装置へのリスクが高まりつつあり、以前に増して不確実性が増しているという。
「サイエンス・アドバンシス」誌に掲載された専門家29名の国際チームによる地球の「健康チェック」によると、地球は「安全を維持する領域を遥かに超えている」ことが判明したという。...
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9月14日付
『ロイター通信』:「人間の活動が地球の生命維持装置を危険にさらす」:
13日に発表された科学研究によると、人間による活動の結果、地球の生命維持装置へのリスクが高まりつつあり、以前に増して不確実性が増しているという。
「サイエンス・アドバンシス」誌に掲載された専門家29名の国際チームによる地球の「健康チェック」によると、地球は「安全を維持する領域を遥かに超えている」ことが判明したという。
この研究は2015年の論文を発展させたもので、人間の生命の安全境界である生物多様性、気候変動、新鮮な水の確保などの「9つの地球の境界」のうち既に6つが限界を超えたとしている。
9のうち8つは、2015年時のアセスメントより更に厳し状況に陥っており、成層圏のオゾン層のみが改善。それ以外は地球の生活条件を格段に悪くしているという。
筆頭著者でコペンハーゲン大学のキャサリン・リチャードソン氏は、「境界を超えることが人類文明の停止を即意味するわけでないが、維持装置の不可逆的な変化に繋がりかねない。地球を人体になぞらえると境界は血圧で120/80を超えると発作ではなくともリスクの上昇に繋がる」としている。
科学者らは、森林破壊や植物燃料の消費拡大、プラスチックなどの人口製品の普及、遺伝子組み換えや合成化学薬品に警鐘をならす。種の絶滅のペースが過去1000万年の平均より早くなっているとされ、これは遺伝的多様性の安全境界を超えたことを意味する。
評価された9つの境界のうち、「海洋の酸性化」、「オゾン破壊」、ばい煙のような微粒子に関する「大気エアロゾルの負荷」は安全基準内だと判断されているが、「海洋の酸性化」は危険水域にあるという。
9月13日付仏『フランス24』:「人類は地球の境界の危険ゾーンにいる」
人間の活動や欲求が、地球の回復力を弱め、安全が維持されていないとする研究結果が13日発表された。
9つの領域のうち、気候変動、森林破壊、生物多様性の喪失、プラスチックなどの合成化学物質、水不足、窒素使用の6つが既にレッドゾーンに入っていると科学チームが報告している。残る3つのうち2つの領域は、海洋酸性化、大気中のばい煙だが、安定して安全な域にあるという。
デンマークのグローブインスティチュートの教授で第一著者のキャサリン・リチャードソン教授は、地球の領域とは、「地球を、人類と近代文明が発展した過去1万年以上に渡り続いてきた生存可能な状態に保つ重要なプロセス」とする。
この研究は、同様のコンセプトでの2つ目の大きな研究で、最初の2009年には地球温暖化、絶滅ペース、窒素のみが領域を超えていると報告されていた。
共著者でポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム所長は記者会見で、「今も我々は誤った方向に向かっている。オゾン層以外に、どの領域も正しい方向に改善しているとの指標は見当たらない。我々は回復力を失いつつあり、地球の組織の安定性を危険にさらしている」と警鐘をならす。
人間が作り出す科学物質、マイクロプラスチックや農薬、核のゴミや薬物に至るまで環境内に浸透するが、この研究で初めて量として示され、安全限度を超えていることが判明した。重要な発見は、異なる領域が相互に影響し相反したりする点だという。
「気候変動」の次に「生物圏の統合」が地球にとっては重要となるという。地球の境界枠組みは、「地球システム科学」の中心となり、現在では政策やビジネスにも影響を与え始めている。
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