12月17日付
『ニューヨーク・ポスト』紙は、「スティーブン・スピルバーグ監督、“ジョーズ”公開後のサメ乱獲という“狂騒劇”を引き起こしたことを陳謝」と題して、同監督が1975年に同映画を制作・公開して以降、人々が挙ってサメを毛嫌いして乱獲騒ぎに繋がるような事態を引き起こす原因を作ったことを陳謝していると報じた。
スティーブン・スピルバーグ監督(75歳)はこの程、自身が手掛けた1975年の大ヒット映画“ジョーズ”を契機に、サメの乱獲による個体種激減に繋がった事態を陳謝した。
同監督が、英国『BBCラジオ』の番組“無人島のディスク(円盤状の記憶媒体)”(1942年放送開始)に出演し、ラジオパーソナリティのローレン・ラバーン氏(44歳、2019年就任)のインタビューに答えたものである。
同監督は、“自身が作った映画とその原作の小説の影響で、サメ個体種の減少が起こったことを今は申し訳なく思っている”と吐露した。
ラバーン氏が更に、サメに囲まれた小島に取り残されたとしたらどう感じるか、と質問したことに対して、同監督は、“自身が依然恐ろしいと感じる事態のひとつだ”と答えている。
その上で同監督は、“サメに喰われるとは思っていないが、やはり1975年以降サメ乱獲の狂騒劇が起こったことから、サメには随分と恨まれていると思う”とも語った。
米映画の祭典の「アカデミー賞(初回1929年)」を受賞した同映画は、米小説家ピーター・ベンチリー(1940~2006年)執筆の“ジョーズ”を題材にして、ニューイングランド(米北東部6州の総称)の架空のアミティ島で人を喰い殺す巨大なホオジロザメと格闘する人々を描いた海洋アクション・スリラー映画である。
サメ研究者のジョージ・バージェス氏(68歳)は2016年、フロリダ自然史博物館(1891年設立)のインタビューに答えて、当該映画が上映された途端、サメの捕獲が俄かに注目された、とコメントしていた。
同氏は、“当該映画が世に出るや否や、米東海岸の広範囲でテストステロン(ほとんどの脊椎動物が有するステロイドホルモン・男性ホルモンで攻撃性を誘発)を発揮した荒くれ漁師によるサメの乱獲が始まった”とし、“100年余り前に騒がれた「サメに関わる懸賞金(注後記)」に由来したサメ捕獲競争が始まり、多くの漁師が勇敢さを誇るためにより大きく、かつ大量のサメを捕まえるようになった”と言及している。
一方、『ジ・インディペンデント』紙によると、2千万部も売れた当該小説を書いたベンチリーも執筆したことを後悔していたという。
同紙によると、同作家は2000年、米『アニマル・アタックファイルズ(動物に襲われた被害に関わる公文書館)』のインタビューに答えて、“執筆したときは思いもしなかったが、今はサメが如何に種の保護が難しい生き物かということを思い知っている”と述懐していたという。
(注)サメに関わる懸賞金:ニューヨークの大富豪ハーマン・オルリッチ(1850~1906年)が1891年、“サメが人を襲うかどうか”証明した者に500ドル(現在価値1万3千ドル、約180万円)の賞金を出すと発表したもの。
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岸田文雄首相(65歳、2021年就任)は9月20日朝、台風14号災害対策を留守部隊に託して慌ただしく訪米の途に就いた。日本の首相としては3年振りだが、同首相としては初の国連デビューとなる。しかし、米メディア等は、英女王陛下の国葬儀を経て慌ただしく訪米し、同じく国連デビューとなるリズ・トラス新首相(47歳、2022年就任、前外相)のことを大きく取り扱っている。
9月19日付米
『AP通信』は、「トラス英国新首相、女王陛下国葬儀後に慌ただしく訪米の上国連デビュー」と題して、米国の最大の同盟国である英国の新首相による国連デビュー及び米大統領との首脳会談について詳報している。
リズ・トラス新首相は、荘厳な女王陛下の国葬儀を終えて、政治的大混乱を招いている国連に赴こうとし、また、非常に重要なジョー・バイデン大統領(79歳、2021年就任)との首脳会談に臨もうとしている。
同新首相は9月19日、エリザベス2世の国葬儀を終えてすぐ、慌ただしく国連総会に初めて出席するためにニューヨークへ飛んだ。
トラス氏は、今月初めの保守党党首選に勝利して、9月6日に女王陛下から正式任命を受けたばかりだが、女王死去の僅か2日前のことであった。
同新首相は9月21日、国連総会で初めて演説する予定であるが、これまでの英国政策を踏襲し、国連加盟国に対して、ウクライナ支援を更に訴えると同時に、ロシア産原油・ガスの購入停止を強く求めることになろう。
同新首相は訪米直前、“ウクライナや欧州のみならず世界の多くの人々の命が、ロシア産エネルギーに頼ったことで危険にさらされている”とした上で、“欧州の何百万人もの人々を今冬に凍えさせようとしている”としてウラジーミル・プーチン大統領(69歳、2000年就任)を糾弾するコメントを発表している。
英国は、欧州他国に比べてロシア産原油・ガスの依存率が高くはないものの、ウクライナ戦争に伴う世界エネルギー価格の高騰によって英国でも諸物価高騰に喘ぐことになっており、同新首相にとっての最大の国内問題になっている。
そこで、同新首相は早速、北海油田・天然ガス開発プロジェクト推進強化とともに、輸入燃料への依拠制限を撤廃するとの政策を発表している。
ただ、環境保護活動家らは、ボリス・ジョンソン前首相(58歳、2019~2022年在任)が提唱した、2050年までにカーボンニュートラル(注後記)を達成するとの目標を後退させようとしているとして非難している。
これに対して、首相府のマックス・ブレイン報道官(2021年就任)は、新首相は“カーボンニュートラル達成を約束していることに変わりはない”としながらも、“過渡期において石油や天然ガス等のエネルギーにも頼る必要があるとしている”と言及した。
なお、同新首相は、国連総会での演説で、前任首相の政策を踏襲する一環で、米国に次ぐ規模となるウクライナ向けの23億ポンド(27億ドル、約3,890億円)相当の軍事支援を約束することで、国連加盟国へのウクライナ支持をアピールする意向とみられる。
ただ、同日に予定されているバイデン大統領との首脳会談では、Brexit(英国のEU離脱)に関わる難しい問題に触れる必要がある。
何故なら、同大統領が、Brexitに伴う北アイルランド(アイルランド島北東部の英国カントリー)とEU加盟国アイルランド(1949年英連邦より独立)間国境の物流・課税問題で平和が毀損されることを強く懸念しているからである。
これに対して、新首相も現行保守党政権のBrexit推進を支持しており、EUと未解決となっている通商問題で強気の姿勢を貫くと見込まれている。
一方、9月20日付英国『ジ・インディペンデント』紙(1986年創刊)は、「トラス首相、訪米の機会にバイデン大統領及びマクロン大統領とそれぞれ首脳会談」として、国連デビューよりも重要な日程について報じている。
トラス新首相は9月19日晩、夜行便でニューヨークに向かった。
国連総会で演説することが主目的であるが、それよりも重要とみられるのが、バイデン大統領、エマニュエル・マクロン大統領(44歳、2017年就任、2022年再選)及びウルズラ・フォン・デア・ライエンEU委員長(63歳、2019年就任、元ドイツ国防相)それぞれとの首脳会談である。
何故なら、国連演説で言及されるウクライナ支援には挙って支持を得られるとみられるものの、Brexitに伴う北アイルランド・アイルランド国境間の物流・課税問題では、明らかに意見を異にしているからである。
すなわち、EU執行機関の代表のライエン委員長がEU持論を強硬していることはもとより、バイデン大統領は北アイルランド・アイルランド間の平和が毀損されることを懸念し、また、マクロン大統領も北アイルランドの権利や漁業権の擁護を強く主張していて、明らかに英国保守政権のこれまでの主張と対立しているからである。
なお、トラス新首相は、保守党党首選挙において、Brexitに関しEUや米国・フランス首脳と(敵とするのか味方とするのか)どう対応していくのかと問われた際、当時外相であったトラス氏は、“まだ結論は出ていない”とコメントしていた。
ただ、新首相訪米前に首相府報道官は、“フランスは長い間英国の同盟国である”とした上で、“首相は、マクロン大統領と建設的な関係を築くことを望んでいる”と言及している。
(注)カーボンニュートラル:環境化学用語のひとつ、または製造業における環境問題に対する活動の用語のひとつ。カーボンオフセット、排出量実質ゼロという言葉も、同様の意味で用いられる。何かを生産したり、一連の人為的活動を行った際、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素を同じ量にする、という考え方。
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