7月16日付
『LGBTQネーション』オンラインニュース(2009年設立のLGBTQ向けウェブサイト、本社サンフランシスコ)は、「任天堂、日本の法律が認めずとも社内の同性カップル従業員を容認と発表」と題して、ゲームソフト世界企業の任天堂が、世界基準に則って社内の同性カップルに異性婚カップルと同等の福利厚生等を提供すると発表したと報じている。
ゲームソフト世界企業の任天堂はこの程、日本の法律では認められていないものの、社内の同性カップルに異性婚カップルと同等の福利厚生等を提供すると発表した。
同社はまた、LGBTQを自認する従業員に関するアウティング(本人の同意なしに勝手に暴露すること)や差別行為を禁止するとの社内規定を設けるとも公表した。
同社は、「スーパーマリオブラザーズ」(1985年発売)や「ゼルダの伝説シリーズ」(1986年発売)等のゲームソフトウェアを世界規模で販売しているが、今年度のCSR(企業の社会的責任を謳った報告書)の中で明らかにしたものである。
同社は、“2021年3月から、社内の同性カップル従業員を差別しない方針を打ち出している”とした上で、“(直近の判決で)日本の法律の下での同性婚が認められないとなっているが、当社内では、同性カップルにも異性婚カップルと同等の福利厚生手当て等を支給している”と言及した。
すなわち同社は、事実婚(同棲等)のカップルも、法律で認める異性婚カップルと同等の権利を有するとしている。
その上で同社は、“性的マイノリティの従業員への差別行為や、本人の同意なしのアウティングを禁止する旨、社内規定に明記することにした”とも付言した。
この発表に関して、特に同社のゲームソフトウェアの多くのファンは、保守的な日本において画期的な決断だとして称賛している。
日本では現在、LGBTQ差別禁止や同性婚を認める法律は整備されていない。
直近でも、大阪地裁が6月下旬、国が同性婚を認めていないのは憲法解釈上違憲ではないとの判決を下している。
更に、LGBTQの人たちは、雇用・賃貸・教育等で差別を受けている他、異性婚カップルが受けているのと同等のサービスが受けられない状況にある。
ただ、世界的な活動が知れ渡るに連れて、現在の日本でも200余りの自治体が、同性カップルにも異性婚カップルと同等のサービスを提供するように変わってきてはいる。
しかし、LGBTQ活動家によると、昨夏の東京オリンピック・パラリンピック大会で多様性がアピールされていたものの、岸田文雄首相(64歳)率いる自民党政権下では、性的マイノリティに同等の権利を認めたり、差別を禁止することを定めた立法案の策定の動きは一切ないという。
(注)LGBTQ:性的マイノリティの総称。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー及びクエスチョニング(またはクィア:性自認が決まっていない状態の人)の頭文字。主要国での生産年齢人口におけるLGBTQ比率は、米国約4%(約908万人)、英国約2%(約84万人)、フランス約7%(約293万人)、豪州約3%(約53万人)、ドイツ約11%(約660万人)、スペイン約14%(約470万人)、日本約8%(約520万人)。
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札幌市は、2018年9月発生の北海道地震の影響で2026年冬季オリンピック大会招致を断念したが、目下は日本オリンピック委員会(JOC、1911年前身設立)の後押しを受けて、2030年大会招致に向けて取り組んでいる。その強力な対抗馬は、米国・ソルトレークシティ、カナダ・バンクーバー、スペイン・バルセロナが候補として上がっている。なお、米メディアは、2024年パリ大会及び2028年ロサンゼルス大会を一挙に決定したように、国際オリンピック委員会(IOC、1894年設立)が2つの最適候補を予め選択して、2030年及び2034年大会を一度に決定してしまう可能性もあると報じている。
5月1日付
『AP通信』は、「冬季オリンピック招致合戦を繰り広げているソルトレークシティ及び札幌が2030年・2034年大会開催地となる可能性」と題して、IOCが、2024年及び2028年夏季大会開催地を一挙に決定したように、冬季大会も同様の方針を取る可能性があると報じている。
フレイザー・バロック氏(67歳、米国人実業家)は先週、ソルトレークシティ(ユタ州)地元TVのインタビューに答えて、“ソルトレークシティが再び冬季大会の開催地に決定される可能性が高いが、何年開催の大会となるかはまだ分からない”とコメントした。
同氏は、2002年の前回大会の組織委員会執行代表として貢献したが、今回も冬季大会を再び招致すべく主導している。
同氏がコメントした背景には、IOCが4年半前、夏季大会の開催地を2つの最適候補に絞り、2024年パリ、2028年ロサンゼルス開催と一挙に決定したことがあったため、今回の冬季大会開催地も、同様の手段が取られる可能性について言及したものとみられる。
IOCは何ら具体的なことを表明していないが、2023年5月に開催地を決定する見込みとの報道がなされている(編注;インド・ムンバイで開催されるIOC第140回総会で決定)。
『AP通信』が同氏にインタビューを申し込んだが、同氏は地元メディアにしか話さないとしており、『ザ・デゼレトニュース』(1850年創刊のソルトレークシティ地元紙)報道によると、同氏は、“2030年大会招致の可能性が高いが、仮に2034年となっても喜んで受諾する”とコメントしているという。
IOCへの招致活動のプロセスがまだ明らかになっていないが、目下のところIOCは、次の4都市を候補地としている模様である。
ソルトレークシティ(2002年冬季大会開催)、札幌(1972年開催)、カナダ・バンクーバー(2010年開催)、スペイン・バルセロナ(1992年夏季大会開催、冬季大会はピレネー山脈ふもとのリゾート地をも含む案)
IOCの“技術委員会メンバー”が先週ソルトレークシティを訪問して視察しており、今週バンクーバーを訪問する予定であるが、スペイン訪問は延期された模様である。
札幌については、いつIOCメンバーが訪問するのか定かではないが、新型コロナウィルス感染問題で1年遅れた2020年夏季東京大会が、当初予算を大幅に上回る136億ドル(約1兆7,680億円)もかかったものの無事終了したこともあって、IOCの日本に対する配慮がはたらく可能性があるとみられる。
札幌は、麻生太郎元首相(81歳、2008~2009年在任)を委員長とするプロモーション委員会を立ち上げて、来週第1回会合を開き、“オールジャパン”での招致合戦に挑んでいく意向である。
IOCは最近、冬季大会開催地決定に困難を来しており、2022年大会については、欧州の4都市が住民投票の結果や、膨大な総費用に恐れをなして次々に撤退してしまい、その結果、北京と中央アジアのアルマトイ(カザフスタン)の2都市しか残らなかった。
総費用について、ソルトレークシティは22億ドル(約2,860億円)、札幌は24億~26億ドル(3,120億~3,380億円)と見込んでいるが、いずれも既存の施設等の再使用を予定していて、低く抑えられるとしている。
しかし、オリンピックの総費用は当初予算を上回ることが常で、かつ、8年先の開催費用を正確に予想することは困難なことである。
なお、地元支持の度合であるが、札幌もソルトレークシティも住民投票を行う予定はない。
ただ、秋元克広市長(66歳、2015年就任)によると、3月中旬に郵便、インターネット、街頭インタビューで1万人余りの住民にアンケート調査を実施したところ、それぞれ52~65%の賛同の回答を得たとしている。
一方、バンクーバー市議会は先月、10月予定の地方選挙と同時に冬季大会招致の住民投票を実施することを断念した。
しかし、同市の招致申請は、ファースト・ネーションズ(カナダ先住民集団、注後記)の支援を背景にした、“先住民主導”の世界初の申請だと言われている。
なお、フォーダム大(1841年設立のニューヨーク州在の私立大学)傘下のガベリ・ビジネススクール(1920年設立)のマーク・コンラッド教諭(スポーツ法・倫理専門)は『AP通信』のインタビューに答えて、2大会の開催地の同時決定はあり得るとコメントした。
同教諭は、“ソルトレークシティの場合は、2002年開催時の施設が十分再利用できるし、地元住民の支持率も高い”としたが、“ただ、札幌の場合は、IOCが東京大会無事開催達成に伴う日本への配慮があると考えられるし、また、前回開催時の施設や長野大会(1998年)の設備の再利用が可能とみられる”として、両市とも優位性を持っているとも付言している。
(注)カナダ先住民集団:カナダに住んでいる先住民のうち、イヌイット(北部氷雪地帯に住むエスキモー)やメティ(カナダ・インディアンと欧州人の混血子孫)以外の民族のこと。現在、カナダには50を超える民族に50種の固有言語を有する、630を超えるファースト・ネーションの共同体が存在し、そのうちおよそ半分はオンタリオ州かブリティッシュコロンビア州に居住。人口は140万人を超え、カナダの全人口の約4パーセントを占める。
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