ウィルス禍最前線で働く日本の医師、医療用マスク使い回しの上、特別手当もない惨状【米メディア】
日本の新型コロナウィルス(COVID-19)感染者数及び死者数は、欧米諸国に比べて非常に低い。しかし、欧米メディアからは、検査体制の不備等で実際の感染者数が把握できていない等、不信感を以てみられている。そうした中、ウィルス禍最前線で働く医師の多くが、医療用マスク不足のため同じものを使い回しているのみならず、欧米では当たり前となっている特別手当の支給もないという実態が浮かび上がってきた。
5月17日付
『ロイター通信』:「COVID-19治療に当たる日本の医師、医療用マスク不足の上に特別手当支給もない惨状」
COVID-19治療に当たる日本の医師の多くが、医療用マスク不足のために同じマスクを使い回し、更には、長期かつ過酷な治療業務に対する特別手当も支給されていない実態が明らかになった。
勤務医が所属している全国医師ユニオン(注後記)が4月下旬から5月6日までの間に行ったアンケートで、全国の医師約170人から得た回答をまとめたもので、5月17日付で同ユニオンのウェブサイトに掲載されている。...
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5月17日付
『ロイター通信』:「COVID-19治療に当たる日本の医師、医療用マスク不足の上に特別手当支給もない惨状」
COVID-19治療に当たる日本の医師の多くが、医療用マスク不足のために同じマスクを使い回し、更には、長期かつ過酷な治療業務に対する特別手当も支給されていない実態が明らかになった。
勤務医が所属している全国医師ユニオン(注後記)が4月下旬から5月6日までの間に行ったアンケートで、全国の医師約170人から得た回答をまとめたもので、5月17日付で同ユニオンのウェブサイトに掲載されている。
それによると、約75%の医師が、COVID-19治療業務に当たるよう病院側から指示されて治療に従事しているが、そのうち約80%が何ら特別手当をもらっていないという。
また、実に31%もの医師が、医療専用のN95マスクの在庫がないことより、複数回使い回している。
本来、当該マスクは、一度使用したら即座に廃棄することが求められている。
アンケートに答えたある医師は、“耳掛けが傷むまで使用”しているという。
何人かの医師やその他医療専門家のコメントでは、国や地方自治体の落ち度で、医療最前線の医師や看護師らに十分な手当ても医療防護服等も行き渡っていないとする。
更に、同アンケートに回答した医師の70%近くが、政府がCOVID-19対策に適切に当たることができていないと表明している。
しかし、安倍晋三首相は5月14日、東京都を含む大都市圏を除く39県(全人口の54%相当)に対して、緊急事態宣言解除を発表している。
なお、『NHK』の報道によると、5月17日午後現在、日本のCOVID-19感染者数は約1万6,300人(クルーズ船“ダイアモンド・プリンセス号”乗船者のうちの感染者712人を除く)、死者は748人(同13人)となっている。
(注)全国医師ユニオン:2009年5月に設立された個人加盟制の医師の職能組合、労働組合。病院勤務医らでつくる「全国医師連盟」の医師らが中心となって結成された。医師がユニオン(職能組合、労働組合)に入り自らを守ることはヨーロッパでは常識として、勤務医を中心に、組織の拡大をめざしている。「会員の思想信条の自由を尊重するために、政治的中立性を守り特定政党の支持や特定候補者の支持」をしないとしている。会員数は約300人。代表は植山直人氏(62歳)。
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日本医師会代表;新型コロナウィルスのワクチン開発なくば、来年の東京オリンピック開催も無理と警告【米・英国メディア】
日本医師会は新型コロナウィルス(COVID-19)感染に関わり、4月1日の段階で“医療危機的状況宣言”を出し、安倍政権に対して、緊急事態宣言発令含めた可及的速やかな対応を求めた。結局、政府発令は4月7日まで遅れ、依然感染拡大が止まりそうもない。そしてこの程、同医師会会長が、ワクチン開発を急がねば、来年に延期された東京オリンピック・パラリンピック大会の開催も危ぶまれると、政府側の迅速な対応を求めて警告した、と欧米メディアも関心を持って報じている。
4月28日付米
『ロイター通信』:「日本医師会代表;緊急事態対策の強化・継続なくば、2021年の東京オリンピック開催も“困難”と警告」
日本医師会の横倉義武会長(75歳、注後記)は4月28日、日本全国に対する緊急事態宣言解除を考えるのは早すぎるとした上で、COVID-19のワクチン開発が間に合わなければ、来年に延期された東京オリンピック・パラリンピック大会開催も危ういと警告した。
日本医師会代表の発言は、安倍晋三政権が、目下5月6日までとしている緊急事態宣言対象期間経過後の対応について、更に慎重にならざるを得ない空気を醸成している。...
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4月28日付米
『ロイター通信』:「日本医師会代表;緊急事態対策の強化・継続なくば、2021年の東京オリンピック開催も“困難”と警告」
日本医師会の横倉義武会長(75歳、注後記)は4月28日、日本全国に対する緊急事態宣言解除を考えるのは早すぎるとした上で、COVID-19のワクチン開発が間に合わなければ、来年に延期された東京オリンピック・パラリンピック大会開催も危ういと警告した。
日本医師会代表の発言は、安倍晋三政権が、目下5月6日までとしている緊急事態宣言対象期間経過後の対応について、更に慎重にならざるを得ない空気を醸成している。
同会長は、日本におけるCOVID-19感染検査はまだ数的に不十分のため、感染が抑制できているのか判断はできないとし、“従って、全国の緊急事態宣言解除は時期尚早”だと強調した。
『NHK』報道によると、東京都における4月27日の感染者は39人に留まり、3月30日以来の低水準となったという。
この結果、4月27日現在、日本全体での感染者は1万3,614人、死者は394人と、欧米諸国に比較してまだ低いが、病床が不足しないようにするため、感染検査が低く抑えられているとの批判の声は上がっている。
同会長は更に、医療事業者に対する防護服や医療用マスクが絶対的に不足している現状について厳しく非難した。
数ヵ国の研究機関で、ワクチンや治療薬の開発が続けられているが、効果及び安全を確認しながらの臨床実験には数ヵ月を要し、感染者全てに有効な対策実施にはまだ暫くかかるとみられる。
なお、『讀賣新聞』は、日本政府が早ければ5月にも、米ギリアド・サイエンシズ(1987年設立のバイオ医薬品研究開発企業)のレムデシビル(エボラ出血熱等治療に開発された抗ウィルス役)の採用を決める見込みだと報じている。
一方、富士レビオが4月27日、COVID-19の感染有無を短時間で行える抗原検査用の検査キット提供につき、厚生労働省に許可申請をしたと同省が明らかにした。
これを受けて、同社の親会社である、みらかホールディングス(1950年設立の臨床検査企業の持株会社、東証1部上場)の4月28日株価は、全体が▼0.2%下落する中、+4.7%も値を上げている。
同日付英国『ザ・ガーディアン』紙:「日本医師会代表、2021年東京オリンピック開催に懐疑的」
横倉会長は、“東京大会を開催すべきではない、と言うつもりはない”としながらも、“COVID-19感染流行は、世界に拡大している問題であるため、画期的なワクチン開発がタイムリーになされねば、現下の状況では、来年の東京大会開催も困難と思われる”と言及した。
感染症専門の岩田健太郎教授(48歳、神戸大学)も4月28日、“現下の情勢だと、来年7月、8月での東京大会開催は無理としか言いようがない”とした上で、“それでも敢えて開催するとしたら、無観客、あるいは、競技・参加選手をかなり絞っての挙行とせざるを得ないだろうと思う”と語っている。
(注)横倉義武:福岡県出身。2012年に第19代日本医師会会長就任。2017年に、第68代世界医師会会長に選任。元運輸相の古賀誠自民党衆議院議員(福岡県出身)の元後援会長。
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