中国、南シナ海領有権争いに新たに加わってきたインドネシアを得意な“パンダ外交”で懐柔(?)【米・シンガポール・台湾・中国メディア】(2017/10/01)
9月12日付
Globali「インドネシア、南シナ海での領有権争いに本格参戦」の中で次のように報じた。すなわち、“インドネシア政府は今年7月、これまでの方針を変更して、南シナ海で自国の排他的経済水域(EEZ)の主権範囲と主張する海域を、新たに「北ナトゥーナ海(マレー半島東沖)」と命名して、中国との領有権争いに本格参戦してきた。”これに対して中国は、同海域は中国主権と主張する九段線内にあり、中国の伝統的な漁場だとして、インドネシア主張を一蹴している。ただ中国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)内に反発する国をこれ以上増やしたくないと判断してか、友好の印としてパンダをインドネシアに貸与することとして、懐柔策を打ち出してきた。
9月29日付米
『ロイター通信米国版』:「インドネシア、中国から貸与されたパンダを歓迎」
インドネシアは9月28日、10年間の約束で中国から貸与されることとなった、2頭のパンダ“彩陶(サイタオ)”と“湖春(フーチュン)”の到着を歓迎した。
インドネシアは今年7月、自国のEEZ内と主張して、南シナ海南端の海域を北ナトゥーナ海と命名している。中国外交部はすぐさま、勝手な命名は“意味のないこと”と一蹴しており、以降両国間には不穏な空気が流れていた。...
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9月29日付米
『ロイター通信米国版』:「インドネシア、中国から貸与されたパンダを歓迎」
インドネシアは9月28日、10年間の約束で中国から貸与されることとなった、2頭のパンダ“彩陶(サイタオ)”と“湖春(フーチュン)”の到着を歓迎した。
インドネシアは今年7月、自国のEEZ内と主張して、南シナ海南端の海域を北ナトゥーナ海と命名している。中国外交部はすぐさま、勝手な命名は“意味のないこと”と一蹴しており、以降両国間には不穏な空気が流れていた。
中国は1950年代より、友好の印として相手国にパンダを贈る“パンダ外交(注後記)”を展開してきており、今回もその一環と考えられる。
同日付シンガポール
『ザ・ストレーツ・タイムズ』紙:「パンダ外交で、中国・インドネシア両国関係は新たな段階へ」
中国から貸与された2頭のパンダは、ジャワ島西南のボゴール(ジャカルタの75キロメーター南)内のタマン・サファリ動物園で飼育される。
一般公開は年末までに行われるが、同動物園関係者の話では、習近平(シー・チンピン)国家主席とジョコ・ウィドド大統領がお披露目に立ち会う予定であるという。
ただ、本紙がジャカルタの中国大使館に照会したところ、習主席の訪問については一切コメントすることはないとの回答であった。
同日付台湾
『台北タイムズ』紙:「インドネシア、中国との友好の印としてパンダを受け取る」
インドネシアの環境・森林省は、友好の印としてパンダを受け取るのは、インドネシアが16番目の国であるとする。ただ、かつての贈与ではなく、10年間の貸与であるという。
世界自然保護基金(WWF、世界最大規模の自然環境保護団体)によると、パンダは脆弱で保護が必要であり、現在棲息するのは約1,800頭という。
なお、インドネシアはこれまで、南シナ海において領有権は主張してこなかった。しかし、自国のEEZ内とするナトゥーナ諸島海域で、度々中国漁船が違法操業していることから、海軍による監視を強め、しばしば中国側と衝突していた。
一方、同日付中国
『新華社通信』:「中国のパンダが到着して、インドネシアにもパンダ・ファンが増加」
2頭のパンダが到着したジャカルタ空港では、インドネシア在中国大使館の孫偉徳(スン・ウェイデ)公司、インドネシア環境・森林省のシチ・ヌルバヤ大臣他、数百人の報道陣に迎えられた。
同大臣は、中国によるパンダ貸与に感謝するとし、パンダ受け入れの16番目の国になれたことを栄誉に思う旨述べた。
なお、パンダ貸与の話は、両国国交開始60年を記念した2010年に始められた。そして昨年8月1日、中国野生動物保護協会とタマン・サファリ動物園の間で、共同研究を目的とした貸与協定が締結されたものである。
(注)パンダ外交:中国が行ってきた政策で、友好関係の象徴としてパンダを贈ることで外交上の優位性を確保しようとしたもの。ただ、1982年以降は、「絶滅の危機」などを理由に贈与をやめ、「共同研究」などを名目に貸与する形を取るようになっている。上野動物園にいる“力力(リーリー)”と“真真(シンシン)”も貸与されたパンダで、中国野生動物保護協会と協定を結び、年間95万ドル(約1億円)を中国側に支払って、10年の期間で貸し出しを受けている。なお、今年6月に誕生した“香香(シャンシャン)”も所有権は中国にある。
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台湾とベトナム、南シナ海において中国に勇猛果敢な対抗措置【米・ロシア・台湾メディア】(2017/07/28)
7月15日付Globali「南シナ海仲裁裁定から1年、中国による裁定無効化が実現?(2)-フィリピン・インドネシアの細やかな抵抗」の中で、“中国から軍事行動を起こされないぎりぎりのところで、フィリピンが領有権争いの海域での天然資源探査活動の再開を目論めば、インドネシアは、自国の主権範囲と主張する海域について(南シナ海から切り離して)独自の命名を行う等、細やかな抵抗を試みている”と報じた。そして、今度は台湾が、実効支配する南沙(スプラトリー)諸島内のイツアバ島(注後記)に6基の榴弾砲(大砲の一種)を配備して防衛を強化すれば、ベトナムはスペインの多国籍企業に委託して同海域での石油の探査活動を進めている。
7月26日付米
『ザ・クォーツ』オンラインニュース:「台湾、南シナ海で実効支配する小島に榴弾砲を配備して防衛強化」
台湾の
『台北タイムズ』紙の報道によると、台湾は7月24日、南シナ海の南沙諸島内で実効支配するイツアバ島の警護を担当する台湾海岸巡防署(沿岸警備隊や海上保安庁に相当)南沙部隊に、6基の榴弾砲を供給したという。
同島は1956年から台湾が実効支配しているが、他に中国・ベトナム・フィリピン・マレーシアが領有権を主張している。...
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7月26日付米
『ザ・クォーツ』オンラインニュース:「台湾、南シナ海で実効支配する小島に榴弾砲を配備して防衛強化」
台湾の
『台北タイムズ』紙の報道によると、台湾は7月24日、南シナ海の南沙諸島内で実効支配するイツアバ島の警護を担当する台湾海岸巡防署(沿岸警備隊や海上保安庁に相当)南沙部隊に、6基の榴弾砲を供給したという。
同島は1956年から台湾が実効支配しているが、他に中国・ベトナム・フィリピン・マレーシアが領有権を主張している。ただ台湾は、榴弾砲の射程内にある、同島至近のサンド礁を実効支配しているベトナムについて脅威は感じておらず、むしろ、南シナ海全域のほぼ90%を自国主権と主張して、軍事拠点化を進めている中国を念頭に置いた防衛強化とみられる。
なお、同島については、昨年の7月の常設仲裁裁判所(PCA)によって、同島含めて、南沙諸島内には排他的経済水域(EEZ)を設定できる“島”はなく、12海里(約22キロメーター)の領海を主張できる“岩”しか存在しないと裁定されている。そこで、台湾としては、EEZで認められる漁業権・天然資源探査権を行使できなくなったことから、この点においては、PCA裁定を無効とする中国と意見は一致している。
同日付台湾『台北タイムズ』:「イツアバ島に生命維持装置備え付けの飛行機を派遣」
台湾空軍と海岸巡防署は7月24日、生命維持装置備え付けのロッキードC-130貨物機を南沙諸島内のイツアバ島に向かわせ、海難事故等による重傷患者の救出訓練を実施した。同島は台湾から1,600キロメーター南方にあるが、万一同海域で漁民や貨物船などの海難事故が発生した場合、台湾南部の屏東(ピントゥン)空軍基地までの3時間半の飛行中も、重症患者の延命措置が機上で可能とすべく、救出体制を強化する一環で行われた。
海岸巡防署の王茂霖(ワン・マオリン)主任は、南シナ海において2000年以降で累計74回(負傷者延べ104人)の海難救助を実施しており、多くが台湾人漁師であるが、海外貨物船の乗組員も含まれているという。そして同主任は、かかる海難救助体制を強化することで、同海域で領有権を争う周辺国との関係改善に繋がることを期待しているとも語った。
一方、同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「中国、南シナ海で石油掘削を進めるベトナムに圧力」
中国外交部(省に相当)の陸慷(リウ・カン)報道官は7月25日、南シナ海の領有権問題に関わる当事国に対して、一方的な海洋活動を慎むよう強く求めるとした上で、必要に応じて強硬措置を講ずるとも表明した。
目下、南シナ海の南沙諸島において、ベトナム政府から委託されたスペインのレプソル(石油・天然ガスの探査・生産を行う多国籍企業)が、3億ドル(約330億円)を掛けて石油掘削を進めている。
報道によると、中国はベトナムに対して7月24日、即刻探査活動を中止しない場合、強硬措置に出ると圧力をかけたと言われている。
なお、中国海洋石油総公司(CNOOC)の評価によると、南シナ海には約1,250億バレル(約198億7,500万キロリットル)の石油、及び500兆立方フィート(約142億立方キロメーター)の天然ガスが賦存しているという。
(注)イツアバ島:中国名太平島(タイピンダオ)は、南沙諸島の北部に位置する環礁州。南沙諸島中、自然形成された陸地面積が最大の海岸地形で、東西約1,290メーター、南北約370メーターの小島。イツアバとはマレー語で“あれは何だ”の意。
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