11月8日石油輸出国機構(OPEC)は年次報告書を発表し、昨年後半以降の原油価格の低下が需要を刺激することを理由として、長期の原油需要見通しについて昨年の報告書より引き上げた。原油価格の低下で原油採掘の設備投資が落ち、将来の需要増を賄える供給が確保出来ないおそれがあると警鐘を鳴らしている。また別のOPEC関連のニュースとしてOPECのバルキンド事務局長はアブダビの会議で、9月のアルジェリアにおける臨時総会での減産合意の実施が出来ないと悪い結果になるだろうと警告した。
11月8日付
『ヤフーニューズ』(AFP通信引用)は、「OPEC報告:石油業界は供給確保のため投資が必要」という見出しで、OPECが火曜日低価格により原油需要が刺激されており石油業界は十分な供給を確保するために設備投資を増加させる必要があるとその年次報告書で警鐘を鳴らしたと報じた。現在は供給過剰で原油価格下落とともに投資は減少しているが、将来の需要増加に備えるために設備投資額は2040年までに10兆ドルを要すると見る。価格低下により2021年までに昨年の予測よりも更に需要が百万バレル増加すると予想されるが、2015年の設備投資は前年比1,300億ドル減少して4,000億ドルとなり、今年は更に800億ドル減少すると見られている。
原油価格については、2015年基準のドルベースで2021年60ドル、2040年92ドル(その時点のドルベースでは2021年65ドル、2040年155ドル)を予想する。一方生産量は昨年の日量9,510万バレルから2021年には日量9,940万バレル、2040年には日量1億960万バレルを予想する。このうち非OPECの産出量は昨年の日量5,690万バレルから2021年には日量5,860万バレルで、2027年に日量6,140万バレルでピークを打った後は米国シェール石油の産出量が減少し始めるため下降線を辿り、2040年に日量5,890万バレルとなる。OPECの産出量は2021年で日量4,070万バレル、2040年に日量5,070万バレルとなり、現状のシェアから3%上がって37%となる。
需要増加の主な要因は、低開発国の所得増加により2040年までに乗用車の台数が倍増することが大きいが、航空機や石油化学の需要増加と安い原油価格による需要刺激も含まれる。
需要は昨年の日量9,300万バレルが2021年には日量9,920万バレルに増加すると予測するが、これは昨年の報告書の予測より日量百万バレル増加した。これは従来低く目の中期経済成長予測とエネルギーの効率利用策により低めの需要増加を予測していたが、原油価格低下による需要刺激の影響がより大きいと見たためであると報告書は述べていると伝えている。
11月8日付英国
『メールオンライン』(ロイター通信引用)は、「OPEC、アルジェー合意が実施されない場合、悪い結果を予想」という見出しで、OPECのアルキンド事務局長が火曜日9月のアルジェーでの減産合意が実施されない場合は、不安定な石油業界が更に悪い結果を迎えると語ったと報じた。同氏は過去2年の経験で合意できない場合の結果は皆十分認識しており、実施されることに自信を示した。リビア、ナイジェリア、イラン、イラクなどがそれぞれの事情から例外扱いを望んでいる。特にイランの動向が鍵となるとみられているが、事務局長は個人的にイランのトップレベルから参加の約束を得ているので心配していないと述べたと伝えている。
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鉄鋼、石炭等の過剰生産設備の削減が今年の中国経済の大きな課題であるが、石炭の生産量削減で中国国内での石炭供給が足りなくなり輸入を増やし始めたため、世界の石炭需給がひっ迫し石炭価格が高騰している。このため中国は急きょ発電用石炭について生産削減の緩和を始めた。行き過ぎた中国の供給削減が世界の石炭産業に思わぬ棚ぼたの利益をもたらしている。
10月18日付
『ブルームバーグビジネス』は、「グレンコアの石炭ヘッジ(損失防止策)、価格高騰で痛手」という見出しで、世界最大の燃料輸出商社であるスイスのグレンコアが価格高騰前に行った価格下支えが発電用石炭の高騰の中裏目に出て利益を大きく押し下げていると報じた。同社は将来の売上高のうち、年間売上高の半分の額についてヘッジして価格を下支えしたため、2016年上半期に3億9,500万ドルの損失を計上した。石炭価格は6月より53%上昇し3年ぶりの高値を付けており、グレンコアの逸失利益は12億ドルに達する可能性があるとアナリストは見ている。
中国政府の急な産出削減策で製鉄用や発電用の石炭の輸入が急増し価格が高騰している。アナリストによれば中国政府は発電用石炭については政策を変更し、12月までは産出量を増やす方針のため石炭価格は下がり始めるかもしれない。グレンコアは債務削減のためのリスク管理の一環としてヘッジを行ったと説明していると報じている。
10月17日付
『ブルームバーグビジネス』は、「ホワイトヘイブン社、中国石炭産出削減緩和し供給を増やすと予想」という見出しで、豪州の石炭会社ホワイトヘイブン社によれば、中国は石炭価格沈静化のため産出制限を緩和すると見込まれると報じた。同社によれば、中国は非効率な炭鉱の産出削減は継続しつつ、効率の良い炭鉱では産出量を増加させると思われる。中国政府は石炭の供給過剰対策として生産者に産出削減を命じたが、結果として豪州の発電用石炭価格は今年70%上昇し、製鉄用原料炭は3倍になったと報じている。
10月17日付英国
『メールオンライン』(ロイター通信引用)は、「100ドルの石炭価格でもアジアのLNG業界は苦戦」という見出しで、アジアのLNG(液化天然ガス)業界は最近の発電用石炭価格の高騰で漸くLNGの価格競争力が出て来たと見ていると報じた。石炭価格は100ドル近くまで高騰しているが、LNGによる発電コストは石炭に比べて高いため未だ競争力がない。業界関係者は今年の石炭価格上昇は驚きであったという。ただ、今後石炭価格は頭打ちになるとゴールドマンサックスのアナリストは見ているため、LNGにとっては未だ苦難の時期が続くと報じている。
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